超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
夜になり、私たちは以前5pb.さんが歌っていたところよりも大きなステージ会場に来ていた。
そこにはすでにたくさんの人が押しかけてきており、開演を今か今かと待ち望んでいた。
「うわあ、すごい数の人…」
「確かに、これだけの人数を犯罪神崇拝から目覚めさせれば、状況はひっくり返るかもしれないわね」
そう、チカさんが考えた作戦とはコンサートにより犯罪神を崇拝している人を目覚めさせることだった。
「きっと大丈夫だよ。5pb.の歌、すごいもん!」
私たちがステージがよく見える場所を探していると、5pb.さんがこちらに来てくれた。
「あ、みんな!来てくれたんだね!」
「5pb.さん。本日はご招待いただき、ありがとうございますー」
「いろんな人を呼んでるみたいですね」
「…なんでアタシがライブなんてこなきゃいけないのよ…」
「ライブ、初めて…楽しみだね、ラムちゃん」
「うん。帰ったらミナちゃんに自慢しちゃおう!」
私たちとは少し離れたところに、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃんがいた。
ユニちゃんもなんだかんだ言ってライブが楽しみみたいだ。体がそわそわしている。
「だって、あの子達も女神様なんでしょ?女神様には絶対ボクの歌を聴いてほしいんだもん!」
「がんばってね、5pb.」
「うん、がんばる!……あれ?ユウさんは?」
そういえば、先程からユウさんの姿が見えない。
ここに来るまでは一緒にいたはずなんだけど…。
「あれ、そういえばいないですね」
「どこかで迷ってんじゃないの?」
「この前のこと、謝りたかったのに…」
この前のこと、というのは5pb.さんが人見知りを発揮して、ユウさんの握手から逃げた事を言っているのだろう。ユウさん、ショック受けてたなあ。
「どうせあとで来るわよ。この前のライブで5pb.のファンになってたみたいだし」
「そうかな?っといけない。ボク、トップバッターだからそろそろ行かなきゃ。それじゃ!」
5pb.さんは私たちに礼をし、去っていった。
「ノリノリでしたね、5pb.さん」
「普段の人見知りはどこへやらって感じよね」
「いつものライブよりも、相当張り切ってるみたいね。ふふ、楽しみだわ」
ケイブさんは警備に目を光らせつつも、5pb.さんのステージを楽しみにしていた。
△
みんなでステージへ向かう途中、突然ケイから連絡が来たため、俺ステージから離れたところで通話に応じた。
歩きスマホダメ、絶対。スマホじゃないけど。
「やあ、ユウ」
ケイは飄々とした顔で言った。
「やあじゃねえよ。この前は唐突に切りやがって…」
すごいピンとした顔していたから気になっていたんだぞ。
「悪かったよ。どうしても調べたいことがあってね」
「調べたいこと?」
「うん。君の正体について、これかなというものがあったからね」
「本当か!?」
俺は食い気味にケイを見る。
「それを調べるために、イストワールにも協力してもらったんだ」
「だからあの時イストワールも切ったのか…」
ケイのことだ。こうやって連絡してくるということは、それなりに自信や裏付けがあってのことなのだろう。
「それで、俺の正体は?」
「君は…」
△
「みんなー!盛り上がってるぅー!?」
数曲が終わり、5pb.さんが客席にマイクを向けると、お客さんはステージが震えるほど叫びだした。
「ありがとーっ!でもね、一つだけ覚えていてほしいんだ。ボクがこうしてみんなの前で歌えるのは、女神様がこの世界を守ってくれてるからだってこと。ボクの歌を愛してくれるみんなは、犯罪神の誘惑なんかに負けないよねっ!?」
再び客席にマイクを向けると、お客さんはまた歓声を上げる。
そのなかに「女神最高おおおおお!」というのも聞こえ、少し恥ずかしくなる。
「うわあ、すごい盛り上がり…」
「アタシの嫁さいこー!」
「これならきっと、大成功間違いなしですよ!」
こちらもどんどん盛り上がり、ここからだというとき
「それじゃ、ボクの出番はここまで!次は、今日のために結成された、リーンボックスが誇る超イケメンユニット…ユピテルの登場だよっ!」
あれ?
「やあ、みんなっ!僕たちはユピテル!リーンボックス中の女の子を魅了するために、爽やかに参上したよ」
「もっとも、僕たちの魅力の前には、男の子だってメロメロになってしまうだろうけどね…」
「かまわないさ。僕たちは少女の愛も、少年の愛も等しくこの身に受け止めるよ!」
舞台には三人組の男がでてきた。
「………………」
客席は嘘のように静まり返り、そしてついには
「ふざけんな!男の歌なんて聴きたくねえよ!」
「かーえーれ!かーえーれ!」
「女神を信仰するってことは、あいつらを信仰するってことか?だったら女神なんて願い下げだ!」
とブーイングが起きた。
ここに来ている人たちは5pb.さんを観に来ている男の人達ばかりだ。それがいきなり男のアイドル登場なんて…。
いや、あの、ユピテルの人たちが悪いって言ってるんじゃなくて、悪い意味で期待を裏切られたという……あれ?結局悪いって言ってる?
「え?えええええ?あわわわわ…どど、どうしよう。こんなことになるなんて…」
「おおう、男たちの熱い視線が痛いね」
「ふふっ。みんな僕たちの美貌に嫉妬しているのさ。男の嫉妬は、本当に見苦しいよね」
「いいじゃないか。嫉妬も罵声も全て受け入れる。それこそがアイドルの使命!」
おろおろする5pb.さんとは対照的に、ユピテルの人たちはむしろ堂々としていた。
そのせいでより客席のブーイングが大きくなる。
「のんきなことを言ってないで!とにかく一度、ステージから降りてくださーい!」
ユピテルの人たちを舞台袖に押し返す5pb.さん。
それでもお客さんが暴れるのは止まらない。
「そ、そんな。アタクシの完璧なプランが…一体、どこで間違ったというの…?」
舞台の近く、崩れ落ちるチカさんが見えた。
あなたのせいだったんですね…。
「きゃあ!お、押さないで…どうしましょう!?暴動寸前ですよ!?」
「最悪の展開ね…」
「まずいわね。一度裏切られたと思ったファンは、下手をすれば一生根に持ち続ける…この場をどうにか解決しないと…」
「どうにかって、一体どうしたら…そうだ!ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん。私に考えがあるの!」
私はある考えを伝えるために、ユニちゃんとロムちゃんとラムちゃんを集める。
女神候補生にしかできないことだ。
「考え?」
「…なあに?ネプギアちゃん」
「ヘンな思いつきじゃないでしょうね…」
△
「別次元の人間?」
ケイから発せられた言葉はなんとなく察していたものだった。
「そうだ。イストワールによれば、「珍しいけど、ない話ではない」らしいよ。現に、別の次元からきた人間はこの世界に何人か存在するそうだ」
あのとき、イストワールも通話を切ったのはケイに調べものを頼まれたからか。
「おそらく、こことよく似た世界から来たのだろう。ここと同じように女神たちや犯罪神が存在した世界から」
「……」
なんとなくこの世界の事を知っていたのは、こことそっくりな別次元で育ったから。
この旅について、困ったことにたいして何とかなると思っていたのは、際に経験しているから。
俺が別次元から来て、この世界の滝空ユウは死んでいるから、滝空ユウは二人いる。
つじつまは合う……っちゃあ、合うのかな?
「世界が滅んだっていうのは…」
「やったのは君か、それともほかの誰かか…」
ケイはひと呼吸おいた。
「やったのは君だと、僕は思っている」
「……」
「今までの情報をまとめると、そう考えるのが妥当だろう。君の元仲間であるオルガやエリカの言葉をすべて信じるわけじゃないが、「滝空ユウが世界を滅ぼし、オルガとエリカが復讐のために滝空ユウを追ってきた」と僕は思っている」
ドストレートに言ってきたが、そう考えるのが普通……なのか?
そうすると、俺はあいつらの言ったとおり「ネプギアたち女神を殺し、世界を滅ぼした人間」だということになる。
「俺が世界を…滅ぼした…」
「さて、どうする?」
「どうするもこうするも、記憶を取り戻すか、オルガかエリカをとっ捕まえるかしないといけないだろうな」
真実を確かめるにはそれしかない。
「それよりも俺が気になるのは、もし俺が世界を滅ぼしたものだったとしたら、お前たちがどうするかだ」
「それは…そのときに決めるだろうね」
「でも僕はユニやネプギアさんたちの意見を汲みたいと思っている。僕より彼女たちの方が君のことをよく知っているだろうしね」
「ありがとう、ケイ」
「礼を言うのは早いよ、ユウさん」
ケイは微笑み、通話を切った。
ステージのほうに目を戻すと、なにやら客が暴れている。
壇上には5pb.の他に男が三人いた。
さてはチカがなにかやらかしたな。
ステージスケジュールを組んでいる時に「ふふふ、これで完璧だわ」とか言ってたし。
5pb.目当ての客相手に男アイドル連れてくるなよな……まったく。
もう一回5pb.に歌わせるか、ネプギアたちに踊ってもらうか…。
俺がステージに近づこうとしたとき、鋭い視線を感じた。
振り向くと
「っ!」
物陰に隠れるようにして、オルガがこっちを見ていた。
俺が気づいた瞬間、オルガはくるっと振り返り逃げ出した。
「待て、オルガ!」
ちょうどいいタイミングだ。
真実を知るためにも、逃すわけにはいかない!
△
「あ、あわわわ…ダメ…もうどうしていいか、わかんないよ…」
「5pb.さん!ここは私たちに任せてください!」
私たちはステージに上がり、顔面蒼白になっている5pb.さんへ寄る。
「ネプギアさん?それに女神様たちも…」
「…絶対うまくいくんでしょうね。失敗して大恥かいたら、タダじゃおかないわよ!」
「ふふーん。私たちの魅力で、ばっちりシェアを獲得しちゃうんだから。がんばろうね、ロムちゃん」
「…恥ずかしい。けど、がんばる」
私たちは5pb.さんからマイクを受け取り、ステージの真ん中へ立つ。
お客さんの暴動は少し落ち着き、代わりにざわざわとし始めた。
「み、みなさん!聞いてください!」
「なんだ?今度は女の子が出てきたな」
「見たことない子達だけど・・・ふん、いまさら新キャラの女の子が出てきたって!」
よし、注目は集められているみたいだ。
絶対に成功させてみせます!
「私は、プラネテューヌの女神候補生、ネプギアです。それで、こっちの子が…」
「ラステイションのユニよ…な、なによ!じろじろ見ないでよね!」
「ルウィーのラムちゃんとロムちゃんでーっす!みんなよろしくーっ!」
「(びくびく)」
私たちは順々に自己紹介をする。
打ち合わせは何もしてないけど、うまく各々の特徴が現れた自己紹介ができたみたいだ。
「女神候補生…てことは、女神様の妹か!あんなに可愛いんだなあ。女神様は」
「ああ。しかも優等生にツンデレ、性格が正反対の双子と…見事なバリエーションじゃないか!」
お客さんの反応も良いものだった。
「今日は私たち…お、踊ります!みなさん、楽しんでいってください!」
音楽が流れ、それとともに私たちは踊った。
お客さんも一緒に盛り上がることができた。
よかった。この作戦は成功みたいだった。
お客さんが興奮しすぎてちょっと怖かったけど…。
△
なんとか大盛況のまま、ライブは終了できた。
成功を祝って、俺たちは教会で打ち上げをした。
「おつかれさま!大盛況だったわね!全てはアタクシの計画通り!」
「途中やばかったみたいだが…」
あのあと問いただしてみると、やはりあのユピテルという三人組はチカが呼んだものらしい。
本当に大丈夫だろうか、ゲイムキャラ連れて行って……心配になってきたぞ。
「ねえ……見てくれてた?」
もじもじした様子でユニが話しかけてくる。
何を、と聞こうとしたが、すぐにステージのことだと気づいた。
「ん?ああ、見てたよ。いきなり踊りだしてたからビックリしたけど」
「その、えっと……どうだったかしら?」
「良かったんじゃないか。みんなそれぞれシェアを獲得できたみたいだし」
「そういうことじゃ……はあ、もういいわ。私は一度ラステイションに戻るわ」
ユニはため息をついた。
ん、俺なにか悪いことしたか?
「私たちも帰ろっか。きっとミナちゃんに褒めてもらえるよ!」
「…えへへ」
「そっか。みんな、帰っちゃうんだね」
「しょぼくれた顔してんじゃないわよ。こっちにだって都合があるんだから。それじゃ…ま、またね」
「おにいちゃん、ネプギアちゃん、ばいばい」
「こんなやつらにあいさつしなくていーの!ほら、早く行こ!」
それぞれはあいさつを残して、ユニたちは協会から出て行った。
ネプギアちゃん、ね。
好かれちゃったみたいだな、いいこといいこと。
「行っちゃった…」
「すぐ会えるよ、きっと」
寂しそうにするネプギアの頭をポンポンと叩く。
会えたと思ったらすぐ別れるのは寂しいよな。
「でも、よかったの?チカ。彼女たちがシェアを得たぶん、相対的にリーンボックスのシェアは減少したけど…」
「犯罪組織に奪われているよりはマシよ。女神同士のシェア争いなら、お姉様が帰ってきたらいくらでも挽回できるわ」
自信満々に言うが、先のステージを見る限り不安しか感じないんだが。
「さて、あなたたち、今後の予定は?」
「えっと、もう全部の国のゲイムキャラには会ったんだよね?」
「そうね。一度プラネテューヌに帰って、今後の方針を決めるってところかしら」
「随分と世話になったし、世話したな」
「実際に世話になったからなんとも言えないわね…」
チカの救出に、ゲイムキャラ救出、ステージのフォロー。
思えば世話しっぱなしだったな。
「それじゃ、そろそろ…」
「あ、あの!」
立ち去ろうとした俺達を、5pb.が呼び止める。
「お、5pb.」
「よかった、まだ行ってなかった…」
急いで走ってきたようで、彼女は息を切らしていた。
「あ、あの!コンサート、最高でした!ボク、感動しました!」
5pb.はネプギアの手を握り、ブンブンと振る。
「そ、そんな…私なんかより、5pb.さんの歌のほうが全然すごいですよ」
「ううん。会場が混乱したとき、ボクは何にもできなかった…本当に、情けないよ…でも、情けないままじゃイヤだから…お願い、します!ボクも一緒に連れて行って!」
5pb.が勢いよく頭を下げる。
「5pb.、あなた何を…」
「ボクの歌を…リーンボックスだけじゃなくて、世界中の人に歌を聴いてもらいたいんだ。ボクのうたがどこまで通用するのかわからないけど…それでも、少しでもみんなの支えになるなら…」
「5pb.なら大歓迎だよ!」
5pb.の話を聞き、俺たちは同行を認めた。
犯罪組織と戦う上で彼女の能力は役に立つし、なにより彼女の意思は相当かたい。
「そうだな、よろし…」
「ひゃあ!」
俺が握手を求めると、5pb.はネプギアの後ろに隠れる。
「俺はダメなの?」
「ご、ごごごごめんなさい!」
「…やれやれ。あなたがいなくなったら、またこの国の治安維持が大変になるわね」
「ごめんね、ケイブさん、でもボク…」
「いいわよ。あなたの歌はこの国だけに収まるものではなかったということ…頑張ってきなさい」
「うん!」
これで、俺たちの仲間に5pb.が加わった。
俺のことは……これからゆっくりと慣れてくれたらいいか。
「頑張ってきなさいって……ケイブは?」
「私は特命課としての仕事があるから、リーンボックスからは離れられないわ」
ケイブの力にはかなり期待していたが、今のリーンボックスはチカだけじゃ不安だ。しっかりサポートしてもらおう。
「そうか。ならここでお別れだな」
「ええ、応援しているわ」
船に乗らなければいけないことを憂鬱に思いながら、協会を後にした。
5pb.はずっとネプギアの後ろに隠れていた。