あと、性格改変とアンチ・ヘイトタグを追加しました。念のため。
危ないところだった・・・。
『艤装』とやらの装備についている砲塔で、とりあえず敵の撹乱に成功。ぶっつけ本番で撃ったにしてはうまく当たったものの、効果は今ひとつのようだな。多少は怯んだ様子を見せたものの、敵はもう既に冷静さを取り戻して体勢を整えている。戦闘では牽制用として使うのがベストだな。なんか弾もあまりないみたいだし直斗のように銃に慣れているわけでもないしな。
「お、お兄さん・・・?」
振り向くと、電が驚きと戸惑いで何かいいたそうにしているが、うまく言葉が見つからないのかただ口を開いたりとじたりしている。先程まで死に掛けていた天龍も電と同じように唖然とするようにこちらを見る。うん、驚いた様子はあるものの、2人とも、無事でよかった・・・とまではいかないか、特に天龍は。
『能力』を使ってボロボロで死に掛けている所を回復させ、ひとまず生命の危機からは脱したは良いものの、所詮は応急処置みたいなものだ。素人目に見ても今すぐにでも本格的な治療が必要だ、できればこのまま回れ右をしていきたいが・・・。
「さすがに、そうはさせてくれないか・・・」
目の前の視界を埋め尽くす大群に喉をうならせる。いっぱいいすぎだろ、それだけならまだしも、今までと違ってなんか人間に近い姿をしているし、ほとんどが女性の姿ばかりだ。ビキニ姿のまでいる。・・・あれも『深海凄艦』とやらなのか?色んな意味で手を出したくないんだけど・・・。
が、このまま放っておけばすぐさま後方にある基地にこの人数で殴り込みをかけて生きてるもの全てを亡き者にするまで暴れ続けるだろう・・・本来なら、修羅場的な意味じゃなければ多数の女性に迫られるのは男として光栄の極みだけど、今回ばかりは笑えない。陽介だってそう言うだろう。
「・・・なぜだ?」
搾り出すような声に振り返ると、天龍が倒れている状態から首だけをなんとか上げてこちらを見据える。
「・・・なぜ、とは?主語述語が抜けていては何にも分からないんだが・・・」
「とぼけんじゃねえ!認めたくねえけど無駄に察しの良いお前ならわかんだろ!!どうしてここに!?何で人間のお前が『艤装』を装着しているんだ!?しかも、その『艤装』は・・・」
あえてとぼける俺に対して、指を突きつけながら声を荒げてこちらに問い詰める天龍。・・・さっき妖精が言っていたけれど、人間が『艤装』を装着できる事がそんなに驚くべき事なのか。が、なんだか怒っている様子も見受けられるのはそれだけが理由ではなさそうだが・・・恐らくこの『艤装』の『本来の持ち主』が関係しているんだろう。ま、それを考えればこんなに過敏な反応を取るのは当然といえるな。電も、おどおどしながらも、俺に視線を向けてその答えを聞きたそうにしている。
「・・・頼まれたからな、お前たちのお姉さんから」
「?」
「え?何なのです?今なんて?」
今の呟きが聞こえなかったのか、2人して?マークを頭に浮かべてこちらを見ている。
「・・・ちょっと複雑な事情があるからうまく信用できるような説明は出来ないけど、強いてあげるなら・・・」
そこで一呼吸、そして・・・。
「『ワイルド』ぱわーってところかな?」
にこっと笑って二人の疑問に答える。予想斜めの答えに電はますます訳がわからないといった表情を深め、天龍は・・・。
「・・・この期に及んでふざけているのかてめえ?」
と部屋で見せたような殺意を篭めた視線をこちらに送ってくる。まぁ、嘘は言っているつもりもないけど。少なくとも、この艤装とやらを装備できたのは多分、俺の中にある『ワイルド』の力が関係しているのだと推察している。現時点ではそれ以外に考えようがない・・・まあ、想像の域を出ていないけど。まあ、そんな殺意丸出しの目ができるということはまだ余裕があると前向きに捉えておこう。
それはそうとしてだ・・・。
「電」
「っ!?」
電の身長にあわせるように身をかがむ。何を驚いたのか、びくりと身と瞳を震わせてこちらを見る。
「・・・お前は、またこんな無茶な事を。さっき俺が散々言ったことを忘れたわけじゃないだろ?もう少し来るのが遅かったら、二人共危ないところだった。」
「・・・っ!」
少し不機嫌な声色でチラリと天龍のほうに一瞬視線を向け、すぐに電に視線を戻す。戦う者を侮辱しているとか何とか言われても、やはり俺はこんな小さな子が前線に立って戦うということが許容できない。わがままとか、偽善者とか言われようともだ。菜々子のように、妹のような存在がいるからこう思うのだけれども・・・やっぱりシスコン番長と言われてもしょうがないな俺も。
「でも」
右手を電の頭に載せてなでてやる。突然の事に警戒するも、何をされたのか認識するときょとんとした顔を見せる。
「そんな体で天龍のことを守ってあげたんだな。偉いぞ」
「は、はわわ・・!」
色々言いたいことはあるけども、今はこんな小さな体で目の前の命を救ったことに対して素直に褒めておこう。話し合うのはここから生きて帰ってからでもできる。
気のせいだろうか?若干顔が赤くなっている電の頭をひとしきりなでた後、立ち上がって敵のほうに視線を向ける。
相変わらず不気味な群れが今か今かとこちらに襲い掛かるその時を待ち受けている。少なくともこの状況で、五体満足でまともに戦いが出来そうなのは俺だけだ。逃げることも出来ないのならやるしかない。
ふと、天龍の傍らにキラリと光る何かがあるのが視界に映る。疑問に思ってよく見てみると・・・剣?赤紫の刀身に峰の部分が紫色になっている。
「変わった剣だな・・・天龍これ借りるぞ」
「!?お、おい!」
本人の了承を得ないまま強引に剣を拾い上げる。
「お兄さん!」
「大丈夫、俺に任せろ」
心配かけさせないように二人に笑いかけ、そして一人敵の群れに向かって急発進する。
このまま突っ込んでいったところで唯のいい的だな。ならば・・・。
『我は汝』
『汝は我』
『汝、己が双眸を見開きて・・・』
『今こそ発せよ!!』
頭の中に馴染み深い声が浮かぶ。瞬間、青い光と共にどこからか突風が来たかのように俺の髪と衣服がはためく。心の内から湧き上がる衝動に思わず笑みを浮かべる。右手を広げると、先程と同じように馴染み深いタロットカードが右手に浮かぶ。
「ぺ」
猛スピードで目の前の敵に急接近する。予想外のスピードと慣れない走法に苦労しつつも何とかうまくバランスをとる。
「ル」
「あ、危ねえ!!」
「お兄さん!」
天龍と電が叫び声をあげている。
「ソ」
先頭のチ級とやらが主砲を構える。が、もはや目と鼻の先の距離だ。
「ナ」
とうとうチ級の砲が火を噴き・・・。
「ペルソナァッ!!」
右手のカードを握りつぶす!!
ドコォォォォォン!!!
「・・・な!?」
「・・・!」
天龍が後方で驚きの声をあげる。それはどの事に対して驚いていたのか。その隣で電も息を飲む・・が、天龍と比べて驚きは少ない模様。まあ、当然か。“さっき見せたばかりだもんな”
「・・・ウォーミングアップはさっき済ませただろ?」
目の前の数体のチ級にも構わず自分の隣を見上げる。
「今度は、“俺たち”で彼女達を守ろう・・・・なぁ?」
それは、何時の間に立っていたのか・・・俺の背丈を軽く越える長身の異形が、隣に立っていた。
鉢巻をしめた機械的な顔に金色の瞳、長ランを思わせるコートを纏い高下駄を思わせる足、手には巨大なナイフを連想させる矛を携えている。
俺の返事に応えるかのように軽く唸り声をあげる。瞬間、タイミングを合わせるかのように主砲を構えたままの状態の、四体のチ級の体に斜線が走り、線にそってゆっくりと斜めにずれていき、仮面の奥で驚いた状態のままそのまま轟沈していった・・・。
「な・・・なんだぁありゃあ!!!??」
「あれは、さっきの!?」
後ろで二人が騒いでいる。やはりこれは馴染みない能力なのかな・・・ならば教えてやる!
自称特別捜査隊リーダー 『鳴上悠』
「これが・・・もう一人の俺、困難に立ち向かうための人格の鎧・・・かつて日本を作り出した国作りの神・・・」
アルカナ 『愚者』
「俺のペルソナ(仮面)イザナギだ!!!!」
ペルソナ 『イザナギ』他多数
今ので4体は倒した。妖精からの情報どおりなら60はいるという・・・これで。
「あと、56体!」
海の底に沈んだチ級から目を離して力の篭った視線で前方にいる異形の群れを睨みつける。相変わらず感情を感じられない不気味な表情だったが、何となく仕草やわずかに後ずさったのを見てこちらを警戒しているようにも見える
「この機を逃す手はない・・・いくぞ!!」
叫ぶや否や敵に向かって猛スピードで敵艦隊に向かっていく!その傍らを、イザナギが付き従うように浮揚しながら付いて来る。
それを確認した敵の艦隊から、幾多のビキニ姿の重巡リ級が腕の主砲をチャキ・・・とこちらに向けるや間髪入れずに俺とイザナギに砲弾の嵐を連射する。が、慌てず騒がずこちらに向かってくる砲弾をギリギリまで見定めて・・・。
「遅い!!」
俺自身はベルベットルームで調整して得たスキル『アリ・ダンス』で砲撃の嵐を滑るようにかいくぐり、回避しきれない部分は天龍から借りた剣ではじく。イザナギは巨大な矛をまるで枝でも振り回すかのように目にも留まらない速さで振り回して砲弾を全て叩き落している。我ながら惚れ惚れする・・・俺でも出来るのかな?いや、怖いからやめておこう。
リ級の砲撃が止む。どうやら弾切れを起こしたらしく信じられないような表情で自分の腕についている艤装と俺達を交互に見ている。後先考えずに撃ちまくるからだ・・・。
さて、やられてばかりじゃ芸がない。こちらも反撃に移るとしよう。
「イザナギ!『チャージ!』
リ級の攻撃の手が止んだのを見計らって一気に加速して近づき・・・。
「からの・・・『アグネヤストラ』!!」(カッ!)
叫んだ瞬間、空から突然隕石の嵐が降り注ぎ、弾切れを起こしたリ級やらその周辺の敵艦に次々と直撃し、7体くらいの敵が『轟沈』する。これであと49体!!
「敵の隊列が乱れた!一気に行くぞ!『ヒートライザ』!」
一時的に自身の全能力をあげる『ヒートライザ』をかける。こういう艦隊戦では離れて戦うと厄介だが一気に近づけばこちらのもの!
先のアグネヤストラから運よく生き延びた手近な者に対して上段に剣を振るう!敵を真っ二つにした後に返す刃で体ごと回転させてその横の敵を数体まとめて一閃!死角になっているところから掴みかかってくる敵に対しては胴に裏拳一発!『ヒートライザ』で強化された拳を叩き込まれた敵はそのまま後方まで吹っ飛ばされ、待機していたイザナギによって無慈悲に縦に両断される。残り45体。
敵を両断したイザナギは、接近戦が不利と見たのか俺たちから距離を取ろうとしている軽巡クラスの敵に高速で接近、俺と同じく『ヒートライザ』で強化された力で、逃げている最中の敵に向かって横薙ぎに矛を振るう。2,3体の敵を一遍に両断するものの、残る一人が体を反転、持っていた武装をありったけ目の前の『イザナギ』に発射、爆発音と衝撃がイザナギを襲う。
「ぐぅ!?」
当然、イザナギのダメージが本体である俺にフィードバックする。至近距離で硬球のボールをぶつけられたような衝撃が俺を襲う。
「こ・・・のぉ!!」
が、この程度のダメージ、去年の戦いや電の姉が受けた痛みに比べれば・・・!強化された防御力と根性でダメージを堪える!
何発もの砲弾と魚雷を叩き込まれたイザナギがお返しといわんばかりに、目の前の張本人の頭を鷲掴みにして、離れた6体くらいの一団のほうに掴んだ敵を全力で放り投げる。
投げつけた敵が周りの一団とぶつかったと同時に、威力を調整した電撃が本人と周辺の敵を襲う。流石に敵の生命活動を止めるには至らないものの、動きを止めるには十分!その隙を逃さずイザナギが急接近して渾身の力で矛を振るい、突き刺し、瞬く間に全滅させる。
全力で放てば周りの敵も巻き込めるが、比較的近くにいる俺達は勿論、遠くの天龍達まで地電流で巻き込んでしまう恐れがあるからな、ここでは電撃は考えて使わねばなるまい・・・ともあれ残り35体!
「おい電、俺は今夢でも見ているのか・・・?」
「す、すごいのです・・・!」
2人揃って目の前の非現実に近い現実を、呆然とした様子で眺めていた。
信じられない、艦娘の自分ですら駆逐艦を倒すのがやっとで、後は全く歯が立たなかったエリートの艦隊を・・・しかも『人間』あいつが・・・砲一つも持たないで自分から(半分無理矢理で)借りた剣一本で次々と殲滅してる・・・というか有り得ないだろ!?『深海棲艦』を倒せるのは自分達だけだと思っていたのに・・・あんなあっさりと・・・というかあいつも規格外だけど・・・。
「あ、あの人も凄いのですけど、もう一人の方も凄いのです!」
そう、規格外といえばもう1人、今電が驚きながら言及した・・・あの人間の隣に突然現れたあの正体不明のデカイあいつも化物だ!なんなんだ次から次へと・・・さっきからこちらの常識の理解を超えた事ばかり起きて、全くついていけない・・・。
ザバァァァン!
「「!?」」
自分達の周囲に大きな水飛沫が6つ上がる。驚いて周りを見渡すと、海の中から何かが顔を出す。やがてその姿を露にして顔を覗かせると、自分と電が揃って息を呑む。
『キシャアアアア!!!』
敵駆逐艦『ハ級』と『ニ級』が三体ずつ・・・しかも全員がエリート。それらが奇声をあげながら俺たちを取り囲むように狙っている。
「マジかよ・・・!」
「て、天龍さん・・・」
マズイ、普段の俺でもまとめて2,3体位が限界だというのに6体だと!?あの野郎に謎の力で回復してもらったとは言えまだ中破状態・・・手負いで動けない俺たちを狙って・・・くそっ!駆逐艦の癖に海潜るなよ!!それだけでも厄介だというのに夜戦で火力が強化されてますます厄介な事に・・・。
無駄だと知りつつも、ふらつく体をなんとか立ち上がらせて電を守るように、唯一残っている武器である単装砲を構える。
「電・・・俺から離れる・・・くぅ」
「天龍さん!」
気力を振り絞って立ち上がったはいいが、すぐにまた片膝をつく姿勢になってしまう。くそ、立ち上がる力すらないって言うのかよ・・・。
『キシャアアアア!!!』
「ああ!て、敵が!」
敵が見るに耐えない口を大きく開けて、連装砲と魚雷をこちらに向ける。それを忌々しげに睨み付けることしかこちらには出来ない。視線で攻撃できたら・・・と、半分冗談で半分本気の言葉が頭をよぎる。
「クソッタレが・・・」
「っ!!」
気休めにもならないと知りつつも、電を守るように抱きかかえる。やがて、敵が放った砲撃と魚雷が轟音と共に発射され、こちらに近づいき・・・。
カキィィィィ!!!
爆発音でなく、金属同士がぶつかったような高い音が響き渡る。
「!?こ、今度はなんだ!?」
またもや信じられない事が起こった。目の錯覚か?いや、違う・・・紛れもない現実だ。
敵の攻撃がこちらにぶつかりそうになるその瞬間、自分達を覆えるぐらいの大きさの透明な壁みたいなものが周りに張り巡らされ、自分達を狙った魚雷や砲撃が、まるで跳ね返るように放った張本人である敵に向かっていき・・・。
ドゴォォォォォン!!!
もし『深海棲艦』に意思というものがあるならの話だが、恐らく本人達も何が起きたのか理解する間もなかったのだろう。奇声をあげる事もなく強化された自分達の攻撃をまともに受けて爆発と共に6体全艦が『轟沈』していった。
「な、何が起きたんだ・・・?」
この数分間で自分には理解できない事柄が多すぎて、馬鹿みたいに何が起きた?と繰り返す事しか出来ない・・・。
「て、天龍さん、苦しいのでそろそろ離して下さい・・・」
「あ?ああ、悪い・・・」
窮屈そうにしている電を離して、自分の腕からすり抜けた電がぱちくりと目を瞬かせる。
「い、一体何が起こったのでしょう?」
「俺が聞きてえよ・・・なんなんだよ今のは?まさかあれもあの野郎の仕業か?」
当の本人に視線を戻す。遠く離れた前方で、軽巡の群れにスライディング気味に突撃するとそのまま飛び上がって
持っている剣を連続で振るって相手を切り伏せ、近距離の砲撃を先程と同じように無駄のない動きで回避し、そのまま隙を突いて怒涛の反撃・・・軽巡6体の群れを瞬く間に全滅、そしてまた次の目標に向かって発進する。
・・・なんて奴だ、たしかに状況によっては下手な砲撃より白兵戦のほうが相手に有利なダメージを与える事ができる。『深海棲艦』だって人間や『艦娘』と似たような体をしているから例外ではないのかもしれない・・・だがそれは理想論であって実際出来るかどうかと問い詰められれば限り無く無理に近い。だってそうだろう?砲撃してくる艦隊に対して時代錯誤に剣振り回して近づいたらどういう事になるのか、蚊を叩き潰すより簡単に、近づく前に遠くから砲撃されて海の藻屑になってお終いだ。馬鹿にでも分かる理屈だ。現に自分だってあの剣を使うことなんてほとんどない、戦闘に関しては単装砲や機銃を使うのが当たり前
だ。普通は、その筈・・・。
それを、遠くで1人戦っているあの男は明らかに『普通』じゃない方法を使って、艦隊相手に剣で戦うというという非現実をやってのけてやがる。その効果は、最初は60はいた敵が、今は数えるのが大分楽になっている数にまで減っているのをみれば、察する事が出来るだろう。
「所で電よぉ、さっきから気になっていたんだけどよ、やけにお前冷静じゃないか?」
「え?そ、そうでしょうか?」
「こっちは今起こっている『非現実』を処理するのがやっとだと言うのに、お前にしては随分落ち着いていると思ってな・・・」
何時もの電なら、『はわー!な、なんなのです⁉︎あのお兄さんと、あの大っきな人は⁉︎』とか言いながら自分以上に取り乱している筈なのだが、それどころかやけに冷静に人外みたいな奴の戦いを見守っている。
「そ、それは・・・電はさっきあの人の戦っている姿を見ましたから」
「・・・は?ど、どういう事だそりゃあ!お前、あの化け物をもう見たのか!?」
慌てふためく自分の言葉に、電がゆっくりと頷く。
「さっき砂浜で、エリートの『ヌ級』に襲われたのですが、あの人とあの大きな人に助けられたのです。傷ついた電を先程の天龍さんがしてくれたみたいに直してくれたり、『ヌ級』の出した艦載機を電撃みたいなもので叩き落したり、電が驚いているのを余所に次々と・・・あの大きな人が『ヌ級』をやっつけてしまいました・・・」
「マジかよ・・・」
驚きながらも再び、前方の戦いに視線を戻す。少し目を離した隙に、いつの間にか敵の数が更に減っている。駆逐と軽巡クラスと『チ級』の姿が見えない・・・つまり、全滅している。そして今、あのデカイ奴が最後に残った『リ級』を、持っている剣だか槍だかはたまたデカイナイフみたいなもので横胴で真っ二つにしたところだ。
残っている敵の数を確認する。ひーふーみーよー・・・残り12体、輸送艦クラスが10体と・・・。
「戦艦が2体・・・『ル級』と『タ』級か。けど、あの2艦は・・・」
「ふぅ・・・」
あれから何分たったのだろう?周りを見渡せば前方に見える敵以外に姿はない。一時はどうなる事やらと危惧していたけれど何とかなったみたいだ。遠く離れている天龍達が襲われないかと危惧して、『テトラカーン』と『マカラカーン』を張っておいたけどどうやら正解だったらしい。天龍から借りた剣も、変わっているが意外といい剣だなこれも。たぶんこれも、対『深海棲艦』用の装備だから当然といえば当然なんだろうけど・・・。
と、次の瞬間、リーダー格っぽい黒髪の長髪が、頭に被り物をした半裸の何かに向かって何か指示を出している。と、被り物4体がこちらに向かって突進してくる。剣を構えてその四体を待ち構えていると、残りの8体が俺の横をすり抜けて後方に向かっている。マズイ!あいつら天龍達の元に向かう気か!?
咄嗟に反転して向かおうとすると、俺に向かってくる4体と例のリーダー格が俺に向かって次々と砲撃を繰り出す!なんとか『アリ・ダンス』で回避し続けるものの、これでは下がることができない!俺をここで足止めするのが目的か!
「くっ・・・『イザナギ』!」
動けない俺の代わりにイザナギを後方に向けて動かす。天龍達も敵がどう動くのか気づいたのか、動揺した表情をこちらに見せる。やらせはしない!
「イザナギ!『アグネヤストラ!』」
彼女たちに向けて進む敵に向かって再び、『アグネヤストラ』を放つ。降り注ぐ隕石が数体の敵を捕らえるものの、三体は取り逃がしてしまう。くそ、彼女たちと距離が近い!再び放つと巻き込まれてしまう!
苦し紛れにイザナギの武器を投擲して、一人を 串刺しする!が、残る二人は取り逃がして・・・。
「電ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なのです!」
天龍が叫ぶと同時に二人が各々の武器をを取り出して乱射する!放たれた単装砲と連装砲が、一斉に敵に向かって火を噴き、敵の体を揺らす!やがて二人の攻撃に耐え切れなくなったのか、片方が仰向けにひっくり返って海の底へと『轟沈』していく。
「夜戦で火力が上がるのはそっちだけだと思うんじゃねえ!このずんぐりむっくりが!!死に掛けの雑魚だと思って喧嘩売ったのが・・・痛ぅ!?」
「天龍さん!?」
上体だけをを起こしながら、天龍が中指を立てて啖呵を切るものの、痛みですぐに体を抑える。が、最後の一人は健在で持っている武器を彼女達へ向ける。電が天龍をかばうようにすぐに砲を向けるも、『カチン』という弾切れを知らせる無慈悲な金属音が響いて、電のその顔を蒼ざめさせる。そしてその隙を逃さず敵が自分の砲の引き金を引・・・。
ズバァァァァァァ!
「・・・よく耐えた、二人とも」
砲撃が発射される寸前のところで、自分の武器を回収したイザナギが急接近して敵を袈裟切りにする。砲撃を加えることが適わなかった敵の体がゆっくりと斜めにずれて、二分割されたその身を海中に沈めていく。・・・危ないところだった。いつのまにか覚悟を決めて瞳を閉じた電がいつまでもやってこない衝撃に疑問が浮かんだのか、再び視界を開いて数秒間ぽかんとした後、状況を飲み込んだのか安堵のため息をつく。
「あ、ありがとうございます!」
「これでもう大丈夫な筈だ!残りは任せろ!!」
「なのです!」
こちらに手を振る電。あどけないその姿に、まるで菜々子に手を振られたような錯覚を感じて興奮で叫びだしそうになるが、そんな場合じゃないことを思い出してすぐに敵に向き直る。
「・・・イザナギ!」
叫ぶと同時に、イザナギが二人の体を左腕の脇に抱える。「うおっ!?」だの「きゃあ!?」だの声が叫ぶ中、イザナギが開いているほうの右腕を空に向かって伸ばす。
「な、何しやがる!?き、傷に障って痛いじゃねえか・・・!」
「すまないが、このままだと二人が巻き込まれそうになるからな・・・」
「は?」
天龍が訝しげな表情を浮かべるのをよそに精神を集中する。
イザナギの『魔力』が最高潮まで高まると同時に空が突然荒れ、敵味方全員が疑問と戸惑いで顔色を染めながら空を見上げる。
「・・・?そ、空が?」
「そんな、さっきまで雲ひとつなかったのに?」
「・・・さっきは彼女たちが電流に巻き込まれないように威力を抑えが・・・」
『今度は』手加減しない。
「・・・『マハジオダイン』!」(カッ!)
叫ぶと同時に、『艤装』をつけたまますばやく海の中に潜る!高電圧の雷が、遠くにいるリーダー格2人に直撃する。それにあきたらず電流は伝導率の高い海水を伝わって、俺の比較的近く他の2体にも伝わり、その威力に耐え切れず2体は黒こげになったその巨体をゆっくりと海に沈めていく。海中で2体が沈んでいくのを確認すると素早く海の上に上がり、苦心しながらも海の上に上がる。
「うまくいったか・・・」
海に落ちた落雷は海中にまで感電するかというと、意外にもそうではない。海面近くにいたり、部分的に海面から外に出ているのならともかく、落雷クラスの電流でも海中までは感電はしないらしい。海面をつうじて四方八方に散ってしまうからだ。残る懸念は『艤装』をつけて海面に浮いている二人・・・特にに半分『寝そべっている』状態の天龍は危険だと判断、イザナギに掴まって貰って空へと退避していたという訳だ。
「・・・『マハジオダイン』をモロに食らってまだ生きているか、たいした生命力だな」
もっとも、『イザナギ』自身の魔力が高くないことと、『真理の雷』ほどには威力がないのは確かだが・・・。
電流を受けて相当なダメージを負ったリーダー格二人が、弱弱しくこちらに顔を向け、すぐに顔を驚愕に染める。顔を俯かせている俺に対して『いつの間にここまで接近されていたのだ!?』とでも驚いているのだろうか?それに構わず淡々と告げる。
「・・・確かに兵法においても、伏兵を用いたり弱っている敵から狙ったりするのは基本だ。お前たちはそれをやってのけたんだから頭良いんだなとは思うよ。加えて艦隊の指揮もきちんと取れているし、統率に対してもむしろ、俺がその方法を教わりたいくらいだ」
手に持っている剣に力を篭める。ゆっくりと二人に向かって近づくと、ビクリ!と、二人の指揮官の体が揺れて僅かに後ずさる。
「どうした?『艦娘』でもない唯の人間の俺を、何をそこまで恐れているんだ?お前たち『深海凄艦』にしたら人間なんて虫けらみたいなものなんだろ?」
こちらが近づく度に、2人の『深海凄艦』がゆっくりと後ずさっていく。その金色に輝いたその瞳を恐怖に染めながら・・・。
「・・・なあ知っているか?神話において伊邪那岐(イザナギ)は、かつて自分の妻伊邪那美(イザナミ)を殺された怒りと悲しみから、その殺した張本人である迦具土神(カグツチ)を天之尾羽張(あめのおはばり)という十束剣(とつかのつるぎ)をもって切り殺したらしいんだ。ある意味自分の息子みたいなものに対してだぞ?それほどに伊邪那岐の怒りは凄まじい物だったんだろう・・・」
淡々とつぶやきながら、何の抵抗もなく殺されていく『艦娘』と・・・自室と墓場で見た電と天龍の顔を想像する。所詮俺は部外者だし、彼女たちの顔も見たこともない。それを悲しむ義理なんか本来俺にはないのだろう・・・だが。
「ああ、何のことだかさっぱりだったか?すまない。じゃあ、わかりやすく噛み砕いて説明するとだな・・・」
ようやくそこで俺は顔を上げる。ふつふつとした感情を心のうちに溜めながら。
「お前達がどんな目的で自分たち以外の者を攻撃しているのなんか、ここに着たばかりの俺にはわからない。だが、彼女たちにとって大切な人を・・・『絆』を・・・ことごとく奪っていった彼女たちの元『提督』や、傷ついている彼女たちをよってたかって集団で殺しにかかっているお前達を許すことができないっていうことだ・・・!」
最高潮に溜まった怒りを恐怖している2人にぶつける。
「いいか?一度だけ忠告してやる。俺の言っていることはなんとなく態度でわかるな?これに懲りたら二度とあの基地に、彼女たちに近づくな・・・これが俺にできる最後の良心だ。この言葉の意味をわかっていながらまた同じことを繰り返すというのなら・・・!」
言い終わるか終わらないかの内に、持っている剣に電撃を流す。すぐに刀身がバチバチと大きな電撃音を立て、まばゆいばかりに発光する。
瞬間、白髪の長髪の方が耐え切れなくなったのか、自分の持つ砲をこちらに向けて引き金を引こうとする。
が・・・瞬間、どこからか斬撃が飛んできて彼女の体を両断する。いつの間にかこちらに戻ってきた『イザナギ』が白髪に対して『ブレイブザッパー』を繰り出したのだ。それに気づかないまま、白髪の『深海凄艦』は恐怖した表情のまま海底へと沈んでいった・・・。
残された黒髪は沈んだ仲間を驚きの表情でそれを見届け、すぐにこちらに視線を戻す。相変わらず怯えた色を金色の瞳に映しながら、さながらこちらを化け物でも見るみたいにしている。
やがて何を思ったのか、砲も使わず、逆上するようにこちらにつかみかかる黒髪。が、刀を持っていないほうの腕で黒髪の顔を鷲掴みする。普段なら女性に対してこんなことをするのは失礼どころの話ではない、心に感じないものはないと言えば嘘になる・・・がここでやめるわけにも行くまい。
「そうか、それがお前の選択か。後悔するなよ?」
つかんでいる手を思い切り前に押し出し、体勢が崩れた隙をついて、剣を方の高さまで持ち上げ構える。
「ペル・・・」
そのまま一文字に敵を切り裂き・・・。
「・・・ソナ!」
真上に待機していたイザナギが雷をまといながら上から敵を切り裂く。黒髪は白髪と同じように恐怖を浮かべた表情で十文字に体がバラバラになりながら海の底へ沈んでいった。
「・・・俺の、勝ちだ」
最後の60体。視界の周りには、もはや敵は浮かんでいなかった。
はい、番長無双の巻・・・でした。
見ればわかるとは思いますけど、このイザナギは強化されたイザナギ、所謂事故ナギバージョンです。P4Uの技も使ってしまいましたが今のところ披露したスキルは・・・。
アリ・ダンス チャージ アグネヤストラ ヒートライザ マハジオダイン ブレイブザッパー
の六つです。スキルカード?もちろん使いましたよ。残り二つはいずれと言うことで・・・あ、『テトラカーン』と『マカラカーン』は事故ナギのスキルではありません。悪しからず。
ちなみに、電撃ハイブースターや武道の心得や○○無効、吸収はつけていません。ゲームやるのならともかく、こういう小説の形をとるとあまり意味がないかな?と思いまして。こらそこ、最初から天龍と電を抱えて『マハジオダイン』使えばあっさり勝負つくんじゃね?とか言わない。お約束ですよ。
えっ何?アリ・ダンスはスキルカードで無いじゃねーか・・・だって?
そんなもん地獄の○×ゲームをしたに決まってるでしょうが!仁王立ち?そんなもん邪道じゃ!回避できないじゃないですか!アイアン・ボトムでも同じこと言えんの!?
ベルベットルームで鼻とマーガレットがげんなりするぐらい繰り返して、菜々子との日曜日まですっぽかして!ついでにコミュもさぼって!事実が発覚して特別捜査隊のメンバーから総攻撃食らった後もきっと番長は後悔してません!
・・・菜々子から寂しそうに『お留守番、できるよ?』と言われたときは、完二の影と再戦したほうがマシと思えるようなショックを受けたでしょうが・・・。
まあ、とにかく!アリ・ダンスは習得したと言うことで!
悠「敵の攻撃を避け続けるなんて、ハイカラでロマンを感じると思わないか?」(キラン♪)
陽介「とりあえずお前は皆に死んでお詫びしろ特に菜々子ちゃん」