二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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初めての……

「ようこそ、ベルベットルームへ。本日は如何な御用ですかな?」

 

「新しくペルソナを手に入れたの、合体をお願いしたいのだけど?」

 

 

 

 

ーールイズは紗久弥に群青色の鍵を見せ、扉の場所を聞くと、クローゼットの前に立たされた。ここに『ベルベットルームへの扉』があると言う。

 

「いや、何で気付かないのよ私」

 

開かれたクローゼットの扉の右側に確かに群青色の扉がある。

 

「『鍵』を使ってあそこに入れば、昨日取ったペルソナを合体出来るよ」

 

「その辺りはイゴールに聞いてるわ」

 

鍵を扉に翳すと、鍵の開く音が聞こえ、ノブを回しーー

 

 

 

「ーー出来ましたぞ、さあお持ちなさい」

 

眼前に光の粒を溢しながら舞い降りてくる一枚のカード。

 

ルイズが初めて作った新たな己の可能性。

 

『正義・エンジェル』

 

「これが……私の……」

 

カードに手を翳すと、光となってルイズに吸い込まれるように消え、イゴールに声を掛けられる。

 

「これから、様々な出会いと別れの中で紡がれる貴方の『絆』……努々、紡いで行くことを怠らぬよう……絆は貴方の可能性を広げるのですから……では、ごきげんよう」

 

 

 

気が付けばベッドに横たわっていた。

 

「どうだった?」

 

顔を向けると紗久弥の姿。

 

「ん……作ったわ、私の新しい可能性を」

 

だが、ブリミルをアクティブのままで居よう、そう思うルイズであった。

 

 

 

 

キュルケの胸を、汗が滴ってゆく。

 

コルベールの『炎蛇』を見た感想は、声ではなく体が伝えていた。

 

『怖い』と。

 

同じトライアングルとは思えなかった、同じ火のメイジとは思えなかった、何時もの何処か間の抜けた『ミスタ・コルベール』と、同じ人物だと、思えなかった。

 

胸の『傷』がその怖さの正体を教えてくれる。

 

『死』への恐怖。

 

だが、その恐怖に何処か違和感がある。

 

「ミス・ツェルプストー」

 

聞いた事がない程、冷たい声。

 

喉が、渇く。

 

向けられている訳でもないその『殺意』に、吐き気を催す。

 

私は、彼に、何を、言った?

 

自分が言った言葉さえ思い出せない。

 

「これが『炎蛇』です」

 

いや、思い出させられる。

 

これを、教えて、欲しい、と、言った。

 

「覚えましたかな?」

 

コルベールが杖を振り炎蛇を消すと、キュルケは腰をその場に落としてしまう。

 

「ミス、どうなさいました?」

 

一歩、コルベールが歩むと、キュルケはそれに合わせて下がって行く。怯えた表情を隠すこともせず。

 

「……恐ろしいですかな?私が」

 

寂しそうな、諦めているような、そんな声。キュルケはハッと顔を上げて、コルベールを見る。

 

「ち、違っ!」

 

腰が上がらない、どうやら抜けてしまっている様だが、漏らしていないだけましかと、すっとんきょうな事を思ってしまう。

 

「良いのです、それで」

 

貴女は、正しい。

 

そう呟いたと思うと、優しく頭を撫でられた。

 

「あの時の娘さんが、随分成長したものですね」

 

その言葉に、キュルケは幼い頃のある記憶を呼び覚ましたーー

 

 

 

 

ーー十四年前。

 

キュルケは杖との契約を終えて、魔法を習い、上機嫌……と言うよりも有頂天になっていた。

 

魔法を使う事が楽しかった、面白かった。

 

庭を出てはいけないと言う言い付けを、気が付かぬまま破ってしまう程、周りを見る事を忘れて、夢中で魔法『フライ』を使っていた。

 

疲れを感じて地面に降りた所は、知らない道だった。

 

幼いキュルケは泣きながら道を歩いていく。

 

そこに声がかけられ、見上げると見知らぬ小汚ない格好の男達。

 

男の一人が、キュルケが息を飲んだ所で口を塞ぎ担ぎ上げ、隠してある馬車へと向かおうとした所で男達から悲鳴と炎が上がる。

 

キュルケは恐怖の中で立ち上る炎の蛇を見つめて、何処かホッとして思う。

 

『この蛇は敵じゃない』

 

何故かは解らないが、そう確信出来た。

 

炎の蛇は勇ましい龍が如く、男達を飲み込んでいく。そんな凄惨な光景の中で、キュルケは炎を操っている男を見付けた。

 

その男は悔しそうで悲しそうな、だが、幼いキュルケにはよく解らないそんな顔。

 

炎の蛇が消えたと同時に、キュルケは意識を手放してしまい、次に目が覚めた時、目の前には両親の顔。

 

恐怖から安堵へと移る感情の中、そして、流れる時の中で、その日の記憶は奥底へと沈んでいったーー

 

 

 

「ーーあの時の……男の人が……ミスタ……」

 

コルベールは再びキュルケの頭を撫でる。

 

「本当に、大きくなった……」

 

大きな粒が、キュルケの瞳から溢れて落ちていく。

 

止められない、止める気もない。

 

ただただ、あの日の感謝を、心のままに、コルベールにしがみついてーー

 

 

 

「ーーうむう……ミスタ・コルベールめ、良い思いしおってからに……」

 

「人の行動覗き見るのも大概にして書類片付けてください」

 

「のう、マチルダちゃん?」

 

「日々のセクハラで感謝の気持ちはマイナスですわ、クソじじい」

 

「ええじゃないか、ええじゃないか……」

 

「良かねぇよ」




キュルケの思い出話捏造!


ルイズLv5
HP92
SP315

所有ペルソナ
ブリミル(愚者)
エンジェル(正義)

学力
かなりの秀才

魅力
可憐な天使

勇気
ここぞでは違う
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