惑星機構 MECHANIZERD 作:アルファるふぁ/保利滝良
やや高い丘の上に、その建物はあった 全体は白く、清楚である 戦乱渦巻くチルドレンには不釣り合いな印象を受けるその建築物の前に、マーカスは突っ立っていた
「ごめんくださーい!」
木製のドアを二回ノックして、はっきりと呼び掛ける
金属の鍵が音を立てて解除され、ドアがゆっくりと開いた
「初めまして、こんにちは」
「あ、ああ初めまして」
美人がいた 絶世の美人だった
柔和な笑顔、優しそうな瞳、白磁のような肌、風になびく艶の煌めく金髪、豊満な肢体 世の男のほぼ全てが求めるモノを兼ね備えた完璧な美人がそこにはいた
正直に言えば一瞬見惚れたが、別にマーカスはナンパのためにこの場所に来たわけではない
「ホープディストラクターさんに、ここに来るように言われたのですが・・・」
「まあ、ホープさんのお知り合いですか?あの人から聞いています」
あの戦闘狂にそそのかされたのだ
「あの丘の上に、俺の友人がいる孤児院がある そこならこの星の事情を話してやらんでもない」
寝転がったメカニザードの上に乗って爪切りをしながら、ホープディストラクターと呼ばれる男はぶっきらぼうに言った
「ほ、本当ですか!?」
「嫌ならいいんだぞ」
「いえ全然!ありがとうございます!」
取材のチャンスだ これを望んでいたのだ 殺し合いを眺め続けるためにこの星にやって来たわけではない
今にもスキップで駆け抜けようとするマーカスの背に、ディストラクターは自らの爪を眺めながら告げた
「その後俺の得になる何かを持ってきたらちゃんと教えてやろう」
「・・・えっ?」
器用にもスキップ途中で片足で回れ右をしたマーカスは、呆けたような声をあげた
「と、得になるものって・・・?」
頬を引き吊らせながら、マーカスは聞いてみた 聞かなければ、何をすればいいかはわからない 特に目の前の男は
「金は駄目な」
そう言うと、ディストラクターは手袋をしてメカニザードのコクピットへと滑り込んだ
孤児院へ入ったマーカスは、沢山の子供達に取り囲まれていた
「あらあら ダメよ、お客さんが困ってるでしょう?」
来客を、物珍しそうに見詰める子供達を、修道服を纏ったあの女性が注意する
すると子供達は、今度は女性に群がっていく
「シスター、この絵本読んでー!」
「一緒に遊ぼうよシスター!」
「シスター、ねえシスターってばー」
柔和な笑顔で子供達の相手をしつつ、シスターと呼ばれた女性はマーカスに声を掛けた
「それで、何の御用でしょうか?」
見ず知らずの少女少女に包囲されていたマーカスはその瞬間まで固まっていた が、その一言で石化が解除される
咳払いを一つ
「ホープディストラクターさんが得する情報を教えてください」
「うーん・・・わかりません」
肩を落としたマーカス が、テーブルの上に何かの書類を見つけ、手に取る
「ん?」
借金明細だった
「あっ、それは・・・」
少し慌てたように呟くシスター
「あ、ああすいません デリカシーの無いことを・・・」
(まあ仕方ないよな、こんな星でこんな数の子供達の生活費を女手一つで稼げるわきゃないよな・・・あっ!)
「いえ大丈夫です ただ、あまりじろじろ見ないで欲しいです・・・」
「次から気を付けます・・・ところでお金はどこから借りてますか?」
「上等だ」
ホープディストラクターはマーカスが渡した情報に口角を上げていた
「ええ、かなりの大規模ですよ」
マーカスは少し暗い表情で更に男を焚き付ける
「じゃ、行ってくるわぁー」
「遠くから見てても良いですか?」
メカニザードのコクピットへ入ろうとするディストラクターに、マーカスが確認した
「死んでもいいなら着いてこい」
ぶっきらぼうな声の後、メカニザードが歩き出す
「は、はいっ!」
歩き出した黒い巨人の後ろを、マーカスはバイクで着いていった