目指すは超サイヤ人   作:ひつまぶし。

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 フリーザ様が復活すると聞いて思わず書いた。取り敢えずは魔人ブウ編まではドラゴンボール世界と絡ませたい。





第一話 その種族の名は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男なら、目指すは最強。天の頂。なんて考えるのは何人いるだろうか。昔ならバトル漫画に憧れて最強なんて称号を目指す傾向にあるのだが、最近はやれ初めから最強でハーレム作るだのとそんなバトル漫画にあるまじきふんだんに取り入れた恋愛要素のせいで向上心が薄れた。

 それこそ、ドラゴンボールの孫悟空に憧れてかめはめ波の練習をしたり気合を入れて超サイヤ人になろうと無駄な努力をしたものだ。黒歴史と表現するがそれもまた良い経験だろうと思われる。悟って心が広がる、なんてそれらしい事を思ってみる。

 

 まあ、ダラダラと宣ったがこれはもう現実逃避でしかない。そろそろ現実に目を向けなければならない。

 ポツンと自分が立つ場所は超絶爆弾の爆心地と言えるようなクレーターのド真ん中。呆然と思考が定まらぬ頭でいくら考えても現状の答えは出ない。記憶がゴチャゴチャしてどれが本当なのかもわからない。中には人生の中で嘘を吐いた事もあり、嘘か誠かわからぬ状態。

 いかん。これはよっぽど重症と言える。嘘と本当を見分けられないのではイカれているとしか思えない。一体何が起きたのか。宇宙から落下して地面に衝突したのか? 死んどるわ。じゃあ何が起きたのだ。

 

 ざわざわと風が吹く感じがする。木枯らしとも言える冷たい風が体にぶつかり、ブルリと体を震わせると思考が少し定まった。過去の記憶に思いを馳せる以前に周りの事が見えるようになった。クレーターであるのはわかっていたが、どんな場所にクレーターができたのかが何となくわかった。

 どこかの集落、だろうか。残骸がそこら中に落ちている。街と表現しなかったのはその残骸が古めかしく、集落という言葉に合う物体ばかりだからだ。段々と冷静になる頭で判断でき、落ち着いている事がわかってきた。記憶の整理はまだ無理だが周りを見極める事ぐらいはできる。

 ……? 誰か、いる? 気配らしきものを感じる。こちらの様子を覗っていると考えるよりも早くその答えを導き出した。

 ここがどこなのかと聞こうと初めて固まった体の足を動かし、気配が感じる場所へ向かおうとすると膝から力が抜け、意識が暗転した。あまりにも突然だったので顎を強打した。痛い、と思う前に意識がぶっつりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハグハグマグマグアグアグ。自分でも信じられないほどの食欲が漲り、不思議な味がする食べ物を片っ端から喰らい尽くす俺の姿が。味なんぞ二の次。今は何でも食べて腹を満たすのが大事だ、と“俺”は思っている。

 次々と出される謎の肉に魚を腹の中に放り込んでは更に食す。まだまだ空腹なのもあるが、目の前の光景の非現実から顔を背けたくて食事に集中している。

 

 

「ホボババササ。ロキジュツユユ」

 

 

 日本語でおkと言ってもわからないんだろうな。見た目が完全に日本人どころか人間ですらないもの。

 食事を運んでくれているのは人間ではない。ザ・宇宙人と言える化物みたいな外見で六個の目が食べている俺を見ている。ガン見している。視線で穴が開くのではないかと思われるほどガン見されている。地味に綺麗な瞳をしてやがる……。

 あ。この肉は美味い。そんな事を考えていると、六つ目の宇宙人が何体か集まってコソコソと会話し始めた。何を話しているのだろうか、と持っている知識から考えると思わず食事の手が止まった。

 

 ――太らせて食べる作戦ッ!?

 

 恐ろしい。もし本当なら……そんな事よりも食事だ。腹が減っては戦はできぬ。

 

 

「アストロロボササ。食事はお口に合ったかな?」

 

 

 シャ、シャベッター!? 驚きながらも食事の手は止まらない。リスのように口一杯に頬張って六つ目の宇宙人の言葉に耳を傾ける。返事はせずにグッと親指を立てて返答をする。

 満足そうに? 頷いた宇宙人は四本の腕を組んで2本の足を組む。これは突っ込まない方がいいのだろう。宇宙人だからこれぐらいが普通なんだ。そうなんだ。

 

 

「まずは謝らせて欲しい。盟約に従い、我等は救助に向かったが間に合わなかった。助けられたのは其方だけである」

「モゴモゴ。モガガガ?」

「うむ。他の者は見当たらなかった。おそらくは其方の仕業であろうとは思っておる」

 

 

 普通に会話が成立しているのを突っ込んだ方が良いのだろうか。普通に会話が成立してる上に口にものを含んだ状態でも何を言っているのか理解している。

 

 

「ムゴ、モゴゴゴゴ」

「うむ。それは我等の発明の恩恵である」

 

 

 ビゴーンとペンダントのような首飾りが光を放つ。宇宙人が言うには翻訳機だそう。宇宙どころか銀河規模での言語も通訳可能だとか。ひみつ道具にこんなのがあった気がするようなしないような。

 翻訳機があるからこそ会話が成り立つらしい。言語として成していない言語でさえも翻訳するのだから高性能ってレベルじゃないと思う。

 会話をしていると自然に宇宙人に対する警戒心が薄れてきた。決して、食事で腹が満たされたとか飯が美味いとかで心を許すわけではない。決して。

 

 

「其方は最後の生き残り。野蛮な民族の中にいた嘗ての誇り高き者の志を継ぐ子供」

「?」

「かの盟約を交わした者が言うには何れ現れる驚異に対抗できる手段の器となり得ようとのこと。故に、我等は其方を保護し、見守る役目を担う」

 

 

 ごめん。何を言っているのかよくわからない。何だ、その主人公にありがちな設定は。

 宇宙人の名前はまだわからないが友好的な様子なのは間違いない。わかりやすくまとめると重要な存在だから保護してやるよ、的な?

 

 四本の腕であれこれと説明する宇宙人。ついでにデザートらしきものも出されてかなりの高待遇。食べ物を用意してくれた宇宙人も皆、同じ顔と体をしている。四本の腕は勿論、六個の目が好奇心を宿して俺を見ている。綺麗な目をしてやがる……!

 自分達を銀河一の科学者と言う。研究者でもあり、この宇宙を支える賢者の宇宙人とも言える存在だそうだ。種族名はあるそうだが独特な発音で理解はできなかった。素の発音でさえも理解できなかったのだから無理だという話だ。

 宇宙人である事にも驚いたが、今いる場所がなんと彼等の作った宇宙船だそうだ。驚きのあまりに廊下に飛び出して外の景色を見てしまうほど驚いた。

 

 スゲェェェェェ!! マジスゲェェェェェ!! ガガーリンの言う事も何となくわかる! 思わず星の色を見てあんな事を言いたくもなる!

 

 

「ここは東の宇宙の端っこ。嘗ての惑星プラントから大きく離れている。争いを望まぬ一部の一族の者が離反してここに逃げ込み、我等と盟約を交わした」

 

 

 眼下の星は綺麗なエメラルドグリーンに染まっている。地球の青い星とはまた違った美しさがある。

 隣に来た宇宙人が少し説明をしてくれる。この惑星は離反した一族の一部の人間? が隠れて暮らしていた場所だそうだ。普通と比べても小さい惑星なので探知も引っ掛かりにくく、宇宙人の助けを借りて大元の一族に見つからぬようにしているらしい。

 

 

「我等、科学の力を貸す。我等が盟友、我等を守る。利害関係は一致していた。盟友の子供が其方。希望の象徴と表現し、大切に育てていた」

 

 

 盟約の中にその子供を最優先に守る、といったものがあるらしい。その子供は俺を指すらしく、今回は保護する為に訪れたのだそう。

 少し待って欲しい。だったら俺は何なんだ? そんな大層な存在ではないと自覚しているし、何よりも子供ではないとわかっている。一体、何が起きているのだろうか。意味がわからんってレベルじゃない。これは果たして打ち明けてもいい内容なのだろうか。

 実は俺は俺じゃないのだ。この体は別の誰かで本当の俺は子供ではないんだ、と。

 

 ……駄目だ。この様子からしてこの宇宙人はこの子供を大事にしているのは言われずともわかる。もし真実をぶっちゃければ宇宙人に殺されるかもしれん。

 

 

「結果、盟友は其方に希望を託して逝った。皆、良い奴だった。野蛮なサイヤ人とは思えないほど穏やかで善良な者達であったのに」

「 」

 

 

 眼下の惑星を窓にへばりついて眺め、隠そうと決めた瞬間に宇宙人から衝撃の事実を聞かされた。サイヤ人だって? 馬鹿な。これは何のドッキリだ。

 

 

「我等の目的は宇宙の発展をコントロールすること。豊かな惑星には資源を絞らぬ生き方を授け、貧しき惑星には豊かになれる手を与える。

 だが、それを妨げる者がいる。我等とサイヤ人が討つと決めた一族だ。星を侵略し、暴虐の限りを尽くすフロスト一族を絶滅させる。正義の心を持つサイヤ人の伝説、超サイヤ人になるべく生まれた子を育てるのはその為だ」

「それが、俺?」

「然り。異界の魂を完成させた器に注ぎ込む事で人工的に超サイヤ人に覚醒させるのが最終目的也。こうして生きている事が何よりの成功と言えよう」

「 」

 

 

 今の発言、この宇宙人は知っている? 俺が本来のサイヤ人の子供ではない事を? 馬鹿な。何故わかったのだろうか。いや、よくよく考えればそもそもそれを前提としてこの体を作ったのか?

 

 

「我等は歓迎する。伝説と言われた超サイヤ人になるべく生まれた子を。我等は祝福しよう」

 

 

 意味のわからないまま宇宙人の四本の腕で俺を持ち上げる。まるで選ばれた子供を抱き上げて太陽に翳す民族のように他の宇宙人に見せられる。祈るように四本の俺に向けて膝を付いている姿は見ているだけで恐ろしいものだった。

 ふと、サイヤ人である。と言われて気付いたが今の俺の体、よく見れば尾があるではないか。何で気付かなかったのだろうか。

 

 よくわからぬまま、選ばれたサイヤ人として持ち上げられる事になった。どういうことなの……。

 

 

 

 

 

 

 





 あんまり最初はZ戦士とは絡まない方針。ナメック星編のラストぐらいに悟空と絡ませようかと。

 こうやって書くのは久し振りなので見苦しいのは勘弁してください。努力する次第です。

 感想、お待ちしております。





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