今回は三人称からの時雨の視点になります。
刻一刻とまるでスローモーションの様に迫る刃を見ながら考える。
背後スラスターは機能を停止し使い物にならない。
自身は前に倒れかけた体勢で地に脚が付いてないからステップも踏めない。
脚部の小型スラスターだけでは間に合わない。
身体を無理やり捻るのも盾を構えるのも同様。
なら、どうすればいい?
「(背後ユニット強制崩壊!!)」
咄嗟に背後ユニットを切り離して盾にして初撃を防ぎ、続く攻撃を爆煙を隠れ蓑にしてステップを踏む。
幾度かの攻防の末漸くある程度の距離を保つ事ができ、S.Eが全損し阿礼に捕食されるという最低最悪のケースは免れた。
だが、やはり無傷とはいかず四撃目にトリケロスを六撃目に右眼を失ってしまった。
「クソ…」
「あはっ、これが言峰はんの血の味かえ~」
ペロリと刃に着いた血を舐める阿礼に悪態を付く時雨。
片目を失い距離感を上手くつかめない。
残った武器は鍵爪と拳銃、咄嗟に拾った教員が落したアサルトライフルのみ。
しかしこの銃は――
「うふふ~、流石のウチでも知っとりますえ~。ISの武器はロックがかかっとるから許可なく他人が使えないんって」
阿礼の言うとおり、時雨の持つアサルトライフルは教員の誰かが落したモノ。
今から手当たり次第にライフルの使用許可を得る?
そんな時間も無ければ戦闘中の教員に余裕などない。まして脱落した教員のモノという可能性もある。
他の武器を拾おうにもそれをさせまいと阿礼の追撃がそれを許さない。
「(どうする)」
逆転の方法はある。
だが、それをするには近距離まで行かなければならない。
この目では阿礼の猛攻を捌ききれないし急に近づいたら感づかれる。
「(何でもいい。何か他に手は…)」
そうか…
やっと、やっと解ったよ。
マスターが
だったら、使って貰えるように
“成れば”いいんだ
≪アンロック:アサルトライフルが使用可能になりました≫
「なっ!? (これは…いや、考えてる暇は無い)」
突然回避を止め、弾切れの事などお構いなしにフルバーストで撃つ。
諦めたかと思った阿礼の顔が驚愕に染まった。
「何で? 何で撃てるん!?」
阿礼の疑問は当たり前だろう。
普通は許可なく他人の武器を撃てないと言うのがISの常識だ。
元々銃の許可を取ってあった? 通信で何とか許可を得た? 何らかの故障で使えるようになった? そんな考えが阿礼の頭に渦巻く。
弾切れになった銃を投げ捨て、
≪アンロック:双天牙月が使用可能になりました≫
何度か双刀を振り回して手に馴染ませる。
「よし、これなら!!」
以前の感覚を思い出しながら、槍のように突撃からの回転切り、そして連結を解除し踊るように何度も斬りかかる。
驚愕の隙を突かれたが、それも直ぐに持ち直しそれらを防ぐ阿礼に今度は再び連結させた青竜刀をブーメランのように投げ付ける。
「うふっ、甘いどす♪」
ブーメランを囮にし鍵爪で一気にS.Eを全損させる。
確かにこの距離ならば絶対防御を発動させやすい急所を狙えるだろう。
だが、そんな考えお見通しだと伸ばされた左腕の鍵爪の隙間を通すかのようにブレードを差し込んで腕から切り離した。
「これでお終いどす♪」
「お前がな」
もう、今ので最後の武器だと思っていた。
だが、何も持ってなかった右手にはいつの間にか拳銃が握られ、それは阿礼の目と鼻の先に――
「
銃の発砲音とほぼ同時に阿礼の悲鳴がこだました。
―――
――
―
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
S.Eこそ削りきれなかったが、ほぼ零距離による衝撃は緩和しきれず片目の眼球を押しつぶしたらしい。
別に狙ったわけではない。だが、こうなる事は予想出来ていた。
「いたい、いたいぃぃぃぃ!!!???」
罪悪感なんてない。
何故ならあいつは“敵”だから
それに――
「けど、イイィ!!!」
アレ変態だし…。
「アハッ♪ こんなの産まれて初めてどす~」
眼球潰れるなんて経験普通は無いだろ。
「それもそうやね~。あ! よくよく思えばウチと言峰はん互いに片目ずつ失おうてお揃いやな~」
ザケンナ!!
「アンッ、いけずやね~」
今ので本当に最後。
未だに拳銃を構えているが、先ので全弾撃ち尽くした。
「やっぱあんさんは格別どすな~。鍛え抜かれた身体、咄嗟の機転、鋭くも深い洞察力、戸惑うことなく急所を狙える冷酷さ。う~ん、今すぐ倒したい。でも、もう少し熟した方が、いやいややっぱり………(ブツブツ」
……何だろう。
変態ピエロに果実の判定されてる気分だ。
「うふっ前はウチの負け。今回は痛み分け。なら次はウチが勝たせてもらうどす」
っ逃がすと思ってるのか?
「強がりはやめときなはれやす~。もう、限界でっしゃろう?」
ちっ
「ウチももうバテバテどす。今日はこれで帰りますえ~」
「ほな、さいなら」
そう言ってどこか遠くに飛んで行く阿礼に教員が追いかけようとするが今からだと無理だろう。
上空では残り一機の無人機と交戦中。他のアリーナはどうなったのだろうか?
カレンは? 更識は? それに先輩は無事に避難できただろうか……。
ダメだ。
阿礼が去って安心したのか疲れがどっと出てきた、
痛みも気力で我慢してたが流石にもう限界だ。
まだ交戦中だというのは解ってはいたが倒れる自分を止められなかった。
ただ、意識を手放す前に先輩の声が聞こえた気がした。
これで専用機持ちのタッグトーナメント編は終わりで、次回からは事故報告となります。
絶対防御貫いとるやんというツッコミは無しでお願いします。
S.Eが少なかったからということで納得してください m(__)m