2度目の人生を真剣に生きる   作:我楽多さん

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傭兵武神、支払いはレアカードで

 着々とメンバーを増やし、勢いに乗る風間ファミリーは、現在大きな壁にぶち当たっていた。彼らが遊ぶ河川敷の原っぱは人気が高く、翔一と大和、岳人と偶に忠勝が守っていたのだが、ある日ついに、遊び場をめぐって“上級生”と対峙してしまったのだ。

 “河川敷は俺達の遊び場だ!お前らは砂場で遊んでな!”と言うのが上級生の言い分で、ある日突然河川敷に訪れた彼らは、忠勝が居ない時を見計らって襲いかかり、翔一達を河川敷から追い出した。

 

「アイツらきたねぇ!まいかいゲンさんがいないときにかぎっておそってきやがる!」

「ゲンの事はオレらの学校でも噂になるくらいだしな、助っ人にこられるとやっかいなんだろうぜ、男気のねぇやつらだ!」

「オニのいぬ間になんとやら、というやつか。ワン子に手を出さないあたりあいつらのなかにはさくしがいるようだな、打つ手がいんしつすぎる」

「たっちゃん、ほかの学校でもうわさになるくらいこわがられてるのよねぇ、あんなにやさしいのに」

 

 実は親不孝通りでも(悪い意味で)有名な竜兵と殴り合いの喧嘩を繰り返していた忠勝は、本人の預かり知らないところで有名に(もちろん悪い意味で)なっている。

 その噂は翔一達の小学校にも伝わってきていて、“川神の裏番長というあだ名を本人が知ったらヤバイことになる”……そう確信していたファミリーの仲間達は極力耳に伝わらないようにしていた。

 

「タフガイなオレでも、年上数人がかりはちときついぜ」

 

 いくら体格の良い岳人といえどまだ小学生…成長期の一年の差は圧倒的な力の差として立ち塞がり、ましてそれが数人掛かりで襲いかかるとなれば、力に自信がある岳人といえど覆せない差が生じるのも仕方のない事であった。

 

「もうゲンさんにもこの事言おうよ!ボクたちだけじゃかなわないよ!」

「バカヤロー!ここでにげたら男じゃねぇだろ!」

「ガクトの言うとおりだ!それにゲンさんは学校もちがうし、まきこむわけにもいかねぇ!」

「あぁ、いつまでもゲンにたよってんのも男じゃねえしな!だからこそ今ん所ワン子もバラしてねぇってわけよ!」

「アタシだって、いつまでもたっちゃんにたよっるだけじゃダメだもの!」

 

 翔一も岳人も自分の事は自分達で解決したいと考えており、忠勝には今回の件を相談していなかった。一子すらも情報が漏れるのを避けるため、忠勝と会うことを避けている程であった。里親のおばあさんがそんな様子をみて“一子ちゃんも大きくなったねえ…”と呟いたのはまた別の話だ。

 

「ここはおれたちの力で何とかするしかない…ということか、そうと決まればこのぐんしににさくがあるぞ」

「さくって言ったって、何をするって言うのさ?」

「目には目を、毒には毒をというじゃないか、おれたちもとしうえをなかまにしてあいつらをたおすのを手伝ってもらおう」

「でもヤマト、ダレにきょうりょくしてもらうんだ?アイツら学校でもアブないことでゆうめいなグループだぞ?センパイたちもきょうりょくしてくれるか…」

「もんだいない、さいきょうの助っ人をつれてきてみせるから、ちょっとしたじゅんびを手伝ってくれ」

 

 風間ファミリーの軍師たる直江大和は、ニヒルな顔でそう告げる。

 

「分かった!ボクたちは何をすればいい?」

 

「よし、まずは…

野球選手カードのパックを買ってきてくれ!」

 

「「「………え?」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから数日後、大和は武の総本山“川神院”を訪れていた。門をくぐり、来客用入り口まで進むと通りかかった修行僧に言伝を頼み、待つことしばし…

 

「オマエか、この私にあいたいというヤツは」

 

 門から出てきたのは、この川神院の総代、川神鉄心の孫娘、川神百代であった。幼い頃から川神院で修行を重ね、その血筋もあってか恐ろしい程の武の才能を生まれ持った百代は、ここいらの小学校では最強の存在として恐れられていた。

 

「おはつにお目にかかります、俺は直江大和と言います。さっそくなんですが、実は………」

 

 

「ほうほう、上級生によってたかってイジメられていて、自分たちでは歯が立たないから助っ人をしてほしい、と」

「そうなんです、俺たちのなかまには女の子もいて、その子にひがいが及ぶ前に何とかしたいと思ってたんですが、そろそろげんかいで…」

 

 大和の作戦その一、一子をもダシに使った心理作戦。ただでさえ上級生が寄ってたかって苛めているという構図を、女の子を登場させる事でより際立たせる…という作戦だ。

 

「なに?それは許せんな、“女子はていねいに扱わなければならん”ってジジイも言ってたしな」

「…!じゃあ…」

「だが!そのジジイがケンカを禁止してるんだよなぁ…あのクソジジイ私をがんじがらめにしばりつけやかって、釈迦堂さんも目をそらすし…」

「でも今回のはケンカじゃなくて、助けるためなんで大丈夫だと思うんです」

「というと?」

「川神センパイはこうはいがイジメられてるのを見て助っ人に来ただけで、自分からケンカをうったわけじゃない」

 

 大和の作戦その二、上級生側を悪であると印象付け、私的なケンカではなく、百代は後輩を救いに行くという構図を作りだす…という作戦だ。

 

「ふむ…しかしなぁ…人さまの事情に私が動くと、ジジイがなんと言うか…」

「川神センパイが俺たちを助けてくれるなら、お礼としてこちらをよういしてあります!」

「こ、これは激レアプロ野球選手カード!しかも3枚もあるじゃないか!一体どうやって…」

 

 大和の作戦その三、最後の手段は翔一の激運や自分のコネを使ってレアカードを集めて献上することで何とか助っ人になってもらう…要は物で釣る作戦だ。

 

「お願いします!」

「うーん……まあ、分かった。そいつらの事は私たちのクラスでもあまりいい話を聞かないし、やっちゃって大丈夫だろ!」

「ホントですか!?ありがとうございます!」

 

「ただし、一つだけ条件がある!」

 

「…なんでしょうか」

 

 喜びもつかの間、百代が放つ雰囲気が大和でもわかるくらい変わり、ついゴクリと唾を飲み込んでしまうほどの緊張感がその場を満たす。

 

「川神院はたとえ実の娘であろうとヒイキせずしゅぎょうをさせるわけだ…まだ小学生の私は兄弟子たちの使い走りもしてたいへんにストレスがたまっている。だから私も舎弟がほしいんだよ…ってなわけで、お前私の舎弟になれ」

「(すぐあきるだろ…その場限りの助っ人だし…)」

 

この思考、わずか数秒の間の事である。

 

「分かりました!これからよろしくお願いします、姉さん!」

「そうか…やった!ついに私にも舎弟が出来たぞ!それじゃあけいやくのゆびきりをしよう」

 

“けーいやーく、やぶったーら♪うデーのなーかでなぶーりこーろす♪”

 

「…え?」

「ふふふ、これでお前は私の弟だ、大和…これからよろしく頼むぞ…?」

 

「(あ、これ…もしかしなくてもはやまったかなー)」

 

 この時ばかりはいつものニヒルな思考ではなく、素で失態を悟った直江大和であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ってな訳で、川神センパイを仲間にいれた俺たちはあっしょうして、原っぱもぶじ取り戻してハッピーエンドって訳よ」

「そうか、そりゃ大変だったな…だが、確かに俺だって学校も違うし、年がら年中お前等と一緒にいられるワケじゃねえからな。」

「モモセンパイが何人かあいてしてくれたから、オレサマとキャップでのこりの奴らをボコボコにしてやったぜ!」

「…なんだその俺様キャラは。」

「男気あふれるタフガイはモロみたいな“ボク”とかキャップみたいな“オレ”とは違ってサマをつけるべきだとおもわねぇか!?」

「悪い、ぜんっぜん思わねェわ。」

「ゲンも分かってねぇなあ…」

「まあそこらへんはおいといて、ボクたちもがんばったんだよ!…大体はモモせんばいがもって行っちゃったけどね。」

「風間も言ってたが、モロにしちゃ珍しく上級生相手に勇気出して戦ったんだってな。」

「まあテニスボール投げつけただけだけどね…」

「やるべき時にやってこそ…だろ?それが何であろうが、やらないよりはよっぽど良い。」

「あはは、ゲンさんに言われるとうれしいよ。」

「んで、今回の立役者の直江は…」

「ヤマトは…ヤマトはぎせいになったんだ…オレたちをすくうためのぎせいにな…」

 

「かってにころすな!後ろにいるだろ!」

 

 悲痛な声に後ろを振り向くと、少し背の高い黒髪ロングの少女の脇に抱えられた直江が、もはや諦めを浮かべた顔で反論していた。が、がっちりホールドされている為か、見動きが取れていない。

 

「……お姉様、嬉しいけどちょっといたいわ」

 

 反対側には一子を抱えて頭を撫でている…器用なことだ。一子は少し痛がっているがまんざらでもなさそうだ。孤児院の頃から“お姉ちゃんが欲しい”って言ってたからな。

 

「ワン子はかわゆいなー、修行ですさんだ心がほぐれていくようだ…舎弟をいじり妹分を愛でる…この場所気に入った!私もこのグループ入るぞ!」

「やれやれ、一子を寝取られちまった…しかしまさかここで武神の孫を連れてくるとはな…直江、やるじゃねぇか」

「嬉しくないぞ!」

「あははは、モモせんばいの前ではヤマトも形無しだね」

「いいね!モモせんばいが加わればこの風間ファミリーは負けなしだぜ!」

 

こうして風間ファミリーに頼もしい戦闘員が加わった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それからしばらく経った後日某所の路地裏にて

 

「オイ、テメェ等か、俺の妹分に傷つけてくれやがった奴らはよ」

「誰だよテメェは…」

 

 薄暗い路地裏には、やさぐれた少年たちが屯していた。彼らは程度の差はあれ全員絆創膏やらの傷の手当をしており、リーダー格であろう少年を囲んでブツブツと不満を言い合っていた。

 

「俺が誰かなんてどうだっていい。てめえ等が好き勝手やってんのに対して、俺がキレてるってだけだ」

 

 鋭い目を怒りで更に尖らせ、拳を握りしめて不良グループを睨みつける少年。グループの構成員たちは、虫の居所の悪い所へ突然の殴り込んできた少年に対し、殺気立っている。

 

「はぁ?オメェ調子のってんじゃねえの?」

「てかこんだけ人数そろってんのにケンカ売ってんの?バカじゃね」

「こういう奴にはお仕置きが必要だよなぁ?」

「あのクソ女にいためつけられてイラついてるし、こいつボコしちまおうぜ?」

 

 路地裏に溜まった10数人のメンバーはニヤニヤと笑っていた。一人で来るようなバカに負けるはずがないと慢心していたからだ。しかし、その内の一人は何かに気づいたようで、にわかに焦りだした。

 

「ちょ、ちょっと待てよ、この鋭い目、もしかしてコイツ…「そうか、じゃちょっと遊んでもらえるか?センパイ」

 

 そう言うなり彼は先頭に立っていたリーダー格の少年の顔面を殴りつけ、その勢いのまま踵で隣にいた少年の顎を蹴りぬいた。

 

「へぶッ」「……がはッ」

 

 二人が潰されたのを見て、メンバーが驚く隙も与えないまま、彼は踵を蹴りぬいた体制から地に足をつけ、腰を落とすとコンマ数秒の間もなく駆け出した。

 

「…ひっ」

 

 後ろに控えていた少年たちは悲鳴を上げる暇もなく、鳩尾を突かれ、脛を蹴られ背中から投げ落とされ、ありとあらゆる手法で次々となぎ倒されていく…

 

「こ、コイツ…周りの学校でうわさになってるやつだ!あの竜兵をボコして裏通りおさめてるってやつだ!」

「あ゛?…悠長に喋ってんじゃねェよ」

「んぎッ」

 

 ビビって手を出さなかったおかげか最後まで倒されずにいた少年は、綺麗に顔面を撃ち抜かれて気絶した…この間わずか数分の出来事である。

 

「手間とらせやがって、アホ共が…これに懲りたら、もう二度とアイツ等に手ェ出すんじゃねぇぞ、分かったな?」

 

 そのつぶやきに応えるものは誰もいなかったが、その後風間ファミリーは地元の裏連中から恐れられ、襲撃をかけられることはなくなった。

 




ゲンさん加入によりやや狡賢くなる大和、人見知りがなくなって明るくなった一子(女の子がケンカに参加していたことでさり気なくコンパス回避出来た翔一)、キャラの被りを恐れついに俺様化した岳人、そして回を重ねるごとに強くなるモロロ…

さすが俺達のゲンさん!良くも悪くも影響を及ぼすね!

武神との約束破ったらなぶり殺しになるんで、気をつけて契約したほうが良さそうですね
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