鳴上悠と艦隊これくしょん   作:岳海

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なるべく急ぐといったな、スマン、ありゃ嘘だ。しかも短いです。
あとお陰様でお気に入りが300を突破しました!ありがとうございます!


第十話 Sugomen ship of the deep sea  前編

 不意に足が止まる。正確には身につけている艤装が走行を止めるという言い方のほうが正しいのか?まあ、どちらでもいいだろう。

 基地を飛び出して当てもなくただ彷徨っていたとき微かに、耳で…鼻で、何かを捉える。波と風の音で分かりにくいが、それ以外の音が聞こえる。

 これは…爆発音?

 「誰かが…戦っているのか?」

 

 

 

「おっと」

 海上を走りながら、危うくバランスを崩しそうになるのを何とか堪えて体制を整える。

「…大丈夫ですか…?」

「ああ、平気だ」

 すぐ傍の電が心配そうにこちらを見つめているのを、『なんでもない』という風に笑顔で手を振って安心させる。

 やっぱり、慣れるのにもう少し練習が必要そうだな。去年仲間達と一緒に滑ったスキーのようにはいかないらしい…陸での戦いと違って重心のバランス関係は勿論のこと、普段艦娘達が当たり前のように出来ることも、同じような手間で出来るようにしないと…でなきゃ、彼女達を守ることなんて出来ないからな…3日前に着けていたのと同じ『艤装』に視線を落とし、そしてすぐに隣で視線を俯かせている電を見ながら思う。

 それにしても、人間では装着できるはずの無いこの艤装を装着できるのは『ワイルド』の力が作用しているお陰だと仮説を立てたけど…もしその通りなら、失われたのはイザナギ以外の『ペルソナ』…もしくは『アルカナチェンジ』そのものだけで、まだ俺に『ワイルド』の力“自体”はまだ残されているということか?少し安堵すればいいのか、複雑な気分だが…いや、それでもまだ謎が残っているのには変わりない。本当に俺が眠っているこの3日間何が起こったんだ?相変わらず謎が尽きない…本当に、こういうときに『ベルベットルーム』が使えないのが痛いよな…。

「…はぁ…」

 隣で電が、相変わらず浮かない表情で小さくため息をついているのが聞こえて、思考を中断して電の方を向く。水飛沫…いや海飛沫?ともかくそれを五月蝿いくらい撒き散らしている割には、やけにはっきりと聞こえた。

 

 

「…不安か?」

 返答は無かった。俺の声が聞こえているのか聞こえてないのか…もっとも、彼女の表情だけで察するには難くなかっけれど…。

 本来なら自分ひとりで天龍を探しに行こうかと思ったけれど、電にせがまれて彼女も同行することになった。幸い、先程天龍が見つけてくれたという燃料があったお陰で、2人分の艤装を動かす量ぐらいなら何とか賄う事が出来たので、自分の傍を離れないことを条件に許可を出した。彼女も天龍と話したいことがあるだろうからな…。

 が、実際会った時に何て言おうか迷っているのだろう。話でしか聞いてないけど、かなりの大喧嘩だったって言うからな…。

「電は、天龍に会ったらなんて言いたい?」

 視線を前に戻してから、電に問いかける。念のため、先程よりも声を大きく…しかし、威圧的にならないように気をつけながら。

「…何を考えているのかは大体予想がつく…一回口に出して吐き出してしまえば少しは頭の中がすっきりして考えやすくなると思うぞ?俺でよかったら聞いてやるぞ?聞かれたくなかったら耳を塞ぐが。『耳を閉じてな』ってな感じで」

「……」

 やっぱり返答は来なかった。強張った肩の力を抜くつもりだったんだけど…どうやら思っているいるより深刻だな…ま、原因の一端が俺にもあるだろうからお前が言うなって気持ちもあるのかもしれないけど…だからこそ、多少は乱暴な言葉でもいいから、何か言って欲しかったんだけどな…。ま、電の性格を考えるとそれは無いだろうけれど…。

 

 

「…これは俺の予想なんだけどさ…まあ、聞き流してくれてもいいんだけどさ」

「…」

「案外、天龍も今の電と同じ気持ちなんだと思うんだ」

「…!?」

 予想だにしない言葉だったのだろう、電が目を見開かせてこちらを向く。

 

「今頃、どうやって電を含めて、基地にいる皆にどうやって謝ろうか…どうやって接すればいいんじゃないかなと悩んでいるんじゃないかな?と言っているんだ」

「っ…天龍さんが…?そ、そんな…!」

「そんな驚くほどか?まあ俺の勘も入っているけどね…あとはわずかな心当たり…といったところだな」

 落ち着けと言わんばかりに、若干興奮気味の電を宥める様に両手を向ける。

「これは、俺がよく知っているある人の話なんだけどな、ある田舎町で亡くなった奥さんの忘れ形見である実の娘と二人暮らしで刑事をやっていて、正義感が強くて生真面目で、情に厚く優しい性格している…まさしく父親としても、警官としてもまさしく理想の人だった。…もし俺が家族をもったなら、こういう父親になりたいなと思っているんだ…」

「…」

「けれど、やっぱり警察官として多忙なことと『ある事件』の解決のために躍起になるあまり、一人娘や家庭にあまり構うことができずに、不仲とはいかない物の、気まずい関係になっていることを悩んでいたんだ…ある事情でちょうどその人の家に居候していた俺にそのことを零していたよ…元々不器用で頑固なところがあるから…あ、内緒だぞ?」

「…はぁ」

 返答に困りがちな電に対して、人差し指を口の前に持っていき、悪戯っぽく笑いかける。もっとも、会う機会が

あればの話だけど…無いと思うけどな。 

「…気のせいなのかな?その時のその人と今の天龍が、重なって見える時があるとなぜか俺には思えるんだ…」

「…?」

「不器用で頑固だから、大切な人達相手だからこそうまく話せないところとか…これも俺の予想だけど今の自分の立場に悩んでいるところとか…」

「立場に…悩む?」

 電の疑問にとりあえず頷く。

「詳しいことはひとまず言えないけれど…もしそれが当たっているとしたら…多分それは、俺の所為だと思うから…」

「へ?」

「そのことは、あいつに会ってから話すとするよ…」

 まだ何か聞きたげな電に、半分ぶった切るように話を中断させる。恐らくこの予想が当たっているとしても当たってないとしても、今言うのは良くないと判断する。

 

「…人と人との関係って言うのは、いわゆる一つの『壁』…もしくは『仮面』のようなもなんかじゃないかと俺は思うんだ。自分にとって知られたくない内面や醜い部分を隠す為に、傷つくことを恐れるあまりにそれらで自分自身を隠してしまう…確かに、壁に囲まれて生きるのは楽かもしれない…けど、いつまでも引きこもっていてはそれじゃあ何にもならない…何も変わりはしない。怖くても、いつかはその壁を内側から壊すことが必要なんだと俺は思う…もし壁が硬ければ、誰かに外側から手伝ってもらったっていい…辛くても、怖くても勇気を振り絞ってさ…そうすればきっと、そのありのままの自分を受け入れてくれる人たちがいてくれるからさ…そうして、自分を支えてくれる本当の仲間って奴に出会えるんじゃないかな…その時のその人も、今の天龍も、きっとそれをどこかで望んでいたんじゃないかと俺は思うよ?」

「…」

 話の途中で、連立方程式の問題を突きつけられた小学生のようにポカンと口を開く電。

「…と、少し難しい話だったか?我ながら照れくさかったりして…ようするに、こういう時は頭ひねって、あれこれ理屈つけてゴチャゴチャ考えても仕方ない。多少乱暴でも、体当たりで素直に自分の気持ちをぶつけるのが一番だと俺は思う!」

「…はぁ」

「なんだったらこう…胡坐をかいて『プラズ…じゃなくて電様に、話してみな!』ってな感じで場を仕切るように言ってみるとか…まあ、極端な例の一つだけど…」

「……」

「……」

 びしりと!指を突きつけながら自信満々に言い放つ状態のまま固まって…空気が若干白けるようなものを感じたのを気のせいだと思いたい。

「…ふふ」

 が、次の瞬間には、可笑しそうに電が笑う。

「…面白かったか?」

「とっても、分かりやすかったのです…!」

 褒められているのか、呆れているのかどちらともとれる笑い方だったが、少なくともまた笑顔を見れて良かったと思おう。やっぱり、小さな子には笑顔が似合うからな。

「…今のお話のその人は、自分が思い描いた結果になりましたか?」

「ああ、あることを切欠にようやくお互いが話し合うことが出来てな、その時から、2人はようやく本当の親子になれたと嬉しそうだったよ」

「…私たちも、そうすることが出来ますか?」

「勿論だ、俺が保障する。俺だって出来たんだ、電や天龍だって出来るよ。きっと」

そう、本当の親子になれた、叔父さんと菜々子のように…。

後は、俺とのわだかまりをどうするかだな。ま、やるしかないな。

 

 

「…本当に、何から何までお兄さんにはお世話になりっばなしなのです」

「小さな子の為に、年上が助けるのは当たり前だ。気にするな」

「…」

 

(…本当に残念なのです…お姉ちゃん達にも、龍田さんにも、本当なら会わせてあげたかったのです。もしこの人がもっと早く来てくれたなら或いは…)

 

「電?どうかしたのか?」

「…は、はわっ!な、なんでもないのです!」

「?」

 

(けど、気のせいかな?お兄さん、さっきから何処か無理して明るく振る舞っているような…さっき確かめたい事があるからって出てってから、そんなような…考えすぎかな?)

 

「あの、お兄さん?」

「ん?」

「さっき、確かめたい事があるからといって出て行きましたけど、それは…」

 

 

 

 

ドゴォォォォォン!!!!

 

「「っ!」」

 爆発音にも似た何かが轟き、思わず電と同じタイミングで振り返る。

 視線の先で、煙のようなものが上がっている。誰かが戦っているのか!?

「天龍さん…まさか!?」

 俺と同じく嫌なイメージを感じ取ったのか、電が目を見開かせて向こう側を見る。

「……ここからあまり離れていないようだ、電!」

「っ!なのです!」

 互いにタイミングを合わせたように頷きあい…。

 

「イザナギ、ヒートライザ!!」(カッ!)

「はわっ!?」

 驚く電を他所にイザナギを呼び出し、ヒートライザをかける!これで少しは、スピードが上がるはず!

 

 

 

(…天龍!)

 

 頼むから、また一人で突っ込んで死に掛けるとかするなよ!お前とは腹を割って話したいことがたくさんあるから!

 

 

「とばしていくぞ!振り落とされないように!」

「あ、あの!電を抱えて何を…はわぁぁぁぁー…!!」

 

本人に了承を得ないまま、電を小脇に抱え全速力で爆心地へ急ぐ!

 

 

 

 

一方、例の爆心地。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ここまでの差があるだなんてっ…!」

 忌々しげに敵のほうを見据え、負傷した右腕を抑えながら吐き捨てるように言う。

 現在、ヌ級とホ級がそれぞれ一体『中破』、残りは『小破』かもしくはそれ以下の損害…つまりほぼ無傷同然。いつもならフラグシップやエリート相手にたった一人で、他の重巡と比べて旧式である自分がよくここまで戦えたものだと思いたいのだけれど…その代償にこっちはかろうじて動ける程度の損傷…大体『中破』と言った所だろうか…目的が敵の全滅ではないとはいえ、この光景にはさすがに心が折れそうになるな…。

 今の所、10分くらいは時間は稼げただろうか?不幸中の幸いというべきか、今回は足の遅い空母や戦艦勢がいなかったから他のメンバーの足は速いはず、今から敵が走って追いかけても恐らく大丈夫だと思うのだけれども…。

 敵艦隊の旗艦格であるヲ級と目が合う。持っているステッキの先端を海面につけ、相変わらず何を考えているか分からない表情でこちらを見据えている。…いや、もしかしたら『面倒な奴だ』と不機嫌に考えているのだろうか?なんとなくそう思うのは気のせいだろうか?気のせいだとしても、旧式である自分に対してそんなことを思っているのなら、ざまあみろといってやりたくなるものだ…。

 

 

 

 

「図二…乗ルナ…」 

 

 

 

「っ!?」

 気のせいか、今、ヲ級が何か喋ったような…!?聞き間違い?僅かにヲ級の口が何事かを喋ったような…!?

 ありえない、鬼や姫といった上位クラスならともかく、深海性艦が喋るなんて聞いた事も無い!絶対今のは気のせい…その…はず!

 面食らう自分を他所に、ヲ級の視線が二体のエリートのル級に向かうと今度は、右手をル級に向けて、何事か短くぶつぶつ呟く…。

 一体何をしているのだろう?まさかステッキを持ったからといって魔法使いみたいに魔法でも唱えているつもり…。

 そう思った、矢先のことだった。

 

 

ピカァァァ!!

 

 瞬間、ル級が何か光のようなものに包まれる!暖かささえ感じるような強めの光で、思わず

「っ!?こ、今度は何!?」

 訳が分からない、さっきから何が起きている!?光は一瞬で止み、次の瞬間には外見上は特に変化の無いル級が

そこに立っていた。

 

「…ヲ」

 

 ヲ級がこちらに向き直って指を突きつける。まるで行けと言わんばかりに。命令を受諾したらしいル級が頷き…。

 

 

ブンッ!!

 

 

「っ!が…はっ…!?」

 次の瞬間には、腹部に強大な衝撃を感じたと共に、自分の華奢な体が浮かんでいるのが感じる。

 突然の事に混乱を生じながら目の前を見ると…!

 

「そん…な…!?」

 目の前の衝撃の原因――離れたところにいたはずのル級が、腕の巨大な艤装で全力フルスイング気味にわたしの体を殴りつけていたのだ…!

 突然のことで防御する暇もなく、エリートの戦艦クラスのパワーで叩きつけられた私の体は、まるでボールのように吹っ飛び…しかし艤装のお陰で沈むことも無く、無様に海面の上を転がっていた。

 

「グゥ…!ゴホッ!ゴホッ!」

 

 海面の上に座り込みながらも、喉からせり上がるものを耐え切れずに咳き込む。若干の痰と一緒に吐き出された血反吐が、海面を赤く染める。

 

 

「ハァ…ハァ……どうして?」

 

 腹部の痛みを堪えながらも、若干の涙で歪んだ視界で殴りつけた張本人の顔を悔しげに…それ以上の困惑で見上げる。が…。

 

 

 

ズドォォォォォォン!

 

 

「あぁ…!?」

 

 今度は右側から来る強い衝撃で自分の体が吹っ飛び、またもや自分の体が吹っ飛び、背中から海面に倒れこむ。

 

「痛っ…!?」

 艤装のついた右肩を押さえながら起き上がり、吹っ飛ばされた方向を見てみる…。

「っ!?そ、そんな…!」

 先程のル級とは別の…もう一人のエリートル級が、先程まで私が立っていた地点で無様に倒れている私を見下ろしている。

 まただ。最初のときもそうだった、しかし…そんな。それは受け入れるには少々可笑しな話だった。

 先程まで…明らかにざっと10歩分は距離の離れていた筈のル級が…自分が瞬きをした瞬間に、まるで瞬間移動でもしたかのように自分の目の前まで接近して攻撃してきたのだ。

 あり得ない…確かに『金剛型』のように高速で移動する戦艦は存在する…しかし、このル級もそうであったか?それにしても、こんな速度で移動するなんてあり得ない。『金剛型』だって、こんな速さを出すなんて…。

「これじゃあまるで、駆逐艦…それも『島風』並みの…もしくは…」

 と、またもやル級が急接近して、またもや無慈悲な一撃を繰り出そうとするのを見て思考が無理やり中断される。

 相変わらずこの謎のスピードも、わざわざ肉弾戦を仕掛けてくる意味も分からない…が、今度はやられっぱなしはいかない…!あらかじめ外しておいた肩の艤装を盾代わりにしてル級の攻撃を防ぐ!直撃は防いだものの、それでも『古鷹』と自分の名前が記された自慢の艤装が歪む程の衝撃だ。もし人間ならこの衝撃だけでも、両手の腕が使い物にならなくなるだろう…。

「重巡を…」

 すかさず、残っている左肩の連装砲を、僅かに目の前のル級に向け…

「舐めないで!!」

 至近距離で放たれた砲撃が、ル級の顔面に直撃する!

「ああああああ!!

 飛び散る砲火に私の髪がちりちりと僅かに焦げ付くのにも構わずにひたすら乱射する!いくら戦艦でも、これだけの砲撃を浴びて無事ではいられないはず…っ!?

 砲撃の最中、突然後ろから体を引っ張り出される。驚く前に、しまった……!と頭の中で浮かべながらも後ろを見つめる。予想通り、もう一人のル級だ!目の前の敵に夢中になって、もう一人の方を忘れてしまうなんて…!そう思った次の瞬間には後ろの襟首を掴まれながら地面…いや、海面に背中から叩きつけられそのまま圧倒的な力で押さえつけられる。 

「ぐぅ…!」

 背中に表面張力を叩きつけられる衝撃が襲う。地面ほどではないけれど、かなりの衝撃だ。ちょうど私の背中程の大きさの張り手を喰らったかのような痛みだ…思わず声が漏れてしまった。

 痛みを堪えながら視界を上に向ける。たった今私を地面に叩き付けたル級。そして…。

「…!」

 いつの間にか、離れて成り行きを見ていた筈のヲ級が、2体ずつのヌ級とホ級を伴って深海凄艦特有の冷たい表情でこちらを見下ろしていた。こちらを射抜くように見つめる不気味な金色の瞳に、緊張で思わず息を呑む…。 

 こいつら、さっきから私で遊んでいるというの?もし私を本気で殺すつもりならル級に肉弾戦を仕掛けさせないで、自身やヌ級の艦載機なり、ル級かホ級の艦載機なりでさっさと止めを刺せばいいのに、じわじわと…私を嬲るみたいに…。このヲ級の私を見下ろす金色の瞳に篭められた感情と同じぐらい意味が分からない…。そもそも深海凄艦がそんな行動をとるなんて…。

 考えれば考えるほど意味が分からない…それに、分からないことといえばそう、さっき…。

 突然、ヲ級の隣で何か大きなものがぬっとやってくる。私とヲ級が同じタイミングでその隣のものに視線を向ける。

「…!」

 やってきたのは、ホ級に担がれながら先程私が連装砲を食らわせ変わり果てた顔をしたル級の片割れだった。が、先程の私が与えた顔によるダメージの所為で見る影も無く、撃った張本人である私が言うのもなんだが、思わず顔を背けたくなる悲惨さだった。形容しがたいほどの大火傷を負ったその顔が、ジロリとこちらを睨んでいるのを見て、頬に冷たい汗が流れるのを感じる。

 対称的に隣のヲ級はつまらなそうに、変わり果てたル級を一瞥する。視線に気づいたル級がヲ級に視線を向けてどこか懇願するような視線を向ける。

 …まさか、また何かするつもり!?

 先程ル級に施したとされるさっきの謎の光…あれが何か分からないけれどあの光に包まれてからル級の動きが段違いに上がっていた。あの光は本当に一体…。

 いや、今はそれよりもあの光をもう一度やられたらまずいということだけはわかる…!もし、あれをもう一度やられたら…。

「ぐ…この…!…うぅ…!」

 なんとか力ずくで起き上がろうにも、もう片方のル級に押さえつけられて動けない…!いけない…そう思っているのに…。

 ゆっくりとヲ級が傷ついたル級に近づいていく。傍まで来たときに持っていたステッキを振り上げる。それと同時に背筋が冷たくなるのを感じて…。

 

 

 

 

 

 

 

ボォン!ボォン!ボォォン!!

 

 

 

 ステッキを振り上げた状態のヲ級の目の前で爆発音と共に、ル級とホ級の体が吹っ飛ばされていく。

 

「えっ…?」

 

 思わず間抜けな声が自分の口から漏れる。吹っ飛ばされたル級とホ級は、その一撃が致命傷になったらしく数m先でうつ伏せに着水した後、そのままの状態で2人が物言わぬ状態で『轟沈』していった。その様子を見届けたヲ級が振り上げたステッキを下ろし、今起こった様子に困惑しているのか、ただ何することも泣く2体が『轟沈』していった地点をただ黙って眺めていた。後ろで付き従っているヌ級も、私の体を抑えつけている残ったル級も、ヲ級とシンクロするようにその地点をただ黙って見つめていた。…無論、私もだが。

「今の…は…?」

 

 

 

 

 

 

「深海…凄艦…!」

 

 

 

 

 

 あらぬ方向から突如響く低い声に、その場の全員の視線がその方向に向く。私も唯一動く首を何とか動かす…。

 

 

 

「え…!?」

 

 その姿を見たとき、驚きと戸惑いの声が私の口から漏れた…。

 

「テメエラは…」

 

 

 

「そんな…あなたは・・・!」

 

 

 

 

「オレガ…消す!」

 

 

 

 

 

「…天龍!?」

 




うーん、とある本編のキャラと天龍を重ねていると言いましたけど、ちょっと強引だったかな?
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