夏休みも中盤に差し掛かった頃、轡木さんの後押しもあって私たち生徒会も短い夏休みをとる事になったわ。
と言っても、その殆どが言峰君の護衛で潰れたんだけれどね。
はぁ………クタバレ外道。
何で護衛しにくいバイトばっかしてるのよ!
何でさり気なく変装して追手諸共SPを撒いてるのよ!
何で移動するたびに全力疾走なのよ!
そりゃそんなことばっかされてたら誰だって根を上げるわよ!!
1週間、SPに変わって君の事を護衛しやすいように一緒に働いてたけど毎日ヘロヘロになったわよ!
ちょっとダイエットになるわ! とか思ったけれど動いた分食べたり栄養ドリンク飲んだりで変わらなかったわよ!!
むしろ少し筋肉がついて胃袋が少し膨らんじゃったじゃないの!!
はぁはぁ……兎に角とっても忙しかったわ。
教会に戻ると言峰君は当然のように鍛錬やら家事炊事を手伝うけど、私は普通にバタリと倒れたわよ。何よあの化物スペック、
ホント、あの頃は楽しそうに遊びまわる子供たちの姿には本当に癒されたわ。
どうして子供ってあんなにも可愛いのかしら?
無邪気な笑顔で“お姉ちゃん”って呼ばれた時には鼻から愛を噴き出して倒れるかと思ったわ。
それに極自然な動作の上目遣いや恥ずかしそうに手をモジモジさせる動作とかもう反則よ!
まったく、小学生って最高ね!!
あ、ごめん。嘘止めて。
そんな虚ちゃんたちみたいにゴミを見る様な眼で見ないで! 冗談だから!!
そんな過酷なバイt――護衛活動の中、何と私更識楯無は長い月日の末、愛しの簪ちゃんと仲直りしました!!
うう、本当に長かったわ。仲直りした時には余りにも嬉しくて皆が見てる中抱き合って大泣きしたわ。
仲直りの切っ掛けがちょっとアレなんだけどね……。
あの日、大掃除を終えた私たちは食堂に案内されたの。
そこで出された食事を見て零してしまった言葉が悪夢の始まりだったわ。
『あら、麻婆じゃないのね』
私自身、冗談や興味本位のつもりだったのよ! でもまさか本当に外道作麻婆豆腐がだされるだなんて思わなかったわ!!
天龍ちゃんの制止の声も空しくコトリと目の前に出された瞬間に本能がコレを食べたらマズイって訴えてきて、助けを求めようとしたらいつの間にか椅子5つ分離れて皆揃って手で十字架を切ってたの。
え、死ぬの? これ食べたら死んじゃうほどなの?
い、嫌よ。無理に決まってるわ。せめてソースか何かで薄m――
私は直感したわ。
このままだと間違いなく“消される”って
――るなんて邪道よね!!! やっぱ麻婆は辛くなくっちゃ!!!
その瞬間、拡散される殺気と立てられる親指の数々を見て自分の判断が間違ってなかった事を実感したわ。
というか、聖職者が殺気を放つってどういうことよ。
覚悟を決めて蓮華一杯分を口に入れたら、味覚と嗅覚がヤられたわ。
ムリムリムリムリ、こんなの絶対にムリ!!! 何よこれ、本当に麻婆なの!? 寧ろ食べ物なの!? あの親子は平然と食べてるのよ!!?
身体中から滝の様な汗が流れるなか、必死に打開策を練って出た結論。
逃げちゃえ☆
護衛とか恥とかどうでもいい。兎に角すぐさま逃げよう!
と思ったけどどうしてか身体が動かないし両肩がミシミシと悲鳴を上げてるの。
そしていつの間にか目の前には紅く染まった蓮華を持った言峰君、後ろには両肩を押さえる言峰神父が……。
あらやだ、前も後ろも外道しか居ないわ。
女の子なら誰もが憧れる“あ~ん”がこんなにも恐く怖ろしいモノにジョブチェンジ。
羨ましそうに見てる虚ちゃんにSOSを送るもあっさりと見捨てられ、そこから先の記憶は無いの。
聞いた話だと死んだ魚の眼で懺悔を始めたらしいわ。
そこで私の想いやら秘密やらが盛大に暴露されて、簪ちゃんと仲直りすることになったの。
仲直りの切っ掛けが“麻婆豆腐”で内心複雑なんだけれど……。
でも、ありがとね♪
暴露しちゃった恥ずかしい秘密でイジってくるのは絶対に許さないけど。