惑星機構 MECHANIZERD 作:アルファるふぁ/保利滝良
1話
星間航行機から降り、マーカス・ホワイトは苦笑いした 辺りは草一本もない荒れ果てた大地だ
第666番生活可能化惑星『チルドレン』 この惑星は地球政府が唯一管理を疎かにした星である
理由は単純、資源がほとんど無いから そんな利用価値のない場所の管理に力を注ぐなどもってのほか 地球政府の管理局が一つ建てられただけで、後はもうこの惑星は放置されていた
やがてこの星から新物質が見つけられるものの、その時には既にチルドレンの管理局は現地にいたテロリストくずれに制圧されていた
やがてそのテロリストくずれ達は、三つの派閥に別れて互いに争っていた
今やこの星は硝煙蔓延る大戦場 益々手を付けられなくなったチルドレン星に、地球政府は事実上の放棄を決定する
マーカスはそんなこの星に興味を持ち、様子を写真に残して地球に広めることを目論んでいた
確かにこんな荒れ果てた星に、価値はないと感じる マーカスの第一印象はそんな感じだった
航行機のパイロットから通信が入る トランシーバー越しのやや怯えた中年の男の声がマーカスに念を押す
「いいか、俺はアンタをここに置いてきたことの責任は一切取らないからな!アンタの独断だ、俺は無関係!いいな!?」
いかにも保身的なその台詞に、マーカスはまた苦笑いする
「了解了解、そこんところはフェアにいくさ 安心してくれていいよ」
トランシーバーに口を近づけ、一言言ったあと、マーカスはカメラとリュックサックを持って歩き始めた
幸い登山で鍛えた体は、惑星一週など楽々にこなせるはずだ
見果てぬ荒野を見つめ、双眼鏡片手に辺りを見回すマーカス 何か良いネタは無いものかと視線を振り回す
「うわ・・・やってるやってる」
双眼鏡の向こう、何体かの人型巨大ロボットが銃撃戦を繰り広げている
聞いたことがある チルドレンにて発見された新物質によるエンジンや機構で動く、アニメやマンガの世界から飛び出した人型戦闘ロボット
名前は確か、『メカニザード』
そのメカニザードが、人間の持つような銃がそのまま大きくなったようなものを持って撃ち合いをしている
片方は赤い機体を、もう片方は青い機体を使っている
マズルフラッシュと引き金を引く指がシンクロし、一種の芸術が作られる メカニザードの一機が蜂の巣になった 後ろに倒れたメカニザードから、黒い煙が立ち上る
別のところで、自分とは別の色のメカニザードを撃破しに掛かるメカニザードがいた また別のところでは、背中を見せた敵を撃ち抜いた者が、今度は自分が背中を撃ち抜かれる光景があった
「あっ、撮らないと!」
マーカスは急いでカメラを向け、最大望遠モードでその一場面をシャッターに納める マズルフラッシュとシャッターフラッシュ 二つの光が地面を照らした
その時だった、黒いメカニザードが現れたのは
黒い、と言っても、外見的特徴は色と頭の形だけ 他は今戦っているメカニザードと同じだ マーカスは黒いメカニザードが戦場に飛び込んだことでようやく、争っていた2陣営が同一機体を用いていたことに気付いた
2陣営の機体と同じように、背中に埋め込まれたスラスターで高速移動する
黒いメカニザードが左手に握っていた銃を撃った その銃も、2陣営のものと同一であった
ドラムベースを叩くときのものを百倍大きくしたような音がマーカスの耳に届く しかしそれは先程までて既に聞き慣れていた
マーカスは別の部分で黒いメカニザードに驚いた その機体の放った銃弾は、一発も外れずに青いメカニザードを貫いたのだ 無駄弾を一発も使わずに、瞬きより早く、一機葬られる
「すげぇー・・・」
そしてその一瞬後、赤いメカニザードに肉薄する黒いメカニザード 背中のスラスターが光を放ち、推進力が生まれる
そして、右手の大剣らしき武器を降り下ろした
「えっ!?」
派手な火花と金属音を立てて、赤い機体は真っ二つとなった
おかしい、あの機体は赤陣営の味方ではないのか マーカスは驚いた
一瞬で二機のメカニザードを倒した、黒いメカニザード それを見た両陣営はすぐさま背中を向けて逃げ出した まるで黒いメカニザード一機に怯えるように
一機残った黒いメカニザード
その顔が、カメラレンズ越しのマーカスを睨み付けた あまりの迫力に、小さく悲鳴を上げるマーカス
その場から離れようとした時、既に目の前に黒いメカニザードはいた 違う、動けなかったのだ、余りの迫力にマーカスの方が動けなかった
マーカスを見下ろした黒いメカニザード
その胸部が開き、中から男が現れた 乗り手には違いないが、その目はまるで獣のように輝いている
そしてその男もやはり、マーカスをその場に留まらせる程の恐怖を帯びていた
「チッ、つまらねえ」
これが、男の第一声だった