勘違いから始まる物語   作:壬生咲夜

60 / 83
今回は時雨⇒楯無⇒時雨の視点となります。



襲撃の報告

…………知らない天井だ。

 

あれ? 何で半分しか視えないんだ?

…ああ、そうか。阿礼に斬られたんだっけ

 

「…時雨君」

 

先輩?

 

「ごめんなさい」

 

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

………弱ったな。

その顔は苦手なんだ………

 

 

 

<糾弾>

 

――以上の証拠があるのだけれど一応あなた達の言い分を聞きましょうか?

 

「わ、私たちはただ、ちょっとだけ恥をかけばいいと思って」

「そうなんですよ会長。ちょっとした悪戯心で」

 

恥をかく? 悪戯心? 背後スラスターの機能を停止するように細工したことが?

ねぇ、もしこれがスピードを出していた時やかなりの高高度にいたらどうなるのか考えたことあるかしら?

もし解らないのなら実際にちょっとしたスカイダイビングやジェットコースターを体験させてあげるわよ。

 

「ひっ!?」

 

何を恐がっているのかしら?

安心していいわよ。遊園地みたいに安全ベルトは無いけれどISには絶対防御があるのだから“死には”しないわ。

ただ、もしかしたらちょっとした不手際があって不幸な目にあうかもしれないけれど…

 

「…会長は、会長はあの男に肩を持っているだけです!!」

 

そうね。私だって人間だもの。誰かに肩入れする事もあるわ。

だから知りあいが怪我をする原因を作ったあなた達が、学園と全整備科生の評価と信頼を落としたあなた達が、私の親友を陥れ泣かせたあなた達が許せない!!!

 

「会長~どうどう~」

 

…ごめんなさい。

少し、熱くなってたわね。

 

あなた達の処分は追って連絡するわ。

といってもこの学園を出て冷た~い豚箱行きは決定なんだけれど。

 

「そんな横暴な!!」

「ね、ねぇそのこあなたも会長に何とか言って!! 会長はあの男に騙されてる。悪いのは全部散々千冬様の弟だと嘘をついて威張って調子にのってた―」

 

 

「あのさ~黙ってくれるかな~。折角カレっちに大人しくして貰ってたけど~、突き出したくなっちゃうんだよね~」

 

「あのオルテシアさんに!?」

「そ、それだけは…」

 

もういいわ本音ちゃん。連れていきなさい。

 

「は~い」

 

ああ、そうそう。もし彼女達が逃げようとしたら隠し持ってるモノ使っても良いから

 

「あいあいさ~」

「そんな……せっかく、折角IS学園に入ったのに何でこんな…」

「お願い話を聞いて!! 悪いのは全部――」

 

 

はぁ……言い訳ほど醜いものはないわね。

あと少しで私も本音ちゃんも我慢出来ずに手を出すところだったわ。

でも、それだけはダメ。今回の事ばかりは有耶無耶にせずしっかりと裁かなければいけない。

でないと今後、彼以外の生徒でも同じような事が起きるかもしれない。

いえ、もう過去に起きているのかも………今までの退学者を調べ直す必要があるわね。

 

次の会長は簪ちゃんか言峰君のどちらかがなる。

きっと二人は嫌がるでしょうけどね。

何としてでも私の代で負の遺産を何とかしなくちゃ。

 

 

それがせめてもの罪滅ぼしだから

 

 

<報告>

 

無人機は全て撃墜したが、機体を調べようとしたところ全て自爆されほぼ解析不能。

ただ、残骸から発見されたコアの一部を調べた所、未登録のコアであることが判明。

怪我人は俺の様に重傷を負った者はいないらしい。

医師の話では眼球が深く傷ついているから右眼は使い物にならない。

わかっていた事だが、改めて言われると少しだけショックだな。

 

白式はほぼ全壊でオーバーホールが必須とのこと

機体を徹底的に調査した結果、瞬時加速(イグニッション・ブースト)の類いを発動した瞬間に背後スラスターの機能を停止するよう細工された痕跡を発見。

無理なプログラムを入力されていたせいで本来発動する筈だった絶対防御にも不具合が起きてしまった。

 

この事で先輩は自分を責め続けている。

最終調整を行っていたところ急な呼び出しを受け、二重にロックをかけてほんの少しだけ席を外したところを教員のパスコードを通じて細工されたらしい。

先輩は悪くないのだが、気付けなかった自分のミスだと泣いて謝り続けている。

この件に加担した一部の生徒及び教員は然るべき処置をした後、学園を追放。更識家を通して刑務所行きが決定。

証拠不十分で追求し切れなかった生徒もいたが、周囲からの白い目に耐えきれず自ら学園を去っていく事となった。

 

立場をなくしつつある過激派だが、会議で俺が故意に阿礼に怪我を負わせたのではと言いだしたらしい。

前々から卑怯な手を使う男だからこのままだと可愛い生徒にも同じような事をとかなんとか…。

当然ながらこれに多くの者が反論。

会長さんの「敵に情け容赦をかける必要性は無い」、「寧ろ問題行動を起こし続けているちっこいのとでっかいのの方が問題なのでは?」と反論したところ押し黙った。

過激派もでっかいのに処罰を与え篠ノ之束を怒らせたくないとみた。

ちっこい方だが中国政府の方でも問題のある人物に専用機を持たせ続けることにかなり揉めているらしい。

最終的に男性IS操縦者のデータ或いは遺伝情報欲しさに保留で落ちついたようだが…。

会長さんは処罰しきれないなら暫くの間二人の事を盾に色々と学園改革をすると話していた。

 

最後に阿礼に怪我を負わせた事についてだが

故意にするつもりはなくてもああなると解っていたと言ったら「聞かなかったことにする」と言われてしまった。

 

 

<改修>

 

オーバーホールが決まった白式だが、倉持技研に予備パーツが無いことから前に俺が考えた外部武装の案を一時的に採用することにした。

簡単に説明すると腕や足に新たに装甲を付けることで防御力と小型スラスターによる推力を上げ、さらに白式の拡張領域(パススロット)が少なさを補うために火器も取りつけたモノだ。

武装自体は打鉄でテストをしていた為、打鉄の予備パーツを白式に移植して調整すればいいのだが…

 

「すみません。私にはもう誰かの機体を触るなんて…」

 

今まで通り先輩にお願いしようとしてるのだが、自分にそんな資格は無い。ミスを犯した自分も学園を去るべきと言われている。

 

……そうですね。今回の件で俺も他の誰かに機体を見てもらうのが恐くなりました。

 

「っ!? はい、だから――」

 

だからこそ良く知っている人に、一番信頼している先輩にお願いしたいんです。

 

「………ずるいです。時雨君は本当にずるい人です」

 

クスッ、知ってます。

 

「本当に…、本当に私で良いんですか?」

 

貴女だから頼みたいんですよ“虚さん”

 

「っはい。わかりました」

 

漸く微笑んだ先輩の顔はとても綺麗に見えた。

 

 

この人ならもしかしたら―――

 

……先輩

 

「なんでしょうか?」

 

少し、昔話に付き合ってもらえませんか?

 

「……はい」

 

 

 

俺は………

 

 

 

          人殺しなんです。

 

 




次回は時雨の過去話になります。
白式は大破し、どうせならと軽量スピード型から重量格闘型にジョブチェンジンジさせるよう提案。
倉持技研には予備パーツが無くすぐに直せないこと、簪の専用機開発を放り投げた件を盾に交渉したということで…。
一応、白式の構想はSEEDのデュエルASをイメージしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。