「「「ごめんなさい!!!」」」
ファミリーのたまり場となっている空き地。一子に頼まれた俺が小雪を連れてきて、ファミリーのメンバーが珍しく全員集合していると思ったら、まず最初の一言がこれであった。突然のことに小雪は目を丸くしている。かく言う俺も驚いていたが。
「この間はほんっとーにゴメン!小雪ちゃんにいやな思いさせる気はなかったんだけど…」
「気にしてるところにふれちまった!ゆるしてくれ!」
「聞いたところによると、ウチの弟分がメイワクかけたみたいだな。小雪…だったか、許せ」
「プライバシーに関わることにふれてしまった、すまない」
直江はモモ先輩に頭を抑えられながらも、自分の言葉で謝った。少し照れくさそうにしながらも、小雪の目をしっかり見て謝る姿に、俺は自分の心配が全くの杞憂であったことを悟った。
「う、あの、ボクは…その、前のこととかぜんぜん気にしてないから、ホントだよ?」
風間達に囲まれた小雪は、慌てて頭を挙げさせる。皆は安心した顔を浮かべ、一子に至っては小雪に近寄り、腕をとって“良かった!”と飛び跳ねている。
「この間は居なかった人もいるからしょうかいしておくね、今の年上の女の人が、川神百代センパイ。で、ボクのとなりにいるのが椎名京さん。」
「よろしくな、小雪!」
「…どもです」
「ボク、小雪…です」
これほど多くの人に囲まれた経験などないであろう小雪は、オドオドしながらもモモ先輩と京にペコリと頭を下げる。
「それであの、ボクはこの前のこととかぜんぜん…気にしてなくて、えと、あの…」
「小雪!お前さえよければ、俺たちと友だちになってくれないか!?」
「うぇ?」
「この間のおわびもかねて、おかしとかもってきてるの!たっちゃんがマシュマロ好きって言ってたから、中にチョコ入ってるのもあるのよ!」
「うわーい、マシュマロだー!」
「…えづけさくせん、せいこうだな」
「ホラ弟、ブツブツ言ってないで早くさそってこい。これは男のセキニンだぞ」
「うぇ、わ、わかったよ姉さん……その、小雪…さん、君がその…のぞむなら、俺たちはむかえ入れる用意がある、だから…うん、友だちになってくれないか」
モモ先輩に背中を叩かれた直江は、小雪の前に歩み寄ると、先程より顔を赤く染め、忙しなく目線をウロウロさせながらも声をかけた。まるでドラマの告白シーンでも見てるようだ
「カーッ!かってぇなあ、そんなんじゃオレサマみたいに友だち100人できねぇぞ!」
「まあ、ヤマトにしたらがんばった方じゃないかな」
ニヤニヤと笑うメンバーに口の端をピクピクさせながら小雪の返答を待つ直江に、状況をようやく飲み込んだ小雪が嬉しそうに頷くと、原っぱに歓喜の輪が広がった。
▼
「…良かったな、小雪」
「良かったな…じゃないよ、ゲンさん」
「…んあ?」
ファミリーの皆が小雪と仲睦まじくしている風景を後ろから見守っていると、モロが怒った様子で詰め寄ってきた。
「いやいや、この間のことだよ?あの後すぐに小雪ちゃんつれてどっか行っちゃってさ、ボクたちあやまるキッカケなくしちゃったじゃない」
「あー…悪かった。」
まあ、あの時はその後の展開が読めるようだったからさり気なく離脱したつもりだったのだが、バレバレだったのだろう。
「反応を見て小雪ちゃんが心配だったのは分かるけど、ボクたちがゲンさんの友だちをバカにするはずないじゃないか」
「ん、まあ、そりゃそうだろうが」
「アレってつまりボクたちのこと信用してないってことだよね…うわ、ショックだなぁー」
「まて、アレはそうじゃなくてだな」
「まあでもしかたないかな、ゲンさんにすればボクたちはまだ“子供”だしね、信用できないよねー」
「…あ、いや、それは」
「あーあ、親友だと思ってしんらいしてたのはボクだけだったのか、ショックだなー…」
「……正直スマンかった」
「……よし、かった!」
「…んっとに良い性格してやがるぜ、畜生!」
「あはは、ゲンさんを言い負かすきかいなんてめったに無いからね…でも、少しはボクたちの事、信用してくれてもいいんじゃない?」
ニヤニヤと笑うモロは出会ったばかりの頃の弱々しさなど微塵も感じられない。俺が気付かないだけで、あいつ等も成長してるんだよな…
「ああ、いつまでも子供扱いは良くねぇな……ったく、モロの成長を喜べば良いのか、多少厄介になったのを嘆くべきなのか…」
俺が頭を抱えていると、さり気なくモロの斜め後ろをキープしていた京は彼に近づき、少し顔を赤らめながらもその腕を取る。
「私は、モロのそういう所が…好き」
「み、京…」
「ハァ…そう言うの他所でやれや…」
京やモロ、小雪達の明るい声を背に、俺は澄み渡る空を見上げて親父お決まりのポーズをとった。
ーーーーーーーーーーーーーー
それから数日後の板垣家。冷房など有りもしないこの家では、現在窓全開で夏の暑さをしのぎながら、天と竜はゲーム、リビングでは小雪達が談笑していた。
「…それでね、なんかバンダナ着けてるのがキャップっていって、足がすごく早いの!モロはゲームがすごくうまくて、モモ姉はすっごくつよいの!タッちゃんは“俺なんかよりよっぽどつよい”っていってた!」
「そっかー、ユキちゃん、いーっぱい友だち増えたんだねぇー」
「うん!みんなでいっぱいあそんだよ!」
「うんうん、良かったねー」
「らいしゅうもヤマトたちとあそぶやくそくしたんだ!」
小雪はあぐらをかいた辰子さんの足の上に座りながら、嬉しそうに話す。そんな彼女を実の妹のように優しく見やる辰子さんと亜巳さん。
「そうかい、良かったじゃないのさ…じゃあそうなると、ユキがココに来ることも少なくなるか。寂しくなるねぇ」
寂しげに微笑む亜巳さん。純粋な小雪はコロッと騙されて慌てているが、彼女はソフトSなのでアレは演技だ。チラッと小雪の顔をみてたしな。
「ううん、ボク、キャップたちだけじゃなくて、アミ姉もタツ姉も天も大好きだもん!これからもずーっとあそびにくるよ!」
「おいユキ!俺は!?」
「キャハハ、竜はガサツだからキライだってよ!」
家庭用ゲームに興じていた二人がゲームを一旦止めて振り向く。戦績は天8割というところだが、やけに天の機嫌がいいのはそれだけじゃないだろう。
「んだとゴルァ、表出ろよ!天使ちゃんよぉ…」
「あ、言ったな?言っちゃったな?ウチもうプッチンしたわ、まじおこだわ、テメェこそ表出ろやこのクソ野郎がァ!」
「るせぇよ!ったく、お前ら落ち着いて祝ってやる事も出来ねぇのか!」
火種が出来たらすぐこれだ、相変わらず燃え上がるのが早い二人である。二人がギャーギャー騒いでいるとついに亜巳さんがキレた。
「いい加減黙りな!アンタ達、そんなんでユキに変な影響与えんじゃないよ…?特に天!」
「ギャハハ、怒られてやんのー!!」
「…るせぇ」
一家の長である亜巳さんに叱られると、さすがに天であっても借りてきた猫のようにしゅんとなってしまう。
「オマエもだよ竜!というかオマエが一番危なっかしいんだよ!良いかい?ユキにかすり傷一つでも作ったら…」
「つ、作ったら…?」
「バツとして2日間晩飯抜きだからね!」
「な、なにーー!?」
この年の子供に晩飯抜きは堪える。特に竜は暴れ回ってヘトヘトになって家に帰るため、晩飯をぬいた日は夜に腹が減りすぎて寝れないこと請け合いだ。
「うわー、食べざかりにそれはキツいなー、竜ちゃん、ちゃんとしなきゃダメだよー?」
「わ、わーった、気ィつける」
「キャハハ、おもしろーい」
そんないつものやり取りをみた小雪は、まるで天のような少し下品な笑い声を上げた。
「「あぁ…天(ちゃん)の影響がすでに…」」
「ハハハ!なぁ天、お前にそっくりじゃねぇかよ!」
「ウチ!?あ、アミ姉…ウチのバンメシは…」
「抜・き」
「ギャーーーー!」
その日板垣家では、小雪が帰るまで笑い声が絶えることはなかった。
武神の妹分追加のお知らせ。これで戦闘衝動も抑えられるね!
辰子さんも小雪(義妹)と嫉妬して甘えるようになった天使(実妹)をゲット。やったね!