2度目の人生を真剣に生きる   作:我楽多さん

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少年の一大決心と戦いの話

 百代の加入から時が経ち、季節はまた春を迎えようとする頃、翔一たちは今日も今日とて賑やかに原っぱで遊んでいた。そんな彼らを遠くから羨ましそうに見つめる少女が一人。

 

「おい、あいつまたこっち見てるぞ」

「あの子うちのクラスのしいなさん…だっけ?最近よくアタシたちのこと見てるわよね」

「女の子か…学校いくと毎回女の子に見られてんだよな、俺…いきぐるしいったらないぜ」

「キャップのイケメンじまんはさておき、やめとけワン子、ガクト…かかわるとしいな菌がうつるぞ」

 

 仲間に加わりたそうにこちらを見ているのは、同級生の椎名京という女の子。彼女は学校でも多くの生徒からいじめを受けていたため、悪い意味で有名だった。

 誰が言い始めたか、ヤマトが呟いた“彼女に触れるとしいな菌が着く”という酷い扱いもイジメの一つだ。

 

「またヤマトはそんな事を…ねえ、いいかげんあの子もボクたちの仲間に入れてあげようよ、ここのところずーっと来てるしさ」

「何言ってんだよモロ!あいつしいな菌だぞ、仲間に入れて俺たちにうつったらどうすんだよ!」

「どうって、別にどうもならないよ…それにその菌ってどこからきてるのさ」

 

 実は卓也は、彼女に対して少し特別な感情を抱いていた。自分も幼い頃から色白で体が細かったせいでいじめを受けていた時期があるからだ。

 今でこそガクト達のような友達に恵まれているものの、自分ももしかしたら…と考えると、卓也は彼女が虐められているのを見て黙っていられなかった。

 

「おいモロ、そしきにぞくしているのに自分のいけんばかりいうんじゃない、こういうのは多数決だ。今日姉さんとゲンいないけど」

「ハイハーイ、オレサマ反対!なあモロ、良く考えてみろよ。あいつを仲間にすると俺たちもいじめ受けるかもしれねぇんだぞ?」

「めずらしくガクトがまともな考えをしているな。俺も反対だ。いじめはいじめられる奴が悪い。わざわざ俺たちがひがいをうけることなんてないだろ」

 

 大和も岳人も降って湧いたような椎名のファミリー入りの話には反対であった。そもそも大和は弄れた考えから自己責任だとばかり考えていたし、ガクトは彼女に対する敵意がこちらに向くことを恐れていたからだ。

 

「ヘタするとワン子までいじめられかねないからな、ワン子がひがいを受けたらゲンになんて言われるか…」

「そんなのかんけいないわ!アタシはさんせい!だってかわいそうじゃない!クラスの子たちにもやめて欲しいけど、ヤマトがかかわるなっていつも止めるし…」

「ボクも…ボクもさんせいだね!今でこそボクはイジメられてないけど、ガクトと友だちにならなきゃファミリーにだって入れなかった。彼女はボクににてるんだよ…助けたい」

「とはいってもなぁ…オレサマ女子のめんどうごとはパスだぜ?」

「俺たちだって全てをすくえるわけじゃない、そんなおとぎばなしみたいなこと出来るわけがないじゃないか」

 

 お互いの意見は平行線上であり、椎名を助けたい卓也達と、厄介な事に首を突っ込みたくない大和達の意見は当然噛み合うことなく、この場にいる最後の一人、リーダーの翔一に視線が集まった

 

「お前ら、ストップ!この話はいったんやめだ!こういうのはゲンさんとかモモせんばいに聞いたほうがいいと思うぞ!ゆえに俺は中立!」

「アタシもそれがいいと思うわ!というかお姉様ならなんとかしてくれるわ!多分!」

「多分てまたアバウトな…」

 

 卓也も含め、一子の楽観的な考えに皆毒をぬかれた表情をしていたが、ただ一人大和だけは冷や汗を流していた。

 

「ね、姉さんにたよるのか…(また何か条件をつけられそうだ…)た、確かにきゃっかんせいに欠けるいけんはそしきうんえいには良くないことだが…」

「ぐ、まあキャップが言うなら仕方ねぇな、確かにゲンならなっとくできるこたえをくれるかも知れねぇ」

「まあ、そしきの長が決めたことだ…俺は別にさからわないが、これだけは言っておく。モロ、あかの他人と、ファミリーと、どっちが大切なのか良く考えてくれ」

「……うん、分かったよ…」

 

 結局この日は微妙な空気を引きずったままお開きとなった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「って事があったんだけど…」

 

 それから数日、いつものゲームセンターで卓也は忠勝に今回の事を相談していた。卓也はあわよくば忠勝をこちら側に引き込むつもりであった。

 

「なるほどな、お前はその椎名って奴を救いたい…が、厄介なモンをファミリーには入れなくない直江と面倒臭ぇのを嫌がる岳人に反対されてる、そこで俺にメンバー入りを支持してほしい、と」

「うん、その通りです。ボクもイジメられたことがあるから、彼女の気持ちは痛いほどわかるんだ」

「まあモロもどちらかと言えば苛められる側だからな、出来るなら救いたいってのは理解できる」

「…!じゃあ」

 

 椅子から立ち上がって詰め寄る卓也に対して、あくまで冷静に忠勝は話を続ける。

 

「だがな?一時的にファミリーの庇護下に入れたとしても、今度はファミリーの中で不和が生まれちまうだろ?そうすると、椎名の立場はどうなる?自分を守ってくれるはずの仲間から否定される程悲しいことはねえだろうよ。」

 

「…!」

 

 言われてみて初めて気づいた、と言わんばかりにその場で固まる卓也。ファミリーによる庇護さえあれば解決すると思っていたが、そのせいでファミリーが瓦解しては元も子もない、ということに気づいたのだ。

 

「だからモロ、お前がやるべきことは、俺の所に頼み込みに来ることじゃねえ。お前自身が動かなけりゃ何も始まらねえんだよ」

「…うん、確かに、そうだね…たしかにボクの考えは甘かったよ。仲間になりさえすればそれでかいけつだと思ってたんだ。」

「まあ人気者のキャップの仲間になれば、苛められる事もなくなるかもしれねえ…が、しこりを残したたまグループに属する事の方が、一人でいるより辛いかもしれねえな。」

「まあ、ガクトは良くも悪くもたんじゅんバカだから大丈夫だと思うけど…もんだいはヤマトだね。」

 

 卓也の頭に屁理屈な軍師の顔が浮かぶ。思えばこの話を出した時も彼は最初から最後まで嫌がる姿勢を崩さなかった。

 

「直江の奴は未だに弄れていやがるからな、アイツ自身の為にもそろそろ直してやったほうが良いんだが…」

「ヤマトじゃないけど、ボクにもさくがあるからね、なんとかしてみせるさ。」

 

 先程よりも幾分か自身に満ちた顔でそう告げると、卓也は席を立って忠勝に礼を言った

 

「そうかよ、俺としてはモロが自分の考えで動くってんなら、手伝ってやらねぇ事もない。」

「ありがとう、ボクもボクなりに頑張ってみるよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 師岡卓也は怒っていた。自分と同じクラスの少女、椎名京のイジメの理由が余りにも理不尽で、イジメる側が余りにも無責任であった事に。

 彼女は母親の悪質な男グセの為に自分まで淫売の烙印を押され、村八分陰口は当たり前、物を隠さればい菌扱いされ、何よりそんな酷い状況を教師に見てみぬふりされていたのだ。

 

「こんなのってないよ…」

 

 故に卓也は動き出した。椎名京のファミリー入りに肯定的だった一子に頼みこんで、学校の中で椎名に対する扱いを疑問視する女子を探しだしたのだ。

 元々川神の地には義侠心があるものが多く、この頃にはイジメが加速しすぎていた事もあり“流石にこれは酷い”といじめに否定的な者は多かった。

 

「これはもうイジメじゃないよ、まるでみんな椎名さんを学校から追い出そうとしてるみたいじゃないか、こんなのぜったいにおかしいよ」

 

 卓也は自らもイジメに否定的な男子を募り、一子達女子陣と合わせて反いじめ連合とでも言うべきグループを作りだすことに成功した。

 

「思ったより人数があつまった…やっぱりみんなおかしいっておもってるんだ!」

 

 …とはいえまだ小学生、彼らは自分達も標的になる事は避けたかったので、影に日向に椎名京をフォローする作戦を開始した。さり気なく椎名をいじめる男子たちの口撃をそらし、失せ物を協力して見つけ出し、バレないように投書で教員に告げ口をしたり、行動は多岐にわたった。

 もちろんいじめグルーブもその動きには気づいていたが、矢面に立つのは卓也一人だ。

 師岡卓也と言えばあの島津岳人の友人であり、何より風間翔一率いる風間ファミリーの一員である為に、表立って手を出すことは出来なかった。(故に通りすがりに足をかけたり、教科書に落書きをしたりという陰湿な行為に出ていたが)

 

 そんなある日、手紙で放課後に呼び出しを受けた卓也は、“ついに犯人グルーブから仕掛けてきたか!”と内心恐々としながら空き教室を訪れていた。

 しかし予想に反して、そこで一人待ち構えていたのは、渦中の存在である椎名京だった。

 

「こんな所によびだしてごめんなさい、その、わたしの名前は、椎名京…」

「うん、知ってる。ボクは師岡卓也。たぶん椎名さんも知ってるとは思うけどね」

「あの…師岡くん…だよね?いつも助けてくれてありがとう…」

 

 俯きながらお礼を述べる椎名。卓也からは髪に隠れて彼女の顔は伺えなかったものの、その声は震えていた。

 

「ボクだけじゃない、みんなおかしいって思ってるんだ。みんなが椎名さんを助けたいって思ってるんだ」

「でも、どうして…わたしのために…そこまでしてくれるの?…師岡くんもイジメられちゃうよ…今日だって、ろうかのすみでおどされてたの、みちゃった…から…」

 

 顔を上げてそう告げる彼女は瞳に涙を浮かべていた。

 

「あのね、椎名さん…いまボクが受けてるイジメはほんの一部に過ぎない、椎名さんはもっとひどいことをながい間ガマンしてたんだ…それにボクだってもしかしたら同じたちばになってたかもしれない。ボクは今のキミをほうっておけないんだ」

「でも…」

「ボクのことならだいじょうぶ。あと少しだけまっててね、イジメのリーダーも見つけたし、せんせいも動き出した。もうこんなひどいこと終わらせてみせるから…ちょっとおそくなっちゃったけどね」

 

「……………………あり…が……とう………グスッ」

 

 あはは、と苦笑いする卓也を見て、京は嬉しさと安心感からか、思わず顔を覆ってその場で泣き始めた。

 慌てて肩を支えた卓也は、この問題を早急に解決する事を心に誓った。

 

 




動き出すモロ、次第に良くなる環境、膨れ上がる悪意…正攻法で虐めを正すことのなんと難しい事か…パパっとやるあたり、大和は流石主人公って所ですね

私事の予定が慌ただしくなり、少し投稿ペースが遅れます。申し訳ありません…
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