超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
私たちは急いでアンダーインヴァースの奥へと急いだ。
ユウさんが負けるなんて思ってなかったけど、嫌な予感が私の足を急がせた。
アンダーインヴァースの奥、あの大きなねずみと下っ端がいた。
既にユウさんに倒されているようで、ねずみはその場に伏し、下っ端は首を掴まれて持ち上げられている。
「おいおい、オレを倒すんじゃなかったのかよ」
ユウさんは糸が切れたように力が抜けている下っ端を離した。
抵抗もなく、下っ端は地面に倒れた。
ユウさんの声は低かった。
今までにも何度か聞いたことのある、あの声だ。
いつもの明るいユウさんとは違う、まるで地獄から響いているような声。
視線をユウさんの手に移すと、やっぱり大剣を持っている。
「ユウ…さん?」
おそるおそるユウさんの名を呼ぶ。
「よう、ネプギア」
ユウさんはこっちを振り向き、ニヤリと嫌な感じの笑みを見せた。
「お前はわかってくれるよなあ?」
ゾクっと悪寒が走った。
この人はユウさんだけどユウさんじゃない。
直感的にそう思った私はビームソードを手に持った。
「あなたは誰ですか?」
ユウさんに、ユウさんの外見をした何者かに問いかける。
その男はギリッっと歯ぎしりした。
「お前も…」
ユウさんの顔は、私が見たことのないものとなっていた。
憎しみや怒りが全面に感じられる、ユウさんがしたことのない顔。
「オレを否定するのか」
ユウさんはこちらに向き直り、私をじっと見据えた。
怒ってるような、絶望したような、悲しそうなその顔は、やはり普段のユウさんとは違った。
もしかして、私が知っているユウさんは本当のユウさんじゃないのかもしれない…。
いつものユウさんはわざとふざけていて…
「何言ってんのよ、ユウ!」
「そうだよ!変だよ!」
アイエフさんとREDさんがユウさんに向かって叫ぶ。
「うるさい!」
ユウさんは大剣の先をこっちに向けた。
「あの時みたいに、消してやる。すべてを破壊してやる」
彼の中から凄まじい力が出てくるのを感じた。
この嫌な感じの力はまるで、そう、下っ端やギョウカイ墓場のジャッジ・ザ・ハードを相手にした時のような
犯罪組織を相手にした時のような…
「変身」
ユウさんの力が最大まで高まったとき、私が変身した時のように、ユウさんは黒い光に包まれた。
その黒い光はユウさんを「変身」させた。
ユウさんの体には常に動き続ける黒い模様が浮かび、瞳の色は赤くなっていた。
「ユウさん…?」
私たちは目の前の光景を信じられなかった。
女神しかできない「変身」を、人間であるユウさんがした。
しかもその力は私たちのようなものでなく、禍々しいものだった。
「せあっ!」
ユウさんは一瞬で間合いを詰め、大剣を振る。
なんとかビームソードで受けるが、重い一撃を耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
「ううっ…」
「ユウ!」
「なにやってるです!?」
ユウさんが、倒れた私を追撃しようとしたその時
「~~~~~♪」
澄んだ歌声が聞こえた。
歌声のほうを見てみると、この間ステージで歌っていた青髪の少女、5pb.さんがいた。
「あれ?」
「5pb.?」
突然の歌姫の登場に、私たちだけでなくケイブさんも驚いていた。
「あぐっ……」
こんなに綺麗で癒される歌だったが、男は苦しみだした。
「ど、どうなってるです?」
「5pb.の歌には善きを助け、悪しきを苦しめる不思議な力があるのだけれど…」
ケイブさんはこの光景を見て不思議に思っていた。
その能力は確かに、犯罪組織と戦う上で助けになるものだった。
しかし、目の前の男が苦しんでいるのを見て、私たちは不安になった。
「重ス!!」
男が、いやユウさんが手に持っていた大剣を落とした。
その声も雰囲気も、私が知っているユウさんだった。
「ユ、ユウさん?」
「ネプギア?あれ、みんなも来たのか?ん?下っ端とネズミは?」
前と同じく、記憶が飛んでいるらしい。
「アンタが倒したのよ、覚えてないの?そのあと意味のわからないことを言ってたし、ネプギアに攻撃するし…」
「倒したあとに下っ端たちがパワーアップしてたんだが…」
ユウさんは大剣と、倒れている下っ端とネズミを見て疑問符を浮かべている。
「よかったよー、ユウ!ちょっと怖かったんだからね!?」
「うおうっ、な、なんかごめん?」
REDさんがユウさんにタックル、もとい抱きついた。
「ユウさん……」
「ネプギア、ちょっとどうなってんのか説明してくれるか?」
「よかった…」
安心しきった私もユウさんに抱きつく。
よかった…。
ユウさんがもう戻ってこない気がして……とても不安だった。
「ネ、ネプギアも!?」
△
「……そんなことが…」
みんなが落ち着いたあと、俺はさっきあったことについて教えてもらった。
俺はまた大剣を使ったらしい。
ただ、今回はその時の記憶がなかった。前回はあったのに。
それにしても、俺が戻った途端にみんな安心しきったみたいになって…。
それだけ迷惑をかけたってことか…。
「覚えてないです?」
「ああ、前の時は覚えていたんだけどな…」
考えるのはあとにして、俺はすかさずネプギアに頭を下げた。
「すまない、ネプギア」
「あ、いえ、私はユウさんが無事ならそれで…」
ネプギアは本当に気にしていないといった様子で手を振る。
これからの行動で挽回させてもらおう。
俺は続いて5pb.に手を伸ばした。
「5pb.も、なんにしても助かったようだな。ありがとう」
「ひっ!?ひゃう!」
5pb.は握手しようとした俺の手を見た瞬間、ケイブの後ろに隠れた。
「……まあ怖かったかもしれないけどさ…ショック受けるよな、あからさまに避けられると」
初対面の人に嫌われる呪いでもかけられてるのか、俺は?
「許してあげて。この子、極度の人見知りなのよ」
「ご、ごご、ごめんなさいっ!」
5pb.はケイブの影に隠れたまま謝ってきた。
「人見知りなのにライブしてるの?」
「え、えと…スイッチが入っちゃえば平気、なの…でも普段は、どうしてもダメで…」
こういう人は案外少なくないらしい。
スイッチのオンオフがはっきりしているというか……まあこの子はちょっと支障が出るレベルだとは思うが。
「でも、おかげで助かったよ」
「あ、あの…」
俺たちの話を遮り、緑色に光るディスクが声を発した。
「ごめん、忘れてた」
「ゲ、ゲイムキャラですか?」
「ああ、事情は説明してある。ひとまずはみんなに会わせようと思ってたんだ」
「チカもゲイムキャラも戻ってきた…。これでリーンボックスも、すこしはマシになるといいのだけど」
一旦問題は解決したようだ。
犯罪組織の活動も少しは落ち着いてくれると助かるが。
「さて、とりあえず教祖に報告に行かないとね」
ゲイムキャラの救出に成功した俺たちは、同行の許可をもらうために教会へ戻ってきた。
「無事、ゲイムキャラは保護できたようね」
「はい。それで…もしよければ、ゲイムキャラを連れて行っても…」
「許可するわ」
どうしても無理なら力の一部だけでもと思ったが、チカはあっさりと許可を出した。
「え?そんなあっさりとですか?」
「…まさか、また偽物とすり替わってるんじゃないでしょうね」
「いい加減喋った感じでわかってくれよ…」
アイエフが疑うような目で見るが、明らかに本物だってわかるだろう。
本当に諜報員なのだろうか、アイエフは…。
「そのかわり、一刻も早く、ベールお姉様をギョウカイ墓場から救出すること。それが条件よ」
「はい、それはもちろん。最初からそのつもりですし」
「いいのか?ゲイムキャラがいなくなれば、加護を失うんだろう?」
「それは一時的なことでしょう。あなたたちがお姉様を助けてくるまでの間くらい、アタクシがしのいでみせるわ」
教祖というものは頼りになるものだ。
ルウィーのときも、同じようなことを言われたようだし。
「おーかっこいい」
「それに、物事には優先順位というものがあるの。一番大切なのは常にお姉様!そう決まってるのよ!」
「おーかっこわるい」
まあ女神ベールをお姉様と言うくらいだし、相当大切に思っているんだろう。
「ま、いいんじゃない。ある意味すごくわかりやすいし」
「教祖がこう言ってくれているなら、何も問題ないですね。私も是非、あなた方に同行したいと思ってましたし」
「はい、よろしくお願いします!」
リーンボックスのゲイムキャラが仲間に加わる。
ようやく四つの国のゲイムキャラの力が揃ったな。
「ところで、5pb.の姿が見えないけれど?」
「私の背中にぴったりくっついてます」
「こ、ここにいますぅ…」
ケイブの言う通り、5pb.はずっとケイブの後ろについている。あまりにもぴったりついているため、正面からでは5pb.が見えない。
教祖相手でもダメか。人見知り相手にはキツイ性格してるしな…。
「いるならいいわ。ここからはアナタに関する話だから、よく聞きなさい」
チカは気にしていない様子で続けた。
「アタクシが捕まっている間、この国の犯罪神崇拝は予想以上に加速してしまった…この状況を覆すには大きな一手が必要だわ」
「はあ…そのことと、ボクにどんな関係があるんでしょう…?」
チカは顔だけ出した5pb.に指をさした。
当然、そんな突然の行動にビクっと反応してしまう5pb.だったが、チカは自慢げな顔で微笑んだ。
「アタクシの考えた作戦に、アナタは必須なの。そう、その作戦とはズバリ…あなたを中心にした、巨大コンサートなのよ!」