二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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越端紗久弥Lv 99

装備ペルソナ(アクティブ)

スカアハLv99
全ステータス99

所持スキル

刹那五月雨撃
アムリタ
サマリカーム(Sカード)
マハブフダイン
マハタルカオート(Sカード)
メディラマ(Sカード)
チャージ
イノセントタック(Sカード)


ゼロのルイズ

「今の動き……見えたかの?」

 

ヴィリエの凶行を鐘を鳴らして止めようとした。

 

「いえ……全く」

 

だが、魔法を受けた筈の紗久弥は髪を揺らした程度。そこから瞬きもする間もなく、ヴィリエの腹に紗久弥の拳はめり込んでいたのだ。

 

「やはり彼女はガンダールヴに違いないのでは……」

 

「しかしガンダールヴは『あらゆる武器』を使いこなす一騎当千の『神の盾』と伝わっとるではないか」

 

紗久弥は武器をもっていない。

 

二人は暫し唸りをあげ。

 

「ともかく、ヴィリエ・ド・ロレーヌとギーシュ・ド・グラモンの二人には罰を与えねばな」

 

考えても仕方がないので、考えるのを止め、今回の決闘騒ぎの二人に与える罰の検討に入った。

 

 

 

 

(今の、何だったんだろう……)

 

紗久弥は今しがたの攻撃に於いて違和感を覚えていた。

 

アクティブにしているペルソナ、スカアハはお気に入りのペルソナである。小アルカナカードでドーピングして強くもしている。

 

だが、あの『塔』で戦っていた時とは明らかに自分に影響を与える力が強すぎるのだ。

 

ヴィリエに罵倒では済まされない暴言を受けたルイズを無理矢理部屋に連れ帰った紗久弥。

 

ベッドに腰掛け、手の甲のルーンを眺める。

 

(これのせい?何か光ってたし……っ!?)

 

不意に、紗久弥は押し倒される。

 

「ルイズ?」

 

「……ごめん……ちょっと、このままで居させて……」

 

ヴィリエの言葉が深く突き刺さって……と言うより、これ迄耐えてきた何かに押し潰されたのだろう。

 

ヴィリエの言葉を切っ掛けにしたのは変わらないだろうが。

 

紗久弥の胸に顔を埋めて声を殺してルイズは泣いた、今日まで学院で泣いたことは無かった。気丈に、だからどうしたと言う風に過ごしてきた。

 

(私のせいで、彼女まで攻撃された……ごめんね……)

 

そう思うと更に涙が溢れてくる。

 

ぽんぽんと、優しく背中を叩かれ、もっと涙が溢れてくる、嗚咽も耐えられない。

 

ルイズは、声をあげて、泣いたーー

 

 

 

「ーー言っとくけど、今日だけなんだからね」

 

泣き腫らした目は赤く、顔はぐしゅぐしゅ。

 

「うん、解ってるよ」

 

「い、い言っとくけど!ホント、今日だけなんだからね!?」

 

ビシッと、指を突き付けられても何処か微笑ましい。

 

「うう、その微笑みは卑怯よアンタは……」

 

「そう?」

 

「そうよ!」

 

二人して吹き出して暫く笑い会う。

 

「久し振りに恥も外聞もなく泣いて笑ったわ」

 

そう言って微笑むルイズも十分卑怯な魅力だと、紗久弥は思う。

 

「顔洗いたいし、水持ってきて、サクヤ」

 

「ん、了解」

 

 

 

洗面器に水を汲みに水場に来ると、メイド達がギーシュについて話に花を咲かせていた。

 

やれ身請けしてほしい。

 

やれ妾にしてほしい。

 

やれ一度抱かれたい。

 

等であるが。

 

「貴女はどう、サクヤ」

 

いきなり振られた。

 

「一応恋人いるから無いなー」

 

その言葉に辺りが凍りつく。

 

そして、怒涛のように詰め寄られる。

 

「相手誰!?」

 

「使用人!?」

 

「貴族様!?」

 

「何時の間に!?」

 

「え、うわ、ちょっ」

 

結局、前の所にいた頃、事情があって離れたままになっていると伝えると、ルイズへの文句が上がる。

 

「召喚されたから、じゃなくてね?前の所でちょっと色々あってね、それでだってば、後ご主人様の事、あんまり酷く言わないでね?」

 

にこやかに微笑んだのに、何故かメイド達はかくかくと頭を振りまくる。

 

「よろしい、じゃあ戻るね」

 

「あ、うん、じゃあね」

 

 

 

 

部屋に戻ると、ルイズは机に向かっていた。

 

「何してるの?」

 

サイドチェストに洗面器を起き、集中しているルイズに声をかけると『手紙書いてるの』と返ってきた。

 

「もう少しで終わるからちょっと待って」

 

それまで何しようとポケットをまさぐると何かが指に当たる。

 

(ん、ああ、ベルベットルームの鍵か……そう言えば扉はどこにあるんだろう?)

 

よくよく考えれば学院の構造もあんまり把握していない。

 

(暇なときにでもルイズに教えてもらおうか……な……?)

 

ふと、手紙の内容が目に映るが……

 

「ちょっと、いくらサクヤでもご主人様の手紙読んでいいと……ってなに、どうしたのよ?」

 

手紙から目を放したかと思うと次は水の系統に関する本を手にし、愕然とする紗久弥に思わず眉をしかめてしまう。

 

「読めない……」

 

「は?」

 

「文字、読めないの……」

 

「へ?」

 

 

 

 

ルイズは学院の図書室(規模で言うなら図書館だろうが)に紗久弥と共に訪れる。

 

「流暢に会話してたからてっきり読み書きも出来るものだとばかりおもってたわ」

 

これに関して、ルイズは思い当たることがあると言う。

 

「使い魔として召喚される動物は、どういう訳か人の言葉を理解出来てるんじゃないかと言われててね、サモン・サーヴァントで呼び出した際、何かしらの魔法が掛かるんじゃないかって事らしいの」

 

姉が勤める『アカデミー』の研究で、そう言う研究成果が出ていると、ルイズは語る。

 

「これとこれ……で、良いかしら」

 

「その本は?」

 

さして厚みの無い二冊の本。

 

「児童書よ、子供が文字を覚えるのに使われることが多いの」

 

何で学院の図書室にあるのかは不明らしい。

 

「手続きしてから行くから、先に行ってて」

 

「うん、じゃあ部屋で」

 

 

 

 

一人、部屋に戻る廊下を歩いていると、突如行く手を塞がれる。

 

「この女?」

 

「間違いない」

 

「……ヴィリエを伸したの、お前で良いんだよな?」

 

不穏な雰囲気を感じ、紗久弥は足に少し力を入れて僅かに腰を落とす。

 

「何かご用でしょうか、貴族様方」

 

「何、ちょっとどうやってヴィリエを伸したのか気になってな、聞いてみようと捜してたんだ」

 

嘘だろう、その明かし……と言うには弱いが、後ろの二人は僅かに笑みを浮かべている。

 

「しかし……見れば見るほど『ゼロ』には勿体ないよなぁ……ん?」

 

「サクヤ、何してるの?」

 

数冊に増えていた本を紗久弥に渡し、後ろに控えさせ、少年達に向き直り。

 

「さて、ミスタ・エリッソン、ミスタ・コージェン、ミスタ・ペソニム、改めてお伺い致しますわ、私の使い魔に何かご用でも?」

 

小さな体から滲み出る威圧感は、果たして『ゼロ』と呼ばれる少女に見合うものだろうか?

 

紗久弥は眼前で少年達に睨みを効かす少女に、一人の先輩を、気高く美しかった女性を思い出す。

 

似ているのだ、何処と無く。

 

「さ、行きましょ」

 

少年達の居なくなった通路を威風堂々と歩くルイズ。

 

その姿は紛れもなく『女帝』とも思える。

 

しかし、彼女は『ゼロ』と呼ばれている。先程の少年達も例に漏れない。

 

「サクヤ?早く戻りましょう?」

 

「あ、うん」

 

 

 

 

部屋に戻ると、早速文字の勉強が始まった。

 

(んん?)

 

基本とある程度の単語を教わった所でその現象が起こる。

 

教わっていない筈の単語も理解出来るようになっているのだ。

 

「ねぇ、ルイズ、これって『イーヴァルディは騎士王に言った』で合ってる?」

 

「え、うん……でもなんで?」

 

「何かね、解るようになってるんだけど……」

 

言葉と同じように、感じるのだ、それこそ馴染んだ日本語であるかのように。

 

「ねぇサクヤ、何でそのルーン光ってるの?」

 

左手を見ると確かに光っている。

 

それと同時に、ペルソナの力を強く感じる。

 

「解んない……けど、文字の理解が急に出来るようになったのって……このルーンのお蔭なのかな?」

 

「うーん……そんな効果聞いたこともないけど……でも人間を召喚したのも……ううん……」

 

『ゼロ』の自分にそんなルーンが刻めるだろうか?

 

『人間』を召喚した事例はそもそも聞いたこともない。

 

何より、サクヤを召喚したときのあの現象は何だったのか。

 

何故、魔法がまともに使えない私に、彼女を喚べたのか。

 

そこまで思いが過ったとき、ルイズはふと思い出す。

 

「そう言えば……まだ話して無かったわね、私がどうして『ゼロ』と呼ばれるのか」

 

「『ゼロ』と呼ばれる理由?」

 

そう聞き返された時、ルイズは何故自分からこんな事を話そうと思ったのか。

 

何故、自分を『ゼロ』と表した時、何時ものようなドロリとした嫌な気持ちが無かったのか、不思議に思う。

 

「ルイズ?」

 

「あ、ん……そう、私がゼロと呼ばれる理由よ」

 

心境の余りの変わりようにルイズは戸惑いながらも、それを語る。

 

「初めて杖を振るった日、家族の見守る前でそれが起こったわ、貴女も朝見たでしょう?あの爆発よ」

 

叱られ、励まされ、学び、繰り返し、杖を振るった日々。

 

「でも、どれだけ努力を重ねても、ロックの一つ成功しなかった、全て爆発したわ」

 

やがて家庭教師も匙を投げた、ならば、せめて貴族足ろうと魔法以外の努力を行った。

 

「魔法以外は面白いように身になった、皮肉なものよね。魔法は貴族の誇り、なのに私はそれがない。」

 

やがてルイズはそんなアンバランスなまま、魔法学院に入学することとなる、オールド・オスマンであれば、何かしらの解決策があるやも知れない。

 

父の提案なのだと続けて。

 

「初めは良かったわ、公爵家の三女と言うこともあって注目を浴びてた。なのに、魔法の実習が始まると……」

 

爆発を繰り返すルイズに、魔法の成功しない彼女に『ゼロ』と二つ名が付くのに、そう時間はかからなかった。

 

「魔法の成功確率がゼロ、だから『ゼロのルイズ』と呼ばれてる……貴女を召喚出来て、使い魔の儀式も成功して……何かが変わると……魔法が使えるようになれたんだと……思ってた……」

 

紗久弥は何も言わずにルイズの手を握った。

 

「サクヤ……私は貴族なの……?魔法が使えない私に……貴族と誇る資格はあるの……?」

 

「私の先輩にね、貴族の誇りを持った人が居たの」

 

桐条美鶴。

 

紗久弥の知る中で、最も『貴族』足り得る人物である、実家的な意味も含めて。

 

一度、ある事件の最中壊れそうになった実家の為に、その身を『人身御供』とする事も考えていたようだが、美鶴が心の内で尊敬していた紗久弥を貶された事もあり、その男に『誇り』は無いと切り捨てた。

 

紗久弥は思う。

 

『誇り』とは何なのか、貴族とは何なのか。

 

家柄?お金?この世界に於いては魔法も『貴族の誇り』なのだと言うが、ヴィリエと言ったあの彼は果たして『貴族』と言えるだろうか、図書室の帰りに廊下を塞いだ彼等は『貴族』と呼べるだろうか?

 

彼等が貴族だと言うのなら、ルイズは何なのか。

 

あの廊下で見たあの気高さは、間違いなく貴き者の持つ物だ。美鶴がよく放っていたのだから間違いない。

 

だが、紗久弥は知らない。

 

もしも召喚されたのが少年ならば、ルイズはどんな態度を見せたのかなどは。

 

「会ってみたいわね……アンタが『貴族』だって言うその……ミチュルじゃなくってミ……ツル?って言う人に」

 

「そうだね……何時か会わせたいな……」

 

どこか寂しそうな声に『帰りたいのかな……?』と、思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

さておいて、実際に魔法を見せるのはまた明日にでもと、言ったところで洗濯物を届けに来たシエスタに、夕食は部屋に運ぶようにルイズは伝えると。

 

「私が取りにいくよ?」

 

実に仕事熱心な彼女である。

 

「そう?じゃあその間手紙書いてるから、よろしくね」

 

 

 

厨房に入り、料理長のマルトーに部屋で食事を取る旨を伝え、用意出来るまでは食堂での配膳の手伝いをすると言うと。

 

「おお、すまねぇな、すぐ用意出来るから目一杯手伝わなくても良いぜ?」

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

エプロンを厨房隣の更衣室で纏い、手を洗って配膳の手伝いを始め、トラブルもなく夕食の用意が出来たと伝えられたのは直ぐの事。

 

「早いですね」

 

「まぁな、ああ部屋に運ぶんだろ?シエスタにも手伝わせるから、エプロン脱いだらちょっとそこに居ろ」

 

指された先には使用人が使うテーブルがある。紗久弥も昼食の時使うテーブルだ。

 

(昼食食べてる時はあんな騒ぎになるなんて思ってもなかったなぁ……)

 

しみじみと思う。

 

そう言えば、決闘を代わりに受け、大怪我を負ったギーシュはどうしているのだろう、ルイズに後で連れていって貰おうか……

 

「サクヤちゃん、お待たせ」

 

ふと声が掛かる、見上げればエプロンドレスを着たシエスタの姿。

 

「あ、うん、いいよ。仕事忙しそうなのにごめんね?」

 

「ふふ、いいよ、貴族様の部屋に運ぶのも仕事だから」

 

『貴族様』

 

シエスタを始め、この学院の……いや、この世界『ハルケギニア』において、大半の平民は貴族をそう呼ぶのだと昼の仕事の前に教えられた。

 

それと同時に、名前の解らない貴族を前にした時も同じように『貴族様』と読んだ方が良いとも。

 

「サクヤちゃんみたいに呼び捨て何かしちゃったら、普通は首が飛んじゃうからね?仕事を辞めさせられる方なら未だしも、不敬だと言われて斬首された人も居るらしいから……」

 

物理的に首が飛ぶのは勘弁してほしい。そう思う紗久弥であった。

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