超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
「う~ん、何にも教えてくれなかったよ~!」
REDがうなる。
「これからどうしましょうか…?」
「私に聞かれてもね…ん?あれは…」
何かに気づいたアイエフの視線の先には、下っ端がいた。
「あーっ!さっきやっつけたっばっかりなのに!」
「しつこすぎるにもほどがあるだろ…」
もうこれで何回目だよ。
「また悪いことしようとしてるんでしょうか?」
「そうかもしれないけど…あいつもきっと、ゲイムキャラを探しにこの国に来てるのよね?」
「おそらくそのはずだろうな」
「アイツの行動をマークしてれば、ゲイムキャラの所まで案内してくれるんじゃないかしら」
「なるほど、こっちが利用するってわけだな」
アイエフの提案に、俺はうなずいた。
「そのとおり」
「はあ…そんなにうまくいくでしょうか?」
「ダメで元々だ。手持ちの情報はないに等しいし」
これがダメならまたほかを考えればいい。
とりあえず俺たちは下っ端を尾行することにした。
「ふう…ふう…」
「大変そうだね、おばあちゃん。代わりに持ってあげようか?」
大きな荷物を背負っているお婆ちゃんに下っ端が近づいた。
「いえいえ、そんな。見ず知らずの方にご迷惑はかけられませんから」
「遠慮すんなって。お年寄りは国の宝。さあ貸して。どこまで行くんだい?」
「すみませんねえ。それじゃお言葉に甘えて…」
下っ端はおばあちゃんの荷物を代わりに持ち上げた。
あれ、案外いいやつなんじゃないのか、あいつ?
「いやあ助かりました。最近はどうも、体が言うことを聞かなくてねえ」
「そりゃいけないねえ。体は大事にしなきゃ」
「ここしばらくは女神様のお顔も拝見できなくなって。気持ちから弱ってるのかねえ」
「おばあちゃん女神なんて信じているのかい?あー、ダメだ。そりゃダメだよ。最近の信仰のトレンドは、犯罪神マジェコンヌ様だよ?」
話の雲行きがおかしくなってきた。
あ、やばい。あいつ話うまいぞ。
「そうなのかい?」
「騙されたと思って信仰してみなよ。たちまち、体も元気、心も元気!」
「ちょうどイイモノ持ってんだよ。限定生産のとっておき邪神フィギュア!部屋に置いとけばたちまち運気上昇!悪霊も尻尾を巻いて逃げだす優れもんだよ!」
下っ端は懐からまがまがしい顔をもったフィギュアを持ち出した。
「またんかい」
さすがに見過ごせず、俺たちは間に割って入る。
「んだよ?いいとこなんだ、邪魔すんな…げっ!テメエ等!」
「全く、お年寄り相手にせこい商売してんじゃないわよ」
「う、うるせえ!資金集めは重要な仕事なんだよ!」
「おばあちゃん、ダメですよ。ちゃんと女神様を信じてください」
「おやおや、ひょっとして悪い人だったのかい?」
「「犯罪神」とか「邪神」とか言ってる時点で気づいてくれよ…」
「くそっ、あと一歩だったのに…覚えてやがれー!」
下っ端は素早く逃げてしまった。
「あっ、待てーーーーーー!!」
「いいのよ、放っといて。尾行するわよ」
「なかなかゲイムキャラさんのところに行かないですねー…」
尾行してしばらく。
下っ端は子供たちに違法機器を広めようとしたり、猫にパンを与えて犯罪神崇拝者を増やしたりしたものの、ゲイムキャラのもとへは全く行こうとしない。
「あの人何も知らないんじゃないの?」
REDがしびれを切らした。
「そう簡単にはいかないでしょうね。ラステイションのときも時間かかったし…」
「うん?」
下っ端はまだ大きく動く気配がない。
大きく伸びをしていると、遠くに身をぼえのある人影が見えた。
下っ端から目を離すわけにはしかないし、俺ひとりで行くか…。
「どうしたの、ユウ?」
「いやちょっと…先に行っててくれるか?」
「なんで?」
「すぐ戻るから」
「そう…?何かあったら連絡しなさいよ」
「おう」
俺はその人影のところへ走っていった。
「ふぇ…どこ…?ぐすっ…」
人影の正体はルウィーの女神候補生の一人、おとなしい性格のロムだった。
「どうかしたのか?」
怖がらせないように、できるだけ優しく喋りかける。
「ふぇ…?あ!悪い、人…」
「違う違う、俺は悪い人じゃないよ」
つくづくこの子たちには悪印象をつけられてしまったみたいだ。
ラムみたいに変態って言われないだけましだな。
「…いじめる?」
「いじめないいじめない。どうしたんだ?何か泣いてたみたいだけど」
ビクビクと怯えていたロムだったが、しだいに落ち着いてくれた。
「ペン、探してた…」
「ペン?」
「ラムちゃんと、一緒に買ったの。おそろいで、とても大切なの。でも…落としちゃったの」
ペンか。双子は仲がいいみたいだし、そのペンにも思い入れがあるんだろう。
「どこで落としたとか分かるか?」
「この間、悪い人につかまった時…たぶん」
さっきのときか。
確かにかなり激しく動いたからな。
「そっか…じゃああの時の道を辿ってみようか。俺も一緒に探すよ」
「…探して、くれるの」
俺はニコッと微笑んで返す。
「うん。さあ、暗くなる前に早くいこう」
「…うん」
「ここにはないなあ…」
下っ端が逃げていた道を捜索するが、ペンは見つからない。
「……」
「ペン。ペンねえ…。ロム、そっちにはあるか?」
「ない…」
「ここにはないのか?」
もっと先にあるのか?
道を注視していると
「…おにいちゃん」
とロムが言った。
「…うん?俺のこと?」
ロムが頷く。
おにいちゃん。おにいちゃんか。
いい響きだな。
お兄ちゃんちょっとうれしくなっちゃう。
「お姉ちゃんのこと、知ってる?」
お姉ちゃんというのは、ルウィーの女神であるブランの事を言っているのだろう。
「ああ、ちょっとだけね」
まああっちは俺のこと知らないだろうけど。
「…お姉ちゃん、帰ってこないの。今、どこにいるの?」
「ほかの女神たちと一緒に捕まっているんだ。ギョウカイ墓場ってとこに…」
なかなか答えにくい質問だったが、俺はあえて本当のことを伝えることにした。
実の妹に嘘をつくわけにはいかない。
「…ぐすっ。お姉ちゃん、会いたい」
「大丈夫、俺たちが必ず助け出すからな?ほら、泣き止んで」
泣き出すロムをなだめ、頭を撫でる。
「ぐすっ…(こくり)」
「さて、ここにはないみたいだし、別の場所探そうか」
俺はまだ少しぐずっているロムの手を引いた。
「捕まった時、ここに来たんだよな。きっとここに落ちてるよ」
しばらく捜索した俺たちは双子と戦った場所、ルウィー国際展示場に来ていた。
「おにいちゃんは…なんでルウィーに来たの?」
「ゲイムキャラを探しに来たんだ。女神たちを救うのに必要な力だから」
「…でもここ、プラネテューヌからすごく遠い…」
「ん、まあそれぐらい大切なことなんだ。この前までラステイションに行ってたし…」
俺はラステイションのユニを思い出した。
女神候補生である彼女の力も借りたかったのだが、あの様子だと何を言ってもついてきてくれなかっただろうな。
「本当は君たちにも来てほしいんだけどな」
「一緒に?」
「ああ…でも大丈夫だよ。俺たちできっと、女神を救ってみせるから」
嫌だ、っていう子を無理やり連れて行くわけにもいかにしな。
「……」
「うーん、ないなあ」
「…なんで、そんなにがんばってくれるの?」
また、ロムが疑問を呈する。
「困ってる人は放っておけないんだよ。勝手に体が動いちまうのさ」
そういや、ネプギアたちと出会った時もそうだったな。
見てられなくて、気づけば間に入っていた。
俺も損な性格してるなあ。
「…でも、おにいちゃん。お姉ちゃんたちを助けるために、旅してる…」
「ん、そうだな。あまり寄り道してる暇はないんだけど、それを言い訳に困ってる人を見逃してちゃ犯罪組織と変わらない」
自分でもびっくりするくらい、真面目な事を言う。
ネプギアの影響を受けたかな。
「それに、今は仲間が情報を集めてくれてるから気にしなくて…お、これか?」
俺たちが戦っていた少し手前の場所、そこに小さなペンが落ちていた。
俺はそれを掲げて見せる。
「あ…!わたしのペン…!」
ペンが無事に見つかったことで、俺はホッと胸をなでおろした。
「よかった。時間大丈夫か?」
ペンを探し始めてからもうかなり時間が経ってしまっている。
「あ…ラムちゃん、怒ってるかも…」
「きっと心配してる。早く帰ったほうがいいよ」
「うん…」
ロムは早くラムに会いたいのか、走っていった。
と思ったらUターンして戻ってきた。
「あ…あの…あ…ありがとう、ございました!」
ロムは礼を言い、頭を下げた。
「うん、またな」
俺は手を振る。
今度こそロムは走り去っていった。
誤解も解けて、仲良くなれたみたいだ。
「さて…」
俺は一旦深呼吸する。
「出て来いよ」
物陰に隠れている人物を呼ぶ。
「あら、やっぱり鋭いわね」
出てきたのは、どこか篠宮オルガに似た雰囲気を持つ青髪の女性だった。
ロムのペンを探し始めたときから、俺を尾けてきていた気配を察知していたのだ。
「誰だ?」
「篠宮エリカ」
女性はニコリと微笑んだ。
「オルガの姉よ」