超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
村を出て数年が経った。
最初にモンスターに出会った時はあんなに震えていたが、今ではすっかり慣れた。
危険種と呼ばれるエンシェントドラゴンもなんとか一人で倒せるほどにまでなった。
その日もクエストを受けるために、ギルドに顔を出していた。
「今日はどんなのがあるかな…」
クエストは日々増えていく。
難易度が高いほど報酬が多いが、俺は難易度が高いものも一人でこなせるようになっていた。
さて何を選ぼうかと思案しているとき
「ユウ!」
声のするほうを振り向くと、見たことがあるような少女が俺にタックル…もとい抱きついてきた。
勢い余って俺たちは倒れた。
「やっと見つけたぞ!」
俺に馬乗りになるような体勢になったにも関わらず、彼女は顔を輝かせた。
「お前……オルガ?」
その少女は成長したオルガだった。
赤のトレンチコートを来ている彼女のことを一瞬わからなかったが、話し方と残っている面影で判別することができた。
「村を出てきたのか?」
成長したオルガを見る。
少し幼さが残るものの、可愛く成長したものだ。
言葉遣いは相変わらずだけど。
「ああ。随分反対されたが、条件付きで許してくれたぞ」
「条件?」
「私が一緒についていく…って条件」
違う声が聞こえた。
その声の主も、懐かしい人物だった。
「エリカ!」
「久しぶりね、ユウ」
年が経ち、綺麗さに磨きがかかった女性になったエリカは俺にほほ笑みかけた。
「ところで…目立ちに目立ってるんだけど…」
挨拶もそこそこにエリカは恥ずかしそうに俺たちを見る。
「あ…」
自らの体勢を見て急に恥ずかしくなった俺は、馬乗りになったままのオルガを急いで立たせた。
その後ゆっくりと話をするために近くのカフェに座った。
俺が旅立ったあとも力をつけたオルガは、ナイフとククリ刀を使うスピード重視の戦い方をするようになっていた。
それよりも驚いたのは、まあなかなかに頑固になっていたことである。
エリカの話によれば、あの事件があったにも関わらず外に出たがっていたオルガは相当な年月をかけて親を説得したようだった。
最後には親が折れ、エリカと共にいることを条件に許可したそうだ。
当のエリカも旅に出るタイミングを伺っていたようで、得意の魔法のレベルを上げていた。
さまざまな種類の魔法を扱えるようになっていたエリカは、いい機会だと思ってオルガとともに旅に出ることを決意したらしい。
二人は旅に出て数ヵ月、俺のことを探していたそうだ。
「変わったな、二人とも」
俺は数年前を思い出しながら、二人を見た。
ふたりの身長は同じくらいで、俺より頭ひとつ分小さいくらいだった。
155センチくらいかな。
大きく変わったのはやっぱり容姿だ。
オルガは鋭い目をしているが、まだ幼さが残っている。
紫の髪は肩まで伸びていて、それが彼女を少し大人に見せた。
エリカはもともと美人だったが、より整った顔になっている。
幼さはほとんどなく、すっかり大人の女性になっていた。
昔、肩までだった金髪は腰まで伸びていた。
簡単に言えば、二人とも美少女になっていた。
「そういうあなたも変わったわ」
「そうか?」
「すごく、なんていうか大人に見えるぞ」
あまり自分の変化には気づかないが、そう言ってもらえると嬉しいな。
「せっかく会えたんだから、一緒に旅しないか?」
オルガは提案した。
彼女だけで旅をさせるのも危険だと思った俺はこれを快諾した。
そもそも彼女たちはそれが目的で俺を探していたようだが。
俺たちはいくつものダンジョンを通り、クエストも多数こなした。
思っていたよりも二人は強く、一人で旅していた時よりもかなり楽ができた。
様々なものを見ることができた感動をこの三人で共有できたことがとても嬉しかった。
俺たちが一緒に旅を始めてからしばらく経った。
巷では犯罪組織なるものが少しずつその勢力を伸ばしていたが、俺は特に気にしてはいなかった。
最初の時点では犯罪組織が与えている影響なんて微々たるものだったし、悪を助長するような組織なんかすぐに廃れるだろうと思ったからだ。
しかし、俺の考えは甘かった。
犯罪組織は加速度的に勢力を上げ、ついには女神たちと五分のところまで来てしまったのだ。
これは女神たちも黙ってはいないだろう。
この予想はあたり、女神たちは犯罪組織の親玉を叩くためにギョウカイ墓場へと突入するということが発表された。
犯罪組織も壊滅だな。
そう思った矢先、信じられないことを聞いた。
女神たちが囚われてしまった。
それを聞いたのは、俺たちが四つの国をめぐり、再びプラネテューヌに戻ってきた時だった。
街の治安は悪くなっており、子供たちも違法機器を扱うようになっていた。
女神がいなくなりシェアの獲得は難しくなっていたが、俺たちはなんとか一定量を保つようにクエストをこなしていった。
三年後
ますます悪くなるばかりの状況をなんとかできないかと教会へ向かった俺たちは、女神奪還作戦を遂行しようとする教祖イストワール、それとアイエフ、コンパという少女たちに出会った。
同行を頼み込み、ギョウカイ墓場へと向かった俺たちはそこで捕らえられた女神たちを目の当たりにした。
だが、犯罪組織の幹部ジャッジ・ザ・ハードが立ちふさがった。
その黒い巨躯に合う巨大な鎌から繰り出される攻撃はいままで受けたどんな攻撃よりも強く、重たかった。
強大な力を持つジャッジ・ザ・ハードを前に倒れそうになる俺たちだったが、エリカの光魔法で目を眩ませることができ、隙ができたジャッジ・ザ・ハードを抑えられた。
シェアクリスタルを用い、女神パープルハートの妹であるパープルシスター、ネプギアの救出に成功した。
どうにか逃げることに成功した俺たちは目覚めたネプギアとともに女神を救い、世界を元に戻すために旅に出ることを決めた。
目が覚めた。
頭の中はモヤがかかったようにぼおっとしている。
ええっと俺は……確か、オルガとネプギアの間に入って…刺されたんだったか。
身体を探る。
見ると包帯が巻かれていたが、もうほとんど痛みはない。
誰かが治療してくれたのか?
辺りを見渡す。
俺は小さな部屋のベッドに寝かされていた。
周りには本棚や机があり、机の上には俺の装備一式が置かれていた。
さっきのは…俺の過去だ。
全てではないが、思い出すことができたようだ。
オルガとエリカは幼馴染で、俺たちはともに旅をする仲間だった。
そしてネプギアたちと一緒に世界を救おうとして…。
そこからはどうなったんだろうか。
「本当にありがとうございました。みなさんのおかげで、ルウィーは救われました」
扉の向こうから話し声が聞こえた。俺は机の装備を身に付け、扉を開ける。
そこは教会の入口近くで、ネプギアたちはミナと話していた。
「…ユウはどうなの?」
「幸い致命傷は避けられたみたいで、しばらくすれば治るはずです」
「大丈夫大丈夫。こんなに元気になってるからな」
俺はみんなに聞こえるようにガッツポーズをしながら言った。
元気ですよアピールをしておかないと落ち込むだろうからな。
「ユウさん!動いて大丈夫なんですか!?」
「ああ、なんとか」
ネプギアが俺に抱きつく。
おうふ、女の子って柔らかい…。
「よかった……本当によかった…」
泣き出すネプギアの頭を撫で、落ち着かせる。
かなり心配させたみたいだな。
「ごめん」
「いえ、謝るのは私のほうです」
「じゃあお互い様ということで」
両方が悪いと思っているなら、両方が悪いということにする。
いらん諍いを収めるには昔からこれが一番だった。
ネプギアは納得いかないといった表情を浮かべたものの、何も言わないでくれた。
「かなりの傷だったと思うんだが…」
「ミナさんが治療してくれたんです」
ミナは回復魔法を得意としているらしく、運び込まれた俺を長時間看てくれたらしい。
「ありがとう」
「いえ、礼を言うのはこちらです」
お辞儀をする俺に対して、あちらも礼をした。
「ゲイムキャラは?」
「協力を得られました。キラーマシンがいなくなったので、ついてきてくれるそうです」
この地を守護する役目もあるゲイムキャラだが、キラーマシン封印の役もなくなったことで一時的についてきれくれることになったそうだ。
キラーマシン…。
俺が大剣を使って倒したところは覚えている。
あの堅いキラーマシンを俺ひとりで全部…。
「そういえば、オルガとエリカは?」
俺を刺したあと震えていたオルガを思い出す。
あれだけ殺すといっていた彼女が、俺を刺したとたんに怯えだした。
あれだけ長く過ごしたオルガの考えが、もうわからない。
「逃げるように去っていったわ」
「コテンパンにしてやろうかと思ったのにー!」
「次の機会でいいでしょ」
アイエフとREDが憎々しい顔でいう。
そんな二人をよそに、コンパが俺の様子をうかがった。
「本当に大丈夫です?」
「大丈夫。ほらほら、傷がひどかったら大剣なんか背負えないよ」
「私がもっとしっかりしていたら…」
「お前が応急処置してくれたから助かったんだよ。オールオッケーだ。これからも助けてくれよな」
落ち込むコンパの頭をなでる。
「わわっ、ユウさん!?」
一瞬でコンパの顔が赤くなる。
あれ、撫でられるのは嫌いだったか。
「ユウ~~?」
なんでそんなに睨んでるんですか、アイエフさん?
いやちょっと武器を構えるのはやめてください。
「もう次の土地へ旅立たれるのですか?」
「そうね。ユウも目覚めたし、やることもあるし」
なんとかアイエフを落ち着かせることに成功した俺の元に、今度はロムが寄ってきた。
「おにいちゃん…行っちゃうの?」
「む…」
寂しそうな顔のロムと何やら複雑な顔をするラム。
「ああ、でもすぐ会えるよ。それまでいい子にしてるんだぞ」
「…うん」
俺がロムの頭をなでると、ロムは笑顔になった。
対して、ラムはぐぬぬといった顔。
ああなるほど、取られちゃうと思ってるのか。
「どうか、お気をつけて旅を続けてください」
「はい!」
異なる表情をする三人に送られ、俺たちはルウィーを後にした。
「えっと、次はどこに行くんですか?」
「順当に考えればリーンボックスね」
ルウィーのゲイムキャラの協力も得られ、順調な旅路を続ける俺たちは早速次の目的地を目指すことにした。
「あ、Nギアが鳴ってる。いーすんさんからだ。はい、もしもし」
通話が来たらしく、ネプギアは太ももからNギアを取り出した。
前も思ったことあるんだけどエロいよね。
男がいるんだからもうちょっと気にしてほしいなあ。俺はいいけど。
「もしもし、ネプギアさん?そちらの様子はいかがですか?」
イストワールの声が聞こえた。
かなり久しぶりなような気がする。
プラネテューヌを出てからかなり経ってるようだし、何かつかめているだろうか。
「ルウィーのゲイムキャラに協力してもらえました。これからリーンボックスに向かうところです」
「まあ、ちょうど良かった。実は先ほどリーンボックスの教祖、箱崎チカさんからごれんらくがありまして、なんでも至急ネプギアさんに会いたいとのことでしたから」
「私に?どんな用でしょう?」
「そこまでは伺ってません。ただ、だいぶ切羽詰まった様子でしたので、できれば急いで向かってあげてください」
「はい、わかりました」
ネプギアは通話を切った。
何も言わないことを見ると、まだお調べ中みたいだな。
時間がかかる、というのはやはり本当のことらしい。
「…ということらしいんですけど」
「急ぎの用…ねえ。一難去ってまた一難ということか」
ほかの国に行くたびにトラブルがあったが、女神候補生がいないこともあってリーンボックスも何か問題があるみたいだ。
「リーンボックスへは、ラステイションから定期便が出てるです」
「ああ……そうか、船か」
リーンボックスはほかの国とは違い、離れた島に国が存在しているため、船を使わなければいけないのだ。
定期便と聞いて少し気分が陰鬱になる。
「どうしたの?船苦手なの?」
俺の顔を見て察したのか、REDがにやにやしている。
「すげえ酔うんだよ、俺」
乗り物という乗り物が苦手なんだよ。
旅をしていた時もずーーーーっと伏してたからな。
「できれば行かないという選択肢はありませんでしょうか」
「はいはい、わがまま言ってないで行くわよ」
「いやだああああああ!泳いでいくんだああああ!!」
暴れる俺を引きずりながら、一同はラステイションへと向かった。