鳴上悠と艦隊これくしょん   作:岳海

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すいません、かなり間隔があきました…だがまだ生きている。
あと、文章おかしかったらすいません、すいません(大事なことなので2ry)


Sugomen ship of the deep sea  中編

 誰もその場を動こうともしなかった。目の前で仲間を2人も殺されたにもかかわらず、誰も咎めも、見向きもしない。最後まで助けを求めるように手を伸ばしながらゆっくりと沈んでいくル級とホ級の体がゆっくりと、海の底に沈んでいくのを、傍にいたヲ級ですら見向きもしなかった。

 海鳥の鳴き声だけが、沈んでいく二体を惜しむかのようにその場に響く。

 

 

 

 

「て、天龍…!あなた天龍よね!?」

「…ア?」

 押さえつけられた状態のまま問いかける私を見てどう思っているのか、不機嫌そうに返事を返す。目はどす黒くて若干纏う空気に違和感を感じるものの間違いない、かつての三川艦隊の戦友の一人天龍だ!

 

「…お前、古鷹…カ?久しぶりだナァ…?」

「そ、そうよ!そうだよ!古鷹だよ!天龍こそ、な、なんでこんなところに?それに…っ」

 

 それに、という言葉の続きを搾り出そうにもその言葉がうまく出てこなかった。なにしろさっきから色んなことが起こりすぎてどういう返事を返せばいいのか。予期せぬ旧友との再会に喜べばいいのだろうか?それとも驚けばいいのか?

 

「…お前、なんだソレハ…?」

「へ?」

「何でソンナ奴に組み伏せラレていルンだ?それにその傷ハ…?」

「えと…これは…」

 

 どこかぎこちない言葉を使い、驚きの様子で天龍が目を見開く。

 なんだろう?今の私を見て心配してくれているように見えるんだけど、やっぱりなにかおかしい…。折角古い仲間と再会したというのに、心が落ち着かない…。

 まるで、天龍から目を離してはいけないような…。

 

 

 

 

「ヲ…」

 

 

ジャキン!

 

 ヲ級の声と共に、私の後ろで主砲を構える音がする。恐らくル級が連装砲を後ろから突きつけているのだろう。改めて私の命が奴らに握られていることを思い出して背筋が冷たくなるのを感じ…。

 

 

 

「ヲ…」

「っ!」

 ヲ級が手を上げてそれを振り下ろし…。

 

 

 

 

ドォォォォォォ!!!!!!

 

 

 

 

 爆発が、私を襲うことは無かった。

 

 

 

 

「…何してやがルンだ?テメエら?」

  

 天龍が艤装を構えて私の後ろ目掛けて構えている。後ろから押さえられていた圧力はもう感じない。代わりに感じるのは、後ろに感じていたはずの気配が、明らかにいなくなったということだけ…。

 天龍が…助けてくれたのだ。

 

 

「て、天龍…?」

 

 

 しかし、私の口からは感謝の言葉は出てこなかった。出そうとした言葉が、喉元まで競りあがってきて、そのままどこかに消えていってしまったのだ…轟沈してしまったル級のことなど些細なことに思えてきて、今すぐにでも忘れ去ってしまうぐらいに…。

 その原因は、今の天龍を見れば一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

 天龍の身に纏っている艤装は、かつて見慣れた『天龍型』のものではなかった。いや、そもそも艦娘としての艤装からもかけ離れたものだった。

 両腕全体を覆っている艤装はまるで巨大なグローブを連想させ、一瞬天龍の腕が巨大化して黒く変色しているのかと勘違いしそうになった程だ。辛うじてそうではないと気がついたのは、魚雷発射管やら連装砲やら連装砲塔など、戦艦級を思わせるような武装を身につけ、いや、もはや覆っているという表現が近いその姿は、まるで敵対した相手を徹底的に潰してやるといった意思表示を、言葉にしなくとも見るものすべてに感じさせている。

 事実、そうやって私の後ろにいたル級を『そうやって』轟沈させたのだ。構えている連装砲塔から立ち上る硝煙がそれを物語っている。

 

 

 

 

「…俺ノ仲間に…」

 

 

 小さく、呟き、そして…。

 

 

「俺ノ仲間に手を出してんじゃネエよぉ!!!この深海のゴミ屑共ガァよぉォォ!!!」

 

 艤装を構えたまま、唾を吐き出しながら深海凄艦に向かって激しく罵る。心なしか、濁りきった瞳にますます狂気が帯びている。ようやく突如乱入してきた天龍に対して警戒心を感じ取ったのか、ヲ級の盾となるようにヌ級とホ級が集結する。

 

 

 

 

(あ、あのエリートル級を一撃轟沈!?信じられない!何て威力なの!?)

 

 

「…立てるカ?古鷹」

「っ!?て、天龍…!?」

 

 いつのまにかぬめりと接近してきた天龍が、相変わらず座り込んでいる私に向かって無骨で巨大となった手を差し伸べる。一瞬その手を取っていいのか判断に迷ったけれども、やがて恐る恐るその手を掴んで立ち上がる。

笑顔をこちらに向けていた。どこか正気を置き忘れてきたような笑顔ではあるのだが…。

 

 

「あ、ありがとう…ところで天龍、その姿は…」

「大丈夫だ古鷹ァ」

「!?」

「今度こソ、アイツラに遅れはトラネエ…だから…もっと俺ヲ頼っていいんだゼ…?」

「……」

 ニヤリと、笑顔をこちらに向ける。が、本人には失礼だが私の胸の内は不安でいっぱいだった。たとえ本人が本当の善意だったとしてもだ、彼女の今の笑みからは暖かさというよりも、身が震えてしまうほどの恐怖を感じるのはなぜなの?しかも、こちらの質問を華麗にスルーしたし。

 一体彼女のその姿、何があったのだろう?三川艦隊として共に戦った時から今日に至るまでの間、何があったというの?

 

「天龍、貴方…」

 

 

 バシャああアン!!!

 

 

 

 天龍に気をとられている内に、何者かの気配を感じる!天龍から敵のほうに向き直り、そしてすぐさま目を再び見開かせる!

 さっきまでヲ級の傍にいたフラグシップ軽巡ホ級2体が、こちらの目前に近づいて自身の持つ砲塔をこちらに向けていた!それも天龍に気をとられて隙だらけで、中破している私を優先的に狙ってだ!戦闘中だというのにまたしても自分の迂闊さに愕然としたくなる!

 

 

「しまっ…」

 

 慌てて残っている艤装の砲を敵に向けようとするも、敵のほうが早い!後の祭り、そんな言葉が頭に浮かんだ後、更なる負傷を覚悟すると同時に目を瞑り…。

 

 

 

 ドバァァァァァァァァァァァ

 

 

 

 

「さセねえヨ…」

 天龍の声が聞こえると同時に、恐る恐る目を開く。

「っ!て、天龍!」

 

 半分驚愕するような、半ば怒鳴り声に近いような叫び声を上げる。硝煙を体中から立ち昇らせながら、天龍が両手を広げた状態で私の盾になっていた。

 軽巡とはいえ相手はフラグシップ、しかも本来天龍自身(天龍に限らず軽巡もなんだが)も装甲があまり高くないことも相まって、本当なら一撃大破していてもおかしくないはずなのだ。ひとえに大破を免れているのは、あの見慣れない艤装のお陰なんだろうか?

 それでも、さすがにあの二体の攻撃を受けて唯では済まなかったらしく、体の所々が破れて砲等もいくつかひしゃげていたのだが…。

 考えをめぐらせている中で、ホ級が次の攻撃を加えようと身構えている。

 

「て、天龍!大丈夫なの!?モロに敵の攻撃が…」

 最悪の状況が頭の中に浮かんで、私の盾となった天龍の肩を思わずガシリと掴む。普段私達が纏う金属性の艤装とはどこか違う質感と冷たさが手の内に感じる。

「天龍、折角の再会だけれど貴方だけでも逃げて!ここは私が何としてでも…」

 私の声は聞こえているはずなのに、返答は返ってこない。

「聞こえないの?あっちまで行けば私の撤退した艦隊と合流できるかもしれない!だから貴方は…」

「……」

「天龍…お願い…」

 私の仲間達が去っていった方向を指差しながら最初は強めに、そして次は縋るような声で訴えかける。

 天龍の受けたダメージも決して軽くは無いはず。元よりこの命は捨てる覚悟、せめて戦友の命だけでも助けることが出来ればそれでいい。

 どうしてこのような姿になったのかは気になるところだけれど、今は天龍の命が助かればそれで…。

 

 

 

「…行ケ」

「っ!?」

 

 また、喋っ……。

 

 

 

 バァッァァァァァァ!

 

 

 

 

 痺れを切らしたのか、ヲ級の号令の元、二体のホ級が私達に照準を合わせて砲を構えながら急接近してくる!

 

 

 

「…ヲ」

 ヲ級がステッキを一振りする。瞬間、私達の体が光に包まれる。

「ッ!?」

「こ、今度は何!?」

 先程ル級にかけた光と似ている…が、何かおかしい。先程は暖かそうな光なのに対してこちらは暗い色の光だ。

(体が…重い!?)

 …なんだろう?先程より体がだるいような…まるで体に慣れない戦艦級の艤装でもつけられたか、もしくは急激に体温が下がったかのように体の動きが鈍い…。

(またあのおかしな能力なの!?どうしよう、私がこの状態じゃあ天龍も恐らく同じようになっている筈…逃げるなんてとても…)

「て、天龍!!」

 思わず泣きたくなる衝動に駆られて、天龍の名を呼びながら向き直る…。

 

 

 

 

「…ハハッ」

「て、天龍?」

 

 当の天龍は…笑っていた。

 この状況に耐え切れずに気でも狂ってしまったのか?一瞬そんな事が浮かび上がる。そう思っている中、

 

 

 

「ウざッ…タイんだよぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 叫ぶやいなや、両腕の艤装に取り付けられた全武装を、こちらに級接近しているホ級に向けて…。

 

 

 

 火山の噴火を思わせる轟音が、連続でその場に響いた。

 体がうまく動かないであろう状況にも関わらず、放たれた砲撃は見事に二体のホ級に命中。まともに天龍の攻撃を受けたホ級の体が勢いをつけた分、勢いよく体がひっくり返る。

 

「て、天龍!?」

 そんな、あんな体がうまく動かない状況であの二体にうまく当てるなんて…。正直、すごいという賞賛よりも、単純な恐怖すら覚えてしまう。

 遠くで号令を出したヲ級もこれは予想外だったようで、僅かにだが目が大きく見開いているのが分かる。

 

 

 

「ハハハ…ハハハハハハハハ!!!そうダ!俺は強エ!!世界水準超えタこの天龍様ニ不可能は…ねエ!!」

 

 

ドォン!ドォン!!ドォン!!!ドォン!!!!

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!!

 

 

 怪物の咆哮を思わせるような巨大な発射音を吐き出す禍々しい両腕の艤装を、倒れ伏す二体のホ級に対して容赦なく連射する。元々私の砲撃でダメージはあったものの、ホ級の体はその砲弾の洗礼の途中でとうとう耐え切れず『轟沈』していく。

 

「マダダ…まだマだァァァ!!!!」

 

 それにもかかわらず沈んでいく体に対しても無慈悲な攻撃を止めない。沈んでいった地点に天龍の砲撃が次々と降り注ぐ。

 

 

「沈め沈め深海凄艦!!苦しめ苦しめ深海凄艦!!沈んで逝っタ基地の仲間ノ…ヒャハハハハハハハハ!!!!!」

「…………っ」

 

 信じられない…いくら不倶戴天の敵である深海凄艦だからって、あそこまで非情になりきれるものなの?あの姿を見ると、さっきまで自分を痛めつけていたホ級に対して、不憫な気持ちまで覚えてしまう。

 

 

 

 

ドォォッォォォォ!!!

 

 

 

「あアッ!?」

「キャア!?」

 

 鼓膜が破かれそうな爆発音と爆風の衝撃が、上空から降り注ぐように私たちを襲う。思私たち2人とも、思わず腕で顔を覆ってしまう。前は見えないけれども、恐らくヲ級とヌ級の爆撃だろう。

 

「…や…ろおォ…!ふざけた真似を…!」

 

「ヲ…」

 

「ッ!!」

 

 近くで天龍が悪態をつく次の瞬間に、小さく…しかしはっきりとその姿を露にしていく。

 恐らく、今の爆撃の暇を縫って接近して来たのだろう。顔の前で覆っていた両手を下げた天龍の目前には、フラグシップの空母ヲ級が相変わらず不気味なほどの無表情顔で、海面にステッキをつきながら驚く天龍の顔を眺めていた。

 

「て…めェェ!!!」

 

 目の前に敵が来たことで逆上したのか、巨大な腕の形をした艤装を思い切り握り締め、目の前のヲ級めがけてそれを振り下ろし…!

 

 

ドスッ!!

 

 

「がっぁァ…!?」

 

 が、それよりも早くヲ級のステッキが天龍の鳩尾に突き刺さり、繰り出された拳はヲ級の顔面すれすれで止まり、予期せぬカウンターがよほど効いたのか、天龍の目と口が苦悶で大きく開かれ、天龍の両膝が海面につく。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

「て、天りゅ…!!」

 

 駆け寄ろうにも、いつの間にか目前にまで近づいてきていたヌ級二体に前方を阻まれる。辛うじて残っている連装砲を取り出そうにもそれよりも早く、ヌ級の艦載機が至る所に張り巡らされて私の行動を阻まれる。

 ――少しでも動いたら止めを刺してやる、一瞥するヲ級の目がそう語っていたような気がした。もはや手持ちの艤装も損傷して中破している私なんかいつでも殺せるとでも言うのか?

 …思わず歯に力が篭るのを感じる。嘗めないで…!と啖呵を切ってやりたいけど事実、この状況では打つ手が見当たらない。かといって、このまま指咥えてみていればみすみす天龍を見殺しにしてしまう…仲間を逃がす為に足止めを買って出たというのに、思いがけずに再会した旧友を見殺しにするなんて…。

 膝を突く三川艦隊の旧友を悔しげに呼ぶことしか出来ない自分が、無感情に見下ろしているヲ級と同じぐらいに憎かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで、こうなってしまったんダ?ヲ級に痛めつけられタ腹部を押さえつけながら必死に思考をフル回転させル。

 俺は、力ヲ手に入れたハズだ…この両腕…前の艤装とハ比較にもならなこの火力…この力…先程古鷹を押さえツけていたあノエリートのル級モ、フラグシップのホ級だって倒しテみせタ…。そうだ、俺はもウ前ノ弱い自分とハ違う…。

 

「…ああアアァァァァ!!!!」

 

 痛みを半バ無視するように左手ノ連装砲をヲ級に向ける!ガ、その瞬間に、パパパパンと奴のケッタクそな艦載キが俺の艤装ごと左手を打ち抜き、激痛で左手を引っ込めてシマウ…。

 

「テ…メェェェェェ!!!」

 

 負けじと今度は、右腕を奴のフザケタ顔面を吹っ飛ばそうと向けル!

 

ボォォォォォォン!!!

 

「ガァァァァァァ!!???」

 今度は右腕がピンポイントで爆撃される。焼け付くようナ…手が引き裂かれる様な…表現しようウノ無い激痛が襲い掛かる。嘘みたいだと思いたかったけれド、右腕から立ち上る煙の匂いト、バラバラになった艤装がそれが現実だと物語っている。

 遠くで古鷹が何か叫んでいるようだったけレど不思議と何も聞こえナイ…俺ノ名前でも叫んでいるのだろうカ? …そんな目で俺を見るなヨ…これは何かの間違いダ。そうダ、俺ハ世界水準超えタ天龍だ…こんな風に敵の前で情けなく膝を突いてへたり込んでいるなんて有り得ない…これじゃあ、まるで…!!

 瞬間、見るも無残な右手に衝撃的な重量ト、激痛がハシル。歯を食いしばっテいなければ叫びたくなる激痛ダ。

 

 

 

『無様なもんだな…』

 

 

 声がすル。目の前で俺ヲ見下ろしているヲ級でも、向こうで驚いている表情をこちらに向けている古鷹でもなイ。

 すごく聞き覚エのある…それでいテ…。

 

 

『啖呵切って見栄張って、帰る場所を見失った捨て犬みたいなどうしようもない自分自身を慰めるためにそんな姿(・・・・)になってまで、お前が手に入れたものは何だ?一時の自己満足と、そして今のお前のその様だ』

 

 後ろからそっト耳元で囁く様な声が…背後には誰モいないはズ…けレど、心の中では確かに『ナニカ』存在を感じル。今すぐウシロを確認したいのニ、出来ない。

 

『本当は分かっているんだろ?お前は…「黙レ…」』

 

 

 心臓を蛇ミテエにチロチロ嘗め取るような不快感の覚える声ニ、反論する。自分の出す声が萎んだ風船みたいなのはキット気のせイ…。

 

『何時までそんな強がってるんだ?悟られたくないから強がっているだけなのは見栄見栄なんだよ?』

「だまレ…」

『薄っぺらい玉葱の皮みてぇなお前自身をはがしてみれば出てくるのは…』

「ダマレ…!」

 

 

 

『臆病なお前自身と、あの男への醜い嫉妬と…』

 

 

「ダマレッテイッテンダロォォッォォォ!!!!」

 

 

 頭の中に響き渡る声を振り払うかのように気がつけば、グシャグシャになった両手デヲ級へと掴みかかる。突然のことで反応できなかったのか、僅かに驚いたような表情を浮かべてそのままマウントに取られるのを許ス結果にナッタ。いっそのこと、このままマ沈めバ良かっタのに…!

 

 

「あアああアああアああアっっっ!!!!」

 

 言葉の意味ヲ成サない雄たけびを上ゲながらヲ級の顔面を殴る、殴る、殴る…殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグル殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグル殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグル殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグル殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグル殴る殴る殴る殴ル殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る!!!

 

『あハはハハはハハッッッ!!』

 痛みなんテ感じなイ!殴るタビに血が出てモナにも感じなイ!!『グチャリ』とか音がしても何とも思ワない!!あるのはタダタダ高揚感、憎い敵をぶちのメす爽快感!!ヲ級の顔面が血と痣で彩らレテいくのが何とモ…!!コの屈服感!!

 

「コレガホントの気分が高揚しますっテカ!?ハッハぁー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「何なの…『あれ』…は?」

 艦載機に囲まれているという状況すら忘れそうになる光景に、呆然と出てきた一言がそれだった…。

 

「アハハハハハハハハハ!!!」

 

 見ているだけでこちらの気が触れそうになる…私は、一体何を見ているのだろう?可笑しいよ、震えが止まらない…『アレ』は一体何なの?

 天龍がヲ級の前で膝を突き、ぶつぶつ何事か呟いたかと思えば急にヲ級を馬乗りにして…両腕の歪な艤装が出してはいけないような音を立て、赤い液体を垂れ流しにしながらも壊れたラジカセのように狂笑をあげながらヲ級の顔をピンポイントで殴打し続けるその姿からは、正気を感じられない…。

 あれは本当に天龍なの?かつての三川艦隊の戦友で…元々ちょっと言葉遣いが乱暴だったけど、誰よりも仲間思いで頼りがいがある…あの天龍なのか?

 人一倍仲間思いであんな風に無意味に何かを傷つける子じゃなかったのに…どういうこと!?アレは本当に天龍なの!?

「天龍…」

 信じられない…姿かたちや口ぶりはそれっぽいが、まるで悪霊に取り憑かれたと言われても反論できない…いや、というよりも、あれじゃあ『艦娘』というよりもまるで…。

 

 

「おラどうしたァ!?さっきまでの威勢のイい態度はどうしたンだよォォ!?ああァ!?」

 

 不安が拭いきれない私を他所に、視界の先で行われている暴挙は、ますますヒートアップしていく。もはやその光景は、艦隊の戦いではなく泥臭くて血なまぐさい一方的な暴力が振るわれていく。これではどっちが敵か味方か分からないよ!

 

「ま、待って天龍!落ち着いて!おかしいよこんなの!」

 

 必死の叫びも、無慈悲な修羅の如きの今の天龍には届いていないのか、振り下ろされる暴力は止むことがない!!

 

「天龍!ねえ天龍ってば!もうそれ以上…」

「俺ガ…守るんダ…!!」

「…え?」

 

 

 

「『テメエ』に頼らなくてモ…俺だっテ…『オマエ』みたいに…『力』が無くたっテ」

「…天龍?」

 

 繰り出される暴力とは裏腹に、だんだん陰りのある口調になっていく天龍。

 ふと、改めて天龍の顔を見てはっとなる。顔こそ相変わらず歪んだ笑みを浮かべているものの、眼帯で隠れていないほうの瞳から、一条の雫が流れているのがはっきり見えた。

 笑っているのに…泣いている?

 

「剣振って、ぶっ飛ばして、隕石降らセて、雷落とす力がなくてモ…俺だって…だから…」

 

まるで、今にも泣き出しそうな子供のように…意味不明な単語が多いけれど、『テメエ』とか『オマエ』って…?視線こそヲ級に向けているけれども、

まるでここにはいない誰かに向かって喋っているような…。

 

「だカラ、『アイツラ』だけじゃなくテ…俺モ…オレニモォォォ!!!!」

 

 半ば慟哭の様に叫ぶ天龍。まるで目の前のヲ級ではなく自分自身を殴っているかのような悲しみさえ滲ませている。

 一体、誰に向かって言っているというの…天龍?

 

 

 

バァァァァァァァン!!!

 

 

「ガァっっ…!?」

 

 

 風船の割れるような音が響いたかと思いきや、天龍の体が突然仰け反るように仰向けに倒れる。バシャアンと海面を叩く音と割れるような飛沫が辺りに飛び散る。

 

「っ!?て、天りゅ…!!?」

 

 叫ぼうとして、最後の音が喉元から下へ下がってしまった。私の周りを覆っていた艦載機がいつの間にか、天龍を囲むように、倒れた彼女の周りに浮遊していた。2体のヌ級の艦載機だ!

 

 

「…!!この……っ!?」

 

 咄嗟にヌ級に挑もうとして、私の意志とは無関係に力が抜けたように、膝から崩れ落ちる。力が出ない…なぜ?先程のダメージが今更効いてきたと…?こんな時に!?

 今まで為すすべなく殴られていたヲ級が起き上がってステッキを振りかざして、被り物の口の部分から艦載機を次々と発艦させ、倒れている天龍目掛けて、ヌ級の艦載機と共に空爆と機銃掃射を雨あられのように繰り出す。

 

 

「っ!?て、天龍!?」

 彼女の周囲が、轟音と海面の大飛沫に覆われていく…!あんな数の攻撃を繰り出されたら大破どころか…。

 間違いなく、轟沈…!

 

 

「て…天龍ぅ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!マハジオダイン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞きなれない声が聞こえてきたと思った瞬間、視界を覆わんばかりの眩い閃光と落雷のような轟音が響き渡り、咄嗟に目を覆ってしまう。目を閉じても瞼の裏側まで感じる強い光と、バチバチと何かがはじける音が、私自身に叩きつけられるように感じられる。

 

「こ、今度は一体何…!?」

 

 確かめようにも、眩しすぎて目を開けられない。例えすぐそこに敵がいるとしてもだ。とはいっても敵もこの閃光の中目を開けられるかどうかも怪しいものだけど…。やがて、バチバチと弾ける音の次にバシャバシャと何かが海面に落ちる音が聞こえる。音の規模から言って一つや二つではない。大量の何かが海面に落ちていくような音と共に、何かが落ちた衝撃で生じた波が私の足首を濡らす。

 何時までこれが続くのか…そろそろ私の精神も限界なんだけど…と思った矢先に閃光と音がようやく収まるのを感じる。何かが海面に落ちる音もだ。恐る恐る目を開いてやけに久しぶりに感じられるような外の世界を目に映す。

 

「…っ!?」

 

 ゆっくりと開いた瞳が、大きく見開かれる。そして空と足元を交互に見比べ、先程の海面に生じた音と波の正体を瞬時に悟る。到底、信じがたい光景であったけれど。

 一瞬、見渡す限りに大量の魚の死骸でも浮かんでいるのか見間違えたけれど違った、艦載機だ!ヲ級をヌ級の放った筈の大量の艦載機が海面に浮かんでいた!一瞬何が起こったのかと理解する前に、やがてそれらの艦載機がゆっくりと海の底に沈んでいき、辺りには何も無かったかのように静かな海面がその場に戻る。

 そんな、あれほどの大量の艦載機が一つ残さず叩き落されたというの!?目を閉じている間に一体何が!?

 

ビュオンッ!!!

 

「きゃあ!?」

 

 突然、自分の視界のすぐ目の前を、高い風切り音と共に細長い何かが高速で飛んでくる!驚いて身震いした後、小さく悲鳴を上げ尻餅をついてしまう!もう、次から次へと何なの!?

 

 

グジャアアッ!!

 

 

 続いて、肉が突き刺さるようなグロテスクな音が耳につく。頭の片隅で嫌な予感を感じながらその方向へ振り向き…。

 

「……っな!?」

 

 それを確認した瞬間、再び目を見開く。天龍に艦載機をけしかけてきたヌ級の頭部に、細長い何かが突き刺さっている。ヌ級の突き刺さっている部分と、細長い何かの先端から体液とも血液とも取れる何かが止め処なく溢れ出てくる。

 ヌ級の頭に突き刺さっているもの、よく見ればそれは…。

 

「…鉄…パイプ?」

 

 細長い物の正体――鉄パイプのようなものが、下手な砲弾をも通さない筈の深海凄艦の頭に痛々しげに突き刺さっている。ヌ級がそれを引っこ抜こうと手をかけようとする…。

 

 

「生憎、剣の持ち合わせがなかったからこれしか持って来れなかったけれど…」

 

 聞きなれない声が響く。女のではない、男の人の声だ。物静かな、そしてどことなく逞しい声だった。…って、男!?こんな所で!?

 次々に湧き上がる不可解な事に困惑していると、鉄パイプが刺さったヌ級の傍に、いつのまにか誰かが立っているのに気がつく。

「っ!?だ、誰!?」

 咄嗟に呼びかけるも、その人物はこちらに背を向けたまま答えない。ただただ串刺しになったヌ級を見ているようだった。背が高くて、日本人にしては珍しい灰色の頭髪を持った誰かが、軽巡のものらしき艤装を身に着けているのが辛うじて分かる。ついでに小脇に何かを抱え込んでいるように見えるけれども…

「…子供?いや、まさか…」

 疑問を浮かべている私を他所にその人物は、おもむろにヌ級に刺さった鉄パイプを引っこ抜くと鉄パイプを一振りする。次の瞬間、頭に刺さった鉄パイプが致命傷になったのか、タイミングを見計らったようにヌ級の体がゆっくりと傾いて海面に横たわり、轟沈していく…。

 

「まあ、ゴルフクラブやおそうじモップで戦うよりはマシか?」

 

 凝りを解すように首を回した後、引っこ抜いた鉄パイプを肩に乗せ比較的離れた場所にいるヲ級と、もう一体のヌ級に視線を変える。その視線を受けたヲ級の表情が心なしか、強張るのが見えたのは気のせいだろうか?

 ていうか、この人艤装を装備している!?見たところ私の知る艦娘ではないみたいだけど何で!?しかも男の人…というか人間の人が何で!?突然現れて訳が分からないというのに、何だというの!?何で!?

 

 

 

「あ、あの!あなたは一体!?」

 

 

 先程よりも大きな声でその人物に尋ねる。自分の中でパニックが抜けきっていないのか、やけに上ずった声になってしまった。

 するとようやくその人物はこちらに振り向き、そして言う。

 

「人呼んで、『鋼のシスコン番長』…ハイカラだろ?」

 

 なんとも、不敵な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はわわわわ…」

 

 左脇から小さな声が聞こえてくる。視線を向けると先程抱えた電が目を回していた。

 

「あ、すまない。大丈夫か?」

「…目が…ぐるぐるするけど、大丈夫で…うぷっ」

「…すまない」

 

 大丈夫といいながらも蒼い顔で言われては本当かどうか疑わしいんだが…いや、俺が悪いんだけれどさ。謝りながら電を地面…いや、海面に下ろす。多少ふらついてはいるが、少ししたら足取りがしっかりしはじめているので多分大丈夫なのだろう。

「さてと…

 …咄嗟に乱入してみたのはいいんだけれども、はてさて、どうしたものか…。

 ヌ級から引っこ抜いた鉄パイプを握り締めて構える。空に浮かんでいた艦載機は『マハジオダイン』で全て叩き落してやった。とりあえず敵として認識しているのはもう一体のヌ級ともう一人、見慣れない少女みたいな姿をした奴だ…被り物にマントとステッキを持った魔法使いのコスプレをしている…ハイカラな格好だな。あのレ級とは少し姿が違うようだけれども。しかもなんか…。

 ちらりと横目で俺の後ろを見る。深海凄艦とは違う人間…いや、見慣れない茶髪の少女が、思いっきりこちらを警戒するような表情で見ている。しかも左目がなにか怪我か病気でもしたのかなんかおかしいし…先に行われていた戦闘のせいなのか、なんか格好と艤装がボロボロだし…まさかこいつらに何かされたのか?

 

「っ!天龍さん!大丈夫ですか!?」

 

 状況確認している中、ようやく顔色が回復した電が敵2人に囲まれている天龍に向かって叫んでいるのを見て、俺も我に返る。そうだった、状況確認している場合じゃなかった!

 電の声が聞こえたのかどうか分からないが、倒れ伏している天龍が僅かに身じろぎしているのを見て、何とか生きているのを確認する。が、どうやら3日前と同じように危ない状況みたいだけど…!

 

 

「天龍さん!!」

 

 

 叫びながら電が自身の単装砲を構えて放つ!が、焦って放った所為か砲弾がヌ級の体の横を通り過ぎて遠くまで行ってしまう。電が砲弾を放ったことで敵も我に返ったのか、天龍に止めを刺そうと身構え始め…。

 

 

 

 

「させるか、『イザナギ』!!」(カッ!!)

 

 

 素早くカードを握りつぶして目の前にイザナギを召喚する!後ろで例の少女が驚きの悲鳴を上げているのが聞こえているが無視だ!持っている矛を回転させて逆手に持ち直して文字通り『槍投げ』を敵に向かって放つ。超高速で放たれた矛は敵が天龍に止めを刺すよりも早く、ヌ級を串刺しにする。串刺しにされたヌ級は天龍に向かって手を伸ばした状態のままゆっくりと轟沈していく。

 それを見てコスプレ少女が一瞬驚いたのか手を止める。その隙を逃さずに今度は引っこ抜いたばかりの鉄パイプを彼女に向かって投げつける!敵は持っていたステッキでその鉄パイプを何とか弾く物の…。

 

「電!」

「今度は外さないのです!!」

 

 振り上げた状態のまま生じた隙を逃さず、電が単装砲を敵に向かって連射する!敵がこちらに向かって大きく目を見開くのが見えた。次の瞬間には、彼女の体が電の放った砲撃の爆発で包まれる。

 この瞬間を待っていた!すかさずイザナギを急接近させて、思い切り敵を殴りつける!吹っ飛ばされたコスプレ少女が海面をバウンド…というのも奇妙な表現だけれども、とにかくその隙に天龍をイザナギが確保して、こちらに帰還する。投げた矛と鉄パイプも忘れない。

 

 

「天龍さん!」

「天龍!!」

 

 電と、茶髪少女が天龍を抱えたイザナギに駆け寄る。酷い傷だ、全身が火傷と打撲だらけ…さらに両腕の艤装が全壊寸前だ。その覆われた艤装から覗く彼女自身の手から、ポタリポタリと血が滴り落ちる。念のため口元まで手を持っていき、呼吸を確かめる。

 …当然だけどまだ息がある。が、急いで運び出さないとまずい状態だな。

 って、なんだこの艤装?3日前とは随分形が変わっているようだけれど…こんなの持っていたのか?しかも、このデザインといい、醸し出される雰囲気といい、これじゃあまるで…。

 

「すぐに基地まで運びましょう!修復材はなくとも、妖精さんなら何とかしてくれるかもなのです!」

 電は天龍の艤装が気にならないのか、それとも気にしている余裕がないのか、慌てた状態で声を張り上げる。

「へ?き、基地?」

「そうだな、だが、あまり揺らさないように慎重に運ばないと…!」

「な、なのです!」

「あ、あの!」

 

 

 俺達のやり取りを見ていた茶髪少女が声を張り上げる。先程のように警戒したような表情は無くなっている物の、まるで状況が飲み込めないような表情が浮かんでいる。

「どうした!?」

「あの、天龍を助けてくれたからとりあえず貴方達が味方だというのが分かるのですけど」

「その認識は間違ってないぞ」

 びしっ!と指を突きつける。

「で、でも、とりあえず聞きたいことが沢山あるのですけど…」

「「そっとしておこう(なのです!)」」

「いや、そっとしておかないでください!!しかもハモリで!!」

 いい突込みだ。こんな風に突っ込みを入れる奴に悪い奴はいないとは思う。個人的に。だが、今は緊急時だから勘弁して欲しい。

 

「お互い聞きたいことがあるだろうけど、今は天龍が放っておけない!今は…」

 

 

 

バアァァァァァァァァン!!!!!

 

 

 話している最中にすぐ近くで海面が爆発し、電と見知らぬ艦娘がびくりと震わせる。気絶している天龍をお姫様抱っこしたまま何事かと周囲を見渡すと、すぐさま元凶が見つかった…というより、今この場では一人しかいないけれど…。

 

 

「ヲォォォ…ッ!!」

 

 

 ふっ飛ばした筈の例のコスプレ深海凄艦が、まだどこかに隠していたのか、艦載機を自分の周囲に囲むようにして配置しながらこちらを憎々しげに睨んでいる。まるでこちらを視線で殺そうとするように。さっきぶっ飛ばしたことを根に持っているのか?

 …寛容さ『それなり』よりちょっと低そうだな。いや、原因俺だけれど。

 

 

「…ヲ級」

 

 電が深海凄艦に向かって苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「ヲ級、というのか?あの不思議系魔法使いは」

「空母『ヲ級』現在確認されている深海凄艦の中で唯一の正規空母なのです。艦載機を操る術においては、軽空母ヌ級とは一線を画するといわれているのです」

「…最初の私の部隊も、天龍も、あのヲ級の艦載機にやられてしまいました…」

 

 最初の部隊?よく分からないけど成程、皆あいつにやられてしまったのか…。正規空母か、このまま背を向けて逃げても、あの艦載機で何処までも追いかけてきそうだな。全く、応急処置も出来ないこんな状況で面倒な…。

 

 

「…ヲ!」

 

 

 ヲ級とやらがステッキを振り上げると、周囲を飛んでいた艦載機がすべてこちらに向かって飛んでくる!!隣にいる2人が身構える!

 

「電と…『邪○眼』ちゃん、目を閉じろ!失明するぞ!!」

「っ!?なのです!?」

「え、何その呼び方………?それに失明…?」

 

 

 

「再び…『マハジオダイン』!!(カッ!」

 

 

 

 空間が轟音と共に鋭く煌めいたと認識した瞬間、蜘蛛の巣のような雷が、先程のように大量の禍々しい艦載機を全て直撃する。小さな艦載機が『ダイン』級に耐え切れるはずも無く『バチバチ』と電気系統がショートする音を立てながら全て墜落し、海の藻屑となって沈む。

 

「……っ!」

「は!?え、雷!?あんなにいた艦載機が全部…え、ええぇ!?」

「…おめめがぱちぱちするのです!」

 遠くのヲ級が目を見開かせ、近くの茶髪艦娘がそれ以上に驚きの声を上げる。近くの電は流石に慣れたのか、感激するような、僅かに興奮の篭った視線…いや、ただ単に雷の眩い光景に目を細めていた。

 

「畳み掛ける…『アグネヤストラ』!!」(カッ!)

 

 叫んだ瞬間、アグネヤストラの隕石が複数、ヲ級に向かって降り注ぐ!一瞬驚いた素振りを見せるものの、驚異的な反射神経とスピードで、雨あられのように降り注ぐアグネヤストラを必死にかわす。多少ぎこちないが敵ながら見事なかわしっぷりだな、だが…。

 

「陽介と千枝に比べれば…まだまだ!」

 

 急接近したヲ級が、飛び掛ってこちらにステッキを振り下ろし、手にした鉄パイプでそれを防ぐ!ギィィィィンという鈍い音と、ビリビリとした衝撃が痺れとなって襲いくるも…。

 

「もし完二やラビリスなら、こんな鉄パイプなんかへし折っていただろうが、お前には無理なようだ…なっ!」

「ッ!!」

 

 イザナギを宿したパワーで鉄パイプを思いっきり振り下ろし、鍔迫り合いの状態でヲ級を海面に思い切り叩きつける!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ウウ…」

 

 先程から耳鳴りガ響く。喧しい音ガ響き体中が痛ム…その痛みが俺ノ意識を覚醒させル…。

 誰かに支えられていル感覚がアる。激しい金属音みたいな音も聞こえル。うっすらと目を開いてモ、目の前が霞んデよく見えなイ……。

 

「すごい…さっきから何なの?あの人は…?」

 

 目を見開くと見慣れタ声が、耳まで届ク。相変わらずボンヤリとしか見えないガこの声ハ古鷹だ、どうやラ俺ガ目を覚ました事なド気づいていないみたいデ、何かを見て驚いていルようだっタ…。

 

「安心してください、あの人はとても強くていい人なのです!」

 

 古鷹とは別の、幼くて、またもや聞き覚えがある声が聞こえてくる。

 まさか、電…カ?何でこんなところニ…?

 

「いや、そう言われても何がなんだか…ていうかどうして男の人が艤装をつけて活動できるんですか!?しかもあの得体の知れない巨大な怪人は何!?なんか電撃出して艦載機を全滅させるなんて、高雄型の摩耶ちゃんも真っ青の対空能力だから!しかもなんか隕石降らせたり、単装砲どころか鉄パイプでフラグシップのヲ級を追い詰めていたりするし、なんなのあの人は!?」

「3日前も、電達を守る為にこの海域のエリート艦隊60体と戦ったのです!」

「……ごめんなさい、どこから突っ込めばいいのか分からなくなってきたんだけど…ってこの海域でって、まさか!?」

「ど、どうしたのです?」

 …男ガ、深海凄艦を駆逐?艤装を付けテ…?やハリ今聞こえているこの声は電のものカ…?

 といウコとは…。

 ザバァァァァンとした激しイ音が聞こえル。それに合わせるかのようニ、段々とおぼろげな視界も回復してきタ。首を回しテ、音がしたほうニ向き直ル。

 ああ、やっぱリ…悪い予感というのハ、どうしてこうも当たるもんなのかネ…いや、電がいル時点でこの事は予想出来たはずだろうカラ…。

 いっその事、視界が回復しないままでも良かったのかもしれナイ…。

 やはり、あの男ダ。あの男ガ鉄パイプかなにかで、俺ガ散々やられたあのヲ級を組み伏せてやガル…恐らくあの謎ノデカぶつの力デ、あのヲ級の艦載機と姿が見えないヌ級も…。

 

 

 

『薄っぺらい玉葱の皮みてぇなお前自身をはがしてみれば出てくるのは…』

 

 

「…ドウシテ…」

 

 

 

『臆病なお前自身と、あの男への醜い嫉妬と…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドウシテ…ナンダヨォ…」




重ねて、投稿が遅れたことにお詫び申し上げマース。
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