超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】   作:ジマリス

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16 滝空ユウ①

ヴァティ村は特にこれといった特徴のない、ごく普通の平和な村だ。

プラネテューヌの西端に位置し、人口は一千人ほど。

 

 

俺はそんな村で生まれた。

 

別段大人しい性格というわけでもなかったが、俺はいつも本ばかり読み、そこに書いてある外の世界に憧れた。

写真を見て、都会の街にも山や森にも目を輝かせた。

 

いつかこの目で見てみたい。

 

 

いつしか俺の夢は冒険家になることになっていた。

もちろん親には危険だと言われたが、俺はその夢をあきらめなかった。

 

 

幼いながらも身体を鍛え、道場に通って剣術や体術を学んだ。

冒険家になるという(この村にしては)珍しい夢を持っている話は、なぜかご近所からまたそのご近所へと次々に回っていった。

そんな物珍しい俺が気になるのか、次第に俺の周りには人が集まり、友人ができていった。

さまざまな人との交流を経て、俺の性格は明るくなっていった。

 

 

 

 

「あなたも『外』が好きなのね」

 

篠宮エリカ

彼女は魔法を得意としていて、俺と同じように外の世界に憧れている人物の一人だった。

意気投合した俺たちは、いつしか夢を語り合う仲にまでなった。

 

 

俺はきっとこの村を出ていく。

 

そう言い続ける俺を、彼女は応援してくれた。

 

 

 

 

 

「剣術を教えてくれ」

 

俺が自分を鍛え始めてから数年、そう言ってきた少女がいた。

 

彼女の名前は篠宮オルガ。

エリカの妹だ。

 

「ごめんなさい、この子物怖じしない性格なの」

 

オルガも外の世界を見たがっていた。

そのときオルガは10歳ほどだったが、俺が夢を持ち始めたのもそれくらいだったなと思い、彼女にも様々なことを話した。

 

 

エリカは既に剣術では村一番となっていた俺のことを話したらしく、オルガは俺に剣術の教えを請うてきた。

 

といってもまだ小さかった彼女には木刀でも重く、しかたなく俺はナイフ並みの小さな武器から慣れさせた。

オルガの上達は著しく、めきめきと腕を上げていった。

言葉遣いは相変わらず変わらなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

「ユウ!オルガが……いなくなったの!」

 

 

オルガとともに鍛錬を始めてから数ヵ月後。

今日も勉強と鍛錬を行うために早起きしていた俺のもとに、エリカが息を切らしてやってきた。

 

 

大人たちと一緒に必死になって村中を走り回ったが、オルガは見つからない。

 

「もしかして森に行ったんじゃ…」

 

大人の一人がそう言った。

 

村の少し離れたところに森がある。

そこにはモンスターが巣食っているため、村人は近づかないようにしていたのだが、オルガはそこに行ってしまったのではないか。

 

「ユウ…」

 

「大丈夫だ、大丈夫」

 

不安を隠しきれないエリカをなだめるために、俺は深呼吸を促した。

それでも落ち着かない様子のエリカを一旦家に帰らせた。

最後まで探すと言った彼女だが、これ以上不安を大きくするわけにはいかない。

 

「ユウくん、オルガを頼む」

 

エリカを椅子に座らせたあとオルガの父親はすがるように俺を見た。

俺は頷き、急いで装備を整えた。

といっても大したものは無かった。

防具はなく、厚着をして少しでも防御力を高めるしかなかった。

 

「これを持っていけ、ユウ」

 

木刀とナイフを持っていこうとした俺に、父親は鞘に収まった刀を渡してきた。

一度も言ってくれなかったが、父は俺の夢に賛成していたらしい。

来るべきその時のために、刀を用意してくれていたのだ。

父は知り合いの鍛冶屋に特注品を頼んでくれたそうで、その刀は俺の手に馴染んだ。

 

「父さん、ありがとう」

 

「気をつけろよ。母さんには内緒にしてやる」

 

父はそれ以上何も言わなかった。

口下手な父だったが、これ以上なく俺を心配し、これ以上なく俺を応援してくれていたのが伝わった。

木刀の代わりに刀を持った俺は、一人で森へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

その森はかなり広く、俺は数時間探し回ったもののオルガを見つけられなかった。

 

「これ以上奥は危険だぞ…」

 

これ以上奥に行けば、モンスターに遭遇してしまう。

もしかしてオルガはこの先に行ってしまったのだろうか。

意を決して、俺は森の奥へと足を運んだ。

 

 

時はもう夕方。

森が日差しを遮り、思ったよりも暗くなっていた。

早く見つけないと…

焦りが頂点に達していた。

嫌な想像が頭を駆け巡る。

 

そのとき

 

 

「きゃあああああ!!」

 

甲高い悲鳴が聞こえた。

 

「オルガ!!」

 

足が勝手に動き、声のする方へと向かう。

 

 

 

 

 

最奥部の近く、木にもたれかかるようにしてへたりこんでいたオルガを発見した。

その先には100センチほどの狼型モンスター、チャイルドウルフが今にも飛びかかろうとしていた。

 

俺は刀を抜き、チャイルドウルフの前に立つ。

 

初めて対峙するモンスターを相手に、俺の身体は震えていた。

 

「ユウ…」

 

「頑張ったなオルガ。あとは任せてくれ」

 

震え声のオルガを落ち着かせるために、俺は優しく言った。

 

はっきり言って余裕はない。

本で見たことはあるが、実際にどんな攻撃をしてくるかなんてわからない。

 

「それでも」

 

俺は未だ腰の抜けているオルガを見た。

 

「やるしかないよな」

 

間合いを詰め、チャイルドウルフに刀を振る。

しかし寸前で避けられ、タックルを食らう。

勢いで倒れてしまい、刀を落としてしまった。

噛み付こうとするチャイルドウルフだが、顎にパンチを見舞ってやった。

すこし飛んでいったチャイルドウルフはすぐに体勢を整え、俺をじっと見る。

俺もすぐ立ち上がり、刀を拾った。

 

「っふう…」

 

今のやりとりだけでも相当やばかった。

 

これが命のやりとりってやつか…。

再び震える身体を押さえつけ、構える。

 

チャイルドウルフが突進してきた。

 

ここだ!

 

俺は思いっきり刀を振ったが、当たらなかった。

刀が触れる直前。チャイルドウルフが進路を変え、オルガの方へ向かっていったのだ。

 

「きゃああ!」

 

「オルガ!」

 

俺はオルガの方へ腕を伸ばした。

 

「うぐっ」

 

顔の前を防ぐように伸ばされたその腕はチャイルドウルフに噛み付かれてしまった。

 

「っ…喰らえ!

 

チャイルドウルフが腕を噛みちぎろうとする前に、喉に刀を突き刺した。

短く悲鳴を上げたチャイルドウルフはすぐに消滅した。

 

「はあ……はあ……」

 

命を助けることができたことに安堵した。

 

「いっ…」

 

安心したせいか、腕の痛みが増してきた。見ると歯型の跡が付いているところから血が出ている。

 

「オルガ……大丈夫か?」

 

まだ震えているオルガのそばにしゃがむ。

 

「た、倒せるかと思ったんだ…」

 

泣き出したオルガはナイフを抱えていた。

これでモンスターを倒すつもりだったのか。

オルガからしたら、少しの冒険心のつもりだったのだろうが、実際にモンスターに遭遇してみたら怖かったということか。

 

「もう大丈夫だ」

 

俺はオルガの頭を撫でた。

 

 

 

 

 

そのあと村に戻った俺たちは、心配をかけたことを大人たちに謝りまわった。

大人たちは、俺たちが無事に戻ってきたことを喜んでくれた。

 

エリカや彼女の両親も喜び、俺に礼を言った。

 

「ユウ、ありがとう!」

 

普段クールなエリカが何度も何度も俺に礼を言う姿は新鮮だった。

怖がっているオルガを怒らないようにと彼女の親に言ってから、俺も家に帰った。

 

 

ここからが本番だった。

モンスターのいる森に行ったことは、父が言わなくてもすぐに母に伝わった。

もちろん母はカンカンに怒り、俺の無鉄砲ぶりを嘆いた。

そのあと優しく抱きしめ、どれほど愛しているかを涙ながらに語ってくれた。

 

逆に、父は俺の無謀さを祝った。

 

 

 

 

「ユウ、ありがとう」

 

翌日、オルガは俺に礼を言ってきた。

その顔はまだ暗かった。

まだ昨日のことを引きずっているみたいだな。

 

「暗いぞほら、笑顔になってみ。笑顔。ピース」

 

俺はすこしふざけた感じで喋ってみせた。

 

「笑顔素敵やで」

 

俺はオルガの頬を突っつく。

 

「つ、つっつくな!それにその話し方はなんだ!」

 

少し嫌がっていた様子のオルガはやがて、笑顔を見せ始めた。

 

「ぷっ…ははは。本にでも書いてあったのか?その喋り方。はははは」

 

暗かった顔は消え、オルガは笑った。

 

 

 

「……ほんと、あなたには感謝してもしきれないわね」

 

元に戻ったオルガを見て、エリカも元気になった。

 

この姉妹を笑わせるために、俺はおちゃらけた態度を続けた。

そのかいあって、しばらくすると先の事件も笑い話になっていた。

 

 

思えば、これが今の性格の元になったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その1年後、俺はついに村を出ることにした。

母親は最後まで反対していたが、説得に説得を重ねてようやく許可を得た。

 

 

 

出発当日

村の入口には、村人のほとんどが俺の出発を見送るために集まっていた。

出発のこと、俺は言ってないはずなんだけど…。

 

「また会えるわよね」

 

村を出る直前、そう言ったエリカの目は腫れぼったくなっていた。

あえてそのことには触れず、俺はエリカと握手した。

 

「今生の別れってわけでもないさ。ちゃんと帰ってくるよ」

 

「追いついてみせるからな、ユウ」

 

そういうオルガとも握手する。

あんな怖い目に遭ってもまだ外の世界に憧れを抱いたままのようだ。

 

「待ってるぞ、オルガ」

 

「あら、私のことは待っててくれないのかしら?」

 

「待ってる待ってる」

 

拗ねたように口を尖らせるエリカをフォロー。

拗ねたフリっていうのはわかってるからな、エリカ。

っていうかお前も出るつもりなのか。

 

 

父と母は俺を抱きしめ、旅に出るといった時にも見せなかった涙を流した。

人目をはばからずに泣く両親を見て、逆に冷静になった。

泣く気持ちもわからんでもないけど。

 

「泣かないでくれよ、行きづらくなるだろ」

 

「いつでも帰ってきていいからな」

 

多数の村人の前だったが、俺は気にせずに親のぬくもりを噛み締めた。

 

 

「それじゃ、またいつか」

 

十分な抱擁を交わしたあと、俺は手を振り、村を出た。

村人たちは、俺が見えなくなるまで手を振り、見送ってくれた。

 

 

 

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