目指すは超サイヤ人   作:ひつまぶし。

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 更新は不定期になるかも。一話一話の文字数を増やす事を考えたらこうなりました。

 更新は基本、夜にする予定です。






第二話 初めの第一歩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足を組み、座禅の状態で熟考に入る。一番に覚えた空を飛ぶ術、舞空術を使って宙に浮きながら腕を組んでいるが一向に快方に向かわない。

 

 ――超サイヤ人にどうやってなれるんだっけ?

 

 この一点に尽きない。サイヤ人であるなら目指すのはまず、超サイヤ人。ドラゴンボール世代の人間ならまずそう考えるであろう目的の為に必死に昔の記憶を引っ張り出して思い出そうとしているが芳しくない。

 最初の超サイヤ人である孫悟空は穏やかな心を持ち、激しい怒りによって目覚めたのが超サイヤ人であると言っていたのは覚えている。それ以前の条件というのがどうしても思い出せない。フリーザ戦の孫悟空は界王拳十倍に耐えられる戦闘力を持っていたのは間違いない。

 超サイヤ人になる前には界王拳二十倍なんてものを使ってフリーザを圧倒していたはず。それでもフリーザに劣る戦闘力だった気がする。超サイヤ人になれば圧倒している描写を考えれば界王拳二十倍と超サイヤ人の間の戦闘力にフリーザが入る形になるのではないだろうか。フルパワーになればどっこいどっこいだったような違うような。

 というかドラゴンボールのパワーバランスがインフレし過ぎて詳しい戦闘力なんてわからぬ。後々にはベジータが超サイヤ人のバーゲンセールと言うほど超サイヤ人が伝説である事が眉唾物になってるし。

 

 俺を保護した宇宙人、正確な発音はジッカ人。銀河一の科学力を持っていると言うその種族はフリーザ一味が持っている科学力を大きく超えている気がしてならない。

 サイヤ人育成ツールなる死に戻りマシーンとか恐ろしいものまで生み出す科学力もある。これに合わせ、ドラゴンボールの知識があれば超サイヤ人になんてあっという間だよ、と思っていた時期もありました。

 ジッカ人の感情抑制コントロールシステムで怒りの感情だけを増幅しても一時的に戦闘力が倍加するだけで超サイヤ人にはならん。激しい怒りがトリガーになるのはわかるのだが一向に超サイヤ人になる兆しがない。

 

 どちらかといえばインドア派の俺からすれば体を動かすのはあまり好きではないが、憧れのドラゴンボールの世界に入れた上にサイヤ人という種族になれたのだ。鍛えれば鍛えるほど面白いように強くなれる事が何よりも楽しく思える。

 ジッカ人のトレーニング器具を使って体を鍛える合間の休憩で座禅を組んで超サイヤ人の知識を引っ張り出しているのが今なのだが、後半のドラゴンボールは皆がポンポン超サイヤ人になるものだから超サイヤ人になれる条件だのは記憶にない。

 ジッカ人は気長に超サイヤ人に至るまで待つ、と言うがフロスト一族とかいう宇宙を荒らす種族がこちらに攻め入って来ないとは限らないので早くなれと本心では思っているはずだ。

 

 

「修行は捗っているかね」

「長老? お疲れ様です」

「ふむ。また色々と壊したものだ。すぐに修理させよう」

 

 

 ジッカ人特製トレーニングルームに入ってきたのは俺を保護した宇宙人、ジッカ人の長である長老。六つ目と四本の腕が特徴の宇宙人がゆったりとした歩調でこちらに歩み寄ってきた。舞空術座禅を解いて地面に足を付け、挨拶をする。

 幾分か身長が高くなったとはいえ、ジッカ人長老は今の自分が三人積み重ねた身長を持つ長老が相手だとどうしても首は上を向く。子供の頃は地味に首が痛かった。

 子供の孫悟空が一気に背が伸びた事があった事を考えるとサイヤ人は急成長する体質なのではないか。瀕死の状態から復帰すると戦闘力が一気に増加する体質もサイヤ人の特徴だがまだ知らないものもありそうだ。

 

 

「超サイヤ人にはなれたかな?」

「まだです。激しい怒りがきっかけであるのは間違いないのですがまだ足りない気がして」

 

 

 グッと拳を握って見詰めるが答えは出ない。ポンポンとなれる孫悟天にトランクスが羨ましく思う。超サイヤ人になれればフロスト一族とやらを駆逐できる可能性はグッと高くなるし、ジッカ人に借りを返す事もできる。

 異界の魂、ドラゴンボールを知る俺を引っ張ってサイヤ人の子供の体にぶち込んだのはいただけないが意外と高待遇なので文句は初めの内だけだった。べ、別に飯に釣られたわけじゃねーし。

 

 

「焦らずとも東の宇宙にいる間はフロスト一族は捕捉するのに時間が掛かる。焦らずにじっくりと力を溜めるのです」

「はぁ」

 

 

 優しい長老だが、内心は焦っているのではなかろうか。かなりフロスト一族を恐れているし。

 言われずとも超サイヤ人にはなるように努力はするがこうも停滞すると無駄に素の戦闘力を上げるだけではないか。パワーアップする超サイヤ人化を使えば強くなれるから鍛えて損する事はない。といいのだが。

 

 

「ところで前に提案した事は受け入れるか」

「サイヤ人の特性を生かして瀕死から復活するパワーアップですか?」

「然り。あれならば急激なパワーアップができよう。超サイヤ人の近道にもなろう」

 

 

 死に掛ける、というのがどうしても嫌だ。ドラゴンボールほど命を軽く見ている作品はないだろうと思うんだ。死んだらドラゴンボールで蘇らせれば良い。死に掛けたら仙豆を使えばあっという間に完治。大人になってこの命の重さの矛盾に気付けた。

 フリーザ一味のカプセルだかポッドかわからんあれも仙豆の一種であるのは間違いない。一度だけ使ったが医者いらずのトンデモアイテムだった。

 覚えていないが、子供のサイヤ人の家族が死んだ際にクレーターの惨状を生み出したのはこの体らしく、気というエネルギーが完全に枯渇していた状態だったらしい。治癒する為に治療ポッドに入ったのだと長老から聞いている。死に掛けていたとか笑えねぇ。

 

 言われてみれば孫悟空もベジータも孫悟飯もかなり死に掛けて復活している事が多い気がする。あれが超サイヤ人への道のりだとすれば、これほど嫌な道のりはない。

 死ねと言うか。死に掛けろと言うか。何とも嫌な修行方法だろうか。やるならこっそりとしてくれ。寝ている間とかに。

 

 

「後は戦う相手も大方見つけた。我等が施しを与えた先住民の中に一際強い力を持つ者が数名。我等へ恩を返す為なら其方の相手も喜んでする」

「それはありがたいお話で」

「サイヤ人は戦う度に強くなる。何よりの修行は実戦也。死なぬのであれば我等はいくらでも助けよう」

「ありがとうございます長老。できればすぐにでもお願いしたいのですが」

「承った。惑星間を渡る船は用意してある。付き人と共に向かうと良い」

「どうも……それともう一つの頼みの方は如何です?」

 

 

 ジッカ人と共に暮らした間に友好を深め、頼み事なら不可能でない限り何でも聞いてくれる関係になっているのであらゆる事なら叶えてくれる。

 ドラゴンボールの舞台となる地球、惑星ベジータ、ナメック星。ヤードラット人がいる星も存在するだろうと目星を付け、ジッカ人長老に捜索を頼んでいたがその結果がどうしても気になる。特に地球。孫悟空とかいるなら超サイヤ人のなり方を聞きたい。超サイヤ人3になれる唯一のサイヤ人だし。

 とは言ってもその後のカードダスとかでベジータとかトランクスが3になってると聞いた事があるので意外と誰でもなれるものかもしれない。GTにもなると超サイヤ人4なんてものがあるくらいだから。どちらにしても地球でZ戦士に会う事は良い経験になる。

 

 

「まずは惑星ベジータ。惑星プラントをサイヤ人が侵略した事で名が変わった星だ。今はフロスト一族の者に砕かれて存在しておらん」

「……そう、ですか」

「植民地とはいえ、サイヤ人の故郷。其方の家系もそこで生まれ落ちたのだから思うところはあるのだろう」

 

 

 言われた通り、思うところはある。寧ろあり過ぎて叫びたかったが何とか堪えた。

 フロスト一族って何なのかと思えばフリーザかよっ! コルド大王一家の事だったのかよっ、と叫びたくもなる。ドラゴンボールにそんな一族の名前があっただろうかと考えていた俺がアホみたいではないか。

 となれば映画に出ていたフリーザの兄、クウラもフロスト一族となるのか。フリーザの絶望感も凄まじいものだったが、クウラのメタル化した時の絶望感も半端ではなかったのはよく覚えている。超サイヤ人が出てきてからフリーザがかませ扱いにされていたが現状、最大の脅威なのは明らかだ。

 契約にフロスト一族滅亡に手を貸す、とは約束したがフリーザとかクウラを相手にするのか? 超サイヤ人になってもいないサイヤ人が? ハハッ、マジワロス。無理ゲーだろうが。コルド大王はトランクスの超サイヤ人お披露目のかませっぷりであんまり怖くないがメタルクウラだけは相手にしたくねぇ。孫悟空とベジータに任せるべきなんだ。そうしよう。

 

 

「悪の心に染まるサイヤ人はもう少ない。正義の心に染まるサイヤ人の生き残りは其方だけ。故に伝説に到れるのも最早其方だけ。破壊神の予言に一致するのもおそらくは」

「長老。お話の途中に申し訳ありませんが破壊神とは?」

「この宇宙の破壊を司る神。宇宙最強と言える崇高なる神ぞ。かの界王神ですらも破壊神に逆らえぬ対の存在と言われている」

「そのような存在が……」

 

 

 え。破壊神? 何それ? 状態だ。界王神が無能なのは周知の上だが破壊神なんて名前は今まで聞いた事がないのだが。もしやドラゴンボールの裏設定か何かなのだろうか? 宇宙は広いとは言うがあまりにも広すぎると思うんだが。

 ジッカの賢人と謳われる長老に知らぬものはナシ、と言うが本当に知らないものはないのだろうか。知識とか知恵が凄い。ドラゴンボールに界王神の事も知っているし。魔人ブウ編でようやく出てくるはずなのにフリーザが生きている今頃に出てきていいのか。

 

 

「破壊神は気紛れ。界王神とは違い、気に食わぬ事があればどんなものでも破壊してしまう」

 

 

 なんっつー迷惑な存在だ。子供かよ破壊神。

 

 

「その破壊神が何か? まさかとは思いますが破壊神もぶん殴れと言うのですか?」

「我等、死ぬ」

 

 

 短く簡潔にありがとうございます。若干似合わないキャラになったのは敢えて突っ込まんぞ。つまりは破壊神には手を出すな、って事か。どこにいるかもわからん破壊神をどないせーゆーねん。

 

 

「聞くところによると、北の界王の星は破壊神によって壊されたらしい。縮小、とも言うが」

「北の界王……」

 

 

 どの界王だよ。サイヤ人編とフリーザ編なら界王と聞けば界王拳を教えてくれた界王を思い出すのだが魔人ブウ編で界王神が出てきて東西南北の界王と界王神が出てきてどれがどれだかわからん。

 ただ界王、と言えばわかるのだが北の、と言われれば誰かわからなくなる。取り敢えず北の界王の件は後回しにしておく。

 

 

「原因は北の界王にかくれんぼで負けたから、だそうだ」

「子供かっ!」

 

 

 あまりのくだらなさで思わず口に出して突っ込む。突っ込んだ後に失礼な物言いをしたと片手で口を塞いだ。命を握られている立場だからあんまり失礼なの事は命取りになるかもしれないと今まで口調や態度に気を付けてきたというのに。

 フリーザに従うベジータの如く。反抗的ではなく互いに互いを尊重しているような関係ではあるが。

 

 

「よい。我等も同様の事は感じた。だが、破壊神の前でそれは言ってはならぬ。破壊神は気紛れ。機嫌が悪い時であれば壊される」

「よ、よくわかりました」

「決して、逆らうでないぞ」

「はい、長老」

 

 

 長老は言いたい事は全部言えたらしく、そのままトレーニングルームから退室した。残された俺は休憩もそろそろ終えるか、と準備体操をする。学生の朝に無理矢理参加させられていたラジオ体操の順番を真似ししながら。その間にも超サイヤ人の詳しい解説らしき解説がなかったかを必死で思い出す。

 超サイヤ人を超えた超サイヤ人だとかしか言ってねぇぞカカロットォ……先任者としてもう少し具体的な解説をだな。

 自分で辿り着けって事ですか。そうですか。理不尽への怒りで超サイヤ人化でもしちゃる! それぐらいの気合で修行をしてやる!

 

 第一歩に感謝の正拳突きの如く、拳の一発の正拳突きから修行を再開する事にした。目指すは超サイヤ人!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙時間で何週間か経過した。肉体の成長はもうストップしたらしく、身長が伸びるような事はもうなかった。今は筋肉を付けるべきか絞ってスピードを出せるようにするべきかと迷っている。

 超サイヤ人にはなれていないが、超サイヤ人については少しだけ思い出す事ができた。超サイヤ人2は魔人ブウ編だとスパークが走る描写が真の第二形態となるのだが、人造人間に勝つ為にベジータにトランクス、孫悟空がムキムキの超サイヤ人になった形態を超サイヤ人2と呼んでいた頃があった。

 ムキンクスなんてネーミングがある超サイヤ人第三形態、だったか? あれは使えないと孫悟空とベジータ、挙句には敵のセルが言っていたのを思い出した。超サイヤ人になったら第一形態を穏やかになるまで慣らせと言ってた描写も思い出した。

 

 シュッシュッと風を切る音を立てながらパンチを繰り出す。パンチのスピードも威力も桁違いに上がったな、としみじみに感じながらパンチングマシーンのような物体をボコボコに休みなく殴り続ける。

 あれ? いつの間にドラゴンボールからはじめの一歩になったんだ? 何かデンプシーロールみたいな技も体得できてるし。小刻みにパンチの威力を表す数値が出ては消えている。ジッカ人の基準だから地球で言えばどれほどの威力になるのかはわからない。

 あれ? 超サイヤ人を目指していたはずなのにいつの間にボクシングのベルトを獲得しようとしているんだ? 思考も黄金の右を名乗れるようなパンチを目指す、にすり替わっているし。ムキンクスを思い出した時の腹パンが原因か腹パンが悪いのか。

 

 

「――ぶはっ!」

 

 

 息継ぎなしでパンチを繰り出し続けているとこうなるわな。軽い酸欠状態に陥った。パンチングマシーンに抱き着くように崩れ落ちて肺に必死に空気を送り始める自分の肉体。

 ぜへっ、ぜへっとよくわからない嘔吐き方をしつつパンチングマシーンに背中を向けて寄り掛かる。汗もだくだくで軽い水溜りが床にできているせいで下履きが濡れてしまった。元々汗を出し過ぎたせいでびしょ濡れだからあまり気にもならんがちょっと気持ち悪い。

 

 ――記録は7741回。最大威力は231ヘレン。最小威力との誤差は0.224ヘレン。毎度ながらお見事です。

 

 パンチングマシーンの記録をしていたジッカ人の一人が結果を教えてくれ、褒めてくれる。だけどヘレンって単位はいくつなの? 地球の単位にするといくつぐらいになるの? わからんのだけはどうにかならんのか。

 参考資料って事で岩を砕ける威力が21ヘレンと聞いているがその十倍の威力はどうなのだ。腹パンしたら貫通して内臓ブシャーなんてできるレベルなのか?

 

 ――感知。最小の戦闘力は約120000。最大の戦闘力は130000。戦闘力のコントロールも素晴らしいものです。

 

 今の戦闘力は十三万ぐらいか。前よりは伸びたと思うんだが、サイヤ人の瀕死復活をしたからだろうか。一度だけそれをやってみたが、凄まじい伸び代を見せてくれた。簡単にパワーアップできて、しまった……。

 あれだけの努力は何だったんだと言いたくなるパワーアップ。これからの修行に瀕死復活を入れる事を強いられるではないか。早速長老にお願いしよう。

 

 急激にパワーアップした肉体の調子を確かめる意味合いを考えての修行だが、かなり良い感じに仕上がっている気がする。気がするだけで本当に気のせいだったら良かったのだが、記録をかなり更新したのを見ると完全にパワーアップしてる。

 どの程度動かせるかを確かめたが本気でボクシングの世界一、宇宙一を目指してもいいかも……いやいやちゃうちゃう。超サイヤ人。俺は超サイヤ人を目指してるの。忘れるな。

 

 

「すぅー、はぁー……よっし」

 

 

 体力もある程度回復したので汗だらけの上の服を全て脱ぎ、下履きも蹴り脱いでパン一になる。汗に濡れた体が外気に触れて体が震えた。

 少しだけ舞空術で浮くと気合を入れる。本気モードとか気功波爆発のやり方も何度もやって体得しているのでオーラを纏う事は普通にできる。

 

 

「――ッ!!」

 

 

 ギリリッと歯を食いしばり、拳を固く握る。自分の内に眠る太陽のようなものに触れ、声を張り上げる。自分が爆発した。

 アホみたいな表現だが、内に眠る気が爆発して漏れ出した事でオーラが全身を包んでいた。オーラを出した途端に体に付着していた汗が蒸発する。簡易タオル扱いにしているがこれも練習なんだ。

 

 ――計測。戦闘力、約750000。素晴らしい。

 

 

「待て。今のこの状態が七十五万なのか?」

 

 

 ――そうです。全力であればその戦闘力が現状、最大になりますが。

 

 

 馬鹿な……あの絶望の戦闘力を超えた、だと……? まあ、その後に変身しまくってそれがプレリュードだったのに更に絶望するんだがそれは置いておこう。

 前に測った時は七十五万以下の確か、三十万かそこらだったはず。瀕死復活したらここまで簡単に戦闘力が上がるのか? マジサイヤ人パネェ。パワーバランスインフレ起こすのも頷けるわ。

 

 ここで少し思い出した。初ベジータ戦からナメック星に向かう途中で自分を追い詰める修行をして仙豆で回復していた。そこからベジータも真っ青の戦闘力アップが起きていた事を考えると、このパワーアップは別に不思議でも何ともないのか?

 ナメック星編で孫悟飯が凄まじいパワーアップをしている、というのも証明になる。寧ろ超サイヤ人にこのパワーアップ方法は不可欠なのかもしれない。

 死に掛けるのかぁ。意図的にそれをすると三途の川というか天国が見えるんだよなぁ。閻魔大王様の女バージョンらしき人物も時々見えるし。多分、あれは東の宇宙の閻魔大王様なのだろう。界王に界王神がいるように閻魔大王様も東西南北に存在するのだと思われる。

 死に掛けてるからってちょいちょいと手招きをするのは本当にやめていただきたい。

 

 にしても七十五万、七十五万か。初期フリーザなら勝てるだろうが最終形態フルパワーだとそれじゃ足りないんだよな。せめて超サイヤ人のパワーアップがなければ。その時の孫悟空の戦闘力は億超なんだっけ? こんな事ならファンブックとか読んどけばよかった。

 フリーザ一味が持つスカウターはポンコツだから多分、ジッカ人特製の戦闘力測定器がないと超サイヤ人の正確な戦闘力は測れない。孫悟空でも連れて来れればいいのだが今がドラゴンボールという作品のどの時系列に当たるのかわからないから下手に連れるわけにもいかない。

 地球の正確な位置はわかっていても移動手段が足りないせいで赴く事もできない。例え、瞬間移動を覚えていたとしても孫悟空の気がわからないのでは宝の持ち腐れ。故に詰んでる。

 

 

 ――お疲れ様です。本日のプログラムはこれにて完遂です。これからどうなさいますか。

 

「座学。長老に呼び出されてる。長老は何処に?」

 

 ――お待ちを。

 

 

 気合で汗を吹っ飛ばした後はトレーニングルーム内に用意された新しい服を身に纏う。ベジータが着ていたようなピチピチのボディスーツじゃないのが幸いした。あれ、股間が盛り上がるから初めて着た時はすぐに嫌いになったのはよーく覚えている。

 こんな感じ、あんな感じ、とジッカ人にワガママを言ってスウェットに似た服を作ってもらった。科学だけではなくファッションも超一流でござった。マジ有能な種族。ドラゴンボール本編で出番があっていいレベル。

 スウェットパンツを履き、スウェットパーカーを着る。完全に実家の日常の服装である。春休みに母親から愚痴を言われたのが遠い記憶だ。

 

 

 ――確認しました。書庫におられます。

 

「わかった。ありがとう」

 

 

 グッと親指を立て、感謝の意を見せる。四本の腕の片手に当たる二本の腕を俺と同じようにすると、中々に様になってるサムズアップを見せてくれた。ノリがいいなぁ。コイツ大好き。

 似たり寄ったりの姿で誰が誰かわからんが多分、モニタリングしてくれているこのジッカ人はずっと俺の修行を見てくれてるジッカ人だと思う。何となくの雰囲気でわかる……といいんだがマジで。これで間違えていたら恥ずかしいってレベルじゃない。

 それなりにジッカ人の長老以外とは友好的な仲は築けているはず。こっちはそう思っているがあっちはどうなのだろうか。少しだけ不安になった。

 

 スウェットパンツのポケットに手を突っ込み、舞空術で浮きながらジッカ人の宇宙船の通路を飛ぶ。大丈夫大丈夫。ジッカ人の身長は高いから寧ろ目線が合って好都合だって。

 ポケットから片手を出して挨拶をすれば気楽に相手も挨拶を返してくれる。二本の腕をヒラヒラしてくれるのだ。何となく愛嬌が沸く。

 

 

「エデゴゲゲ」

「あー、エスペランサ。ゴコテレベ」

「エベレ」

 

 

 途中、ジッカ人の言語で話し掛けてくる者もいるが長老から座学で教わったからか、返事を返せるまでには話す事ができるようになった。ぶっちゃけ英語よりも難しいから修行の大半の時間を使っている気がする。トレーニングルームを使う時は翻訳機は使ってくれるが普通のジッカ人相手だと会話も成り立たんから苦労したもんだ。

 まあ、色々とドラゴンボールの世界観の裏側が見れたのでいいが。フロスト一族が今、どんな感じやらとか今の宇宙の情勢とか。バカンスに行くならこの星、だとか教えてくれる。見た目が恐ろしいが付き合ってみると付き合い易い宇宙人はそうそういないと思う。

 仲良くなるとトレーニングルームのマシーンの整備を真面目にするようになったり、強化とか研究が捗ってパワーアップが容易になるのでできるだけ欠かさずに交流はしている。何だか育成ゲームのようで微妙な気分になった。

 超サイヤ人への育成と考えれば別に変な事でもない。

 

 

「……そろそろ人間みたいな種族に会いたいわー」

 

 

 別にジッカ人に文句はない。だがエイリアンみたいな見た目の種族ばっかりじゃなくて完全に人型の宇宙人の種族に会いたいのだ。ナメック星人ならギリギリ許容範囲。

 色が肌色じゃなくてもエロ同人誌とかでモンスター娘相手に抜いた事があるからよっぽどキモイ色じゃなければオールオーケー。ヤるとなるとまた別問題なんだが。中世が舞台の性奴隷的なのも宇宙には存在するらしいができたらお目にかかりたくないなぁ。

 プレデターみたいな奴とか触手を持った美女とか出てきたらどうしよう。完全に逆レイプされてまうがな。

 

 あー、やめやめ。嫌な想像が次々と出てくる前にさっさと長老の所に行こう。今日はサイヤ人の歴史を教えてもらえるから真面目に座学を受けるとしますか。

 

 

「エンデバーエンデバー」

 

 

 下降気味な気分を変える為にジッカ人に伝わる元気が出る童話を歌う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 





 強くなるための第一歩。流されて超サイヤ人を目指す事になり、修行を始めるの巻。

 戦闘力のインフレはドラゴンボールではよくある事なのであんまり気にしなくても大丈夫だと思います。最終的には超サイヤ人4ゴジータの次に位置する最強になる? ハハッ、マジワロス。最強ではないが最高にさせます。



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