2度目の人生を真剣に生きる   作:我楽多さん

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出没!アド街ック川神-親不孝通り編-

 川神は景観に恵まれた風光明媚な土地であり、古き良き街並みを残しながらも郊外には一大工業地帯を抱える活力ある街である。昔ながらの風情豊かな商店街には活気が溢れ、頑固なオヤジが店主を務める古書堂など訪れてみれば、どこか懐かしい匂いを感じることが出来るだろう。

 

 この街の名所の一つである仲見世通りには古くからの名店が軒を連ね、その一つである甘味処の久寿餅などは非常に美味である。勿論それ以外にも語り尽くせぬほどの魅力に溢れながらも、観光客を惹きつけてやまないのは、やはり何と言っても武の総本山、仲見世通りの先に悠然と構える“川神院”だ。

 

 “川神院”…武に心得のある者ならば誰しもがその名を恐れ、知らぬ者がいない程の傑物の集う武人の巣窟。現在総代を務める川神鉄心は日露戦争以前から生き続ける武の化身であり、“壁超え”クラスの強さを誇る。息子夫婦は武者修行に出ているものの、孫はこれまた数百年に一度の才を持つ傑物である。師範代は努力の天才ルー・イーと、有り余る才能を持て余す釈迦堂刑部。勿論二人共“壁超え”の実力者達であり、武の総本山の屋台骨を支えている。寺院では修行僧達が日夜鍛錬に明け暮れており、見学に行けば闘気あふれる稽古風景を見ることができるだろう。

 

 川神院の存在を受けてか元からそういった者たちが集う場所であったのか、川神には武家の血を継ぐ者達が数多く暮らしており、地域の住民も活力ある逞しい人々が多い。所謂アウトローな連中が集う川神の裏側、親不孝通り周辺であってもその気概は失われること無く、青空闘技場では毎夜のように決闘が執り行われており、周辺住民は子供達に至るまで血気盛んな者が多い。

 

 さて長々と前書きを書いた所で話は再び源忠勝の日常に戻るわけだが、宇佐美代行センターで厄介になっている忠勝少年の生活の場は当然のことながら親不孝通りである。年の近い子供達もまた当然のように血気盛んな連中が多く集まっており…

 

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「おうコラ忠勝ゥゥゥ!居るのは分かってんだ!とっとと出て来いやあァァァ!」

 

 最近土曜日になると決まって宇佐美代行センターに怒鳴り込んでくる奴がいる。彼の名は板垣竜兵、通称竜。親不孝通りでは名の知れた板垣一家の長男坊だ。

 

「るっせーんだよ竜!このタコ!そこで首洗って待ってやがれ!」

「やれやれ、お前さんたちもう少し穏やかな遊びの誘いは出来ないもんかねぇ」

 

 俺達の間で繰り広げられる怒号混じりの応酬に、ソファに寝そべっていた親父が、二日酔いの頭をかきながら起き上がる。現在朝の8時。周辺住民もさぞ苛ついていることだろう。

 

「アイツがアホみたいに叫ぶから仕方ねぇだろ、ったく…こんな朝っぱらから良い迷惑だぜ、ホント」

「くくっ、ここいらの住民なんて大概あんなもんよ。ま、怪我しないように遊んできな…って無理か」

 

 無理だ。

 あいつは例によって喧嘩っ早い男で何かと暴れて回っているから、生傷が耐えたことがない。故に、付いて回れば怪我をしないことなどありえない。

 

「甚だ不本意ながらアイツと遊んで怪我しなかった覚えがねぇ」

「やれやれ、青春だねぇ…」

「こんな傷だらけの青春はお断りだ!」

「…年取るとそれがまあ大切な思い出になるってぇ訳だ。忠勝、今日も“アイツ”んとこで世話になるのか?」

「ま、あいつ等とつるむ日は大体泊まり込みだからな、悪いが親父、晩飯は自分で調達してくれや」

 

 ソファから聞こえてくる“え、そんな殺生な…”という悲痛な叫びを流しつつ、俺は玄関に向かって歩きだした。

 

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「ようやく出てきやがったか、おせーんだよ!」

 

 竜は肩まで伸ばした黒髪を怒らせながらも笑いながら近づいてくる…無駄に高度なテクを出会い頭に見せつけつつ、怒鳴り声をあげた。

 

「朝っぱらからうるせーんだよこのアホ!親しき仲にも礼儀ありっつうだろうが!」

 

 親不孝通りの連中は荒い性格の奴が多いが、この竜兵は特に危ない男だ。なにせ、初対面からいきなり殴りかかってきたバイオレンスな奴を俺はこいつ以外知らないからな。前世含めて。

 

「したしき…?こむずかしいことはいいんだ、んな事よりはやいところ行こうぜ」

「つったってどこに行くってんだよ、また殴り合いなら俺は帰るぞ」

「きょうはちげぇんだよ!まつりがあるんだ!」

 

 いつもは殺伐とした目をしている癖に、こういう時だけは歳相応にキラキラと輝かせていやがる。まあそういう時は大抵ロクなことが無いが…

 

「ったく、分かった分かった、腕を引っ張んじゃねーよ」

「あー、わくわくするぜェ!ひさびさのまつりだからよぉ」

 

 竜の話によると、今日はここらで一番強い男が久々に決闘を行うらしく、竜にとっては他の連中の試合は腑抜けてて面白くないんだそうだ。無駄に力の強い竜に腕を掴まれながら、俺達は青空闘技場へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 青空闘技場は親不孝通り周辺の治安の悪い地域の中でも、特にひらけて人の集まりやすい場所に位置している。

 そこいらに住まう住人の中でも、我こそはという奴らが勝手に集まって、勝手に決闘をして、野次馬共が勝手に賭け事をするのが日常となっているこの場では、今日この日は異様な熱気に包まれていた…

 

 治安の悪さを表したような荒れたリングの片側では、ついさっきまで決闘を勝ち残ってきた男(…先程まで竜兵が騒いでいた男だ)が血の海に沈んでいた。

 別に流血沙汰なんてしょっちゅうの事だから、皆が気にしているのはそこではない。

 

 問題は…

 

「あーあ、裏で一番強いっていうからどんなもんかと思ってみれば、こりゃ期待はずれですわ」

 

 この滅茶苦茶ガラの悪い男だ。確か名前は釈迦堂。

開幕直後に圧倒的な実力差で相手を叩き潰すと、起き上がる間もなく追撃を重ね、わずか数十秒の間にのしてしまったのだ。一瞬の出来事で、試合開始まで動物園のように騒がしかった闘技場は、まるで通夜会場のように静まり返っている。

 

「やれやれ、たまの息抜きにはと思って抜け出してきたってぇのに、これじゃ興醒めもいいところですわ、帰って爺に小言もらうだけで損ですな、こりゃ」

 

 そうボヤいて闘技場を立ち去る男を、住人達はただ呆然と見送った。それもそうだろう、あれだけの力量を見せつけられれば誰だって動けない。

 

「なんなんだ…あの男は」

 

 あの男の拳に一瞬黒い炎のようなものが纏わりついたのが見えた次の瞬間には、もう勝負がついていた。何を行っているのか自分でもよく分からないが、あれは表すなら“前”でよく読んだ漫画みたいな技だった。

 

 …川神院の存在と言い、この世界の戦闘力ってバグってインフレしてるんじゃねぇだろうか。

 

「おい、竜、もう帰るぞ」

「…」

 

 隣で呆然としている竜兵に言葉をかけたが反応がない。おそらく皆と同じで今見た光景が信じられないのだろう。こいつは基本的に他所から来たやつを甘く見る節があるからな。俺の時もそうだったが。

 

「しゃあねぇ…オラ竜!目ぇ覚ませや!」

 

 静まり返った場に張り手の音が響く。

 

「ってぇなこのヤロー!はたくことはねぇだろうが!」

「うるせぇ、いつもアホみたく騒いでるくせに急に静かになってんじゃねェ!帰るぞ!」

「チッ…わーったよ、アミ姉きれるとやっかいだしな」

 

 叩いてから数秒後、猛烈に食って掛かってきた竜兵を促しつつ、俺達は未だに奇妙な雰囲気の闘技場から抜け出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 “しかしさっきの男マジ強ェよな、どうなってんだありゃあ?”“お前にはあの黒いの見えたか?”等と、先程の異様な戦いについてあれこれ言い合いながら、俺たちは帰り道を歩いた。竜兵の家は工業地帯の近くで、排ガスにまみれた地区を抜けるので正直ちょっと臭い。

 

「アミ姉、タツ姉、かえったぞ」

「お邪魔します、亜巳さん、辰子さん」

「竜ちゃん、源ちゃん、おかえりー」

 

 ガラガラと音を立てて引き戸を開ける。板垣家では料理が当番制で、今日は辰子さんの番のようだ。台所からのんびりした声が響いて来た。

 

「すんません、またお邪魔しますんで」

「良いよー、きにしないで。もっときがるにうちに来てくれていいんだよー?」

 

 台所から顔だけだしてニコニコしているこの少女は、板垣家二女の板垣辰子さん。青めの髪をロングにしていて、性格はとてもおおらかで、竜兵と双子と聞いた時には思わず耳を疑った程だ。

 

「うす、今度また何か持って来ますから」

「もう…源ちゃんてば、さいしょにあそびに来てからしばらく経つのにまだかたいんだからー」

「すんません、性分なもんで…」

「やれやれ、アンタも頑固だねぇ」

 

 居間の方から女性がもう一人…彼女は長女の板垣亜巳さん、両親が蒸発したこの家の実質的な長で、荒くれの竜兵ですら彼女には逆らわない。彼女は竜兵すら恐れるほどのサド気質なのだ。一度ブチ切れたとこを見たことがあるが…正直思い出したくない。

 

「あ、亜巳さん、お疲れです」

「どうやらまた竜がお世話になったみたいだね、一応礼は言っとくよ」

「いえ、好きでやってるんで…亜巳さんは仕事どうっすか?」

「どうもこうもないよ、あのクソ野郎こき使いやがって…

 

“庭の草むしり”とかこのアタシにやらせるんじゃないよ!」

 

 “虫はうっとおしいし、腕はカユくなるし、いいこと無しさ!”とぼやく亜巳さん。

 

「ははは、まあ代行業なんてそんなもんっすよ」

「雇ってもらってるとはいえ、流石にそんなことまでさせられるとはねぇ…ま、夜の仕事よりは楽で良いけどサ」

 

 実は彼女は宇佐美代行センターの従業員の一人だ。俺が紹介したんだが、親父曰く“彼女に攻められたらだすもん(金)だしちゃうねぇ”との事だ。どういう意味だよ。

 

「アミ姉、きょうはシゴト先でお野菜貰ってきてくれたんだよー、おかげで今日はてんぷらなんだー」

「お、マジかよ、こりゃ天のやつとうばい合いだな…タツ姉、肉はねぇのか!?」

「野菜があるだけありがたく思いな!」

「そりゃーそうだけどよぉ、あーあ、肉がくいてぇぜ…」

「ったく、今度差し入れしてやっから、それまで我慢しとけや」

「ホントか忠勝!よし天ぷらくってっていいぞ!」

「…はぁ、呆れるほど現金な奴だねぇ…おい忠勝」

「なんすか」

「うちの事に構ってくれんのはありがたいけど、あんまり頼りすぎるのもシャクなんだよ…お前は大丈夫なのかい」

「アミ姉はなんだかんだいって源ちゃんきにいってるんだよねー」

「うるさい!アンタはさっさと天ぷら揚げる作業に戻りな!」

「…ありがとうございます、亜巳さん。こっちは普通にやってるんで、大丈夫っす」

「…フンッ、あんた年の割に子供っぽくないからねぇ、あのクソ野郎に何かやられたらウチに来るんだよ?」

「あのアホ親父もなんだかんだいって親やってくれてんで、今んとこ大丈夫っす」

「…そうかい、まあ別に気になるわけじゃないけどね」

「アミ姉ってやっぱツンデr……ぶるォ」

 

 竜兵に亜巳さんの鋭いボディが突き刺さる。この板垣一家、ここいらで名の知られる理由の一つが、その戦闘力だ。誰に師事するでもないのに個人の能力がずば抜けて高い。先程の一撃も照れ隠しにしちゃあ威力があり過ぎる…くわばらくわばら。

 

「…オイ!忠勝じゃねーか!よく来たなコルァ!」

「おっと…よう天、また世話んなるぜ」

 

 威勢のいい声とともに飛び込んで来たのは三女、板垣天使。名前の読みはエンジェルだが、そう呼ぶとキレる。その胸は平坦である。これも言うとキレる。

 

「別にいいけどよぉ、ウチの取り分パクるんじゃねーぞ!」

「わーってるわ、…ったく、おめえはテンション高ぇと暴れて仕方ねぇから、晩飯出来るまでストファイでもやるぞ」

 

 天使はゲーマーで、板垣家唯一のゲーム機とテレビを独占している。以前はガンシューティングに熱を上げていたが、最近では格ゲーにハマっているらしい。バトルスタイルは持ち前の野獣じみた超反応を生かしたガーキャン浮き攻めスタイルだ。…この年からこの様子だと、将来が心配になってくるぞ…

 

「マジで!いいのか?」

「亜巳さん疲れてるし竜兵は沈んでるしな、俺の相手でもしてくれや」

「おっしゃ、ウチはザンギュラ(※厨キャラ)な!忠勝は使うなよ!いいな!」

「へいへい、さっさとやろうぜ…」

 

 こうして板垣家での騒がしい一日が過ぎていく…この後天ぷらの奪い合いで天使、竜兵、忠勝の壮絶な戦いがあり、亜巳が三人に雷を落としたのはご愛嬌だ。

 




亜巳さん、あんたカタギになっちまいなよ
ってわけで、夜の女王から一転、サドっ気はあるけど何だかんだ面倒見のいい姉御職員になりました…あれ?

あ、薬○印の新名物とか特に無いです
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