次回以降から月2話ペースに落ちます…
樹の歓迎会から2日経ち、樹の正式な哨戒の仕事が始まる日。そして、班編成が決まる日でもあった。
樹は前日一睡もすることも出来なかった。そのせいで編成発表で行われる集会所であくびを何回もして
いる。隣で椛が心配そうに見るが、心配ないと樹が言うと、貼り紙に貼られている編成表を見ている。
樹も自分の名前を探すと、第三班の副隊長のところに名前が書かれていた。椛はまだ見つからないみた
いのでその間自分の班だけ覚えておこうと名前を確認し始めた。
『第三班 ・隊長 立花御木 ・副隊長兼隊長補佐 水無月樹 ・副隊長補佐 犬走椛 その他メンバ
ー ・秋風葉月 …以上20名』
まぁ副隊長=隊長補佐と言うのは分かるが、副隊長補佐と言うのは聞いたことはなかった。他の班にな
いということは大天狗が気を利かせてくれたのだろう。正直のところあんまり副隊長の仕事なんてわか
らない。樹は一人考えてるうちに椛はようやく自分の名前を発見して、樹の裾を引っ張っていた。
「さぁ行くよ顔合わせを交えてからの仕事なんだから、後樹の分の仕事のカレンダーだよ。」
「サンキュ~じゃあ行くか。」
二人は第三班の周辺である。山の中腹へと向かった。
―少年少女移動中―
集合場所は渓谷のような場所で景色としては美しいが、哨戒に関係なさそうな場所だと思っている。
樹の表情から察したのか椛はあたりの景色を見ながら、
「ここは関係なさそうな場所であっても、実はそうでもないんだよ?山に害をもたらす妖怪を取り締まる
仕事なんだよ。ここの時はね。」
「へぇ~そうなんだ。まぁそれがないと暇なんだよね…実際のところ。」
事実を言うと、椛は苦笑いをする。周りには少しずつだが人が集まってくる。その中には御木の姿もあっ
た。二人は御木に近づくと、5メートルのところで、こちらに気付くと、
「やぁ、樹。副隊長任命おめでとう。これからよろしく頼むよ、椛も出世おめでとう。」
「「ありがとうございます。立花隊長」」
二人は挨拶を済ませると、御木はなんかこそばゆそうに指で頬を掻いていると、
「樹に隊長って呼ばれるのはなんか恥ずかしいな…よし、お前は隊長づけはなしな。」
突如言われたことなんで樹は返事に困り、
「は、はい。わかりました。御木さん…」
「よし、それでいい、それと全員集まったみたいだ。さっさと顔合わせして仕事するわよ。おっと、樹
は初めてのやつが多いだろうから自己紹介しときな。」
「はい。でも新聞で大半知っているんじゃないですか?」
「それでもだ中には新聞取ってない奴もいるしな。という訳で注目!!」
すると、他の人たちは御木の方に向くと、
「それじゃあ、顔合わせは終わったと思うが、一人だけ新しく入ってきたから自己紹介するからよく聞
くように!」
「「「はい!」」」
一斉に他の白狼天狗達が樹に注目する。樹はえぇ~と驚くと、御木がニコッと微笑むと、
「さぁ、緊張しなくて良いわよ?そんな態度だと部下も不安になるだけよ。」
「そ、そうですよね!じゃあ、いつもの調子で…」
一回深呼吸して、
「初めまして、今日からこの班で副隊長を任された、水無月樹だ!多分知ってる人が大半だと思うけど…
元人間で今日が初仕事だから皆からいろいろ教えてくれ!それと、俺のことは副隊長づけはなしだ。気軽
に話しかけてくれ、じゃあこれからよろしく頼む!」
自己紹介が終わると、一斉に拍手が起こる。樹はニシシッと笑い、そこから各持ち場に向かう。
一時間して相変わらず暇だったので、御木に他の持ち場の様子を見てくると言い、能力でいろいろ
周っていた。持ち場にいる白狼天狗達とこの山について話をしていた。そのうちの中年の白狼天狗との
話。
「ここには神様が何人かいるんだよ、厄神様、秋の神様達とか後は…山の頂上付近の神社に祭られてい
る位かな?後、同じ妖怪でも河童がいるんだ。河童の技術は幻想郷1だぞ?樹君も言ってみると良い。もち
ろん非番の日にしときな。」
「それはもちろんですよ。菊地さん、サボったら椛の説教を食らうんで…」
菊地は笑うと、
「それはそうか、椛ちゃん可愛いけど起こると怖いからね~」
「はい…一回説教されましたよ…っておっと?そろそろ次に回らないと御木さんは怒らないけど椛に怒ら
れる!じゃあ菊地さんまたお話しましょうね。」
樹は慌てて空間を開くと、菊地に別れの挨拶をして、入っていった。
その後お昼前までに無事に持ち場に戻ることが出来、説教を食らわずに済んだ。
「ようやく終わった~よし椛帰ろうぜ~」
日が沈み始め、仕事が終了の時間になり、椛に声をかけると、
「うん!今行くよ~」
それだけ言うと、椛は樹の隣を歩き、帰路を歩いていく。
10分ほど歩き、天狗の里に着くと、広場の真ん中でミスティアの屋台がやっていた。せっかくなので、
二人は入ることにし、暖簾をくぐると、
「ようミスティア、ここでやってて大丈夫なのか?天狗の里真っ只中に?」
質問に答えようとしたミスティアの代わりに椛が、
「大丈夫だよ、人間がやってたら別だけど妖怪ならこの山の中のどこでやってもね。」
「へぇ~そうなんだ~っととりあえず、酒2杯とうな重お願い~」
「かしこ参りました~椛さんはどうします?」
「えっと…じゃあ酢ぶt「アホか」ブギュ!」
樹は自分が教えた料理を注文していた椛にチョップする。椛は頭を痛そうに抑えると、
「何するの!?」
「アホか!?お前俺が教えた料理が幻想郷に広まってるわけないだろ!?」
樹が椛に叱っているのかミスティアはまったく理解できず、鰻を焼きながら苦笑いすることしか出来な
かった。
少しして、樹のお叱りは終わり、椛は注がれた酒を少し飲んでから、八目鰻を頼んだ。ミスティアは
鰻を焼きながら、
「そういえば、自己紹介以外はあまり話してなかったですよね。良ければ、いろいろ聞かせてください
よ。」
樹は酒を飲んだグラスを置くと、
「いいぞ、う~んどこから話そうかな?こっちに来てからの話でもするか~」
そういうと、樹は幻想郷に来てからの話を話し始めた。
―少年説明中―
ざっと一通り話し終えると、ミスティアは少し涙ぐんでいた。一哉との別れの話を始めてから泣いて
いたので、少しは収まっていた。
「こんな短期間でそんなことが起こっていたんですか?私屋台の営業をしていたのでまったくわかりま
せんでしたよ。」
「まぁ、そんなくらいかな?幻想郷にきてからの出来事は、じゃあそろそろ帰るとするよ。お代はこれ
で、じゃあな」
樹は食事代を置くと、眠っている椛を担ぎ、暖簾をくぐるが、顔だけ戻すと、
「月一で手伝おうと思うんだが、良いかなミスティア?」
ミスティアはえっ!?と驚き、少し考えると、
「大歓迎ですよ樹さん!でも調理の方は大丈夫ですか?」
「あぁ、調理は得意だから問題ないよ。それに給料の方はいらないからな?」
樹はニカッ、っと笑うと、
「じゃあ、非番の日ならいつでも良いので月一は絶対来てくださいね?」
おう、と返事をすると屋台を出て、家に戻っていった。
そして、1週間が経ち、樹と椛の2人の非番の日が回ってきた。樹はとりあえず、夜にミスティア
の屋台に行くためそれまでは椛に料理を教えて、空の飛び方を教わることを考えていたが、
「ごめん、樹今日はちょっと用事があって教えることが出来ないんだよ…」
その言葉に樹は唖然とするしかなかった。飛べないと、皆に知られると、後々ひどい目に遭うと思
いながら落胆する。
「じゃあ、空を飛ぶのが上手い人が、家の前にいるから、その人に教えてもらって。」
「何か嫌な予感しかしないんだけど…気のせいかな?」
「うん、きっと気のせいだよ。」
そういうとドアを開け、出て行った。すると、その代わりに、文ともう一人烏天狗だろうか?上は文
と似ているが、下はチェックのミニスカートを履いていて、髪はツインテールにしていて、片手には
外の世界の携帯今ではあまり見かけないガラパゴス携帯を持っていた。
「樹さんおはようございます!今日は空を飛ぶ練習をするためのコーチとしてきました。隣にいるの
は姫海棠はたて、私と同じで新聞記者なんですよ。」
「よろしくね、樹で良いわよね?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「じゃあ、早速外に出てください。」
文に手を引っ張られると、外に連れ出された。
連れ出された場所は九天の滝だった。3人は滝つぼに降りると、文とはたては少し樹と距離を取っ
て文は扇をはたては携帯を構えると、
「じゃあ始めますよ樹さん。とりあえず、風を感じてください。そして風と一体化するようなイメー
ジで妖力を放出してください。」
「あまり放出しすぎないようにね、放出し過ぎると飛べる時間も減っていくんだからね。」
樹は二人のアドバイスを促し、その通りにしてみる。
(風と一体となるように、妖力を放出して、あまり出し過ぎないようにと)
その考えで少しずつ妖力を放出すると、地面から足が離れた感覚があり、無意識のうちに閉じていた
目を開いて、下を向くと、10㎝ほど地面から浮かんでいた。
二人は唖然としていたが、樹はガッツポーズを決めていた。
「よっしゃー一発で出来た~!」
「あんた天才なんじゃない?何ならさ風起こしてみなさいよ。」
「わかりました。」
樹は手を合わせて祈るように力をためて、放つ。
すると、物凄い勢いの風が発生して、文と、はたては腕で少しでも風を受けないようにしていた。
実際樹は力を込めるといっても大した妖力は使ってはいなかったため樹自身がとても驚いていた。
二人が近づくと文が樹の手をつかむとその手を上下に振って嬉しそうに、
「樹さんすごいですよ!あの風は私が出せるか出せないか位のレベルですよ!」
それを聞いた途端、樹の顔は少し迷惑気味な顔をした。その理由はもちろん本気を出したら何もかも
破壊しつくす位の威力と考えるだけで風を起こすことはしないと心に誓う。
「それは嬉しいんですけど…さっきの最大妖力の一割にも満たないんですよ…それであの突風、でき
ればもう使いたくないです…」
文は手を放すと、深刻そうな顔で何か考えていたが、数秒で明るい顔になると、
「それはそうでしょうね、樹さんの風でこの山が破壊なんてしたらバツが悪くなりますよね。でも
その力を受け入れないといけないんですよ。しかも、さっきの風はある人に似ていました。彼もあん
まり風は起こしていなかった。そんな彼に樹さんは今よく似ています。」
「あぁ~立花楓だったっけ?あいつのお姉さんが今隊長をやってるあの…」
「そうだったんですか…」
「彼は数百年前に鬼と戦って死んでしまいました。彼は椛とは親友としていました。」
「え!?椛とも!!?」
「はい、彼が亡くなった時、椛はだれよりも悲しんで一時期心を閉ざしてしまったことがありました。
復帰したときに椛は彼の言葉を何度も呟いて今の状況まで持つことが出来ました。」
「そんな話は聞いてませんけど…」
樹は椛の過去のことと御木さんに弟がいたことそしてその人が亡くなっていたこととで気持ちがとても
複雑化して表情をつくることが出来なかった。だがそれと他に何か懐かしいという気持ちがどことなく
湧いてきていた。が、それはすぐに収まる。その話になってどんよりとした雰囲気になってしまい、慌
てた文は、
「え、えっと…これにて練習終了です。樹さんお疲れ様でした。」
とだけ言うと、文はどこかに飛んで行ってしまった。そして、はたても文同様どこかに飛んで行ってし
まい、残された樹は歩きで家に向かった。
―少年移動中―
樹がたどり着いた先は墓地であった。途中からちゃんとした記憶は全くなく、気が付いたらここ
に来ていたと言う状況であった。何かに呼ばれたような感覚があったため、目の前にある人物の墓
石を見て、樹は確信を得た。
『立花 楓』
墓石にはさっき知ったばかりの椛の親友で御木の弟の名前が刻まれていた。
「あんたは俺に何を求めているんだよ…」
樹は墓石に刻まれている名前を見ながら、掠れたような声で問いかけるが、すでに死んでしまった者
が答えることはなく、ただただ時間だけが過ぎていく…
30分くらい経ち、後ろから背後からの気配と馴染みのある匂いで、樹はその人物に、
「なぁ、椛…お前用事ってこのことだったんだな…墓参りってことは今日が命日ってところだろ?」
「うん…楓とは…「親友だったんだよな?」えっ!?樹何でそのことを?」
椛は樹の隣に立つと樹の顔を覗き込んで聞いてくる。樹は顔を向けると、
「文さんたちに聞いたんだよ。俺の風を起こした時にこの人と力が似ているって言って知ったってと
ころだ。」
「そう…まぁ樹に初めて会った時にどこかしら似ているなって思ってたんだよ。」
「そうなのか?まぁ俺はその時は知らなかったんだから仕方ないか~」
日も頂点に達していて、二人とも空腹にお腹がなる。
「もう昼か~さっさと用事を済ませて昼飯食べにいこうぜ~」
「わかったよ、折角だし手を合わせる位してよね?」
「へいへい…」
二人は墓石の掃除をして線香を置くと、手を合わせる。手を合わせた瞬間に樹の頭に声が響く。
(時が満ちる日はまだ遠いか…)
と、驚いた顔を見て、椛は
「樹大丈夫?」
「あ、あぁ…」
樹は椛を心配させないように返事をすると立ち上がって、里の方へ足取りを進めた。