鳴上悠と艦隊これくしょん   作:岳海

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今回はいつもよりかは早く投稿できました。いやぁ、キーボードが動く動く。いつもこうダッタライイノニ。


The balance of the sword in the left hand to the right hand 中編

「頭の中の妄想に気を取られたままでいいのか…?間抜け」

「っっ!!??」

 

 跳躍しながらの、薙刀の渾身の斬撃。開いた胸元に向い、柘榴のような色の刃は、確かな感触とその証拠である青い鮮血をまき散らす。相変わらず鉄分入っているのかと、疑問に思う血の色だな。

 しかし…入ったはいいが浅い。跳躍による踏み込みが足りなかったのと、相手の皮膚がどういう訳か硬かったのが原因か。道中で戦ってきた戦艦級とは一線を画す装甲だ。さすが姫という訳か…。それでも今の一撃は予想外だったらしく、余裕たっぷりの表情を浮かべていた装甲空母姫が、さっきとは打って変わって浮かべる驚愕の表情。

 

「イザナギ…!」

 

 

 だったらもっと驚かせてやる。もっと強烈な斬撃をお見舞いする事で…!俺の合図と共に、空中に浮いていたイザナギが、空から降ってくる流星のように、片手で矛を突き出した状態で装甲空母姫に肉薄。が、再び驚愕するも、それを身を捻じって回避。流石に下半身が変な機械みたいになぅていては、足を動かして躱すわけにもいかならしい。それでも間髪入れない連撃に反応するとは、さすがの反応といった所…が。

 躱された時見るや否や、イザナギはすぐさま躱された矛を両手に持ち直し、全力で矛をバットのように振り回し、台風で飛ばされた巨木の如き力強さと速さで、装甲空母姫の体をぶっ飛ばしてやる。ぶっ飛ばされた敵の体が、水切りのようにバウンドしながら10Mほど飛んで行く。流石に応えたのかぶっ飛ばされた際に、衝撃と激痛で顔が歪んでいるのがちらりと見えた。いくら身体能力が化け物並みとはいえ、やれ砲弾やら、やれ艦載機とかの戦闘に慣れてしまっているから、接近戦に持ち込まれたらてんで弱いらしいな。何せ一直線に飛んでいく弾と違って、射程は短い物の一の太刀、二の太刀と流れるように動かせる連携がこちらにはあるからな……。

 さて、このままヒートライザなり、イザナギに飛ばしてもらうなりして、海面に浮かんでいる装甲空母姫に追撃かけたいところなのだが…。

 

『キャハハハはほほほほほほホハハハハハ』

 

 

 遠くから…正確に言えば俺が倒れていた奥の方から、PT小鬼群がまたもや軍勢を作って俺に今にも魚雷を放たんと雪崩れ込んでくる。

 先程の包囲を抜け出せたのはなんてことない。ダメージを気にせずにただただ強行突破した…ただそれだけだ。イザナギを出して盾にしたとはいえ、『ヒートライザ』抜きでアイツ等の包囲を強行突破したのは、流石に無理をしすぎたか。幸いなことにアイツ等力はそれほどなかったのと、どういう訳か指揮官であるはずの装甲空母姫が、何やら物思いに耽って、こちらの注意が疎かになったからこそ先程の結果につなげることが出来た。たくさんの魚雷による爆音が聞こえたはずなのに、それに気づかなかったとは。自分は絶対に攻撃されないと気が緩み、余裕を通り越して油断していたのだろうか?それともなにか“気になることでも”腹の中に溜めこんでいたのだろうか?その内容が気になるところだが…。

 

『キャハハハはほほほほほほホハハハハハ』

「…今はこっちを何とかするのが先決だな…」

 

 先程より包囲が増していってる敵を見つめ、溜息をつく。よくこんなに手駒を集めたもんだな。先程の戦いの運び方といい、この陣形といい、もしかして俺が一人でやって来ることを見越していたんじゃないだろうな。そうだとしたらやっぱり、あのレ級が一枚噛んでいるのだろうか?この間急に錯乱して消えていったが、もう回復したのか?

 …だったら尚更、こんな所でやられるわけにはいかないな。元いた場所に戻るためにも、あの基地で待っている皆のためにも、俺はここから生きて帰らなきゃならない。そしてこの海域の親玉が、あそこでひっくり返っている姫なのだとしたら、これは逆にチャンスだ。なら、この小憎たらしい深海棲艦の群れを何とかするには…。

 

「…こりゃあ、もう一回腹を括る必要がありそうだ」

『キャハハハはほほほほほほホハハハハハ』

 

 そうこうしている間にも、包囲は益々厚くなり、そして敵は今にも魚雷を投げようと今か今かと迫ってくる。だが今はそれでいい。あとは、“俺の体力が何処まで持つかだな”

 

「イザナギ…」

 

 俺がそう一声呟くと、イザナギが矛を持っていない方の手を高く掲げ、意識を集中させる。

 

「…お前らに『ブレイブ・ザッパー』や『アグネヤストラ』を繰り出そうとも、それら殆どを余裕で躱してしまうだろうし、その分俺も体力を削ってしまう。かといって全員を一網打尽にできる即死魔法をこのイザナギはもっていない…ならば」

 

 そう言い終えるのと同時に、空に雷鳴がカッ!!と迸り、閃光が空気を切り裂く。

 

「海の上だったら、本来は対空手段として使っていたんだがな…PT小鬼群とやら、『雷鳴』が聞こえたら 海から上がりなさいと誰かに教わったかな?」

 

 突如発生した雷光により、魚雷を投げる手が止まるPT小鬼群。もう、今更遅いけどな。

 

 

『艦隊戦で雷は敵向けて撃つなよ?ただでさえ電気を通しやすい海水の上で戦っているんだから、電流が敵だけでなく、味方にも行くからな』

 

 

 天龍にかつてレクチャーした内容が脳裏を走る。が、それも一瞬、そして…。

 

 

 

「『マハジオダイン』ッッ!!!!!」(カッ!)

 

 

 

 イザナギの周囲から放たれた嵐の如き雷光が、小鬼共諸共海に降り注ぎ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャア……!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ううぅ……」

 

 気持ち悪い…。それに吐き気がしてむかむかする。今の状態を簡単に言えばそんな感じだ。

 ズキズキするこめかみを、小さな手で押さえる。まるで高速移動する乗り物に乗せられて、乗り物酔いしたかのように…その十倍も気持ち悪い。なぜか?

 迷いながらもう孤独な海路を進んでいくと、何の前触れもなく突然視界に映った光景。今自分が見ている光景ではなく、目を覆いたくなるほどの惨状が監視カメラの映像のように切り替わって見えた。お兄さんが、大量の深海棲艦に襲われて傷ついている姿。ここの所想像を絶するような体験をしたから精神的な疲労により、自分は幻覚でも見たのだろうか?だけど、幻覚というにはやけに違和感が…いや現実味のある光景…。なぜか自分の心の中の何かが、確信となって感じている。あれは幻覚じゃない、今現実に起こっている事なんだと。

 早く…早く行かなくちゃ…!!私一人で行ったところで何かが変わるかは分からない…でももう嫌!何もできないままで後になって後悔するのは!!

 慌ててポケットから再び羅針盤と、海図を取り出す。ああもう、ここは一体どこなんだろう!?見渡す限り海ばかりだから現在位置がよく解らない!!この羅針盤は、本当に正常に動いているのだろうか!?もしそうでないなら私はどうすれば!?嫌な予感を感じたばかりで気分が悪いのと焦りで、うまく頭が集中できない。まるで脳みそが頭の中でバラバラになって、それぞれ好き勝手に追いかけっこしているみたいに、落ち着かない。どうしよう、どうしよう!?

 

「こんな時に…お兄さんがいてくれたら…」

 

 結局、零れたのは依然として変わらない私の弱さ…ああ、本当に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっちだよ?』

「…え!?」

『あっち、お兄ちゃんはあっちにいるよ?○○○分かるもん!』

「だ、誰なのです!?」

 

 

 

 

 脳裏に響く小さな女の子の声。思わず海図から目を離し、周囲を見渡す!が、当然誰もいない。あるのは見渡す限りに広がる海と、青い空。パニックに陥った事で、とうとう幻聴まで聞こえてきたのだろうか!?

 

 

カラカラカラカラカラカラカラ…。

 

 

 

 海図を持ったままの手の中から、乾いた音が聞こえる。驚いて手の中を見ると、海図ではなく、海図と共に持っていた羅針盤mの針が、動かしてもいないのに意思を持ったかのように急に回りだす。どういう事?私動かしてなんかいないのに…そんな私の困惑を他所に、カラカラと回り続ける指針が、少しずつ動きが遅くなり、やがてとある方向を指し示す。方向はNNW…つまり北北西。指針が止まって数秒経ってから、顔を上げてその方向に目を向ける。

 

 

 

 

『あそこに…お兄ちゃんがいるよ!』

「!?」

『だから…早く行こう?』

 

 

 

 

 

 

 今の声は…?あの声の持ち主が、この羅針盤に何かしたのだろうか?どうやって?そんなオカルトみたいな…。そしてあの声が言うには、私が見ているこの方向にお兄さんがいると…?訳が分からない…。

 

 

「だ、誰なのですか!?この向こうにお兄さんがいるって…どういうことなのです!?」

 

 

 

 謎の声に対して、我ながら冷静さを失った声を張り上げる…が、返事が来ない。

 狐か狸にでも化かされている?昔三女に教わった冗談のようなこの言葉が、脳内を駆け巡る。はっきり言ってさっき映ったあの映像も、謎の頭痛も、そして今の声も、こう片付けた方がしっくりくるくらいだ。本当に自分は、ここの所色々ありすぎて、本当におかしくなってしまったのだろうか?

 手の中の羅針盤に、視線を戻す。羅針盤は、先程の声が示したのであろう方角を変わらずに、差し続けている。そしてそれが方向だけでなく、先程の事が現実であることも示しているかのように。本当に、この先に行ってもいいのだろうか?

 …そういえばさっきの女の子の声、どこかで聞いたことがあるような。あれは、確か天龍さんが…。

 

 

 その時だった。微かに風に乗って、自分の耳に音が運ばれてくるような気がしたのは。

 

 

 

 

 

「…!」

 

 

 

 思わず、羅針盤から目を離してその方向を見る。聞き間違いととらえてしまいそうなその微かな音。あれは、ここ最近になって聞く機会がさらに増えた、魚雷が爆発するような音。更によーく耳に意識を集中させてみると、同じような音が、またかすかに聞こえてくる。間違いない、どこかの誰かが戦闘を行っている。そして今、それが一番当てはまる人物は…!そしてすぐにフラッシュバックする、先程のお兄さんが敵に襲われている姿。

 慌てて羅針盤を見る。まさか…そんな事が。羅針盤が示しているのはまさしく、微かに魚雷音が聞こえてくる音。

 

 

「…!お兄さん…!」

 

 

 もはや疑いようがない。先程あった事など思考から完全に投げ、その場所へ全速力で駆けていく。

 

 

 

 

「今…行くのです…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ね?だから言ったとおりでしょ?』

 

 

 

 

 

 

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 それから何十分、海の上を走らせただろうか。進むにつれて爆音の音がはっきりと聞こえてくる。この近くに、あの人が…。

 

 

 

 

『お兄ちゃん…可哀そう』

「っ!?」

 

 また、あの声…!?それに伴って、僅かによみがえる頭痛。先程のどこかはしゃぐような雰囲気とは違い、どこか悲しげな声。

 

『○○お兄ちゃんや、○○お姉ちゃんたちが、お兄ちゃんの中からいなくなって…それでもお兄ちゃん、たった一人で無理して…』

「………」

『まるでお父さんみたい…いっぱいいっぱい苦しいのに、本当は泣いたり、辛いって言いたいはずなのに…○○○が、連れてかれちゃったときみたいに…』

「………」

『○○○だって、お兄ちゃんの力になりたい…』

 

 …それは誰に言っているのか、私に言っているのか、それとも一人での懺悔にも似た呟きなのだろうか。言っている事の内容は、よく解らない単語があったけれど、どういう事だろう?しかも所々が、よく聞き取れなかった…。本当に、さっきから頭の中に響いてくるこの声は何者なんだろうか?

 …いっぱい苦しいのに、本当は泣いたり、辛いって言いたいはずなのに…その部分だけは、痛いほどよく染みている。

 もし辿り着いたら、あの人は私を見てどう思うのかな。驚くのかな、怒るのかな。会ったばかりの時に、深海棲艦から庇ったときみたいに…。けれどごめんなさい…。

 

 

 

 

 

「電も、お兄さんの無理する姿が見てて辛いのです…」

『…ありがとう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 不意に、再び爆音。あまりの大きさに、思わず片目を閉じて俯く。この音近い!!!俯かせた顔をあげる。と、うっすらと遠くに黒い何かの大軍が見える。一瞬、烏の群れ?海の上なのに!?と思ったけれど、違う。よく見たら、違う!それとも敵の駆逐艦!?否、かなり似ているがよく見たら違う!!駆逐艦に形は似ているけれど、よく見たら白い手足のようなものが見える。しかもそれらが1つの大群で群れ、その中心にいる何かを囲んでいる!?そしてその中心にいる人物が…。

 

 

「…!!お兄さん!!」

 

 言うと同時に、傍らに巨大なシルエットが現れる…イザナギさん!?やっぱり間違いない!しかもよく見ると、お兄さんの後方には、何か白い人型の物体がひっくり返っているけれど…っ!?タ級やル級、ネ級やヲ級とも違う!!まさか…姫!?そういえば先程見えた映像の中に、あれと似たような深海棲艦がいたような…!お兄さんがやったのだろうか!?

 事情はよく解らないけれど、よく見ればお兄さんの姿は、またボロボロだ!!もしかしてあの囲んでいる奴らか、あの姫にやられたのだろうか!?

  

 

「お、お兄さん!!今行くのです!!」 

 

 

 何があったとか、今の自分が行ってどうなるとか、そういう考えはお兄さんの姿を見て全部吹っ飛んでいった。助けなければ!!!そう言って、艤装のエンジンを全開にして、あの人の元へかけようと…!!!

 イザナギさんが、ゆっくりと手をあげ…そして。

 

 

 

 

 

 

 

「マハジオダイン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵の周囲に落ちる落雷。海水を伝う雷撃。そしてそれが、離れた距離にいる私の元へと伝い…。

 

 

 

 激痛と共に、これが自分の声かと疑うような、おかしな声色が出る。これが私の声…?

 

 

 

 刹那、お兄さんが目を見開いてこちらを見ているのが、辛うじて捉え…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 PT小鬼群に向け、マハジオダインを放った。その筈だった。

 俺の目論見通り広範囲による全体高威力電撃は、俺の周囲に集まったPT小鬼群に対して直撃、もしくは海水を伝ってほぼ全体に行き渡った。いくら回避にお秀でた奴らでも、音速よりも早い電撃を躱すことは陽介のように、『電撃見切り』でもつけてなければ不可能だろう。そして案の定、マハジオダインを食らって、全員が轟沈にまで追い込まれた。計算通りだった。

 そしてその余波で、同じく海水の上に立っている俺にも伝って行くことは覚悟していた。そう多く残ってはいない体力に、確かにダメージを受けたものの、イザナギには電撃に対して『耐性』があったから耐えられるだろうと踏んでいた。そしてやはりその通りだった。あとは俺の後方で転がっている装甲空母姫に対して一対一に持ち込み、それから勝機を繋ごうとそう思った。体力に関しては懸念があったけれど、少なくともPT小鬼群に囲まれている状況よりはずっとましだと思った。その筈だったのに…。

 これは、俺の幻覚か…?電撃によるダメージで、俺の視界がおかしくなったのか?頼むからそうであって欲しい。“ここ”に、本来いるはずのない奴がいるなんて、そんな事ありえない…。

 “その人物”が、“俺のマハジオダインに巻き込まれて、身にまとっている服を焦がしてボロボロになりながら、倒れているなんてありえない”…。

 

 ありえない…ありえない…。

 

 マハジオダインによって、次々と沈んでいくPT小鬼群には目もくれず、電撃で少なからず負ったダメージに、僅かによろけつつも、艤装を発進させている筈のない人物の元へ進んでいく。そこまで離れていないはずなのに、やけに遠く感じる。いや、それとも無意識に確かめたいのに確かめたくないという矛盾した俺の心が、そのスピードを妨げているのかもしれなかった。この時はそんな事は心底どうでもよかったが。

 

「あ…ああ…」

 

 そして、ようやく『真実』に俺は辿り着く。認めがたい残酷すぎる真実が。本当に、ここに来てからもう沢山だと、嘆きたくなるほどの残酷すぎる真実が…。

 

「いな…ずま…」

「ああ…う…」

 

 海の上にぷかぷかと弱々しく浮かびながら、僅かに声にならない声を何とか絞り出そうと、ぱくぱくと口を動かす。

 朝までは洗濯したてのだったはずの綺麗な制服は、所々焦げて穴が空き、大量の煤と火傷を負った肌が、見せびらかせるように爛々と太陽に照らされ、止めていた髪留めは解けて、無抵抗に散らばる髪。

 

 

「なんでお前…電…!?」

「はぁ…はぁ…ひ、ひゅ…」

「電!!」

 

 すぐさまペルソナチェンジをして、『イザナギ』から『シルフ』へと変えて、『メディア』が俺と電に降りかかる。天龍にかけている時は、骨折を急速に治すのはよくないと思って、少しづつしかかけてなかったが、今回はそんなこと言ってられない!!PT小鬼群はおろか、eliteのワ級ですら、一瞬で轟沈させるほどのマハジオダイン。直接ではないとはいえ、それを食らって轟沈していない方が奇跡である位だ。

 

「何故だ…?なぜお前がここにいる!?基地に残っていろと言っていた筈だぞ!?どうして…!?天龍達は、この事を知っているのか!?あいつら…!」

「ああ…うう…」

「しゃ、喋れないならいい!!無理するな!!」

 

 パニックで半狂乱になりながら、声を出そうとする電に首を振る。見れば見るほど痛ましい姿の電、それを見る度に、一つの拭い去ることの出来ない事実が、俺に突き刺さる。

 『俺』が…電をこんな風にした…?守るはずだった『仲間』に対して『マハジオダイン』をかけた…?俺が…電を殺そうとした…?そのたった一つの真実が、『メディア』でついでに癒されていく体とは裏腹に、『漆黒の蛇』を何発も受けたように、俺の心を直撃する。

 

「ぁ…ぃ…さん」

「っ!」

「おに…さ…ごめ…さい…お役…ちたかった…に…また…ジをしちゃ…」

「電!いい、無理して喋る…!!」

「い、ずま…は」

 

 首を振る俺に対して、メディアをかける手にそっと弱々しく自分の手を乗せる。こちらの背筋がぞくりとするほどの冷たい感触…。

 

「いな…ずまは…お兄さん…のお役に立ちたくて……言いつけを破って…来てしまい…した」

「ッ…お前…!」

「だって…これ以上…一人で無理している…お兄さんを…見て…いられなくて…。電達の為…に辛い事も一つも言わないで、頑張っている姿が…見て、いられなく…」

「だからって…」

「いな…ずまは、遠せ…いも碌に出来なく、皆の足をひっぱ…てばかりだけど…こんな私…でも…役に…立ちたくて…」

「…っ。だからって、こんな風になっちゃ元も子もないだろう…」

 

 俺は、『仲間』をこんな風に合わせたくないからこそ、一人で頑張って来たと言うのに…。天龍にも、雲龍にも、妖精さんにも、目の前で沈みかけている電にも、心配をかけさせて、迷惑をかけながらも、一人で頑張ろうと決めたのに…。どうして…こんな事になったんだ…?

 

 どうして…俺が出会う仲間は、どうしてこうも俺を案ずる事を考えてばかりなんだ?そのせいで…。

 

 いや何を言っているんだ。俺の…俺の所為だ。電がこんな風になったのは、全部俺の所為じゃないのか。自分の不注意を、突然起きたアクシデントの所為にして…。マハジオダインの海上での範囲を理解しておきながら、俺の不注意で…もっと、周りに目を向けるべきだった…そのせいで、電がこんな目に…。こんな事なら、PT小鬼群やあの装甲空母姫にリンチされていた方が、何千倍もマシだったのに…。

 

 

 いや、そんな事を言っている場合じゃない!俺が今やるべきことは、今目の前で死にかけている『仲間』を助けることだろう!?後悔は後でいくらでもできる!幸いにも、電は何とか命を繋いでいる。道中でメディアをかけながら、なんとか基地まで連れて帰れれば…!

 落ち着け…落ち着け…落ち着け…!

 

 

 

「待ってろ…。すぐに基地まで連れて帰ってやるからな。妖精達に見せてもらえれば…がっ……!?」

 

 

 

 

 電を抱え上げようとしたところを、背後から、衝撃と物凄い熱。前のめりに倒れて、危うく電に覆いかぶさろうとするのを、何とか堪える。しまった…イザナギじゃなくて『シルフ』でいる隙を…。

 

 

 

 

 

「最初に言ったデシょう……逃がスか…人間ガ……」

 

 背後から響く、純粋な殺気が籠った声。気絶したくなるダメージを負って、それでも何とか振り返り、そして、見る。そして、予想外の光景に、目を見開く。

 

 俺の目の前を浮かぶ、攻撃を加えた張本人であろう、禍々しい艦載機。そして数十M離れた先には、先程の余裕に満ちた表情は鳴りを潜め、憎しみと殺意でいっぱいになった、表情で睨む装甲空母姫。口と、先程胴体につけた切り傷から青い血を流している。が、さすがにそのダメージだけでは決定打とはならなかったようで、行動に支障が出るほどではないようだ。

 だが、それ以上に目を引いたのは…。

 

 

 

 

 

 

 忌々し気に怨念を送り込まんばかりの装甲空母姫の後ろに立っている者達…駆逐艦、軽巡、重巡、空母、戦艦による大規模な混成部隊が…先程のPT小鬼群と全く遜色ない、下手すればそれ以上の数が、赤色、金色の瞳を皆俺に向け、追従するように立っていた。黒、黒、黒、黒と、まるでごく小規模な小島が、青い海を侵食するかのように…そして空が、いつの間にか黙黙と薄暗い雲によって、海と同じように灰色に染まっていった。

 

 

「…いつの間に、そもそもここは駆逐艦以外は通れないんじゃなかったのか?」

「艦娘共はナ…だが我々深海棲艦には、そんな事は関係ナイわ。このキス島の奥にいた部隊を、呼び寄せておいタのヨ。数日前、お前ニelite艦隊を全滅させられた後、急ピッチで他の『姫』仲間から少しずつ集めて、何とかこの数を揃えタ…」 

「………」

「しかしまさか、自信満々に用意した虎の子デあル、PT小鬼共が全滅させられるとはネ…。来るべき『AL/MI』に備エた『一艦隊』まで、お前の為にこコデ投入する羽目になるトハ…」

 

 ギリギリと、歯軋りの音が聞こえてきそうな位、歯を噛みしめる装甲空母姫。途中何か言っていたよな気がするが、よく聞き取れなかった…。

 が、今の俺にとってはどうでも良い話だが。こんな時に面倒くさい真似を…!

 

「もはや私ノ面目は丸潰れダ。こうなったら意地でもお前を捕らエテ、他の『姫』や『水鬼』に捧げなくテハ…。フフ、ドウダ?小鬼共との戦闘で、ダメージを負ったその体デこの数を見せつけラレては、体の力が抜けるデショう…?」

「………」

「まさニ絶望ヨねぇ…?もはやお前ニ勝機はなイ。ここまで手こずラセたお前ハ、泣コウが許しを請おウが、唯でハ済まさなイ。殺しはしナイが、考えらレル限りの『最悪』デ、お前にイッソ殺してくレト言わんばかリの絶望ヲ…!!』

 

 もはや勝った気でいるかのように、一人悦に入って演説するかのように、喋りまくる装甲空母姫。

 

 

「う……」

 

 ちらりと…背後の電を一瞥。未だひどい状態で意識があるかも怪しいが、幸いにもメディアによっていくらか回復した甲斐あって、先程よりかはマシにはなっている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「サアどうすル?今のお前ニ、この軍勢を相手取る方法は…!!」

「失せろ」

「…何?」

 

 狂った演説がぴたりと止まり、ハトが豆鉄砲を食らったような顔を見せる装甲空母姫。

 

「聞こえなかったのか?お前と、そのご自慢の腰ぎんちゃくに構っている暇はないんだ。命が惜しかったらさっさと回れ右して、とっとと帰っちまえ…!」

 

 ペルソナチェンジをして、イザナギを傍らに召喚する。そうしてようやく、俺の言葉の意味を噛みしめたのか、見開かせた目を再び細めて、こちらに睨みつける。

 

「貴様…この軍勢を目にしてよくそんなデカい口ガ…しかも今の自分の状態ガ分かっていルの……」

「そっちこそコバンザメがいなけりゃ、デカい口も叩けない三下が偉そうな口を叩くな…。姫?深海棲艦の上位?笑わせるな、名乗るなら裸の痴女様とでも名乗ったらどうだ」

「っ…!!!」

「アリューシャンだかミッドナイトだか何とか作戦の為に、張り子の子分共の数を揃えたかは知らないが、俺は今、物凄く機嫌が悪い。『寛容さ』が『それなり』どころか、『心貧しい』を遥かに下回っているぐらいにはな…!一刻も早く後ろにいる傷だらけの電を基地まで運ばなくちゃいけないんだ。分かったら邪魔せずさっさと消えろ三下……!!」

「……!!!!ッノ人間ノクソガキ如キガァ!!!!!」

 

 

 

 怒髪天を衝く、もはやそんな様子がぴったりくる様子の裸の痴女様。怒声と共に後ろの艦隊が、戦闘態勢を取る。それに合わせてイザナギと俺がそれぞれの武器を構える。

 

 

 

 

「貴様のその減らズ口!あの忌々しいレ級ニソックリダ!!」

「あんな奴と一緒にするな。それこそ不愉快だ」

「ヤカマシイ!!モウ勘弁ナラン!!全艦隊、アノオモイアガッタ小僧ニ、身ノ程ヲ教エテヤレ!!!」

 

 敵の軽巡、重巡勢が自らの方を構え、その後方からは戦艦が主砲を…空母勢が艦載機を吐き出し、駆逐艦が我がと言わんばかりに、こちらに猛スピードで向かってくる。装甲空母姫も、どこからか再び艦載機を吐き出して、俺に向かって集結させる。

 

「イザナギ…『ヒートライザ』

 

 まずは俺の全能力をアップ。

 

「…『チャージ』」

 

 そして次に物理ダメージを3倍近くまで引き上げさせる。『アグネヤストラ』以上に、『この技』は、俺の体力を多く消耗する。今の体力ではそれが心配だが、今の状況ではこれしかない。

 一気に…そして速攻で終わらせる!!

 

「行くぞ!!イザナ…」

 

 

 イザナギが持つ、『切り札』を敵に向かって放とうとした、刹那。

 

 

 しゅいいいいいん…と、静かに音が鳴った。そして、次には眩いばかりの、黄色い光。

 

 

「!?」

「ッ!?ナンダ!?」

 

 

 

 丁度突撃しようとした敵艦隊に向けて、黄色い光は魔法陣のような物に変化。

 そして、光が急に強まった。俺達を隠すかのように!!

 

 

「ウオオオ!!!!???」

「こ、これは!?」

 

 技を放とうとした、手を止めて、思わず顔を庇うように腕を構える。そして、唯一働く耳が捉えたのは、鋭い音。

 

 

 

「『…ダメだよ?』」

「!?」

 

 次いで後方から聞こえる、2つの聞き覚えのある声。2人の人間が、同時にハモッたような重なった声。眩い前方の光から目を逸らして、後方に視線を向ける。

 

「っ電!?」

 

 先程まで倒れていた筈の電が、顔を俯かせたまま平然とと立っている。そんなバカな!?あれほどの傷を負っていながら、傷が治っている!?驚いていいのか、喜んでいいのか。確かにメディアで回復はしたものの、全快するまでにはなっていない筈!?

 それになんだ、この違和感は!?さっきの突然発生した黄色い光といい、まるであれは…!

 

「おい、電!お前、大丈夫…」

 

 

 

「ど、ドウナッテイル!!??」

 

 

 取り乱したような声。ようやく光が収まったらしく、そこに視線を向け、そして…驚愕する。

 

 

「!!」

「わ、ワタシノ艦隊ガ!!??貴様!!一体!!」

 

 取り乱す装甲空母姫。その視線が向けられるのは、突撃したはずの駆逐艦、そして後方に控えている筈の戦艦や空母勢が、大した傷も負っていないのに、ゆっくりと『轟沈』していく様。軽巡や重巡までもその数をいつの間にか明らかに減らしている。

 

「な、ナニガ起コッタ!?い、今のアノ光ハナンダ!?」

「今の光…まさか…!?」

 

 

 

 

「『もう、一人では無茶したら駄目だよ?』」

 

 

 俺を含めた全員の視線が、後方の電へと向かう。それと同時に、電の背後に浮かび上がる『像』。

 

 

 

「電…いや、まさか…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁型四番艦 駆逐 『電』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『もう、守られるばかりじゃないから…』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルカナ  『正義』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『もう、傷つけさせない』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナ  『スラオシャ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『菜々子、もうお留守番ばかりじゃないよ?』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…『瑞雲』が戻った」

「本当?じゃあ…」

「ああ、『目標』はそう遠くにはいないらしい。しかし、何やら戦闘がおこっているようだから、急いだ方がいいかもしれないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急ごう。『キス島沖』へ」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「了解」」」」」

 




レベル1


電「はわわ!!こ、これでみんなを守るのです!!」(スラオシャ装備)

レベル50


ブロr…電「お前たちが戦う意思を見せなければ、この『キス島沖』を『マハンマオン』しつくすまでなのですゥ!」
パラガs…天龍「落ち着くんだ電ぁぁ!」


レベル99


神霊・エンシェント電(デン)「電の老いたる者なのDEATH」
キヨハル「おぉ~!僕が頑張って祈ったから神様が迎えに来てくれたよぉ~!」


ブロr…番長「何処へ行く気だぁ?」
パラガs…フリン「き、君と一緒に悪魔合体する準備だァ!!」
ブロr…番長「一人用の『邪教の館』でかぁ?」
バロウズ「マスター逃げて、超逃げて」
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