『しょぼくれてる場合じゃないだろ?寝ている場合じゃないはずだ天龍』
『…………………』
『お前が大事にしているモノ、このままじゃあ無くなっちまうぞ、それでもいいのか?』
『…………嫌だ』
『お前は、妹の艤装に宿った『思念』と、それを纏うアイツとぶつかり合うことで多少なりとも、『己自身』と向き合うことが出来た…。自分自身が無意識にひた隠しにしていた自分の影…あるいは弱さとも言い換えてもいい。まだまだ、完全とは言えないがな…それでも、以前とは違う『何か』が今のお前にはある筈だ…』
『でも、だからって…俺に何ができる?アイツみたいに強いわけでもないし、そのアイツだって…』
『ははっ、お前俺が前に言ったことをもう忘れちまったのか?』
『?』
『いったろう?俺が力を貸してやるって…アイツのようにうまくいくかは分からんが、少なくとも何もないよかはマシだ…お前の妹ともそう約束したからな』
『…アンタ…おっさんは…一体…?』
『何…………』
『不器用な、ただの『親父』だよ…』
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「無事か…?電」
「て、天龍さん…カハッ…!」
大丈夫…ではなさそうだな。咄嗟に持っている剣を、電の首を絶賛締め付け進行中のくそったれのあんちくしょうの尻尾に投げつけてやったのはいいが、ぶった切ることが出来なかったな畜生め。ま、電の拘束を解いてやれただけ良しとしよう。
背後を、振り返る。
デカい金色の龍が、色んな色を持った球を両手でつかんで宙に浮いていた。荒々しさを持ちながらも、どこか厳かな風格を感じられる…といった所か。
恐怖はない。自分に両手足が付いていてそしてそれを動かせるんだなという事が当り前なように、この目の前に浮かんでいる巨大な龍が自分の背後で浮かんでいることになぜか疑いとか、違和感とかそういうのは感じられなかった。普段ならテンパって、『な、なんだこのデカい龍は!?新手の深海棲艦か!?』とあたふた慌てるところだろうが…。
「……ヲヲォ!!」
と、背負い投げかまして悶絶していたヲ級がカッ!と目を見開くと同時に、被り物の口が開き口の中から何かが飛び出し…。
「オラぁ!!!」
その前に、その口と中から出ようとしていた艦載機目掛けて、右足で踏みつける。グシャり!と、機械が踏み潰されるような感触と音が伝わり、本体のヲ級の顔が歪む。我ながらえげつない攻撃だな…龍田がしそうだ。被り物だけを踏みつけたつもりだったんだけど、頭の部分にも掠ったのか?ま、関係ないけどな!
「…痺れな」
バァァァァァァァァァ!!!!
「ヲヲッッ!?ヲヲッヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!!!!!」
そう呟くと、踏みつけているヲ級に落雷が発生すると感電したヲ級の体が小刻みに痙攣する。その様が何とも滑稽で少し笑いそうになった。雷による閃光が眩しかったけれども不思議と、ヲ級を通じて俺にも通電している筈なのに何ともなかった。自分で放ったせいなのか、それとも後ろで浮いている龍に秘密があるのか…。
雷はすぐさま止み、そして足元にはぐったりと倒れて黒焦げになったヲ級の焼死体が出来上がっていた。まさか陸の上で深海棲艦の焼死体を…しかもeliteのを、この目で見ることになろうとはな…あまりじろじろと見たいものではないけど…。しかもこれ、俺がやったんだな…。
「これが……『ペルソナ』…アイツの…もしくは俺の中の人格の鎧…」
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流石に、コイツは驚いタゼ…。
てっきり今後ろニイる駆逐艦と『ワイルド』だけだと思っテイたのに…まさカあの生ゴミに宿ってイルとは見落としていた。いや、あの様子じャア本人も分かっていナカッたみたいダガ…アイツも何らかのきっかけで『己自身』と向き合って『資格』ヲ得…それガ気絶している間ニ『何か』が起こって覚醒しヤガったのか…!?シカモあのペルソナ…感じかラシて『法王』のアルカナノ最上位種…!アンナゴミが…!?スキルもバッチリ扱ってヤガる。
「…ネ級」
俺の後方でぶっ倒れている方ではナクもう一人…黙って成り行きを見守っていたもう一人のネ級に声を掛ける。
「…あの調子こイテる雑魚に身の程を教えてヤリな…タダシ殺スナよ」
頷き一つ見せずにこッチを一瞥したかと思いキヤ、そのまま走り去っていくネ級。ッチ、相変わらず愛想のねえ奴ダ。マ、深海棲艦に愛想を求める自体が、無茶な話だって話だガナ…。
そんな事よリモ…ネ級が向かった先、あの『覚醒』した軽巡に目を向ケル。
少しばカリ…面倒になってキタか?侮れないとはいえ、昨日の負傷を引きズッているあの『ワイルド』さえ何とかすれば、未だに『覚醒』の兆しもない近くでへばっテイる駆逐艦一匹の確保と、ゴミ軽巡一匹片づけるだけで全てが片付く筈だった……倒れている『ワイルド』の近くで気を失っテイる『出来損ない』のヲ級を除けバダが…
(とイウカ何でコンナ所にいやがルンだ?)
…マアいい、起きちまったモンは起きちまったモンとして受け入れるトシて、考えを変えレバ手間が一つ省けてこれはムシロ好都合じゃナイか?ワザワザ『取りやすい』状態の新鮮な獲物が向こウカらやって来るのだとすれば…。
それまで、戯れにアイツがどれほどヤルのか見てみるのも、一興カモナ…。
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足元で黒焦げになっているヲ級を他所に、覚醒した能力に感慨にふける間もなく、白髪の深海棲艦がこっちに猛ダッシュでやって来やがる。あれは…まさか『ネ級』か?しかもelite…生で見るのは初めてだな…。咄嗟に迎撃しようと、腰の剣を抜こうとするがさっき首を絞められている電を助けるときに投げてしまったことを思い出して、自分の迂闊さを呪う。
そんな俺の一瞬の隙を逃さずに走りながら、ネ級は左腕の8inch三連装砲の照準をこちらに向ける。おい、あんなデカいものを走りながらこちらに向けて来るとか、頭おかしい…。
ドォン!ドォン!ドォン!
三発連続で放たれた砲弾は、一発は見当違いの方向、二発は俺の左頬を掠め、そして三発目は俺の顔へ吸い込まれるように向かって行き……。
「っ!!うぉぉ!?」
咄嗟に、素早く顔を逸らすことで砲弾をやり過ごす。
その隙を、ネ級は見逃さなかった。
「!!」
すぐそばまで近づいてきたと思いきや、先程発射した三連装砲の艤装を上から叩きつけるように振り回し、それを辛くも、尻もち着いた状態で受け止める…。それに対して、冷徹な殺人マシーンのように感情の籠らない様子のネ級が、組み敷くように抑え込む…。
「…っのぉ!」
ギリギリと力比べの体勢でにらみ合う俺達…どう考えても、体勢的にもこちらが不利だしましてや相手は重巡…しかもリ級のFlagshipと同じ力を持っている厄介者だ。元々のパワーが違いすぎる。俺だってジャジャーンとパワーアップして前より力が強くなったとはいえ、それでもパワー負けしている様子だ…。
だったら、方法は一つだ…!
「名前分かんねえから、勝手に呼ばせてもらうぜ…」
「?」
僅かに、ネ級が首を傾げた気がした。それを見届けて息を吸い込み…。
「天龍ぅぅ~~」
「サンダァァァァァ!!!!!!!」
バババババババババババババババ。
やべえ、今の名前なかなかしっくりするんじゃねえのか?そしてこの威力。アイツの繰り出す『真・エターナル天龍サンダー改ニ』(『マハジオダイン』の事)に比べれば威力は劣るものの、それでも目の前のネ級には有効なようだ。バババババと感電しながら白目になって悶絶している。
追撃…行きますか!!ガシャン!と、護身用に持ってきた単装砲をジャコンと右腕に装着し、ネ級の口の中に突っ込んでやる。こいつの防御の高さはピカイチらしいからな…だったらこういう時は口の中が一番だ!
「新必殺技『天龍サンダー』はうまかったか?ついでこいつもくれてやる…」
「!!」
こういう時、丁度組み敷かれているから逆に、地面が支えになるのがいいな。ま、反動は少な目だけどよ…。
「俺の奢りだ…ほっぺが吹っ飛ぶ程食らいな!!」
ボォンボォンボォンボォンボォンボォンボォンボォン!!
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「天龍さん…」
「どうだ電?恰好よかったか?俺」
ネ級を倒した後、なけなしの弾薬を単装砲に詰めた後ゆっくりと電…というよりレ級の元へとゆっくりと近づき、睨みあう…。
コンディションは悪くないし、疲れも全くない…。どころか、まるで準備体操を終えたという風に体の調子はばっちりだ。戦闘は…まだまだいける…!
「お前の取り巻きは…お前のすぐ傍でぶっ倒れているネ級以外はみーんなやっつけちまったぜ?どうする、そのネ級を叩き起こして俺にぶつけてみるか?ま、どうせぶっ倒しちまうけどな」
「………」
自信満々の俺の返答にも答えず、ゆっくりとこちらに背を向けてつかつかと歩くレ級。何処へ行くんだ?と思ったのもつかの間、倒れているネ級前まで止まり…。
「…フン!」
グシャッッ!!
「っ!!」
「きゃあ!!」
電が、高い悲鳴を上げる。コイツ…倒れて気絶しているネ級に向かって、足を持ち上げたかと思うと、その頭を容赦なく踏みつぶしただと!?
「ホントにどいツモこいつも…役に立たねえ…クソダナ」
「なっ!?」
「これじゃア仮に、昨日取り逃がしタアの『二匹』を加えたところデタかが知れてたかもな…いやそれヨリも、『ワイルド』の事が外部に漏れるのが一番の問題だナ…クソが」
相変わらずこちらに背を向けたまま何事か、ぶつぶつと呟いているレ級。いったい何を呟いていたのかは小さくて聞き取れない…それよりも…そんな事よりもだ…。
ボぉぉぉォォ!!!!!
相変わらずこちらに背を向けているレ級に対して、単装砲をぶちかましてやる。が、目の前の枝を避けるかのように、背を向けたまま首を少しずらしただけで球を避けるレ級。
「…何してんの?オマエ」
「………?」
「死にかけた仲間に対して、お前何やったんだって聞いてんだよコラ…」
ようやく振り返るレ級、まるで昼寝を邪魔されたかのように少し不機嫌な顔。今更深海棲艦に対して可哀そうとか言うつもりはねぇ…。実際俺もたった今三体ぶっ倒したばかりだしましてや、昨日の事があるから俺も人のこと言えないけどよ、役に立たなかったからって見捨てるばかりか、使えなくなったからってもういらね、って言わんばかりに連れてきた同胞に一切の慈悲もなく首ポキャ!かい…。ムカつくぜ、コイツこそあのクソ提督みてえじゃねえか…。
「電、もう少しだけ待ってな…今すぐこの糞ぶっ飛ばして、アイツと妖精さんを介抱するから…」
「…!」
「…ハァ…」
何ため息ついてんだコラ?あ?とことん人を舐め腐りやがって…。アイツと何の関係があるかとか、何か色々訳アリみたいだけど知ったこっちゃねえ…。今の俺なら、てめえなんざに負けねぇ…。
「残りはお前だけだ…覚悟しろど外道がァァァァ!!!!」
そうやって、単装砲を構えながらレ級へと走り…!
「…『ランダマイザ』」
驚く暇もないまま、まるで体中の毛穴からカロリーとかエネルギーとか無くなったかのような…それでいて自分の体重が倍にまで膨れたようなしんどさが一気にやってくる。
瞬き一つした瞬間だった。1M半位の距離にいた筈のレ級がいつの間にか手が届くほど目の前にいた。それを俺の視界から脳が認識する前に、右の人差し指を俺の額に突きつけぼそぼそと何か呟いたと思ったら…。
そんなバカなと思ったがすぐに、最初にアイツの斬撃を躱したときの俊敏性を思い出せば不可能ではなかっ…。
「『イノセントタック』」
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暗い…。ここは何処なんだろう?一体…何が?
クルクルクルクルクルクルクル…。
何かが、光を放ちながら目の前でものすごい勢いで回転している…これは…この光…この形は…。
回転しているものに向かって、ゆっくりと手を伸ばし…。
「…チェ……」
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顔の目の前で、炸裂弾が炸裂したかのような爆音と衝撃。そのまま俺の体が後ろでくるりと一回転してから地面と倒れこむ。
痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!!!!
いや痛いなんてもんじゃない!!そのままじたばたと地面の上で顔を抑えて悶絶しても、痛みなんか引かない。いっそのこと顔の皮を引っぺがしたいほどの……!!
「…この程度カヨ」
「っぐぁ!?」
ガッカリするような、失望した声が頭上から注がれる。地面の上で悶絶しているところに、腹に強烈な蹴りをお見舞いされた!亀みてえに仰向けにひっくり返って、空を仰ぐ形になる。ああくそ、陽の光がやけに眩しい…そう思った瞬間、今度は腹を思いきり踏みつけられる!ぐべあぁぁと、我ながら不細工な声を上げる。
「…あの『ワイルド』から貰ッタ『法王』のアルカナノ力ヲ…」
ドスン!!
「ぐぼっ!?」
「そノ最高峰とさレル『コウリュウ』ノ力ヲ…!」
ドスン!!
「ッッカ…!…ゲハァ!!」
「使っておきなガラその程度なノカよォォッッ!!??アアぁぁッッ!!!???」
「っっあああああああ!!!!!」
ガキィィィィィィィィィ!!!!!!!
一際強い罵声と共に、レ級の容赦ない一撃を覚悟した瞬間、響く金属…音…?
「…そんナモン振り回しテ、このカスを助けたツモリか…?チビ」
「ふー……ふー……ッッ!」
「…っ!?」
朦朧とした意識の中で、不意に瞳が持ち上がる。今まで見たこともない形相をした電が、俺の剣を持ってふらつきそうになりながらも、背後からレ級に切りかかっていた。が、その剣を片手間のように尻尾で軽く受け止めるレ級。電を見つめる紅い瞳はまるで、つまらないと放り投げた玩具を見るかのようだった。
駄目だ…お前じゃ勝てねえ…そう言おうと声を出そうとするも、腹をやられたせいなのか、うまく声が出せない…というより、呼吸がうまくできないせいか音すら出せない…。
「何べンモ言わせルナ…『覚醒』も出来ねぇテメェ如きが、俺に敵ウ訳…」
「天龍さんを…殺させなんか……」
「……ッアア!!ウゼェェ!!!」
「…~~~!!」
レ級がとうとう堪忍袋が切れたかのように、怒りの形相で電に腕を伸ばそうとした時だった…。
恐らく、これまで生きてきた中で最高の反射速度だったに違いない。咄嗟にレ級の足首を掴んで引き寄せ、僅かに体勢を崩させる。その瞬間、尻尾が俺の剣を握りっぱなしの電が尻もちをついて離れる。好都合だ、日頃の行いかな?
声がうまく出ないからとりあえず心の中で叫ぶぜ…こい、天龍サンダー…!
バリバリバリバリバリバリ!!!!!
レ級の体が発光する。いや違う、感電しているのだ。足首を掴んでいる筈の俺には相変わらず感電せず、まるで電撃自体が、敵をわかっているかのようにレ級だけに襲い掛かる…けど…ああ、畜生…レ級の言うようにアイツが普段出している轟雷とも評すべきあの電撃には遠く及ばない…。効いているのかいないのか、表情が影になっていて全くわからな…。
「…『ジオンガ』程度デ…!」
「っ!?」
「倒せるト思っているノカよぉぉォォ!!」
滅茶苦茶デカくて硬いハエ叩きでぶっ叩かれたみてえに、俺の体が上から尻尾で叩きつけられる!効いてねぇのかよ…オイ…。
「ハァ……ハァ……弱ェェ癖ニ手こずらセヤがって…これ以上下手に攻撃するとマジで殺しちマイソうだ…」
先程の電撃でぶすぶすと黒い煙を纏いながら、ようやく呼吸を乱し始めたレ級。だがそれだけだ、やはりこの化け物を倒すには威力が足りないらしい…。
…レ級が言っていたな…。この『コウリュウ』とやら、アイツが使っていた時に比べて弱体化していると…アイツだったら、この化け物を倒せていたのかな…。
俺じゃ…扱いきれてないだと…?
「…『デビルスマイル』」
レ級が、ぼそぼそと何かを呟いた瞬間、突然黒い何かが俺の体を走ったかのようなぞわりとした感覚に襲われる。体が…震える?闘争心が…失われていく…?まるで脳みそが直接冷やされているかのような…。
「ああ…あああ……!」
その変化は俺だけではなかった。傍で俺達のやり取りを見守っていた電が、急にがたがたと寒気を感じたかのように震わせる…。目の焦点が虚ろになり、呼吸が正常に働かなくなる…吸っている筈の酸素が、うまく体にいきわたらない…。
これは…恐怖だ…!俺達は今恐怖を感じているというのか!?
「…ハナからこうしてレバ早かったナ…我ながら少し遊びすギタぜ…」
倒れている俺を頭上から見下ろすレ級。さっき何かされたせいか!?目を合わせることすらままならずに、思わず目を逸らしてしまう…。先程まであったはずの立ち向かおうとする意志が、すっかりどこかへ行ってしまった…。獅子に抑えつけられた栗鼠のように震えることしかできない自分を情けなく思う…。
動け…動け…!動けよ…!震えとまれよ…!頼むからいう事を聞いてくれよ…。このままじゃあ…!
動いて…よ…ねぇ…。
「情けねえザマダな…オイ…惨め通り越しテ哀れにも思えて来るぜ…マ、オレッチがやったんダケど…」
レ級が何か言ってイル…けど耳に入らない…お願い…。
「ついテネえな『ワイルド』の奴も、折角俺に奪わレズに済んだ『ペルソナ』が、こんなゴミみたいな奴に
助け…助けて…。
「ガ、それも終わリダ…お前も、そこで仲良く震えてイルチビも、ワイルドも、その中に眠るもの全テ俺ガ頂く…そしたら…」
…
「何も守れナイ無様な終わりを大人しク待ちな…
『お前が大事にしているモノ、このままじゃあ無くなっちまうぞ、それでもいいのか?』
ガシッ!!!
「…アン?」
「て、天龍…さん…?」
「…ゴミだのカスだの、好き勝手言ってくれんじゃねえかよ?えぇ、戦艦レ級」
俯いたまま、先程と同じようにレ級の足首を掴む。ああ畜生、体がまだ震えてるのになんだってまだ足首を掴む手に力が入るんだよ、握っている手が熱いんだよ…。ダメダメな天龍様がよくここまでやれたよ、もういいじゃねーか。もうこのまま気を失って楽になりたい…俺なんかが無理したところで何になるんだよ…。
「確かにお前から見たらそうだろうさ……前の
「……汚ネエ手を放せヤ……」
…ほら見ろ、目の前のレ級が道端の空き缶でも見るような視線を、こっちに送っているぜ…。すぐそばの電だって、震えながらはらはらした視線を送っているじゃねーか…遠回しにもうやめろとかそんな思念送っているに違いねーぜ。一番頼りになる男だって、ただ今絶賛気絶進行中で助けてくれねーんだからよ…。
「笑っちまう通り越して頭にくるぜ…。妹を死なせ、その事を受け入れられず何の関係もない命の恩人を逆恨みして、迷惑かけて…挙句の果てに負け犬みてえに小さく縮こまって情けなく震えて…本当に、本当に本当に最低な嫌な奴だよ俺は…」
「何べんも言わせンナ。放セ…」
いつまでも足を掴まれていることに苛立ちを隠せなくなったのか、レ級の尻尾の先の主砲が欠伸でもするみたいに大きく口を開き、こちらに照準を向ける。どうでもいいけど、それは艤装なのか、それとも生き物か?ははっ、喉元に刃物…もとい大砲突きつけられている状態だというのに、こんな時でも意外と余計な事考える余裕があるらしいな…。以前だったら、こんなゆとりなかったのにな…どうしてだろう…?この『ペルソナ』とやらの影響か?それとも…。
「けどなぁ、こんな最低な俺を見捨てねぇで庇ってくれる妹分が傍にいてくれて、てめえの身も顧みずに駆け付けてくれた物好きな『ハイカラだろ?』が口癖のアホがよぉ…笑って背中を叩いてくれた。ゴミみてえな俺でもよぉ…ずっと傍にいてくれて、助けてくれる奴らがまだいるんだ…。それが…すごくすごく嬉しくて…」
「テメエの自己嫌悪話なンザ別に聞きたクモネーシ、聞いたとこロデ時間の無駄ダ。放さネートまずソノ腕からちぎり落として…ッッ!!?」
「っっ!!」
ブチュン!!
掴んでいる足に、上腕二頭筋の筋力をフル労働させて思いきり指を立てる!人差し指と中指がレ級の足首の肉を貫通してレ級の顔が痛みで歪む!
「ゥゥゥッッ!!ノォ……ミガァッッ!!」
「はわ…!!」
レ級の反対側の足が俺の顎を蹴り上げ、その拍子に手を放してしまい俺の体が1m程後転するように転がっていく。あ、舌咬んだなこりゃ…地味にざっくりいった…。ようやく転がり落ちるのが終わって、ズキズキする体を両手で支えて顔を上げる。
「このゴミがァ!俺の足をよくモ!!」
「ク…くひひ…ざまぁねえな…格下だと思っていたカスに足抉られてよ。アイツは同じような事されても、誰だったか(名前忘れた)に痴漢さん呼ばわりされるより全然マシと平気な風だったけど、その顔見ればお前はそうでもないらしいな…」
口から痺れるような痛み…しかしそれ以上の清々しさに思わず笑みがこぼれる。奴の射殺すような視線ですら、今は鼻で笑い飛ばせる…。
「…舐めてんじゃねえぞ、戦艦レ級…!」
デッドラインは踏み越えた。トラの尻尾どころか、龍の逆鱗に触るどころかぶん殴ってやった…だというのに後悔はない。あるのは…どこかやり遂げたというような達成感に近い…。
「テメーが何の目的でここにきて、アイツとどういう関係があるのか知らねーがよぉ…俺の…俺の大切な『仲間』好き勝手されて…いつまでも…いつまでも指咥えたまま負け犬やってたんじゃあそこにいる電にも、死んでいった仲間達にも…アイツにも…何よりも『自分自身』にも格好悪くて顔向けできねえ……!」
「………っ」
「……天…」
睨むレ級…そして瞳に涙浮かべる電…二人の視線を受けて、生まれたての小鹿のようにぎこちなく、それでも両の足でしっかりと立ち上がる…。アイツが…そうしたように…!ダメダメだった自分が変わるための…始めの…一歩だ。
見てるかよ、暁、響、雷、そして龍田…お前達にも、近くで見せてやりたかったぜ…俺の…今の姿を…変わるきっかけをくれた…アイツをよぉ…。
「来いよ…生まれ変わった新生天龍の本当の力って奴を…見せて…っ!!??」
言いかけた瞬間、気が付けばむんずと顔を鷲掴みにされ、そのまま地面に後頭部を打ち付けられる。そして一拍子遅れてドサッ!と地面に何かが倒れるような音。電が…何かされたのか倒れ伏す音。
鷲掴みにされ覆い被せている指の隙間から見えるのは、怒りの頂点真っ只中のぎらついた紅い瞳…。ああ、畜生…
格好つけた手前、あっさりやられるとか格好悪すぎだろ…。
「本っ当に…俺って奴は…」
「恰好よかったぞ、天龍。ブリリアントだ」
バァァァァぁァァ!!!!!
-----------------
爆音のような衝撃音。その音で私の閉じていた瞼はゆっくりと持ち上がり、意識が覚醒していく。
「………?」
…何があったのだろうか…?駄目だ、先程まで何があったのか思い出せない。起き上がろうにも、体がまだだるいい。
辛うじて動く首を回してあたりを探る…比較的近くに、何らかの生物の死骸のようなものが二つ…そして遠くには、最初に見つけた死骸とはまた姿の違った…それでも雰囲気がなんとなく似ているモノが二つ…。
ズキン……。
「っ…!」
頭の内側で刺さるような痛み…何だろう、あの死骸を見ると何か引っかかるような…違和感…?どんな?なぜ?
けれど、本当に目を引いたのは、ある二つの動く点…。
一つは、蹴られたサッカーボールみたいに吹っ飛んでいくフードを被った何か…何だろう、アレを見てると違和感とは別の…なんだかモヤモヤして嫌な感じが…。
そして、そのモヤモヤする何かをふっ飛ばしたもう一つの物…。
ソレを見た時、頭にかかっていた霧が一瞬で晴れた。
「あれ…は…」
無意識に、少し細めの自分の腕が『ソレ』に手を伸ばした。
太陽に向かって、手を伸ばすように。
「……てい…」
-----------------
放たれた一発の砲弾、そんなイメージがぴったりくる『ヒートライザ』が籠った飛び蹴りが確かな手応えとなってレ級の頬に直撃する。『フェザー番長キック』とでも名付けようか?
…ハイカラだな。
「………!」
「無事…というわけでもないみたいだな…」
目を見開らいて俺を見上げる天龍…。先程までなかったはずの打撲が全身の至る所に見受けられ、顔には切り傷や痣…左目の眼帯や両側頭部の飾りが気絶している間に何があったのか、むごたらしく半壊している。天龍から目を離して少し離れた場所で倒れている電に視線を向ける。…うつ伏せで倒れていてはっきりとはわからないが、少なくとも天龍と比べて外傷は少ない様子…それでも至る所で服が破れ、少なくない数の傷が露になっている。右手に…力が無意識に入る。
「おま…どうし…」
「無理して喋るな…傷に障る…」
ゆっくりと、倒れている電の傍まで近づき小さな体を持ち上げる。眠るように気を失っている電を見て、首筋に手で絞められた跡があるのを見て息を呑む。が、感傷に至っている暇はない…離れたところには気絶している妖精さんもいるのだから…。無言のまま二人を回収し、倒れている天龍の元まで並べるように置く…。
「すまない電、妖精さん。俺が…ふがいないばかりに…」
「…何故ダ…」
ぶっ飛ばしてやったレ級が、ヨロヨロと起き上がる。口から青い血を流し、瞳には驚愕の色を浮かべて…。
「何故ソウヤッテ
「…………」
「前のお前ならトモかく、『今の』お前ニハ『愚者』以外の『ペルソナ』はない筈!!いや、残っていたトシテも…!」
「…その口振りからして…そうか…そういう事か…」
「…っ!?」
いつも余裕たっぷりで皮肉に満ちた嘲笑を浮かべているレ級が、見たことないくらいに動揺して饒舌になっている。俺がこうして立ち上がって、再び対峙しているのが予想外の事らしい。故意なのか、それともついうっかりでなのか、重大なヒントをポロリと漏らしているのを聞き、その会話の中で一つの『確信』が生まれる。
「…俺が急に『ペルソナチェンジ』が出来なくなったのは、お前の仕業だな?レ級」
「っ!!」
「初めて会った時…深海棲艦の大軍を倒した後、いきなり奇襲してきた時…おまえのそのデカい尻尾が…千枝が肉丼食べるときみたいに、俺をがぶがぶしてくれた時かな?どうやってやったのかは知らないが…やるとしたらその時か…どういうわけか、天龍が俺のペルソナの『コウリュウ』を宿していたのも、それに関係があるのか?」
もっとも、明らかに弱体化している感じではあったけれど…『ジオダイン』を扱えたはずのコウリュウが『ジオンガ』だと?それでも、天龍の基礎能力が上がっている感じではあった…。さもなくばとっくのとうにレ級に殺されていただろうし、俺も…こうやって立っていることもなかっただろう…。
「質問に質問で返しているようで悪いが、お前の問いには答えてやらない…応えてやる義理もないがな。…さっきの会話の内容も含めて、逆にお前からは聞きたいことが山ほどある…嫌でも聞かせてもらうがな…!」
「テメェ…!」
「だがその前に、きっちり落とし前をつけてもらおうか?どうやったかは知らないが、俺の培ってきた大切な『絆』を滅茶苦茶にしてくれた挙句に、成長期の大事な骨を丁寧に折ってくれたし、気づいたらいつのまにか増えて倒れている取り巻きを使って、電と天龍をいたぶってくれたんだ…殺しはしないが、お前はミートボール…いや、1000分の999殺しだ…!」
「オイ…それほとんど殺して…」
後ろで天龍が突っ込んでいるがそっとしておこう。多少の荒業を使ってすっかり繋がった拳を鳴らしながら、同じく無茶をして骨をつなげた足を使って、ゆっくりとレ級に近づく…。
…そういえば、挨拶を返してないな、戯れに返しておこうか。ゆっくりと手を合わせながら軽くお辞儀をする。
「ドーモ、レ級=サン。シャドウスレイヤー改め、シンカイスレイヤーこと怒りのシスコン番長デス…」
「ッ!!」
挨拶の途中でレ級が、最初のように俊敏な速さで目前まで迫り、巨大な尻尾で俺を捕食するかのように…。
「…イザナギ!」
素早くイザナギを呼び出して、尻尾の先の頭を掴ませる。挨拶の途中で襲ってくるなんて無礼な奴だな…。
「より強力に…今度は外さない…『チャージ』…そして素早く『ブレイブザッパー!!』」(カッ!)
掴んだまま、強化されたブレイブザッパーをレ級に叩き込むッ!!強力な斬撃が斜の痕跡を施し、驚愕の表情を露にするレ級。そして間髪入れずに腹部に足刀蹴りを容赦なく叩き込んで再びレ級をぶっ飛ばす!が、恐らくはレ級もペルソナ使い…この程度では決定打にはならないかもしれない…。
衝撃で数回バウンドしながら後ろへ転がり込んだ後、怒りの表情で全艤装を発現させるレ級。
「舐め…ンナァァァァァ!!」
主砲を…副砲を…艦載機による爆撃…そして何故か宙に浮いている…魚雷?をフルバーストで俺に向かって発射し、そのことごとくを、十八番のアリダンスで躱していく。
「…『マハジオダイン!!』」
目眩ませ+艦載機を叩き落す目的でマハジオダインを放つ!レ級の視界が覆われているうちに、どういう経緯があったのか、無造作に転がっていた件の天龍の剣を回収してレ級に接近する。
「…『ヒートライザ』」
効果が切れそうになるヒートライザを掛けなおし、レ級まで目前まで接近して横薙ぎに剣を振り抜……。
「ッ!!『イノセントタッ…』」
「何処に向けて撃っている?」
「ッ!?」
…くふりをして、レ級が即座に反撃してくるであろうことをあらかじめ予測し、予想通りにイノセントタックで反撃してきたレ級の攻撃を、十八番の『アリ・ダンス』で躱して素早くターンするように背後に回り込む。レ級が即座に反応してこちらを向こうとする…が、遅い。
「…ペルソナ」
レ級と被せるように出したカードをレ級ごと切り裂き、一呼吸の溜めの後、一閃、二閃、三閃、と連続で持っている剣を振るって切りのいいところで、刀身に電撃を纏わせて斜めに太刀を振る!そしてすかさず、イザナギを召喚して下段から打ち上げるかのようにレ級をふっ飛ばす…。
「必殺…『雷神演舞』…。が、これで終わりとは思うな…『アグネヤストラ』!!」(カッ!)
吹っ飛んで宙に浮いているレ級に、アグネヤストラの隕石の雨を叩き込む。ガラス窓に叩きつける雨粒がごとく、何発もの隕石の洗礼を空中で食らうレ級。ヲ級の時とは違って、空中で身動きも取れずにダメージで意識を保つのもやっとだろう…。普通の深海棲艦ならもはやこれだけで轟沈待ったなしのオーバーキルだが…。
「生ぬるい…駄目押しだ」
アグネヤストラを存分に受けて、頭から落下していくレ級を待ち構えるかのように、再び電撃を刀身に纏わせいつかのように肩の高さまで剣を構える。目標を捕捉…剣の有効範囲に入った…!
「ぺル…!」
全力で剣を横に振り、すかさずイザナギが上空から矛でレ級を切り裂く…『裏十文字斬り』全身からぶすぶすと黒い煙を吐きながら、ゆっくりとうつ伏せに倒れこむレ級。ここからさらに追い打ちを…かけたいところだが、殺すつもりなんかないし、なによりこの化け物の事だ、気絶したふりをしてカウンターを仕掛けてくるかもしれない…。ぴょんと後ろに飛び跳ねて油断なく剣を構えたままにする。
「…どっちが化け物かわからねえな…」
「失敬な奴だな。平凡な高校生に向かって…」
「どの口が言いやがる…」
剣を構えたままでいると、後ろで倒れている天龍が冗談交じりの皮肉を飛ばしてくる。
えげつないなお前。死んじまったんじゃねーか?アイツ…」
「まさか…これくらいでくたばるタマじゃないだろ…多分」
背中越しに聞こえてくる天龍に、自信なく答える。流石に…やりすぎたか?その考えがちらつき始めた時…ゆっくりとレ級の体が動く。ほっとするのと同時に、厄介だという気持ちで喉を唸らせる。
「ウう……が…」
「…あれだけ食らわせてまだ立つのか。普段何食ったらあんな体になるんだ…?」
「お前も大概だが、やっぱアイツも化け物か戦艦レ級elite…!」
冗談交じりの複雑な思いを抱く俺を他所に、ふらつきながらも何とか立ち上がるレ級。が、さすがにあれだけの猛攻を受けて無傷というわけではなく、全身傷だらけの火傷だらけ…表情もまるで熱中症にあったかのように虚ろ気だった…。あの様子じゃあ、戦闘はおろかそのまま放っておいても意識が保つかどうかだな…そろそろ頃合かもしれな…!?
「…笑っ…た?」
「…え?」
確かに、俺の目は捉えた。虚ろな顔をしていた筈のレ級が、急に口角を吊り上げて『ニイィィ』と笑みを浮かべたのを…。何か…マズイ!?
「…『ディアラハン』!」
レ級の体が優しい光に包まれた。これは…ディアラハン!?
その考えを肯定するかのように、光が収まったのかと思えばその中から完治どころか、まるで完二が直したかのように服の破れまで、完璧に直って…まるで時間が戻ったかのように、最初にここに来た状態そのもののレ級が現れた。
「…そりゃあ…無しだろ…?」
天龍が呆然とそう言い放つ。レ級がゆっくりと閉じていた瞳を開いて、ニイィ…と再び皮肉に満ちたあの嘲笑を浮かべる。
「残念だっタナぁ…まさか俺ガ回復手段を持っているだなんて思ってもみなかっタダろ…?力を失っていないお前だっタナらいざ知らず、今のお前じゃあどうしよウモねぇ。テメーらがどう足掻こうと、勝ち目ナンザハナからねぇンだよ!まぁ、お前が復活したのと、そのゴミが『法王』に目覚めたのにハチと、驚いたけどナ…」
「………」
戦艦レ級、奴のペルソナは一体…?厄介だな、生来持っているタフさに加えてまさかディアラハンまで持っていたとは…。勿論奴の精神力にだって限度はある筈、無限に放てるわけではないが…奴の言う通り長期戦に持ち込んだとして、はたして俺の力は持つか…?
…仕方ない。剣を構え直して、イザナギを再び傍らに召喚させる。
「?まだやんノカよ?この期に及んで勝ち目があるのトデも?」
「…切り札があるのはそっちだけとは思うな」
「…?」
「…?切り…札…?」
天龍が困惑の声を漏らして、レ級も僅かながら眉を顰める。…こうなったら、生け捕りは諦めるしかないのか…。
あまり使いたくはなかったんだが…。
「そうやってこっちを舐めて笑っていろ…すぐに、その笑顔を消してやる…」
イザナギが俺と同じ構えをとる。この技は消耗が激しい上に、威力と範囲がデカすぎて昨日の戦いでは使えなかった。流石に『ヨシツネ』のあのコンボには敵わないが、それでも間違いなく深海棲艦化した天龍や、邪○眼ちゃんを助けに来た子達を殺してしまうからな…。
「天龍、申し訳ないがこの庭と墓地、少しばかりふっ飛ばしてしまう事になる…かなり、罰当たりな事をしてしまう」
「え?」
「行くぞ…レ級!『チャー……』」
「……督……」
言いかけた声が、そのまま霧散した。天龍でも、レ級でも、気絶していた電でもない…。
「…っ!だ、誰…だ…!?」
「………!?」
レ級が、目を見開かせる。俺の後方に向けて…。それにつられて、構えを解いて後ろを見てしまう…。そして…出た言葉が…。
「…誰だ?」
見覚えのない、一人の女性が立っていた。10代後半から20代前半くらいだろうか?女性にしては少し背の高い…日本人離れした癖っ毛のある長い三つ編みにした白…銀髪?がゆらゆらとたなびき…おぼつかない足取りでゆっくりとこちらに近づいてくる…。
「天龍、間違いなく菜々子には見せられない…あの夏でも風邪ひきそうなハイカラな格好のあの人は誰だ?ここにはまだ『艦娘』がいたのか?」
「し、知らねえよ…!?あんな奴見たこともねえぜ!?」
「…知らない…だって?」
「…て、てめエ…!あの時ノ『失敗作』!?そ、ソレにその姿…!」
俺と天龍が困惑する中、レ級は何か心当たりがあるような言い方をする。この目の前の女性を知っているのか?ゆったりと歩く金色の視線の先は…俺?金色の瞳って…シャドウじゃない…よな?それに…今…。
「てい…」
「!?」
「…とく?
…俺を見て、提督…だと?
「…失敗作、てめえがドウシして『その姿』取り戻したかは知らねえが…」
「ッ!!」
ジャキジャキジャキジャキっ!と艤装を展開してその矛先を謎の女性に向ける!!まずい!!
「今更目障りダ!!さっさと消え…」
ドクン…。
『…ヤメテ…』
「!?」
『ヤメテ…ヤメテ…ヤメテ…』
「あ…うう…」
『カエシテ…カエシテ…カエシテ…カエシテ…』
「!?」
なんだ、今にも発射しそうなレ級の動きが急に止まった?それに、なにか顔色が悪い…?
『カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ……』
「や、やめ……」
「!?」
「な、んだ?レ級の奴、急に頭抱え込んで…」
『ユウナルカミクンナルカミクンセンパイセンパイセンパイナルカミナルカミセンパイセンパイセンセイセンセイアイタイアイタイアイタイアイタイアイタイ』
「やめロ……五月蠅い…黙レ……!!」
『オマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイオマエナンカアイツジャナイ』
「……っアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッヤメロォォォォォォォォォ!!!!!!!」
「っ!?」
「うおっ!?」
頭を抱え込んでいたかと思えば、急に叫びだすレ級。顔はすでに正気というものが失われている。と、叫びながらこちらに向かって走り寄ってくる!咄嗟に剣を構えるも、俺の横を素通りして叫びながら、来た道を走っていく…。
…息絶えているであろう仲間をそのままに。
何分、呆然としていただろう…俺は立ったまま、天龍は倒れたまま同じ方向…レ級が去っていった方向を呆然と眺めていた。
「な、何だったんだ?」
「…………」
訳が分からない…この数日間で訳が分からない物を飽きるほど体験してきたが、未だにこの現象に慣れることは俺の脳は出来ていなかった…。いったい何が?謎が一つ溶けてまた新しい謎が出てきたというのか?
無くなったアルカナチェンジ…艦娘、深海棲艦、俺のペルソナが流れ込んだ天龍…俺を、『この世界』に呼んだというレ級。
…そして。
「…うぅ…」
糸が切れたように、地面に膝を着く…。どっと全身に襲い掛かってくる疲労感…。
「おい…大丈夫か…」
「…大丈夫って、言いたいんだがな…」
傷は治っても、体力まではなかなか戻りはしないらしい…その状態であんな大技を連発したもんだから…。重要な手掛かりを知るレ級には逃げられてしまったけれど、結果オーライだったかもしれない…。
「けどまだ休んでられない…皆を…運ばなきゃ…」
「…提督」
両肩に、手を乗せられる。…すごく優しい手触りだった。振り向くと、例のあの女性がすぐ顔の近くまで来ていた…。
「お前…いや君は一体…」
「…雲龍型航空母艦『雲龍』参ります。提督、新生機動部隊はお任せ下さい…」
『天龍…サンダァァァァァ!!!』
天龍「………」(俯いて顔プルプル)
龍田「………」(片手に録音機持ってニコニコ)
番長「………」
『真・エターナル天龍サンダー改ニィィィ!!』
天龍「…あ」
龍田「あ?」
天龍「相変わらず鳥肌立つネーミングセンスだぜ!!俺は自分の才能が恐ろしい!!」
龍田「恰好いいわよ天龍ちゃーん 」
番長「ハイカラだな」
天龍「だろ!?はっはっは、いいんだぜ?もっと褒めても!」
龍田(正直、ないわー…って感じだけどね…)
番長(…そっとしておこう)
その下、補足と言うか何というか…。
天龍が譲り受けたペルソナコウリュウですが、作中でレ級が言ってたように、番長が使っていたほどの力はありません。しかも初期のスキルも『ジオダイン』ですらなく『ジオンガ』です。これは天龍の成長と、コミュとかそういう感じでどんどん本来の力になっていく感じです。スキルも、パラメーターも。
簡単に言うと、こんな感じです。