2度目の人生を真剣に生きる   作:我楽多さん

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幼少期
プロローグ


 よく晴れた皐月のある日のこと。いつも通り院の仲間たちと遊んでいた少年“源忠勝”は、不注意で遊具から落ちてしまった。それほど高い位置ではないとは言え、ちょうど頭をぶつける形で落ちてしまった為か、数秒経っても起き上がることのない彼を院長は急いで病院へと担ぎ込んだ。

 少年は3日3晩目を覚まさず、院長をはじめとする孤児院の仲間に心配をかけさせたが、病院に運ばれてから四日目の朝、ついに目を覚ました。

 少年が目覚めた事に気づいた幼馴染の少女が瞳に涙を浮かべながら抱きつく感動的なシーンの最中で、彼はこう言った。

 

     “…思い出した………”と

 

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 時は流れて数年後、場面は川神市内のとある老夫婦宅の台所に移る。コンロの前では女の子がレシピ本を真剣な眼差しで見つめており、その姿を少年が見守っていた。

 

「ぐぬぬ、やっぱりりょうりってむずかしいわぁ」

「そりゃ包丁の使い方一つとってもえらい違いがあるからな、院長先生が作ってるのを手伝っていたとはいえムズいだろうな」

「でもたっちゃんはとってもうまいじゃない、あたしおんなとしてじしんなくしちゃうわ」

「そんな言い回しどこで覚えやがったんだ、ったく」

 

 まな板の上の人参をおぼつかない手で刻みながら話す少女と、憮然としながらもさり気なく手元を気にしている少年。二人はいつも世話になっている老夫婦の為に肉じゃがを作ろうとしていた。

 

「おい一子、そろそろじゃねえのか?」

 

 無愛想に告げる少年が向ける視線の先には今にも吹きこぼしそうな鍋。

 

「うわわわ、おなべがふいてるわ!」

 

 慌ててコンロの火を落とした少女は、一息ついてレシピ本を再度確認する。先程から少女がレシピ本を読んだ回数はもはや片手で足りないほどだ。慌てながらも手順を確認する姿勢は褒めたいが、この様子では一向に進む気配がない。

 

「やれやれ、こりゃ先が思いやられるぜ…」

 

 少年…源忠勝は幼馴染の少女、岡本一子の挑戦を見守っていた。やけに大人びた表情からは一見やる気を感じさせないが、おっかなびっくりの一子を見かねて度々フォローを入れている。一動作ごとに腕を止める一子であったが、忠勝のフォローもあってか今のところ順調に調理を進めている。

 

「次、下準備が終わった食材から鍋に入れろ。勢い良く入れると湯が跳ねるから気いつけろよ」

「わかったわ、そーっと、そーっとね!」

「…いや別に一切れずつ入れろってわけでもないんだがな」

「…えへへ」

「しばらく煮たら次は味付けだ、分量は測ってあるから大丈夫だろうがな。……砂糖と塩を間違えた時にはヒヤッとしたぜ」

「だってどっちもしろいんだもん。みただけじゃわかんないよ!」

「……まあそりゃそうだがよ、漫画じゃあるまいし…」

「…えへへ」

 

 …誤魔化し笑いも慣れたものである。ちなみに調味料に関しては、平然と砂糖を取り出した一子を見た忠勝がため息混じりに適量を測った。

 

「ごめんねたっちゃん、わたしぶきようだから…」

 

 頭の上にしゅんと垂れた犬耳が幻視できるような落ち込みように忠勝は思わず苦笑する。一子は感情をストレートに表すため、今回の料理作戦を提案した時の一子のテンションを知っている忠勝はさり気なく一子を持ち上げた。

 

「気にすんな、むしろその年で肉じゃが作ろうなんて誰も思わねえよ」

「…たっちゃんもおないどしなのになぁ」

「あー…まあそこは色々あったんだ…察せ」

「?」

 

 言葉の意味がよく分からないと言わんばかりに、頭の上に疑問符を浮かべる幼馴染を見やって、忠勝はため息を一つ吐き出した。

 

 目の前の彼女と同じく孤児院出身で、現在宇佐美代行センターにて生活する、源忠勝少年。

 

 

その実中身は大学二年生の青年であった。

 

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 死んでしまったらどうなるのか?普通の人間ならば分からないと即答するであろうこの質問に、俺は応えることができるだろう。なんなら死因もおぼろげながら説明できるはずだ。

 大学二年の夏休み、部活も終わり友達と別れて一人帰路についた俺に、なんの脈絡もなく唐突に襲いかかった鉄の塊からの少女救出イベントが“前の”俺の最後の思い出だ。

 “次に”気がついたら、ぼやける視界と慌ててこちらに駆け寄る女の子、頭に流れる“今の”俺の記憶。そのままブラックアウトした俺は、とある事実に気がついた。“俺、転生してるわ”…と。

 

 そこからなんやかんやで色々あって、記憶のせいで院でちょっと浮いた俺に構おうとする幼馴染…一子を追い払い、挙句泣かれ、慰めて、年少組から年中組になり、仲間も減って、一子を慰めて、年長組になろうという時、一子の里親が決まった。

 グズグズ泣き続ける彼女を叱咤激励しつつも撫で続け、老夫婦に頭を下げて“このバカをよろしくお願いします”と送り出したのはいい思い出だ。

 俺はというと宇佐美というちょっとダウナーな感じの男の所で世話になる事になった。

 

「今日からお世話になります、源忠勝です」

「おうおう、見た目と違ってまともじゃねぇか。俺は宇佐美、よろしく頼むぜ忠勝」

「こちらこそよろしくお願いします」

「あー、早速なんだが忠勝…これ以降敬語禁止な、これ家長命令だから」

 

 デスクチェアに腰掛けた宇佐美は、敬語を聞いて嫌そうに顔を顰めた。初対面の印象を悪くしないように気を使ったのだが、確かに小学生にもなっていない幼児が敬語を使うのは逆に気持ち悪いだろう。

 

「わかりま…わかったよ、俺もこっちのほうが性に合ってる」

「お、やっぱり素はそっちか。将来的には俺の仕事継ぐことになるんだ、ビシビシ鍛えてっから、そこら辺よろしくな」

 シャドーボクシングをしながらニシシと笑う男は、どうして俺の面倒を見てくれるのかという質問にあっけらかんとこう答えた。

 

「ここらで善行積んどかないと、俺も色々やり過ぎたからなぁ」

 

 本名を宇佐美巨人というこの男は、名は体を表すと言わんばかりに体格に恵まれ、昔はそこそこヤンチャしていたらしい…というか現在進行形でキャバ嬢と遊んでいる。

 彼の本業は代行業で、裏側に位置する親不孝通りといういかにもなネーミングの所に位置する宇佐美代行センターで、キワモノ揃いの職員と共にそれなりに稼いでいる。

 職員は一芸に秀でているものも多く、ちょっと普通とは違う人たちではあるものの皆いい人であった。

 

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 “前の”俺の平坦な人生とは違い、しょっぱなからめまぐるしく変わる環境は、まだ数年しか生きていない俺にとっても刺激的だ。

 鏡の前でヒゲを生やそうか検討する“親父”にツッコミを入れつつ、俺は川神という新たな生活の場で日常を過ごすことになった。

 




どんなものでも書き始めが一番難しいですよね…
構成は出来ても手紙にしろメールにしろ筆が進みません
これから精進してまいりますので宜しくお願いします!
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