超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
私たちはケイブさんから、女神が囚われたことによる治安悪化や、数日前に教祖が公布した規制解除など、この国の現状について教えてもらうことができた。
「ありがとう。参考になったわ」
「では、これで失礼するわ。また会うこともあるかもしれないわね」
ケイブさんは素早い身のこなしでその場を去っていった。
「やっぱり教祖は怪しいわね」
「そうですね。今の話を聞いてしまうと、信用していいのかどうか」
思い返してみると、随分怪しかったように思える。
うう、なんで私気付かなかったんだろう。
「本当に悪い人だったらどうするの?やっつけるの?」
「やっつけて解決するなら、簡単なんだけど…もう少し情報が欲しいわね」
「誰かこういう時に役に立ちそうな知り合いか友達はいないの?」
「知り合いか友達かあ…そんな都合よくいないよね…あ、そうだ」
私はNギアを取り出し、ユウさんへコールする。
「もしもしユウさん」
ユウさんはすぐに出てくれた。
「よう、ネプギア」
酔いは既に治っているのか、上機嫌な声が聞こえた。
「かくかくしかじかで…」
「なるほどな。それで俺にも来て欲しいと…」
「はい、ユウさんいまどこにいます?」
「後ろ後ろ」
その言葉のとおり、後ろを向いてみると
「放しなさいよ!こらっ!」
「ははは、お兄さんは力持ちだろう!」
ユニちゃんをお姫様抱っこしているユウさんがいた。
ユニちゃんの顔はゆでダコのように赤くなっていた。
「そんなのいいから!はやく!」
「はいはい」
ユウさんはユニちゃんをゆっくり下ろし、頭を撫でた。
「う~~!街の人たちに見られちゃったじゃないのよ!」
ユニちゃんが唸る。
だけどその顔はまんざらでもなさそう、むしろ嬉しそうだった。
「いいなあ…」
「ちょっと羨ましいわね…って!なに言ってるのよ、私」
「私も撫でられたいです…」
私の呟きに、アイエフさんとコンパさんの呟きが重なる。
アイエフさんは自分の言葉をかき消すように手を勢いよく振った。
あ、あれ?私も思わず口をついて出たけど…みなさんも?
「ユニちゃん!」
「ネプギア、久しぶりね」
「うん、久しぶりだね。どうしたの?」
「捕まえてきた。しばらく同行させる」
親指を立てて歯をきらめかせるユウさん。
「聞いてないわよ!?」
「ところで、教祖のところに行きたいと。怪しくて挙動不審な教祖のところに行きたいと」
ユウさんはユニちゃんを無視して進める。
「ま、まだチカさんが悪いって決まったわけじゃないですよ」
「じゃあ行くか。その怪しい教祖のなんやらかんやらを暴きに」
会ってもいないのに思いっきり疑っているユウさんは意気揚々と歩きだした。
「だからまだ悪いって決まったわけじゃ…」
「みんなーっ!ボクの歌を聴けえええぇぇぇ!!」
スピーカーか何かでエコーされている声が聞こえた。
「わ。な、なんですか?この声?」
「あー、ライブだ!むこうでライブやってるよ!ねえ、行ってみようよー!」
REDさんの言うとおり、少し離れたところのステージで青い髪の少女が歌っていた。
ステージの前にはたくさんのお客さんがいて、そのほとんどが叫び、盛り上がっている。
「そんなことしてるヒマは…」
「いいじゃん、お母さん!生アイドルだぜ生アイドル!」
「だれがお母さんよっ!…まあいいか。どうせ行き詰まってるんだし」
「そうですね。たまには休憩も必要ですよ」
そうして私たちはステージへと向かうことにした。
△
「今日はこんなに集まってくれてありがとう!みんなのためにドンドン歌うよ!」
「わあ、素敵な曲…」
「はい…みんなも聞き入ってるですね」
「この光景だけ見たら、犯罪組織に飲み込まれそうな国とは思えないわね」
みんなは癒されたように微笑んでいる。
うん、いい曲だな。俺も癒されるわあ。
「あら、5pb.じゃない」
「知ってるのか?」
「知ってるもなにも、有名なアイドルよ。そっか、いまはリーンボックスで活動してるんだったっけ」
ユニはそういうこと知ってるんだな。
意外だな。
「あーこの曲もいいなあ。アタシ、すっかりファンになっちゃったよー!よし、早速嫁にしよう!」
REDの嫁っていうのはあれか。REDが嫁って言ったら嫁になるのか。簡単というか、問答無用というか。
問答無用で思い出したが、ラムとロムは嫁に入っているのか?
「…ん?あれは…」
「どうしたですか、あいちゃん?」
「…はあ。久しぶりにいい気分だったのに、イヤなモノ見つけちゃったわ。放っとくわけにも行かないわね」
アイエフは嫌な顔をしながら、人ごみを掻き分けていく。
「あ、どこ行くんですか?まだライブ途中なのに…アイエフさんってばー」
「まだまだいくよー!次の曲はー」
「こんな胸糞悪いライブ、めちゃくちゃにしてやらあ!へへっ、馬鹿な観客どもが大騒ぎするザマが目に浮かぶぜ」
「馬鹿な観客で悪かったわね」
アイエフが見つけたのは下っ端だった。
しつこいとかいうのを超えてるぞ、おい。
犯罪組織って実はメンバーすごい少ないんじゃないか。そうじゃなかったら相当なブラック組織。
「ああ…?げっ!?テメエ等もいやがったのか!」
「げってこっちが言いてえんだよ」
「もー!嫁のせっかくのライブをジャマして!今日という今日は許さないよ!」
「ちっ、こんなとこででくわすなんて…今はテメエ等と、コトを構えたくねえんだよ!じゃあな!」
下っ端は何をするでもなく走っていく。
「あ、逃げた!」
「おら、どけどけ!ジャマなんだよ!どけっつってんだろ!!」
「すみません、通してください!ううう、とおしてー」
「ダメですう。こんなに人がいるんじゃ、身動きできないです…」
人を押してずんずん進んでいく下っ端に追いつけない。ただでさえ逃げ足素早いのに。
「なんの騒ぎ?またライブの妨害をしようというの?」
下っ端を追う俺たちの前に赤髪の女性が目の前に現れた。
「ケイブさん…なんでここに?」
「あなたたちは…なぜあなたたちがライブの妨害を?」
「妨害しようとしてたのはアイツよ!追いかけてたところ!」
アイエフは下っ端を指さした。
「そう…わかったわ。追跡は私に任せて。あなたたちは、これ以上騒ぎを大きくしないように」
ネプギアたちと面識があるらしいその女性は、人ごみの間をするすると抜けていく。
「わ、すごい。あっという間に行っちゃった」
「慣れてるんだろうな。この場はあの人に任せよう」
俺はサイリウムを取り出し、ポキッと折って光らせた。
「アンタ、ライブが見たいだけでしょ」
「今日はありがとー!みんな大好きだよー!!」
「俺も大好きー!!」
「あたしも大好きー!!」
最後の曲が終わり、俺とREDはあらん限りの声援を送った。
いやあ、すっかりファンになっちゃったなあ。
「ケイブさん、ちゃんと追いついたんでしょうか?」
ネプギアがそういった時、さっきの女性が申し訳なさそうな顔で戻ってきた。
「ごめんなさい。とり逃したわ」
「そう、まあ仕方ないわね。あいつの逃げ足の速さは折り紙つきだし」
「あなたたちは、あの逃げた女と面識が?」
「ああ、何度か邪魔されてるんだよ」
女性は俺を見るなり、首をかしげた。
「あなたは?」
「滝空ユウだ」
「ケイブよ。治安維持組織、リーンボックス特命課の一員よ」
俺たちは軽く自己紹介をすませた。
「下っ端のせいでルウィーが滅びかけたこともあるし、強くはないけどまあ危険人物だよ」
「下っ端…それがあいつの名前?」
「うん、そうだよ」
「はい、そうです」
「お前らなにげにひどいな」
俺も下っ端の名前知らんけど。
あんまり知る気もないけど。
「下っ端…そんな危険な人物がリーンボックスに来たのね」
ケイブは少し考え込んだあと
「…唐突だけど、あなたたちも特命課に協力してもらえないかしら?」
協力を要請してきた。
「協力?」
「ええ、あなたたちの経験と…言葉は悪いけど、女神であるという立場を利用させてもらいたいの」
女神がいないリーンボックスに、他国のとはいえ女神が参上したと聞けば犯罪組織の行動も少しは収まるだろう。
ケイブの考えはなかなかに的を射ている。
「分かりました。協力します!」
「ああ、確かにネプギアに似てきたな俺」
即答するネプギアを見て呟く。
他人の意見を聞かずに人のために行動する…か。
「またアンタは…」
「まあいいだろう。シェア獲得もついでってことでな?」
俺はユニのほうを見る。犯罪組織の思うとおりにさせるわけにはいかないからな。
ユニにも手伝ってもらうためにシェア獲得を話に出す。
「わかったわよ…」
「感謝するわ。当面は私があなたたちに同行する。指針が決まったら、その時は協力をお願いするわ」
「はい!」