惑星機構 MECHANIZERD 作:アルファるふぁ/保利滝良
ご冥福とお早い復興を願っています
その男はナイフで蛙を捌いていた 腹が減ったからである
このチルドレン星、環境自体は地球に似ているので、地球にいる生物は大体生活できる そもそも地球に環境が似ていなければ人間が住むことなどできないので説明する意味はないが
蛙の腹部に切れ込みを入れ、そこから腸を引きずり出す
後は簡単、刻んでそこら辺にあった可食草と一緒に湯の沸いた鍋に放り込む そして塩やら香辛料で味を整える 昼食にしては酷いものだが、食わぬよりましだ
完成した 野良蛙のスープだ 鍋から直接スプーンで掬う 自分以外にコレを食べる者はいないので、マナーやルールなど無視した
その男の目の前にいたマーカスが、香辛料の匂いに唾を飲み込んだ しかし材料の蛙を見て、今度は今にも吐きそうなくらいに顔を青くする
「弁当とか持ってきてないんですか?」
気持ちを紛れさせるために、マーカスは男に質問を始めた
しかし男はマーカスを全く無視し、黙々と食事を続けている
鍋をスプーンが叩く音、蛙の骨が噛み砕かれる音、スープを啜る音 少し妙な音だけが、その場に寂しく響いている
空になった鍋をすぐ隣の川でゆすぐと、男はナイフを懐に仕舞って歩き出した
先程からずっとへたり込んだままだったマーカスが、慌てて立ち上がりその後を付いていく
「僕はマーカス・ホワイト 地球から来た記者で、この星の現状を写真に残して地球に持ち帰るために・・・」
「それでオレに今からインタビューって訳か」
マーカスの自己紹介を、男は大変不機嫌そうに遮る 明らかにうっとおしそうな声音である
「そ、そうです いろいろと詳しい話を・・・」
マーカスが話を続けようとしたその時、男は仮面を被った
鉄の仮面だ 仮面それ自体に大きな特徴はないと同時、男は走り出した
男の進行方向には
飢えたハイエナ
そう、肉食動物だ たしかに蛙がいるのなら他の動物だっているのだろう
ただマーカスに理解できないのは、あの男が物凄い勢いでハイエナの群れに突撃したことだ そして、そのスピードをキープしたまま蛙の腸を体に塗りつけていた
すると、血液の臭いを嗅いだハイエナが、男の方向を振り向いたのだ
「ガハハハァッ!!」
男は正気とは思えない笑い方をしながらハイエナの群れに突っ込んでいった
「え?えええっ!?」
だがハイエナも馬鹿ではない 男に飛びかかり牙を突き立てようとした
そう、突き立てようとした
その前に男がハイエナの腹部に、強烈なボディブロウを浴びせた 軽く数メートルは空中に飛び上がった一匹のハイエナは、地面に落ちたあとに血を吹きながら息絶えた 恐らく、男の拳が重要な内臓を破壊したのだろう
仲間の様子を見たハイエナ達が、一目散に逃げようとした しかし、それは叶わなかった
マーカスは見た 黒いメカニザードが、撃破した他の機体で即席のバリケードを作っていたことを 倒れた残骸が邪魔で、ハイエナの群れは逃げることはできない
「やっぱり、人間より獣の方が強くっていいなァ・・・お前らもそう思うだろ・・・?」
鉄の仮面を脱ぎ捨てた男 そこにあったのは、とても正気とは思えない、完璧に狂った表情 それは多分笑顔と言えるものだろう しかしその男が浮かべていた笑顔は、ハイエナ達を錯乱させるには充分な恐ろしさを惜しげもなく晒していた 戦いに飢えた、狂った笑み
(ま、まさか、あの人・・・ハイエナにあんなスマイル見せ付けるためにわざと仮面を・・・!)
そして、ハイエナと男の死闘が始まった