二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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魅惑のギーシュ

作戦は成功した、いや、成功しすぎた。

 

(や、ヤバくないかしら……)

 

ベッドに組み敷かれるモンモランシーの制服のボタンが一つ一つ、焦らすように外されていく。

 

ギーシュの目は虚ろ、そこに何時もの光は無く、自分と言う獲物を喰らわんとする亡者の様に、躯を貪ってくる。

 

そして、胸が露にされかけた時、ドアが数度ノックされた。

 

「ギーシュ、だ、誰か来たから……」

 

「無粋だね、僕が追い返して……」

 

鈍い光を湛えた瞳は、食事を邪魔する無粋な輩の居るであろう扉を睨み、再度ノックされた時、ギーシュはゆっくりと立ち上がり杖を手にする。

 

『ミス・モンモランシ、お洗濯物を持って参りました』

 

ああ、そんな時間だったか……

 

のぼせかけていた頭も冷えてきて、現状が把握出来てきた。

 

だが、それ以前に、今まさに扉を開こうとギーシュがノブに手を伸ばしている姿が目に映り、はだけた服もそのままに慌ててベッドを飛び降りるが、現実は残酷である。

 

「み、ミスタ・グラモン?」

 

ヤバい。

 

そう思った時には、モンモランシーは『水の鞭』を使って、ギーシュの頭をぶっ叩く。

 

「ひゃあ!?」

 

メイドの目の前にギーシュは倒れこみ、そのまま気絶してくれる事を祈るモンモランシーだが、如何せんモンモランシーの攻撃力は然程強くない。

 

更にはこのところの修行によって、耐久力の上がったギーシュであり。

 

「ははは、酷いじゃないかね僕のモンモランシー」

 

びしょ濡れになって立ち上がるギーシュ。

 

「おや、これは参った、水も滴る何とやらだ。なぁに、モンモランシーの為だ、びしょ濡れになることもいといはしないさ」

 

髪を掻き上げると、飛沫が舞う。

 

「そ、そう」

 

「それよりも……ああ、メイドの君、少し怯えているね、さあおいで、僕の胸でなぐ」

 

「さめなくて良いのよ!」

 

今度はグーでいったが、痛いのかぷらぷらさせるモンモランシー。

 

しかし……

 

(惚れ薬って……こんなだっけ?)

 

そう、モンモランシーが作ってギーシュに盛ったのは惚れ薬。

 

だが、眉唾な物ではなく、材料に『水の精霊の涙』と言う、とびっきりの秘薬を使った物である。

 

本来の効果としては、飲んだ後最初に見た異性に心酔と言って良い程に惚れると言う物なのだが……

 

「あれ?ギーシュ?」

 

ふと考え込んだ隙を縫って、ギーシュとメイドの姿が消えていた。

 

「あれ、これって……不味くない?」

 

もしも、もしもである。

 

調合を間違えて『異性に見境の無くなる』薬になっていたとしたら……

 

モンモランシーは、はだけた服を脱ぎ捨てて、パジャマを着て寝ることに決めた。

 

 

 

「あ、あの、ミスタ・グラモン?」

 

何故か抱えあげられたメイドことシエスタ。

 

「何かなメイドの君」

 

「あの、そろそろ降ろしていただきたいのですが」

 

貴族のボンボンと思っていたら、力強く抱き上げられ、ほんのり頬が熱くなっているのが解る。

 

「なに、女子寮より出るまではこのままで居させて欲しいね、君の温もりが心地好いんだよ」

 

「ふえ!?」

 

完全に顔に熱が上ってしまったシエスタの顔色は正に真っ赤。

 

これ迄もそれなりにアプローチがあったシエスタであるが、このようなアプローチは初めてでかわし方が解らない。

 

(ど、どど、どうしよう!?)

 

「ああ、麗しの君の名を教えてはくれないかい?」

 

「え、ええっ!?あ、あの、シエスタと申します!」

 

シエスタを必要以上に揺らさないようにゆっくりと階段を降りるギーシュに、シエスタは更にときめきを強くしていく。

 

「シエスタ、成る程良い名前だね、ミス・シエスタ、君に相応しい良い名だ」

 

この時、シエスタは勿論ギーシュ本人さえ知るよしもないが、現在のギーシュの呼気にモンモランシーの『惚れ薬』が含まれているせいで、シエスタにも惚れ薬の効果が、ほんの僅かではあるが出ているのだ。

 

きちんと調合されていればこのような効果は無かった筈なのだが、モンモランシーの僅かな計量ミスで、このような効果が付与されたと言える。

 

「ああ、ミスタ・グラモン……」

 

女子寮の出入口に着いた頃にはシエスタはすっかりギーシュの虜となってしまっていた。

 

「ああ、シエスタ……別れるのが寂しいよ……」

 

ギーシュもまたシエスタの虜となっていた。

 

「あら、ギーシュってばモンモランシーから彼女に鞍替え?」

 

それは偶然だった。

 

抱き合うギーシュとシエスタ、そこに居会わすはキュルケとタバサ。

 

「ん?やあ、キュルケにタバサ、二人はいつも一緒だね、羨ましいよ」

 

「ああ、ギーシュ様、私を見つめていてくださいませ……」

 

艶やかな笑みを浮かべて、シエスタはギーシュの顔を自分に向けて瞳を閉じる。

 

 

 

「どう思う?」

 

「異状」

 

「よねぇ?」

 

今にも口付けそうな二人をウインドで引き剥がして、タバサのスリープクラウドで眠らせた二人を、倉庫から持ってきたロープで縛り上げて、一先ずモンモランシーの部屋に向かう二人。

 

目的は取り合えず原因であろうと思われるモンモランシーへの尋問である。

 

これはタバサが言った事で、ギーシュの行動の可能性を考えての逆算。

 

ルイズの部屋の前でキュルケがカトレアの名を出しはしたが、その通りに動かなかった事は出入口とは言え寮内で会った事から明白。

 

つまり、本来の目的であるモンモランシーの部屋を再び訪れたと言うこと。

 

「ったく……何だってこんな妙なことになっているんだか」

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