リリカルなのは二次創作、第一話にしてまさかの原作キャラが登場しないという。
今回はオリ主、オリキャラ、オリデバイスが登場します。
誰だって、ヒーローに憧れるものだ。
弱きを助け強きを挫く、正義のヒーロー。誰かの為に戦うその姿は、とにかく格好いい。……そんなヒーローに憧れ、あんなふうになりたいと夢を語る。
俺も、そんな存在になりたいと思ったものだ。その思いは大人になった今でも心のどこかに残っていた。
――だからだろうか、こんなことをしてしまったのは。
「逃がすな! 追え!」
黒ずくめの男三人組が、白髪の少女を担いだ俺を追わんと走り出す。
「――もう、なんだってんだよ……!」
事の発端は、ほんの数分前のこと。
道端に倒れ伏したかすり傷だらけの白い髪の女の子を発見したのだ。話しかけてみても返事はなく意識を失っているようで、ああどうしよう、を何度も繰り返していた時のことだ。
黒ずくめの男たちが現れたのである。女の子を見るなり、顔を見合わせるようにして脱走したなんとかかんとか~と言っていた。それがこの子のことを言っていて、どういう事なのかは容易に想像出来た。
そして――俺の中の何かが、こいつらにこの女の子を渡してはダメだと言っていた。
少女を連れて行かせるわけには、と咄嗟にこの子を担ぎあげて、俺は逃げ出すのだった。
あー、くそ。普段からランニングとかしておけばよかった。
黒ずくめたちの足は、その重っ苦しい格好とは違ってなかなかに速く、それが俺を焦らせた。
「……チッ、かまうな! 撃て!」
ドキリとした。〝うて〟って、〝撃て〟、だよな……?
避けられるわけがないし、逃げられるわけもないのに走る速度を上げる。小さな声で、まずいとやばいを繰り返す。こんな言葉、今まで生きてきて何度も使ってきたが今回はその重みが違う。本当に、まずい。
それでも、女の子だけは守り抜きたくて、俺の体が壁になるようにしっかりと抱きあげて走る。
「ッ、あ……ぐ、っ」
この道には俺と女の子と黒ずくめの男しかいないとはいえ、一応は街中。そんな場所でもかまわず発砲してくるのだからサイレンサーくらいはつけていたのだろう。それと、俺と黒ずくめたちとは距離があったのもあってか銃声はまったく聞こえなかった。
右大腿に、じくじくとした痛みが広がる。幸いにも、撃ち抜かれてはいなかった。直撃は免れ、掠っただけのようだ。……それでも、痛みは今までに経験したことのないような痛みだが。傷口が、まるで焼けるように熱く痛む。
それでも、走る速度を落とすわけにはいかなかった。
……もう少し。もう少し進めば、人通りの多い道へ出られる。もう少しだ。自分自身に言い聞かせるように、そう繰り返す。
担いでいた女の子を横抱きにして、人通りの多い道へ向かって加速する。
人に紛れつつ、あいつらを振り切ってしまえばいい。人混みに入れたら、少しくらいは速度を落としても大丈夫なはずだ。
人通りの多い道へ出ると、意図せずして安堵の息が漏れた。
今現在非日常的なことが起きているとはいえ、目の前にあるのはいつもの海鳴だった。
多少人の目が痛いが、此処は海鳴。おかしなことなどしょっちゅうだ、女の子を横抱きにした男が走っているなんて大したことではない。多分。右大腿から出血しているところに気付かれたらまずいかもしれないが、きっと脚の方まで目線を下げたりしないだろう。
思い通り、人混みに紛れ込むことに成功したところで少しばかり速度を落とした。
「あー、痛い。めっちゃくちゃ痛い。死んじゃうかも」
大げさに痛い痛いと口にして、チラリと傷口を見てみる。――見なきゃよかった。
浅いとはいえ、皮膚の表面が弾丸によって抉り取られたようになっている。裂けたズボンからチラつく傷口は痛々しく、見ると余計に痛むような気すらした。……見ないようにしよう。
病院など、黒ずくめの男たちが探しに来てしまうかもしれないような場所には行くべきではないと判断し、女の子に〝ちゃんとした手当てを受けさせてあげられなくてごめんね〟と謝ったり、早く自分の脚を……! という思いを泣く泣く切り捨てた。
しかし、幸いにも今いる場所からならば、俺の自宅がとても近い。とりあえずは、家に逃げ帰ろう。
人混みに紛れ、女の子を横抱きにしているという目立つ状況でも、極力目立たないように、見つからないようにと動いてようやく自宅前までたどり着くことができた。
右左と頭を動かして手早く周りを確認し、ササっと自宅――もといボロアパートの自室へ入った。
「……はぁ~、なんとか撒けた……。頑張ったぞ、俺」
思わず、大きな息が口から漏れた。なんだか、どっと疲れた……。まだ、やらなくちゃいけないことがあるから、休憩はもうちょっと先だけど。もうひと頑張りだ。
一旦、女の子を降ろしてから布団を引っ張り出して敷けば、女の子を布団へと寝かせる。
……改めて見ると、ひどい格好だ。衣服なのかも分からぬ薄汚れたボロ布には泥やホコリが至る所に付着。腕や脚、頬などにはかすり傷が多数。微量ながらも垂れる血が痛々しく、胸が痛んだ。どうしてこんな小さな子が……。
洗面器に水を溜めて、洗濯したばかりの清潔なタオルを用意。消毒液と絆創膏も必要だな。できれば、汚れた服もどうにかしたいが……流石に、女の子の服を俺が着替えさせるわけにはいかないし。
なんだかちょっといけないことをしている気分になりつつ、濡らしたタオルで汚れや血を拭き取る。この絵面、色々と危ないな。
一通り拭いた後は、消毒液で傷と傷周辺を消毒。い、痛そう……。傷口がしみる痛みを想像しては苦い顔になってしまう。痛そう、痛そうと繰り返しながら消毒を終えて、最後に絆創膏をそっと貼った。
これで完璧。一仕事終えたかのような達成感に包まれて、汗などかいてもいないのに、汗を拭うかのような動作をした。
女の子に掛け布団を掛け、自分は卓袱台前に座って一息吐く。――これから、どうしよう。勢いで女の子を助けたものの、どうしたらいいのかさっぱり分からない。とりあえずはこの子を休ませて、親探し……とかか? うん、それだ。とにかく、まずは休ませよう。
というか、よくよく考えたら「起きたら見知らぬ男の家で寝かされていた」なんて女の子からしたら恐怖以外の何でもないよな。ど、どうしよう!? 俺が悪い奴じゃないと伝えるにはどうしたらいいんだ!?
うーんうーんと唸りながら悩んでいるうちに、俺は疲れからか眠ってしまっていた。ぐう。
****
「く、黒いタヌキがあああーっ!!?」
ガバッ、と起き上がればいつもの自室が広がっていた。――なんだ、夢か。
とてつもなく気持ちの悪い夢を見ていた気がする。先ほどの自分の叫びからして、黒いタヌキが出てくる悪夢だったのだろう。……わけわからん。
「……あれ?」
俺自身、逃げられた安心や疲れからすっかり忘れていたが、そういえば右大腿を銃弾が掠ったんだった。それを思い出し、傷があった辺りに目をやるも――何もない。
撃たれた、というのは間違いない。ズボンも、しっかり焼け焦げて裂けているし血痕も着いている。なのに、傷がない。
まさか、こんな短時間で治るわけがない。謎に首を捻るも、悪化したわけじゃないしまあいいか、と落ち着いた。
そして、ふう、と気持ちを切り替えるように息を吐いたところで、ハ、と布団の方へ目を向ける。
そうだ、女の子――
「って、あれ!?」
お、女の子が居ない!? なんで!?
ドタバタと動き回り、女の子を探すがどこにも見当たらない。一応、押し入れなども開けてみたが居なかった。
あんなボロボロの状態で、しかも追手がまだ居るかもしれない中で外に出たなんて……。
眠ってしまったことを悔やみながら、頭を抱えた。
どうする? 探しに行くべきか? しかし、もう追手に捕まっているかもしれない。もしかしたら、親御さんの元に帰ったのかもしれない。
あの黒ずくめの男たちが、怖いという思いもあった。俺だって人間だし、特に体を鍛えてきたわけでもない一般人だ。そりゃあ、怖いとも思うさ。撃たれた時の恐怖と焦りを思い出すと、どうしても躊躇してしまう。
ぐるぐると渦巻く思考の中で、悩む。俺が今、どうすべきなのかを。
――その時。何処からか、強い光が発せられた。あまりの眩しさに、思わず目を瞑ってしまう。
しばらく目を開けられずに立ち尽くし、数十秒ほど経った頃にようやく目を開けた。
「……玉?」
『玉ではありません。いきなり、失礼な輩ですね』
「しゃ、喋っ!? え、お、しゃ、喋った!?」
先ほどは焦っていたから気付かなかったのだろう。女の子が寝ていた布団の上に、オレンジ色……山吹色? の玉があったのだ。
まったくわけがわからないが、しかもその玉が今現在言葉を発した。間違いなく、この玉が喋った。俺は一人暮らしだし、隣人の声が鮮明に聞こえるほど壁が極薄なわけでもない。どう考えても、山吹色の玉が喋ったとしか考えられなかった。
『状況を把握する能力が皆無のようですね。……まったく、使えない』
しかもこの玉、毒舌です。
「い、いや、状況を把握できるわけがないでしょ。女の子は居ないし、玉は喋るし」
『貴方は記憶能力が欠損しているのですか? 私は玉ではないと言ったはずですが。――ああ、そんな事を言っている場合ではありません。貴方の言う、〝女の子〟について話があります』
「何か知ってるのか!?」
玉が喋ってるとか、あり得ないことにもつっこんでいる暇などなかった。間髪入れずに大きな声をあげて話に飛びつく。
『あの子は、貴方を巻き込むまいと出て行きました。……私も共に、と言ったのですが、あの子は自分だけ捕まるつもりで私を此処へ置いて行ってしまった』
『こんなことを貴方に頼むのは、間違いだと分かっています。ですが、お願いします――どうか、あの子を助けてください。私が、貴方の武器となります。あの子の居所はもう掴みました。どうか、お願いします。貴方しか、居ないのです』
胸が熱くなるのを感じた。ドクン、とひときわ大きく心臓が脈打つ。
考え込むように視線を下げて、〝それ〟を見つける。
〝さがさないで ありがと〟
ガタガタとした線で、拙いひらがなで。
俺が卓袱台に置きっぱなしにしていたメモ紙に書かれた、たったそれだけの文字が俺の心を強く打った。
俺を巻き込むまいと、出て行った。俺の目の前で女の子を案じている、喋る玉だけでもと置いて行った。そして、目覚めた俺が自分を探さぬようにと言葉まで残していった。
――涙が、出そうになった。あんなに小さな女の子が、大の大人である俺のことを案じて一人出て行った。また、捕まってしまうかもしれない中で。
『まるで、恩を売るような言い方になってしまいますが……。貴方の、脚の傷を治したのはあの子です』
また、心臓がドクンと大きく鼓動した。怯えている場合ではない。躊躇している場合ではない。
深く、深く深呼吸をする。臆病な、弱気な俺を心の奥に押し込める。――よし。
「……分かった。俺は、どうすればいい?」
『ありがとうございます。……では、私の言葉を復唱してください。私を、貴方のデバイスとして最適化し、再起動します。――それと、私の名前はミスルトです。以後、お見知りおきを』
正直、今でも何が何だかまともに分かっちゃいない。それでも、やらないわけにはいかなかった。
ミスルトの言葉に強く頷いて見せ、もう一度深呼吸をする。
『我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て』
「……我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て」
『光の使い手、此処に在り。尽きぬ光はこの魂に。この手に魔法を』
「光の使い手、此処に在り。尽きぬ光はこの魂に! この手に魔法を!」
窓を開けているわけでもない部屋に、風が吹く。揺らめく前髪を見つめながら、何故か俺はこの上なく落ち着いていた。
何の根拠もないが、俺はこの先に言うべき言葉をなんとなく理解していた。
「ミスルト、セットアップ!」
『Stand by ready. Set up.』
先ほどのような、強い光が再び辺りを包み込む。
『貴方にとっての武器と戦闘服をイメージしてください』
まったく周りが見えない中で、ミスルトの声だけが耳に届く。
それに従って、俺にとって一番の武器……二丁拳銃と、紺を基調としたコートを思い描く。
まんま、昔に読んだ漫画に影響されているから少しばかり恥ずかしかったが。
光がおさまった頃、そっと目を開けば両手に二丁の拳銃が握られていた。銀色の、銃身が長めにデザインされた二丁の拳銃が。
その片方には、山吹色の玉こと、ミスルトがはめ込まれている。
自身の体を見れば、憧れのヒーローとまったく同じ紺のコートを着ていた。
……これ、漫画知ってる人が見たら一発でバレるな。
『これで、貴方は私のマスターになったと同時に――魔導師となりました。細かい事はあとですべて説明します。今はとにかく、あの子を追いましょう。道案内します』
ミスルトがそう言うと、二丁拳銃とコートが消え去り、元の俺の格好へと戻った。
うん、コスプレみたいな格好でうろうろできないもんな。
腕に感じるわずかな重みに気付き、腕時計を確認するかのような動作で右腕を見る。
銀色の、重厚な見た目をした腕輪が俺の腕にはめられていた。中央には、ミスルトがはめこまれチカチカと点滅している。
これについても、いったいなんなのか聞きたかったが。とにかく今は、と思考を切り替えた。
「りょ、了解。……じゃあ、行くか」
強く拳を握って、家を飛び出す。
――いつか憧れた、ヒーローになる時が来たのだ。
****
『そこの道を左に曲がってください。あの子はもう捕まってしまったようですが、この町から離脱してはいません。急げば間に合います!』
「了解!」
全力疾走。俺に出来る、全速力の走りで女の子の救出に向かう。
魔導師――魔法使い? になったのなら、空を飛んだりできるんじゃないのかと走りながら聞いてみたところ〝いきなり魔導師になった者が空を飛ぶなんて、よっぽど才能が無ければ無理〟だそうで。
ならば空を飛ぶより早く走ってやると意気込んではみたが、これ絶対空飛んだ方が速いよね。
なんてふざけ気味に言ってみたものの、己の力不足を感じて不甲斐ない気持ちでいっぱいだった。俺に魔法の才能があれば――。
早く、女の子を助けなくてはならないのに。
『この先の道に居ます! この周辺は人が居ないようなので、もうバリアジャケットを装着してしまって大丈夫でしょう』
「……よし。せ、セットアップ!」
セットアップ、の一言で、バリアジャケットもとい黒コートが装着され、両手には銀の二丁拳銃。
いいさ、やってやる。ヒーローになってやる。女の子を救い出す。俺が、この手で!
『先制攻撃です。まずは一発、奴らのうちの一人にブチかましましょう!』
少し先に、黒ずくめの男たちが見えた。男の一人が、女の子を担ぎ上げているのも。
走っている最中に何度も繰り返し教えられた魔法の名を思い出す。……大丈夫、大丈夫。何回も聞いた。ちゃんと覚えてる。
「ま、マテリアル・ショット!」
『Ready. Material shot.』
魔法の名を叫びながら、銃の引き金を引く。
一瞬にして、銃身まわりに山吹色の光を放つ環状型をした輪が現れる。
山吹色の光球が銃口より放たれ、女の子を運ぶ黒ずくめたちの一人に着弾した。
「ッ!?」
「――な、さっきの一般人!?」
弾丸が着弾した男が吹き飛ぶが、非殺傷設定とやらにしているので死んではいないはずだ。
「その女の子を、返してもらおうか」
銃を構えながらそう口にする俺はまさにヒーローそのもの。
……ちょっと、かっこつけました。
『マスター、やられる前にやりましょう。さあ、魔法の詠唱を!』
「い、いやでも、女の子担いでる奴吹っ飛ばしたら女の子が……」
『貴方が走って受け止めてください。――さあ、早く!』
「あー、ちくしょう! 分かったよ! マテリアル・ショット!」
『Ready. Material shot!』
思ったよりも戦闘慣れしていないのか、あたふたとしている黒ずくめたち。
一人は気絶、一人は焦りながら懐から銃を取り出し、女の子を担いだ一人は逃げようとしていた。
ミスルトの話によれば、バリアジャケットを装着していれば銃弾の一発や二発余裕で防げるらしい。もう、銃なんて怖くもなんともないね。……バリアジャケットを
装着している時に限るが。
――逃がして、たまるか。右手に握った銃で、一人を。左手に握った銃で、逃げようとするもう一人を狙う。
当たるか当たらないかなどもはや無視して、撃った直後、確認もせず走り出す。
そうしなければ、女の子を受け止めるのに間に合わないからである。
それでも当然、弾丸のほうが圧倒的に速いのは当たり前の事で。俺の目の前で、女の子を担いだ男の背中に着弾。男は吹っ飛び、気を失っている様子の女の子が空中を舞った。
くそっ、間に合え――!
「う、おおおおっ!!」
全力を出し切るかのように、雄叫びをあげる。ぐん、と限界を超えて加速し、受け止める事は叶わずとも、せめて俺の体がクッションになればと体を滑り込ませる。
「――ぶぎゅっ」
背中に、たいしたことのない衝撃。たいしたことないのに、変な声が出た。
というか、背中への衝撃より滑り込んだことで擦り切れた頬が痛い。地味に痛い。
『NL025! 大丈夫ですか!?』
〝えぬえるぜろにーご〟って、誰だよ。
え、まさか。この女の子? この子の名前おかしくない?
これが世に言う、キラキラネームとやらだろうか。
地面に倒れ込んだ状態のまま、女の子が背中に乗っているので起き上がる事も出来ず首だけを動かして黒ずくめたちの姿を探す。……よかった、気絶してくれている。
「ん……」
『よかった、NL025……』
「み、すると?」
俺の背中の上で何が起きてるんだ。
女の子が無事目覚めたのだろう、ということくらいしか分からない。
……うん、でも無事でよかったよ。
「あれ、このひと」
「ど、どうも。俺――『この方が助けてくれたんですよ。……とにかく、まずはこの方の家に戻りましょう?』うん、そうだね」
なんで言葉を遮ったのか不思議だけど、まあいいさ。
「でも、まきこみたくない」
「そんなこと気にしなくてい――『この方、私のマスターになったんですよ。そんなこと今更です』ミスルトの言う通りだよ」
「――いいの?」
女の子は、感情の薄い表情で、それでも不安そうに見ていた。
ミスルトのマスターになったりと、もう巻き込まれてしまっている事もあるけれど。
この言葉に、NOと言えるわけがなかった。
「うん。いいよ。……ここまで来たら、どんな奴が来ようと俺がぶっ飛ばしてやるさ。俺は、ヒーローだからな」
この時ばかりはミスルトも言葉を遮らなかった。
女の子がその感情の薄い表情に小さな笑みを浮かべるのを見て、俺は胸が熱くなった。
こうして、俺は。
****
「あのさ、NL025ってすっごく呼びづらいんだけど……」
あの後、黒ずくめたちを道端に放置して三人――いや、二人と一個? でボロアパートへと帰ってきた。
色々と話を聞いたが、俺にはさっぱりチンプンカンプンだった。分かったのは、とにかく女の子には住む場所も帰る場所もないことだけだ。
どうしてこうなったのかは分からないが、ほうっておくこともできないのでとりあえずは此処に住ませることにした。
……というか、ミスルトが〝ここまで私達に関わったんですから、覚悟を決めて貴方がNL025を養ってください。不自由させたら承知しませんよ〟と無茶苦茶なことを言ったのだ。
住ませるのも、養うのもまあいいとしよう。しかし不自由させないというのは難しい。情けないことだが。……だって、フリーターだよ俺。
――そんなこんなあって、超急展開で話が進んでこうなった。
「ジョーが、わたしのなまえかんがえて」
『なっ!? こんな男に新たな名前をつけてもらうなんて!?』
ミスルトって、なんでか俺に対してだけ厳しいよね。悲しい。
女の子こと、NL025……? ちゃんは俺のことを〝ジョー〟と呼ぶことにしたらしい。
丈介という日本人感バリバリの名前から、外国人のような愛称がつけられた。かっこいいけど、ちょっと恥ずかしい。
――それにしても、この子の名前か……。
どうしようか、と女の子をじっと見れば、女の子はその愛らしい瞳で俺を見つめ返す。
綺麗な、瑠璃色の瞳に思わず見惚れそうになった。
めちゃくちゃ安直で単純だけど、瑠璃……なんてどうだろうか。
「瑠璃、とかどうかな」
「……るり。ルリ。るり……うん、うん。うれしい。わたし、きょうから、るり」
『安直で単純な名前ですね。――まあ、NL025なんて名前よりはマシ、ですが』
ミスルトがデレたよ! やったよみんな! でも何故だろう、安直で単純という言葉が事実なだけに突き刺さるよ!
表情を見る限り、本当にうれしいのか? と聞きたくなる。いや、いくらなんでも本気でそう思ってるわけじゃないけど、感情表現と言うか表情の変化が乏しくて分かりづらいのだ。
「ジョー。わたしのなまえ、よんで」
俺の服の袖を引っ張りながら言う瑠璃ちゃんが可愛らしくて、思わずちょっと笑ってしまう。
「――瑠璃ちゃん」
「――はい」
自分でも、あまりに展開が早すぎてわけがわからない。此処に住ませるとか、養うとか、不安もたくさんある。これから先、また瑠璃ちゃんやミスルトを追う奴らが来るかもしれないこととかも。
けど、名前を呼んだだけで嬉しそうに返事をする、この子を……瑠璃ちゃんを、助けることができてよかったと、心から思う。
執筆する際には何度もwikiを見たり作品を見直したりしていますが、それでもおかしなところがあるかもしれません。もし、「なんかおかしくね?」なところを見つけられた場合は指摘いただけたらと思います。
また、文章の方も投稿前にチェックを重ねていますが漏れがあるかもしれません。こちらも、何か見つけられましたらご指摘ください。
NL025ってなんだよ説明なしかよ!と思われている方もいるかと思いますが、その説明などは次話でしますのでご心配なく……。
次話の投稿についてですが、半分もいっていないですがある程度は書いてありますのでそんなに遅くならないかと思います。
原作に絡んでいくのは、数話先になる予定です。
作品タイトルは、投稿するにあたって何にしたらいいかまったく思いつかなかったので適当につけてしまいました。今後、いい感じの題が思いついたらそちらに変更しようと思いますが、思いつかなかった場合は(仮題)を外して正式なタイトルにしてしまおうかと思っています(笑)
読んでくださり、ありがとうございました。