勘違いから始まる物語   作:壬生咲夜

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お久しぶりです。
リアルでちょっと面倒な事になって全然書けてませんでした。
社会人になってまで筆記試験とかマジで笑えない……

今回もまた日常編で、ちょっとアホっぽい事に挑戦してみました。
勘違い要素は一切ありません。



帰って来た話

 

いつもの様に友人らと食堂に向かったら何やら騒がしく、今日は限定のスイーツでも出てたか? とその混み具合を想像して少しだけ嫌な顔をする。

食堂に入ると予想通り人混みで溢れていたのだが、別に限定商品が出ているわけでは無く、“おばちゃん”が厨房で働いていた。

なにを隠そうこのおばちゃん、ちっこいのが転校してきた頃に俺が自信作だったらしい激辛麻婆を軽々完食したことを切っ掛けに修行の旅に出てしまったのだ。

気さくで慕われていた人の突然の休職に多くの生徒が困惑し、「男子がおばちゃん追い詰めた」などと噂された事もあって一時期は食堂の出入りも難しかったっけ…。

このことが切っ掛けで、月に何度かの“偶には外でピクニック気分を味わいながら皆でお弁当を交換しよう!!”が始まってたりするのだが、俺の弁当(麻婆)が交換されることは滅多になかった………解せぬ。

 

さて、そろそろ行くとしますかね。

 

食券を片手に窓口に行くと、今までの人の良さそうな表情から一転し真剣な表情へと変わった。

 

「注文は?」

 

麻婆豆腐

 

「辛さは?」

 

態々聞く必要が?

 

「…あいよ。座って待ってな」

 

 

おばちゃんに従って近くのテーブル席に着く。

その後すぐにカレンが隣に座ったがどうしてか他の皆は離れた場所に座った。

 

なんでだい?

 

「「「「だって超絶嫌な予感しかしないだもん…」」」」

 

 

暫くすると、トレーを持ったおばちゃんがこっちに来て俺たちの目の前に2つの麻婆を置いた。

見た目の感想は“紅”というよりも“紅黒い”

 

どれ、まずは一口

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――っ馬鹿な!? この俺が、麻婆狂の俺がほんの一瞬意識を手放しただと?

どうやら半年の間にかなりの腕を――いや、根源に至ったようだ。

見ろよこの蓮華、元々は白かったのがたった一口分すくっただけで紅に浸食されたんだぜ? 凄いだろ。

 

とアホみたいな事を遠くの席の友人らにやったら、ガクガクと脅えきったいた。

だが、その視線は俺の方では無くその隣。

そう言えば、やけに隣が静かだな~って思いつつ隣に視線を向けると義妹が皿に顔を突っ伏してた。

 

味覚がぶっ飛んでるカレンが一瞬で………

 

知らぬ間にゴクリと大きく唾を飲み込む。

ふと、目の前に影ができ、そちらに視線を向けるとおばちゃんが正面に居座っていた。

 

……なるほど、目の前で最高傑作が完食されるか否かを見届けると。

いいだろう、俺が食いきるか、それとも途中で倒れるか勝負だ!!

 

2口目、小手調べは止め蓮華一杯の麻婆を口に入れると強烈なアッパーで殴られた様な感覚を受けた。

3~5口目、食べるスピードを上げるとボクサーの連続ジャブではなく高速でストレートを撃たれたかのような感覚に襲われた。

6口目、口に入れた筈なのにそこに辛いのがあるのがわかるがそれが豆腐なのかひき肉なのかネギなのかまるでわからなくなった。

 

額から流れる汗を拭うと目の前にコトリと一杯の水が置かれる。

おばちゃんの目がこう語っている「ギブアップするかい?」と。

 

ハッまさか…

 

 

ここで降参などありえない。

ラストスパートだと一気に口に駆けこんだら喉がイカレた。

何とか胃の中に飲みこんだら身体中が沸騰する感覚に見舞われ、一瞬吐きだしそうになるも机を殴り耐えきった。

机には凹んだ様子が見られるが殴った筈の左腕の感覚があまりなく、意識も朦朧としてきた。

 

あと一口、あと……ひと…くt………

 

 

 

 

 

 

この日、おばちゃんに黒星を付けられた俺は自室で静かに涙を流した。

 

 

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