ONE PIECE 海賊王とソルジャー   作:黒崎士道

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○元ソルジャーと海賊

ここは、東の海(イーストブルー)にあるとある島。その海岸で一人の青年が腰を下ろし海を眺めていた。金髪を逆立て、宝石のように青い瞳が美しく非情に整った中世的な顔立ちから女性と見紛うほどの美貌を持った青年。その青年の背には身の丈ほどもある大剣が抜き身の状態で背負われていた。何もない、目の前に広がる海をただ眺めること。それが青年の最近の日課となっていた。彼はこのカーム島で1日の大半をこの海岸で過ごしていた。理由は強いて言うなら、海を眺めていると自分の中のモヤモヤとした気持ちを晴らせるからというべきだろうか。

 

だが、そのささやかな平穏を崩す出来事が起きた。

 

「……なんだおまえらは」

 

青年は目の前にいる二人の男たちに言う。一人は麦わら帽子を頭の上に乗せて、頬になにやら傷痕をこしらえている呑気そうな顔をした男。もう一人は腰に三本の刀を差した腹巻をした緑髪の男だ。

 

「おう!俺はルフィ!海賊王になる男だ!」

 

「俺はロロノア・ゾロだ」

 

ルフィとゾロと名乗った二人組は、唐突に青年の前に現れ自分たちに船をくれと言い出してきたのだ。なんでも二人は海賊らしく、乗っていた小舟が大渦に巻き込まれて沈没。この島にたどり着いたらしい。

 

「おまえ、名前なんてゆーんだ?」

 

麦わら帽子の男、ルフィが笑顔を見せながら尋ねてきた。青年は一瞬訝しげに目を細めるが、名乗ることにした。

 

「……クラウド。クラウド・ストライフ」

 

青年、クラウドは名乗るとルフィはにしし、と笑う。隣にいたゾロは何かを察したのか呆れたようにルフィを見る。そしてルフィが口を開く。

 

「よし、クラウド!俺の仲間になれ!」

 

「興味ないね」

 

突然の海賊勧誘にクラウドは即答だった。それもそうだろう、自ら進んで悪党になるような馬鹿がどこにいようか。クラウドの返答にルフィは不満そうな顔をすると続けて勧誘を試みる。

 

「えー!いいじゃねーかよ!仲間になれよー!」

 

「断る。なんで俺が海賊にならなきゃいけない」

 

「俺がお前を気に入ったからだ!」

 

「理由になっていないぞ」

 

「嫌だ!俺はお前を仲間にする!」

 

「……一応聞くが、俺の意思は?」

 

「聞かん!」

 

「よし、お前がよほどの自己中心的バカだということはよくわかった」

 

この男は諦めるという言葉を知らないのか。それから十分ほど同じようなやり取りをしている。ゾロの方はそのやり取りに飽きたのか、地面に横になり呑気に欠伸をかいている。やがて、何処からか妙に「ギュルルルー」と気の抜けるような音がその場に流れた。ルフィを見ると腹を抑えてその場にへたり込んでいる。

 

「なー、クラウド。ここってどっか飯屋ねーか?さっきから腹減ってよ〜」

 

こいつ、本当に海賊か?さっきからやたらと仲間に勧誘するし、妙に馴れ馴れしいと思っていたがここまで情けないと逆に対応に困る。クラウドはため息をつく。

 

「……俺が住んでいる村にある。連れて行ってやる代わりに飯を食ったらすぐに島から出てもらう」

 

「えー!なんでだよー!いいじゃねーかケチ!」

 

「お前、見ず知らずの海賊にそこまで親しくすると思うか?」

 

「ま、当然だろうな。俺たちは海賊、この島に住むお前には不審者でしかないってことだろ」

 

そこでゾロが体を起こしながらそう言う。その言葉は的を射ていたのかクラウドは頷くと言葉を続ける。

 

「そうだ。村の人たちを危険な目に合わせようとするなら容赦なく斬るからな」

 

クラウドはそう言うと、二人に背を向けそのまま海岸から離れ、巨木が連なる森の中へと入っていく。ゾロもクラウドに続く中、そんなクラウドの背をルフィは目を爛々と輝かせながら見ていた。ルフィはクラウドを見た瞬間、自分の勘で彼の実力が自分よりかなり上だとわかった。そして同時に、クラウドを仲間にしたいと思った。ルフィはクラウドを仲間にするため、ついでに飯屋に行くためにクラウドとゾロの後をついていく。

 

しばらく森の中を歩くと、細い道の先で森が途切れ、あたり一面に麦畑が見えた。風に揺れている麦たちは少し傾いている太陽の光をいっぱい浴びてまるで海のようだ。道は畑の間を蛇行しながら伸び、その先に小高い丘が見えた。その丘をよく見ると建物が幾つも密集していた。あそこが、現在クラウドが暮らしているルーリオ村だ。クラウドたちは狭い水路にかけられた石橋を渡ると村に入るための門の隣にある詰め所にいた衛士たちが見知らぬルフィたちを胡散臭い眼で見ていたが、クラウドがルフィたちを遭難者だと説明するとアッサリとルフィたちを村へと通した。村に入ると村の子供たちや何人かの村人がクラウドを出迎えたが、ルフィたちを見てそいつらは誰だ、と尋ねてくる者たちも少なからずいてクラウドは衛士たちと同じように説明すると、その中で大きな籠を下げた老婆が「かわいそうに」と涙ぐみながらクラウドやルフィたちに林檎をくれたりした。

 

そうして村の中をを歩いているとクラウドはある場所で立ち止まる。その先には一回り大きな一軒の建家。ギシギシと立て付けの悪い木造の階段を上がったクラウドが玄関の戸を開けるとそこにはこの村での憩いの場とでも呼ぶべきか、各種各様の酒瓶が棚に並べられておりささやかな一杯を楽しむ客が集っていた。

 

「へえ、ここ酒場か」

 

「他に何に見える?」

 

店に入り正面のカウンターに座るクラウドにゾロは肩をすくめながらクラウドの左側に、ルフィはクラウドの右側の席に座る。

 

「おかえりなさいクラウド。今日は随分早いのね?」

 

「まあ……いろいろあってな」

 

カウンターから一人の女性が話しかけるとクラウドの口調はこれまでになく柔らかい。カウンター越しの女性は膝まで伸びるロングのストレートの黒髪を束ねており大人びた雰囲気を持っており白のタンクトップにミニスカートと露出の激しい格好だ。

 

「あら、この人たち初めて見るわね?知り合い?」

 

「まさか、一応海賊らしい。飯を食ったらすぐに出て行く」

 

「へえ、そうなんだ?私はティファ・ロックハートよ。よろしくね」

 

明朗快活な女性はティファと名乗る。ここ『セブンスヘブン』という名の酒場を若くして切り盛りしておりクラウドとは同郷の幼馴染だ。数年前にこの島で再会し、クラウドは彼女の要望によってこの島に残ることになったのだ。

 

「俺はルフィだ。なあティファ俺腹へってんだなんか食い物くれ!」

 

「フフッ、はいはい。ちょっと待ってね、そこのあなたとクラウドは何にする?」

 

「ああ、俺も食い物と酒を頼む」

 

「俺はカクテルを頼む」

 

「わかったわ」

 

そう笑ってティファはカクテルを作る姿は様になっておりクラウド、ルフィとゾロをはじめ店内の客の視線を集める。そうして差し出されたカクテルは美しくエメラルドに輝いており、一口飲み干したクラウドは店の雰囲気も手伝ってか少し気分が高揚していく。そんな中、ルフィがバクバクと食べ物を口に入れながらクラウドをまたもや勧誘する。

 

「なあクラウド。一緒に海賊やろーぜ!海賊はおもしれぇんだぞ!」

 

「何度も言わせるな。断る」

 

「海賊はなぁ、歌うし踊るし冒険がいっぱいだぞー!」

 

「だから、興味ない」

 

「よし!クラウドは副船長にしてやるぞ!ししし!」

 

「勝手に決めるな!」

 

ルフィとクラウドの噛み合わない会話にそれを聞いていたティファがカウンターに座りくすくすと笑う。

 

「へー、クラウドったら海賊になるの?」

 

「なるわけないだろ。こいつが勝手に言ってるだけだ」

 

「言っとくが、ルフィは結構しつこいから覚悟しといたほうがいいぜ」

 

「モグモグ…おう!ぜってークラウドは仲間にするからな!」

 

ゾロが酒瓶を口にしながら言うと、ルフィも自信満々に応える。諦める気がない能天気の麦わら帽子にクラウドは本日何度目かのため息を漏らす。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「はあ……」

 

「フフ、クラウドも大変ね」

 

ささやかな時間を満喫していたクラウドたちであったがそのひと時は次の瞬間、崩れ去る。

 

突然背後の出入り口が勢いよく開くと、そこにこの店でも顔馴染みとなっている常連客の男がいた。だが、酒を飲みに来た割には何かに焦っているような様子だった。

 

「たいへんだぁ!村にモンスターの群れが来たぞ!」

 

男がそう言うと、店内にいた客たちは一気にざわめきだす。

 

「モンスター?」

 

「なんだそれ?すげーのか?」

 

聞きなれない言葉にルフィとゾロは疑問を口に出すが、クラウドはそれに答えず席から立ち上がり男の方を向く。

 

「モンスターの数は?」

 

「小さいのが五匹とデカイ親玉がいる!衛士たちも応戦してるがデカイ奴に歯が立たないんだ!」

 

クラウドはそれを聞くと、席の近くに立てかけていた自身の大剣を掴み取り背丈ほどの大剣を背中に背負うとカウンターにいるティファに告げる。

 

「俺がいく。ティファ村のみんなを南の森に避難させてくれ」

 

「わかったわ」

 

ティファが応え、クラウドは店から出ようとすると後ろから声がかけられる。

 

「俺もいくぞ!な、ゾロ!」

 

「ああ、モンスターってのも見てみてぇしな」

 

声の主は状況とは裏腹にどこか楽しそうに言う。客たちはルフィたちに驚愕の表情を浮かべる。死ぬ気かと言った者もいたが、ルフィたちは引く様子はなかった。

 

「……わかった。無理だけはするな」

 

一刻でも時間が惜しいため、クラウドは二人の同行を許す。クラウドの答えに客たちだけでなくティファまでもが止めようとした。ルフィは海賊王になると宣言した男だ、もしそれが本気なら多少は戦えるだろう。ゾロの方も少しは腕が立ちそうだ。戦力は多いに越したことはない。クラウドはルフィとゾロを伴い、酒場から駆け出すと店に隣接した厩舎に行き、その中にいた大きな黄色い鳥に跨る。

 

「スッゲー!なんだこの鳥⁉︎食えんのか⁉︎」

 

ルフィが目を輝かせながら口にすると、黄色い鳥たちがビクッと震えた。クラウドはそんなルフィを叱責する。

 

「こいつはチョコボだ。食用じゃない」

 

「こいつがチョコボか、初めて見たぜ」

 

「二人はそのチョコボに乗れ、急いで行くぞ!」

 

クラウドはそう言うとルフィとゾロは一回り大きなチョコボに乗る。クラウドはチョコボに備えられた手綱を引くと、チョコボは駆け出し魔物が侵入してきたであろうルーリオ村の門まで急ぐ。

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