2度目の人生を真剣に生きる   作:我楽多さん

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中学生編
弓使いと金曜集会


 

 金柳街…昔懐かしの店が軒を連ねる、庶民の味方の商店街だ。川神で暮らす人ならたいていこの商店街で日用雑貨や生活用品を買い求める。

 若者が屯するゲーセンやファミレスから、貴重な書も散在する頑固親父が営む古書堂まで、幅広い年齢層から愛されるこの金柳街は、俺達ファミリーにとっても良い遊び場の一つである。

 無事中学生に進学した俺たちは、小学生の頃よりはよほど自由な行動が出来るようになった為、刺激あふれるこの金柳街に訪れる事が多くなっていた。

 ここなら家からそう遠い訳でもなく、古くからの顔なじみも多いから親も安心…という理由も多分にあるだろうが。

「いやー、やっぱり京はシューティングをやらせたら負けなしだね!」

「そういうモロだって、ゲームの中では私と同じくらいのスコアだったよね」

 そんな金柳街の一角、俺と卓也の行きつけのゲーセンから出てきた俺と一子、卓也と京の一行は、今しがたプレイしていたゾンビ虐殺型ガンシューティングゲームの話で盛り上がっていた。

 “弓使いは目が良い”を地で行く京はともかく、卓也は自分の主戦場という事もあって二人でかなりのスコアを叩き出していた……俺×一子ペアだって負けちゃいない。一子の反射神経が優れていたこともあり、息のあったプレーで1ミスもすること無くクリアした…卓也×京ペアとのスコア差は圧倒的だったが

「ははは、流石に得意分野で負けるわけには行かないからね…」

「……モロと私、息ピッタリだったよね…ちょっと嬉しい、かも」

「……京……」

 後ろで桃色空間を作り出しているリア充どもなど全く気にせずに、一子は今日も元気にそのポニーテールを揺らしていた。この鈍感娘はこういう色恋沙汰にはとことん鈍い……明るくクラスの中心である彼女は割りと男子からモテているが、そんな事は勿論悟らせない。うちの妹分に彼氏なんて10年速いわ。

「シューティングゲームに関しては遅れを取ったけど……たっちゃん!見てたアタシのハイスコア!?」

「ああ、ランキングに入るなんて大したもんだ」

「ふふーん、まーねーまーねー!」

 実はシューティングの前に一子はとあるゲームでランキング2位を記録していた。一位は測定不能という桁外れな記録のM.Kという人物であったが、それを除けば一子の記録はダントツの一位だ

「…が、コレはパンチングマシーンだ、一子。お前さっきコレでどうやって遊んでた…?」

「んぎくっ…」

「ワン子はいつも全力だからね…今回も全力全開で打ち込んでたよ…脚を」

「わ~!わ!わ!京ぉ、それ言っちゃダメー!」

「いやいや、ボク達全員の目の前で蹴り飛ばしてみせたじゃないか!今更か!って感じだよ…」

 そう、一子はパンチングマシーンのサンドバッグを、あろう事か回し蹴りで蹴り飛ばしてみせた。あっという間の出来事だったので俺たちは呆然と見ていたが、一子はそれを全く気に求めずに2発目の蹴りを叩き込んだ。

「ったく、店員が見てなかったから良いものの…下手すりゃ出禁モノだぞ?俺とモロの生き甲斐を奪うつもりかよ…」

 

「それだけはヤメテ!」

 

 時折ゲーセンで心を癒やす俺はともかく、まさしく文字通り庭のようなゲーセンを奪われる事になる卓也は激しく抗議した。最近ではとある事情でゲーセンに来る機会も減りつつあるため、その顔は結構真剣だった。

「うぅ…ごめん、なさい。」

「分かれば良し。ワン子、よしよし」

「うわーい、京は優しいわぁー」

 一子は感情をストレートに表すため、落ち込んだ姿はまるで犬が耳をショボーンと伏せる姿のようだ。それほどまでの落ち込みようを見せる一子を京が慰める。このシーンはもはやお決まりになりつつある…

「妹分の調教が順調に進んでいく…おいモロ、お前の彼女だろ、早く何とかしろ」

「…良くもまあ照れもせずに言えたもんだね!」

 卓也は彼女というフレーズに過敏に反応し、顔を赤く染める。これも最近ファミリー内ではよく見るお決まりのリアクションだ。

「ま、俺はイジるだけだからな…しばらくはファミリーの全力を賭して盛大に冷やかしてやるよ。」

 

 

 中学入学と同時に京は卓也に猛アタック。元から懇ろな関係出会った二人は、モロの優柔不断を乗り越えて無事に結ばれた。

 その時の二人の初々しさと来たら、国産天然サトウキビを贅沢に使用した高級黒砂糖を1ガロン吐き出すくらい甘々だった。

 というか、そう言うのは二人きりの時にやって欲しい………と言うのも京が告白したタイミングはファミリーの皆+α(小雪とその友人二人)で記念撮影をしていたまさにその時であった為だ。

 当然その場は大混乱、真っ赤になった卓也を島津と風間、直江が胴上げし、嬉しさで涙ぐむ京の周りには慈愛に満ちた表情のモモ先輩、何故か自分まで泣いている一子、何がなんだか分からないがとりあえず両手を上げて喜ぶ小雪が集まり、女子トークで賑わっていた。

 そんな様子をゲストの二人と見守っていたのも、今ではいい思い出だ(その後二人は全員に見送られながらイタリア商店街の方へと消えた…追いかけようとした島津は恐らく武神のような何者かに瞬く間に潰されたが)

 

 

「で、どうなんだ?京の親父さんの訓練は。」

「うーん、一言で言うなら…鬼コースだね、あれは。どこからとも無く襲いかかる矢と、気づいたら無慈悲に浮かび上がる体…やっぱボクは武術は向いてないって思い知らされた気分だよ。」

 無事順調なスタートを切った二人は、当然その関係を親に知らせた。卓也の祖父母は大いに喜んだが、問題は京の父親だった。“京を救ってくれた君には、私の誠意を受け取ってもらいたい”と言い出すやいなや、モロに道場着を叩きつけると、家の隣の道場へと担ぎ込んだのだ。

 曰く、“京を守る為にも、そして君自身の為にも私に君を鍛えさせてくれ“どの事らしく、それからモロは椎名流弓術道場へとあしげく通う事となった。

 今では汗だくで道場の床に倒れ伏す卓也と、新婚のようにタオルを持って甲斐甲斐しく世話を焼く京、それに陰ながら嫉妬する京父の構図は日常になりつつある。

 そんな卓也と京父との関係は実に良好で、この間などは家族ぐるみで金柳街の焼き肉屋に行ったとか。

「…まあ、モロのステ振りは知力寄りだしなぁ」

「再ステ振りの課金アイテムはよ…」

 諦めた顔で店に両手を差し出してつぶやく卓也、とはいえその体付きは前よりガッシリと弓を引ける身体へ鍛え上げられている。

 今では京と肩を並べて射を出来るようになり、それを後ろから道着の裾を噛み締めて睨む京父が居たとかいないとか…

「それが出来んからこその“人生はクソゲー”発言だろうよ」

「いやあ、これだから人生ってやつは…」

「まあ、あんな可愛い女の子落としてんだ。そう文句言うもんじゃねぇぞ」

 表情明るく一子と話に花を咲かせる京。虐めの一件以降、卓也の頑張りもあってかその性格を少しずつ明るく、元気な歳相応なものへと変え、少し口数が少ないながらも、“博識で運動もできる頼れるクラスメイト”へと変貌。友達も増え、今では学校が楽しくて仕方ないとは彼女の言だ。

「あ、あはは、全くその通りです」

「たっちゃーん!ちょっとこっちに来てー!この花柄とリボン柄…どっちが良いと思う?意見を聞かせてプリーズ!」

「ほ、ほらワン子も呼んでる事だし」

「逃げんな」

 因みに、今の自分があるのは全て卓也のお陰であると考えている京と、そんな娘の惚気話を聞いて表情を歪めながらも、娘と食卓を囲みながら笑いあえる環境を作り上げてくれた卓也に本気で感謝している京父が、こっそりと卓也を椎名流弓術の後継者に仕立て上げ、婿入りさせる計画を立てているのはここだけの話…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「では、新たなる“金曜集会”の結成を祝って…カンパイ!」

「「カンパーーーイ!!!」」

 

 その夜、所変わって島津家のリビング。ここいら一体の地主である島津家はとても広く、メンバー全員が入ってもまだゆとりがあるほどであった。各々コップにジュースを注ぎ、この度“日曜”から“金曜”になった集会の発足を祝う。

 席には島津の母の手料理がずらりと並び、ちらし寿司、豚汁、ポテトフライ、ステーキ等々雑多ながらもかなり豪勢な装いだ。

「しかし何でまた急に金曜になったのさ」

「話せば長くなるが……中学生にもなったし、榊原さんが小雪のお泊りを許してくれた。小雪は金曜の夜から土曜にかけてこっちに来る…って訳よ」

「そうなのだ!今晩はマダオの所でお世話になるのだ!」

「…マダオ?」

「あー…ウチのまるでダメな親父、通称マダオのことだ。初めて小雪が来た時は丁度オフモードでな……まあそれはさておき、金曜の夜はモモ先輩の鍛錬もないし…」

「ガッコも終わって休みに入るから、俺達全員集まるって訳よ!だからこその金曜!フライデーナイトフィーバーだぜ!」

 俺の台詞を継いだ風間がジュースを煽る。今までの日曜集会はどちらかと言うと昼に行っていたが、こうして夜に集まって騒ぐのも悪くない。

「幸いにもガクトのお袋さんが場を提供してくれるらしいんで、ちょっと集まって騒ごうぜ…って感じかな。ユキに向こうの学校の話も聞かせてもらいたいしね」

「この弟と来たら、最近は姉より携帯に夢中なんだぞ…やれやれ、こんな美少女が直々に構ってやっているというのに…」

 直江はご自慢こネットワークから漏れてしまうような細かな出来事も把握し、その人脈構成に役立てたいとのことだ。

 …あの中二病罹患者が一見中性的な好青年にまで戻ることが出来たのは、目の前で直江の脇腹をつついている、モモ先輩による調教の成果といえるだろう。

「なんだっていいじゃねえか!俺様こんな風に飲み食いして騒げるなら大・歓・迎だぜ!かーちゃんもアホみたいに飯作ってくれるしよ!」

 

「…………だーれがアホだってぇ………!?」

 

「ヒィ…!?」

 島津が調子に乗って騒いだちょうどその時、お盆を持った島津の母親…麗子さんが居間に降臨した。先の台詞はバッチリ聞こえていたらしく、彼女の眉間にはシワがよっている

「ちょっと目を話した隙に直ぐこれだよ、このバカ息子!……皆、こんなバカでお調子者で騒がしい奴だけど、これからも仲良くしてやっておくれね。」

「「「はーい!!」」」

「恥ずいよカーチャン、勘弁してくれぇ…」

「ありがとうよ…さあさあ、たんと食べとくれよ!」

「「「頂きます!」」」

 

「うぉぉぉ…毎週コレはこっ恥ずかしいぜェ……」

 

 頭を抱える島津を他所に、メンバーは各々好き勝手に動き出した。モモ先輩は直江を執事のようにこき使って料理を配膳させ、目を輝かせて料理をつつく一子と小雪の隣では、京と卓也がイチャイチャしている。

 復活してすぐにそれを見て悔しがる島津と、“当時あんだけイジってたのにな”と笑いながら島津をイジる風間。

「たっちゃん!このお芋すごく美味しい!今度お婆ちゃんにも作ってあげたいわ!」

 一子は芋の煮付けを頬張りながらはしゃいでいる。里親の影響か、一子のチョイスはちょっと年寄り臭い…そう思いつつも芋を皿に盛りつけて頂く。

「む…こりゃ味が染みて美味いな。だが、この料理のレヴェルは中々難しいかもな、頑張れよ、一子」

「うん!」

 岡本の婆さんは歳相応と言うべきか、筑前煮とかの煮物が好物だ。ウチと家族ぐるみの付き合いもある為、何度か晩飯を一緒に食べているが、大体岡本家で会食すると煮物と煮付け中心だからな。…最近体また体調が崩れてきているらしいから、今度差し入れでも持って行ってやらねば。

「ぐぬ…タッちゃん!ボクのもすごく美味しいのだ!さあさあ、アーンしてあげるからこれを食べるのだ」

 対抗心を燃やした小雪が、いまテーブルに置かれたばかりの料理を箸でこちらに向けて来る。

「おい待て小雪それ結構湯気立ってないか……近い近い、良いから!食ってやるからまず皿に置きやがれ!」

 

 こうして騒がしい金曜の夜は過ぎていく。以降、形を変え、場所を変えながらもこの“金曜集会”は続いていく…時にはゲストも参加し、その賑わいは数を重ねてなお陰ることはなかった。

 




モロさん原作改変のお知らせ
 こうして京は川神を離れることなく、友達も大い地元で成長することが出来ましたとさ
 因みにもう外堀は埋まってるみたいですよ。師岡家の爺ちゃん婆ちゃんは京を娘のようにそれはそれは可愛がっているとか
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