目指すは超サイヤ人   作:ひつまぶし。

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 もう感想でネタバレしてる件について。あとがきを読んでないのだろうとわかるので感想を書く際にはあとがきに注意してくださると嬉しいです。

 今回は一気に流します。悟空のキャラが違うのは目を瞑ってくださいませ。自分でも完全に把握しているわけではないので結構難航しているんです。

 ここから孫悟空が脱出できない小さな綻びが大きなバタフライ効果を引き起こしていきます。多分、セル編までは。




第六話 様々な事態

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 孫悟空という心強い味方に付けてから新しい刺激の日常が訪れた。ジッカ人のトレーニングルームを使って体を鍛えたり、惑星間を飛んで別の星に行くのも良いが互角の実力者がいると修行への身の入り方は大きく、まるで違う。

 フリーザという強敵と戦い、勝利して生き残った戦士は更なる強さを身に付けて復活していた。本来の歴史であれば、脱出成功しているはずなのに失敗している事でサイヤ人の死の淵から生還チートが発動してパワーアップしていた。

 孫悟空。悟空と呼んでいるが、今でも慣れずに思わず悟空さんやら敬う感じになってしまう。普通ならありえない出来事だから受け入れきれてない部分があるっぽいな。後は悟空様とか言ったがカカロット様の方がまだマシな気がしてきた。ベジータ? ベジータ様って自分で言ってるから良いと思うんだ。超ベジータ様って連呼するくらいだし。

 

 

「これ、窮屈じゃねぇか?」

「我慢して。それが無いとこの星で活動できないから。ほら、こっちこっち」

 

 

 ベシベシとモコモコの宇宙服を両手で叩く悟空。窮屈そうだと感じるが今いるこの場所だとそれが無いと一発であの世行きなんだよ。我慢してくれ、と悟空の被っているヘルメットに自分のヘルメットをぶつけながら言葉を発する。

 普通であれば宇宙服のジェット噴射機でも使うのだが、舞空術を使える俺達は問題ない。先導するように先に浮いて飛ぶと、悟空も遅れて追ってくる。

 

 

「悟空。会話をする時は左腕のモニターの青いボタンを押せば俺に聞こえるから」

「おう」

「そんなに離れていないからすぐにそれは脱げるよ。この星にいる奴等は存在が希薄だから瞬間移動は使えないんだ。面倒だろうけど我慢な」

「……確かに感じねぇな。気の隠し方が上手なのか?」

「この星に住む食物連鎖の頂点にいる生物から姿を隠すため、って聞いてる。かなり凶暴な奴だから見つかったら問答無用で吹っ飛ばしてもいいぞ。あと、そいつ等の肉は美味いぞ」

 

 

 そうそう、こんなの。と口を大きく開く化け物を指差して悟空に説明しようとすれば先に悟空が化け物の腹を殴っていた。問答無用過ぎる。

 

 

「おほーっ。パオズ山でもこんなのいなかったぞ。うめぇのかコイツ等」

「ステーキにしても良し。だが敢えてしゃぶしゃぶにするのがベスト」

 

 

 見た目は魚なのに食感は肉そのもの。チョウチンアンコウみたいな見た目の化け物魚の提灯みたいな部分を雑巾のように捻りつつ気功波で心臓を撃ち抜いた。食べられる部分は図鑑で見た事があるので大部分は残せている。過酷な環境もあって、腐る前に長老の所に献上できるだろう。悟空も自分が食べる分は確保しているみたいだ。俺よりも大きいのを捕まえている……。

 サイヤ人二人の食欲を賄うのにジッカ人単体の種族だと確保しきれない部分があるのでこうして自分達で狩りをする事が修行の合間にしている。悟空は元々狩りが得意だったので図鑑を見て覚えている俺よりも勘で食えるものを本能的にわかっているように感じる。これが野生児のパワーなのか……!

 

 

「星の環境で腐る事はないからここに放置。共食いやら餌を奪う事もないらしいから用事を済ませて持って帰ろう」

「早く食いてぇな」

「俺もだよ。でもそれは後のお楽しみに」

 

 

 宇宙服の悟空の肩を叩いて向かう方向に指で示す。その先には人工的な洞穴らしきものがある。そこが今回の目的地、悟空の瞬間移動を覚えるのを早くさせる方法を知っている種族に会いに来た。

 本来であればヤードラットの連中に瞬間移動を教わるのに時間が掛かっていた、と描写があったはずだ。今から会う種族の秘術を使えば瞬間移動もあっという間に覚えられるようになる……かもしれない。個人差があるらしいから悟空には効かないかもしれないが。俺にはバリバリ効いていたけど。

 

 悟空と共に修行を共にしてから悟空には驚かされる。フルパワーの超サイヤ人で戦闘力が二億に到達していた上に超サイヤ人状態に慣れ始めている節も見える。これは精神と時の部屋の前で常時超サイヤ人モードができるようになるかもしれない。

 ……フッ。なのに俺は未だに超サイヤ人に変身する事もできないぜ。何か俺に超サイヤ人に変身できる才能がないのではないかと思えてきた頃だ。

 まあ、悟空が超サイヤ人になって戦闘力が二億まで引き出せるのに対して俺は素の状態で一億だからまだ基礎戦闘力は俺の方が上なのだろうか? 超サイヤ人になればかなりパワーアップするらしいからもしも変身できれば悟空を普通に抜く。なのに変身できないこのもどかしさ。

 そんなだから修行方針は悟空主体で俺はそのついでで超サイヤ人の変身を教えてくれる事になったわけだ。本当に俺と悟空の差は何なのだろう。才能? 人柄? それとも不純な心なのか?

 

 ちょっと待て、と悟空に合図を出してから洞穴に入る。気のオーラを纏い、白い光を放って周りを照らした。宇宙服のヘルメットのバイザーを上げ、声を張り上げる。

 

 

「ヘレベ! エンドロイン!」

 

 

 ジッカ人と同盟を結んでいる者は誰でもジッカ人が操る言語を知っている。合わせて、面識のある俺の気を感じ取ってもらえれば客人が誰なのかはわかるはずだ。

 ゾロゾロと普通の成人男性(地球人基準)と同じ背丈の宇宙人が現れる。見た目は普通の人間なのでパッと見ただけではこの種族が宇宙人であるとはわからないだろう。最初に宇宙に旅立った地球人と会ったのかと勘違いするほどに。

 

 

「ホーベ! ホーピキ!」

「ようこそ、運命の子よ。だ」

「駄目だ。わっかんねぇ」

「通訳はするから大丈夫。ハボン。ラレレテユージュ」

 

 

 今日は俺じゃなくて連れにあれをやって欲しい、と伝える。掌を上に向け、悟空を指すと訝しげな顔をするこの星の種族の者。力のある一族の若者と以前に聞いていたが何か老けたな、とどうでもいい事を思う。多分老化が早い種族なのだろうと。実際には老け顔なだけだが。

 大丈夫なのか、と問われる。素性もわからない奴を見ると警戒するのも仕方がないだろう。ジッカ人連盟には悟空がいる事を知らない者もいるから顔も知らないはずだ。何よりもバイザーで顔が見えんし。

 カチッと悟空の宇宙服のボタンを押せば、悟空の顔が見えるようにバイザーが上がる。目線がバッチリと合うとニカッと笑う悟空に戸惑っている様子だ。少しだけ手を上げてよっと挨拶をし始めた。

 

 

「オッス。オラ孫悟空だ」

「レレラ、フレ孫悟空」

「孫悟空? ハベ。カカウイユツ?」

「……悟空。かなり有名になったな。コイツ等、お前さんがフリーザを倒した事を知ってるみたいだぞ」

「そうなんか?」

 

 

 フロスト一族の実力者、宇宙の帝王とまで言われるフリーザを倒したとなると普通はそうなる。フロスト一族に反旗を翻そうとしていた種族にとってはある意味英雄のように見える事だろう。特にフリーザは。

 正体がフリーザを倒した孫悟空であると知ると、何でも協力すると言い出した。フリーザを倒してくれた礼をさせてくれとまで言い出す始末。オイ。試練はどうした。死に掛けた試練を悟空にはさせんつもりか。俺は死に掛けてお前等が嫌いになったんだぞ。

 もう突っ込むのも嫌になったのでジッカ人特製の翻訳機を渡して宇宙服のヘルメットのバイザーを下ろした。和気藹々と仲良くなった悟空とこの星の種族の談話を背中に、外に飛び出した。飯の調達、長老への報告。そしてフロスト一族の支配領域の再確認を悟空の修行の合間に行う事になっているので手早く終わらせる事にした。

 過酷な環境の中でも生きられる宇宙服は宇宙活動も可能なのでオーラを纏いながら宇宙へ一気に飛び上がる。サイヤ人って本当は宇宙活動は難しい種族のはずなのに何だかなぁ……。

 嘗て、フリーザが破壊した惑星ベジータの時は何人かのサイヤ人が宇宙にいた気もするが俺の記憶違いのはずだ。そうに違いない。別にヘルメットを脱ぐのが怖いわけではないのだ。

 

 普通、息のできない宇宙空間でヘルメットを取るなんて事ができるのは頭が狂ってる奴だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信じて送り出した友達が化け物になって帰ってきた件について。

 

 

「た、多重残像拳ならぬ多重瞬間移動……! 質量を持った残像とでも言うのか!」

「へっへっへっへ」「頑張ったぞオラ」「こんな事もできるぜ」

「エコーみたいに声を響かせるんじゃねーよ」

 

 

 あのクソ共。自重を放り投げて悟空を大層可愛がったな。俺の時は適当に真面目にやってたのに悟空の時は真剣に真面目にしたのか。

 多重残像拳のように残像を残しながら瞬間移動を繰り返す悟空の声があちらこちらから聞こえてくるのが凄まじいスピードで一定の空間を移動しているのがわかる。悟空の瞬間移動は誰かの気を感じ取れなければできないはずなのに自由に瞬間移動ができている。

 

 

「面白ぇぞ」「他の奴の気の代わりに」「オラの気が」「そこらにあれば」「こんな事もできるんだぜ」

「真面目に教えやがったなあのボケ共!」

「まだフリーザよりも強ぇ奴がいるらしいからな。オラを鍛えて対抗できるようにしたいんだと」

 

 

 シャッと目の前に現れる満面の笑みの悟空。新しい技、おもちゃを得られた子供のように喜んでいるのが一目見るだけでわかる。まあ、新しい世界が切り開かれると言い様のない快感を得てしまうから気持ちはわからんでもない。

 

 

「おめぇはピッコロみてぇな修行をしてんな」

「……ナメック星人か。この格好は俺が集中できる姿勢だからね。舞空術に割ける気をギリギリまで抑えられる事ができれば他の技もギリギリまで使える気を削減できるかもしれないんだ。まだまだ荒いから完成とは程遠い完成度だけどな」

 

 

 座禅を組み、空中に浮きながら舞空術を使っている俺を見て悟空が感心したように声を漏らす。ピッコロと言えば超(笑)ピッコロさんの事か。生き返ってパワーアップしたと言っていたからネイルと融合していると仮定できるからフリーザにボコボコされた頃だ。よくよく考えればピッコロの修行は俺と同じ格好をしているな。

 俺の場合は過去に読んだドラゴンボールを思い出すのに集中したい時に使うから多分、ピッコロとは違う方法になるだろうか。修行のやり方は人それぞれだしねぇ。

 

 

「マスターすればフルパワーを出した時に体を慣らす時間を一気に減らす事ができるらしい。気を操る術に長けているから体中に気を行き渡らせられると言えるんだ。そうすれば超サイヤ人になれるんじゃないかと思ったけど結果はご覧の通りだ」

「超サイヤ人にはなれねぇ、ってか」

「言うんじゃねーよ。落ち込むだろうが」

 

 

 流石優位に立つと煽り芸を見せてくれる戦闘民族サイヤ人。地味に上げて落とす上級煽りをしおってからに。言われなくても自分でもよくわかってるよと何度も声を大にして言いたい。

 だけどね。超サイヤ人じゃない悟空を相手にすれば余裕勝ちできるのよね。超サイヤ人に変身してやっと俺と互角なのよね。それだけが救いなのよね。もし負けていたら立つ瀬がないよ……。

 

 

「前に気を完全解放した時は全力だったのか?」

「そりゃ勿論。データは正確に調べる必要があるから。手加減なんかする必要なんてないんじゃ?」

「んー。けどよ。今の話を聞くとそればっかり気にして全力を出せてないような気がすんだよな。おめぇ、理屈だとか関係なく自分の本気を出した事あんのか?」

「……うーむ」

 

 

 言われてみればそんな気がする。ゴチャゴチャ考えずに全力を出すって事をできていないのではないか、と疑問が浮かんだ。

 

 

「ほれ。ここなら物をぶっ壊して宇宙船まで壊れる心配はねぇだろ? いっちょ何も考えずに自分の力を解放してみろよ」

「でもなー」

「戦ってみたら経験は豊富だけどギリギリの命のやり取りをあんまりしてねぇって感じた。死に掛けるまで全力でぶつかるなんて事は今までした事がねぇんだろ?」

 

 

 戦えばすぐにわかるらしい俺の未熟さ。他種族の強者とはいっても命の危険を脅かされる戦いは今までした事がないのは事実だから言い換えそうにも、できない。超サイヤ人になれないのもそれが原因じゃないだろうかと思っている。

 死に掛ける事はパワーアップする時に経験はある。だけど命の保証はしっかりとした上で行った事だから死の恐怖はそれこそ、最初だけだ。後はジッカ人に任せれば気が付けばパワーアップしているなんて金持ちの坊ちゃんみたいな扱いだった。

 その点、悟空は何度も死に掛けては勝利をもぎ取ってきた真の強者。地球育ちのサイヤ人で、師や友人に恵まれていた事もあって俺なんかとは比べる事が愚かなほど経験は積んでいる。確かな経験が。

 

 

「つまり、おめぇは死闘ってのを経験してねぇから本当のフルパワーを引き出せていねぇんじゃねぇかってオラは思うんだ。あん時の界王拳みてえな変身もオラと完全に互角になっちまったから無理になってんじゃねえかって思ってんだ」

「やっぱりそう思うか?」

「あん時のおめぇはベジータやフリーザと戦う時みてぇに背中がゾワゾワする感じがあった。超サイヤ人のオラでも勝てねえんじゃねぇかって思えるほどだ……くーっ。あんなんを感じちまったらまた戦いたくなっちまったよ!」

「はは」

 

 

 乾いた笑いしか返せなかった。超サイヤ人じゃない妙な変身は初めて超サイヤ人の悟空と戦ってからは変わる兆しがない。悟空と戦ったせいでサイヤ人としての才能が悟空と戦えるように強くしたのだと言われたが、潜在能力が凄まじいのだろうか。俺は。

 確かに、長老は俺を“運命の子”と言った。そして、超サイヤ人になるべきサイヤ人とも。完成させた器と表現していたが、潜在能力が高いのはそれが原因である、とも仮定できる。

 

 

「そんじゃ……ちっと戦るぞ」

「!」

 

 

 ほぼ反射的に積んだ経験が頭で考えるよりも早く体が動いた。バチィッ! と鋭い音を立てて左脚に衝撃が響き渡る。

 くよくよと考えているとオーラを爆発させない自然な変身を遂げた超サイヤ人状態の悟空が右脚を衝撃が響いた左脚にぶつけていた。若干、目の鋭さが柔らかくなった悟空は真剣な表情になってこちらを見据えていた。

 

 

「――考えるな。感じろ、だろ」

「ああ。お前が何にも考えないようにしてやる。本能の赴くままに力を爆発させてみろ」

 

 

 だあありゃっ! と聞き慣れた悟空の気合の一声と共に唐突に何十回目になるかの組み手が始まる事になった。考えたい気持ちを無理矢理切り替えられ、迫る拳と脚の嵐を捌く事に集中せざるを得なかった。

 この日はいつもよりも長く組み手をする事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ?」

 

 

 ある日、事件(それ)は起きた。

 

 

「どうした?」

 

 

 ほぼ一日の大半を共に行動している悟空が超サイヤ人の金髪を揺らしながらこっちに近付いてきた。黄金のオーラと金髪が消え、元の黒髪の通常に戻った悟空は呆気に取られる俺の隣で肩を叩いてくる。

 

 

「あ。いや、ちょい待て。混乱してる」

 

 

 今、心の中を占めているのは“多重イベント発生”である。というか狙ってもできないフラグの乱立をよくぞここまでできたなと感心すらしているところだ。

 悟空にもわかるように人差し指を立てた手を見せる。まずは一つ目。

 

 

「悟空。まずはお前は地球に帰れ」

「何でだ? もう少しここで修行してぇんだ」

「まだハッキリとそうである、とは言えん情報だがフロスト一族の宇宙船を確認した。その中にフリーザがいるらしい」

「! フリーザがまだ生きてんのか」

「らしい。しかもその宇宙船の航路なんだが……多分、地球にぶつかる可能性が高い。フリーザの目的は地球であると思われる」

 

 

 悟空に説明しながら遂にこの時が来たか、と俺は考えていた。フリーザがまだ生きているのが衝撃的なのか、悟空が厳しい表情を見せている。倒したはずなのに、とも思っているのだろう。

 メカフリーザになって悟空に復讐する為に悟空の台詞にあった地球に向かっているのは間違いないだろう。概ねの歴史に変わりがなければ。クリリンをあの地球人と呼んでいた事も考えると、地球の存在を知っているのは確定だ。

 寧ろこの時を待っていた、と俺は思っている。フリーザだけでなく、フロスト一族トップのコルド大王がいるのだ。フロスト一族の現状を聞き出すのにこれ以上ない好機だ。悟空も本来の歴史よりもパワーアップしているだろうし、ジッカ人に以前から造らせていた最速の宇宙船もできているからまず何が起きても未来から来るトランクスと協力すれば負ける事はないだろう。

 

 

「まずいな。地球には悟飯達がいるけどまず敵わねえだろう。やっぱオラが行かなきゃなんねえな」

「宇宙船は用意しているそれを使えば計算上、フリーザ達が着陸した直後に地球に行けるはずだ……が、問題はそれだけじゃねー」

 

 

 拳を固めてやる気を見せる悟空を止めるように中指、二本目の指を立てる。そう、ある意味厄介なのはここからだ。フリーザの動きだけを知れれば良かったのにこうも問題が出てきては困る。

 

 

「フロスト一族……特にフリーザ一味の配下が南の宇宙で暴れているらしい。ジッカ人連盟のいくつかの種族が救援要請を出した」

「いっ!? って事はオラ達が知ってる奴もその中にいんのか!?」

「いる。俺達に助けてくれ、って名指ししている」

 

 

 まるで陽動を仕掛けていると間違うタイミング。地球のある北の宇宙の反対側で暴れているという点が実に厭らしい。おそらく、フリーザは悟空が生きて地球にいない事を知っている。

 

 

「問題は俺達二人で瞬間移動を使いながら制圧すれば損害を最小限に抑えられるだろうが、そうすると悟空は地球に帰る時間が遅れてフリーザが暴れる時間を増やしてしまう。

 逆に悟空だけ地球に先に帰れば俺一人でフリーザ一味を制圧するのに時間が掛かって防衛力を持たない種族は下手をすれば絶滅するかもしれない。

 まさに究極の二択。戦術としては最高の一手と言えるだろう」

 

 

 実に厭らしい。本当に厭らしい。ジッカ人連盟の種族は危険が及んだ時は必ず助けると盟約を交わしているので助けない選択は決してない。

 

 

「俺は今から瞬間移動で飛ぶ。完全に殲滅させてからここに戻る予定だ……実はまだ厄介事が二つあるんだが今は時間も惜しいから悟空は宇宙船で地球に――」

「いや、オラも手伝う」

「帰れ……は?」

「オラもおめぇを手伝う。地球に帰るのはそれからだ」

「いやいや。話を聞いてたか? 地球に、フリーザが行ってるの。多分、今は地球にフリーザと対抗できるだけの奴はおそらくいない。つまり悟空がいないと地球は滅ぶ。わかってるのか?」

「ああ。でもオラは世話になった奴等を救う事を優先する。もし地球が滅びるかもしれないかもしれねぇけど滅びないかもしれない。もし滅びてもナメック星のドラゴンボールを使えばピッコロと神様が蘇る」

「……あのな。ドラゴンボールを無闇矢鱈に使うなって長老に言われるだろうが。それに地球が滅びて復活できたとしても地球に生きる生き物は復活できないんだぞ? 一年に一回気の遠くなる作業を繰り返して全員を蘇らせるつもりなのか?」

「そういやそうか……くそっ」

「いいからこっちは俺に任せろ。お前は地球に行け。間に合えば俺も地球へお前の気を探り当てて援護に向かうから。ベストとは言えんがベターな選択なんだよ」

「……すまねえ。世話になりっぱなしだ」

「いいって。悟空と修行するのは楽しかったし、超サイヤ人の可能性も知れた。それだけで十分さ」

 

 

 報告を受ける際に使ったトレーニングルームの通信機の受話器に向かって指示を出す。悟空を宇宙船に案内して地球の座標を打ち込め、襲われている近くの星にいる実力のある一族を援護に向かわせろ、本来は長老が出すであろう指示を全て俺が出した。

 

 

「――エリン」

 

 

 いそいそと脱いでいた服を着ていると、ようやく知れたサイヤ人の俺の名前を悟空が呼ぶ。六個の目、四本の腕。見上げるほど背の高い体が特徴のジッカ人に導かれる前に悟空がこちらを見ていた。

 力強い歩きでこちらに来ると、グッと握った拳を突き出してきた。強い意志が宿る黒い目が俺の姿を映しているのが見える。

 

 

「オラはフリーザを倒す」

「なら俺は皆を救わないとな」

「頼んだぞ」

「悟空も。絶対に死ぬなよ」

 

 

 別れの挨拶は濃厚な毎日を過ごしてきたはずなのに、恐ろしいほど簡潔に終えた。コツン、互いの握った拳をぶつけ合うと背中を向けて軽く飛び、瞬間移動を発動して姿を消す。

 次に目の前に広がった景色は以前に教わった、ドラゴンボールで見たフリーザ一味の雑魚で埋め尽くす。問答無用、と一番近くの戦闘員を殺す勢いでぶん殴る事から始めるのであった。

 

 ……本当は、地球にはトランクスがいるから悟空の提案を受け入れても良かったのだ。だけど悟空が脱出できていないほんの少しの歴史の綻びがどんなバタフライ効果を引き起こすのかわからないのだ。これでいい。これでいいのだ。

 

 

「――ここは貴様等のいるべき場所じゃねえ。死にたくないなら消え失せろ。消えないなら……消す!」

 

 

 

 

 

 

 





 この時点で悟空は原作よりも強いです。ついでに組み手の相手をしている主人公こと、エリンも均衡している相手と戦える事でメキメキと実力を付けていきます。

 エリンの名の由来ですがエリンギです。女みたいな名前ですが最初の候補の枝豆からダーマにしようかと考えたんですが感想欄がネタまみれで本作の本編に触れられないカオスになりそうなのでこっちにしました。

  超サイヤ人を目指す男、スパイダーマッ!

 次回からは人造人間編に介入します。トランクスの出番をほとんど奪い始めている事にトランクスが可哀想になってきた……。


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