ONE PIECE 海賊王とソルジャー   作:黒崎士道

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旅立つ決意

クラウドたちはチョコボに乗り酒場から駆け出し村の門にたどり着くと、門には木材などを積み上げた防衛線が築かれているが、すでにそこでは衛士隊の者たちが何かと応戦していた。それは一見すれば犬のように見えるが、背中からは赤黒い触手が伸びており、衛士たちの槍や剣に噛み付く牙はナイフのように鋭い。その中でもその後ろにいるのは犬たちより明らかに巨体で巨大な腕と大きな口にある牙が特徴的な獣だった。ルフィもゾロも、こんな生き物は見たことがない。だが、クラウドはこの魔物を知っている。

 

「ちっ、ガードハウンドはともかく、チョコボイーターまで来たか」

 

「チョコボイーター?なんだそれ?」

 

「村のチョコボを食らうこの島の主だ。近頃チョコボが村から出なくて直接食いに来たようだな」

 

クラウドはそう言ってチョコボから降りると、チョコボの尻をぽんと叩く。チョコボは天敵たるチョコボイーターから逃げ出すように村の方へ駆け出していく。そしてクラウドは背に携えた大剣、バスターソードを引き抜く。

 

「いいか、奴らを殲滅する。やれるな」

 

クラウドが言うと、ルフィはおう、と言いながら拳を合わせ、ゾロは腕に巻いていた鉢巻を額に結び刀を引き抜くと一本を口に咥え両手に残りの二本を持った。見込んだ通り、芯は相当強いようだ。

 

「今から一斉に奴ら目掛けて駆け出す。お前たちはガードハウンド、犬の方を頼む。無理に倒そうとしなくていい。俺はチョコボイーターを片付ける」

 

「よし!わかった!」

 

「見せてもらうぜ。お前の実力」

 

「勝手にしろ……行くぞ!」

 

クラウドの合図とともに三人は一斉にモンスターの群れに向かってスタートを切った。クラウドは疾風の如く速さで衛士やガードハウンドたちの間を縫って奥にいるチョコボイーターに向かう。その様子に驚いているのかガードハウンドも衛士隊も動きを止めていた。その隙にルフィとゾロがガードハウンドの群れを拳で殴り、三本の刀で斬った。

 

そしてチョコボイーターの前に立ったクラウドはバスターソードを振るいチョコボイーターを睨む。間合いを詰めてくるクラウドを睨み返しながら、チョコボイーターが吠えた。

 

「グオァァァァァッ‼︎」

 

吠える際に大きな口から血やら涎やらが飛び散り空気が振動する。

 

「ふん、そんなに俺を食いたいか?」

 

クラウドの言葉に肯定するかのようにチョコボイーターがもう一度吠えると、巨大な腕でクラウドを横殴りにする勢いで振り下ろす。クラウドは体を沈めて腕を掻い潜り、敵の横を抜けざま、がら空きとなった脇腹目掛けて水平斬りを放った。手応えはあったが、体を覆う厚い脂肪のせいでチョコボイーターは葬れなかったようだ。ごうっと、頭上から降ってくる反撃を危うく躱す。唯の攻撃では埒があかない。そう判断したクラウドは大剣を片手で持ち、チョコボイーターが腕を振るってきた瞬間、

 

「ソニックレイヴ!」

 

クラウドは剣をチョコボイーターに向けながら凄まじい速度で突進した。振るってきた左腕を斬り落とし、腕を斬り飛ばされたチョコボイーターは咆哮を迸らせながら右腕を振り下ろしてきた。クラウドはそれを跳躍することで回避する。

 

「終わりだ」

 

上空に高く飛んだクラウドは大剣を振り上げ剣に翠色の光を纏うと、落下の勢いを利用しそのままチョコボイーターに向かって剣を振り下ろす。

 

「ブレイバー!」

 

振り下ろしたバスターソードの一閃がチョコボイーター叩き斬る。迫ったチョコボイーターの爪がまるで時間が止まったかのように静止する。首元に一筋の線が見えたと思った瞬間、血しぶきをあげながら胴体から頭部が落ちた。ようやく終わったと思い、剣を背に納めた時だった。

 

「グルァァ!」

 

クラウドの背後から一匹のガードハウンドが飛びかかろうとしてきた。ルフィたちが取りこぼしたのだろうか、クラウドは反応に遅れ、咄嗟に柄を引き抜こうとした時だった。

 

「ゴムゴムの銃!」

 

「ギャイン⁉︎」

 

突然起きたことにクラウドは目を見開いた。クラウドに襲いかかろうとしたガードハウンドが、いきなり伸びた腕に殴り飛ばされたのだ。腕はまるでゴムのように伸び、そのまま伸びたところを戻っていく。クラウドは腕が伸びた腕の方を向くと、そこには腕をぐるぐると回していたルフィがいた。

 

「いやー、わりいわりい。一匹逃しちまった」

 

「お前…今、腕が…」

 

「ああ、俺は“ゴムゴムの実”を食った“ゴム人間”なんだ」

 

クラウドはらしくなく唖然としながら聞くと、ルフィはにしし、と笑いながら答える。『悪魔の実』。世界中に散らばる食した者に特別な能力を与える海の秘宝。その能力者たちにクラウドは何度も出会ったことはある。だが、この東の海で出会うとは思っていなかった。

 

「にしてもやっぱクラウド強いなー、俺の仲間になれよー!」

 

「しつこいぞ」

 

ルフィが笑いながらクラウドにくっついてくるのでクラウドは鬱陶しそうにルフィを退ける。そこで刀を鞘に納めたゾロが口を開く。

 

「とりあえず、酒場に戻ろうぜ。思ったより強くて疲れちまった」

 

「ああ、ありがとう。おかげで助かった」

 

クラウドも柄になく素直に礼を述べると、ゾロは意外だったのか、口をあんぐり開けてこちらを見てきた。ただ礼を言ってやっただけなのに失礼な奴だ。

 

「なあなあいいだろー!仲間になれよー!」

 

「お前もいい加減黙ってろルフィ!」

 

その後、チョコボがいないため歩いて村に戻る道中も、ルフィはクラウドを海賊に勧誘しているが、クラウドはそれを否定。やがて村に着くと、村人たちが歓声とともに三人を出迎えていた。

 

 

「すげーな!この村ってこんなに人いたのか!」

 

ルフィが両手に様々な料理を持ちながら言った。村には赤々とした灯りが幾つも焚かれ、集った村人たちの笑顔を明るく照らしていた。広場では幾つかの楽器を演奏に合わせて踊る人たちがたくさんいる。

 

「いや、俺もここまで村人たちが集まるのは初めて見た」

 

クラウドはそう言うと手にしたジョッキを口にする。ルーリオ村を怯えさせていた島の主、チョコボイーターの討伐は衛士たちから村人にすぐに伝わった。これまで多くの村人やチョコボを喰らってきた魔物の死に村人たちは喜び、泣いていた。だが、今回の襲撃でチョコボが二羽と農家の人が四人殺されてしまっていた。

そして村に平和が訪れた宴を開き、参加したルフィはご覧の通りご馳走を食い荒らし、ゾロは向こう側で村で酒豪の男たちと飲み比べをしている。

 

「ほら、今日の主役がこんなとこでなにしてるの?」

 

甲高い声が降ってきてそちらを見ると両手を腰に当て、クラウドの顔を覗き込むようにティファがこちらを見ていた。

 

「いや、俺踊れないし…」

 

「いいからほら!」

 

「お、おい!」

 

モゴモゴと言い訳するクラウドにティファはクラウドの手を掴みそのまま椅子から引き起こされてしまうと、そのままたちまち踊りの輪に呑み込まれてしまう。幸い、ダンスはどうにかティファがリードをしてくれて見真似で踊れるようになった。するとだんだん、素朴なリズムに乗って体を動かすのが楽しく思えてきて普段表情を顔に出さないクラウドも少し笑顔を浮かべていた。それを見たティファは顔を赤く染め、クラウドの手を握る力が強くなる。

 

「皆、宴もたけなわだが、聞いてくれ!」

 

よく通る声が広場中に響く。演台の方を向くと、ルーリオ村の村長である見事な髭を伸ばした老人が登っていた。村長の言葉に村人たちは沈黙する。

 

「まず、この村を救った英雄ーークラウドと二人の若者よ、ここに!」

 

村長がそう言うと、周りから歓声が送られる。クラウドはティファに押されて演台に登り、その後に続いてルフィとゾロも立つ。今日の功績を称えた三人に最大の歓声が浴びせられる。

 

「三人とも、よくやってくれた。お前たちがいなければこの村はあの忌まわしいチョコボイーターたちに食い荒らされていただろう。だが、お前たちのおかげで島から魔物もいなくなった、なんでも望みを言うがいい」

 

村長の言葉にクラウドはダンスの余韻が急激に冷めるのを感じた。クラウドは困ったように俯く。クラウドはこの村が嫌いなわけではない。むしろ、この村はとても眩しいほど優しさに満ちている。だが、クラウドもこの島から出て色々とやりたいこともあったがティファとの『約束』を守るためにこの村にいた。ここで俺は海へ出る、と叫べば海に出られるかもしれないが、と考えていた時隣から声が響いた。

 

「じゃあ俺たちに船をくれ!あとクラウドを仲間にしたいんだ!」

 

クラウドは隣を見ると、そこには笑顔を浮かべてながらこちらを見ていたルフィがいた。ルフィの申し出にクラウドも反論をする。

 

「勝手に決めるな!俺はこの村から出るつもりはーー」

 

「本当にそれでいいの?クラウド」

 

静かに、はっきりとした声がその場に響いた。人垣を割って台に近づいたのは、クラウドの方をまっすぐ見据えているティファだ。

 

「ティファ…」

 

「クラウド、本当は海に出てやりたいことがあるんでしょ?でも…私との『約束』を気にして村から出られないのよね……」

 

ティファが少し俯き、そう言う。違う。クラウドはティファにそんな顔をさせたいわけじゃない。

 

「違う、ティファ。俺はーー」

 

「のう、クラウドや」

 

ティファに声をかけようとしたクラウドを制したのは、村長だった。村長はクラウドに歩み寄ると皺のある手でクラウドの肩に手を置く。

 

「儂等はお前さんがこの村に来てからずっと魔物から村や畑を守ってもらった。だが、儂等はお前に頼り過ぎていたかもしれん。クラウドよ、どうだ?この若者たちとともに海に出んか?」

 

村長の言葉にクラウドは沈黙を作る。やりたいことは勿論ある。島を出て、五年前の因縁を断ち切ること。そのためにはいつかこの島から出なければならないことはわかっていた。それから少し考え、クラウドは顔を上げ、まず村長を、次いでルフィたちや村人を見回すと、はっきりとした声で伝えた。

 

「……俺はーー海に出る。村を出て“偉大なる航路”で俺のやりたいことをする」

 

しんとした静寂の後、クラウドの宣言に村人達はわっと盛り上がりクラウドの門出を祝った。それを聞いたルフィも同じだった。

 

「よっしゃー!副船長が仲間になったぞー!」

 

「勘違いするな、俺は海賊になるわけじゃない。目的を果たすまでお前らに同行するだけだ」

 

と、クラウドが一応言うが、ルフィはそれを無視。そのまま宴会に戻ってしまい、すぐに音楽が再開された。祭は前以上に盛り上がり、ようやくお開きとなったのは教会の鐘が十時を告げる頃だった。ルフィとゾロはクラウドが借りている教会のベッドに寝ることになり、クラウドは『セブンスヘブン』の借家で寝ることにした。

 

「今日はずいぶん呑んだわねクラウド。はい、お水」

 

ベッドに座り込んでいると、ティファが井戸から汲んだ水をクラウドに差し出す。クラウドはそれを受け取り飲み干すと、やっと頭が冷めてきた。

 

「その……ありがとう」

 

「どうしたの、急に」

 

突然のクラウドの言葉にティファも驚いたのか、聞き返してくる。

 

「……明日には、この村を出ることになるだろ。もしあそこでティファが俺を押してくれなかったら、俺はずっとこの村にい続けてたかもしれない…」

 

クラウドがそう言うと、ティファは深くため息をつき、クラウドの隣に腰を下ろす。

 

「別にいいわよ。私もクラウドに、ルフィについていくことにしたから」

 

「なっ⁉︎なら店はどうする⁉︎」

 

あまりの衝撃発言にクラウドは思わず仰け反りつつ、必死に反対材料を探す。

 

「他の人が引き継いでくれるから大丈夫」

 

時間稼ぎのつもりがあっさり撃沈。水を口に持って行ってから、からであることに気づく。

 

「なんで……」

 

「私も、いつかこの村から出てあの故郷に、ニブルヘイムに戻るって決めてたのよ。だからルフィ達の誘いはいい機会だったわ」

 

正直、クラウドにとって嬉しいことだった。同郷の幼なじみであるティファが一緒に来てくれればクラウドも心強かった。だが、危険な旅にティファを巻き込みたくないというのもあった。

 

「…“偉大なる航路”は危険だぞ」

 

クラウドはそう言うが、ティファは逆に笑みを浮かべていた。

 

「私たちはその“偉大なる航路”の出身者よ。それに私強いし、ピンチになっても守ってくれるんでしょ?」

 

「……わかった」

 

結局、その言葉でクラウドが折れた。それを見たティファはふふんと強気な笑みだった。

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