超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
「あ、いーすんさんから…はい、もしもし」
船に乗る直前、ネプギアのNギアにイストワールから連絡が来た。
「ネプギアさん?今どちらにいらっしゃいますか?」
「リーンボックスです。ゲイムキャラの力も借りられたんで、一度プラネテューヌに戻ろうかって…」
「申し訳ありませんが、その前に向かってもらいたい場所があります。プラネテューヌの西の海に浮かぶ島が、犯罪組織の襲撃を受けているんです」
イストワールのその言葉に、俺たちは疑問を持った。
「西の海の島?あんな所に、何かあったかしら?」
「小さな町があったのは覚えてるが、他には何もなかったんじゃないか?」
以前旅をしていたときにも行ったことはなかったが、本で見たことはある。
プラネテューヌの西に小さな島がある。そこには町があるが、他には森と砂漠、あとはノーコネディメンションというダンジョンがあるくらいだ。
「憶測ですが、おそらくプラネテューヌ国内に活動拠点を築こうとしているのではないかと。もしそうなれば、再び国内のシェアを奪われることにもなりかねません。いまは現地の方が、一人で応戦してくださっています。急ぎ救援に向かってくださいますか?」
「はい、分かりました!」
小さな島とはいえ、犯罪組織の拠点を作られるのは非常にまずい。
そこから活動が拡大し、シェアを奪われる可能性がある。
早めに対処するために俺たちは早速船に乗り込んだ。
俺たちはリーンボックスからプラネテューヌに戻り、さらに船に乗って西の海の島に到着した。
「大丈夫です?」
「なんとか…」
短時間で船に乗ったせいか、この前よりも酔いがひどい。
コンパに背中をさすってもらいながら、森の中を俺は歩いた。
「…えっと、いーすんさんの話だと、このあたりに町があるはずなんですけど」
「あ、あそこじゃない?ほら、家が見えるよ!」
「本当だ!よかった、早く行かないと…」
REDが指さした先には、ログハウスが一軒立っていた。
もう少し奥に行けば、さらに家が見つかるだろう。
とりあえず人を見つけて情報収集を…。
「懲りずにまた来たのかい?何度来ても、ここを通すわけにはいかないよ!」
「ひゃあっ!?」
家のほうへ向かおうとしたネプギアの目の前を、ナイフが通り過ぎた。
ナイフは近くの木に刺さった。
続いて何者かが現れ、剣でネプギアを斬ろうとする。
素早い攻撃だったが、俺は間一髪で刀で受けた。
「悪いけど、毎回手加減できるほどの余裕はないんだ。首と胴が離れることになっても、怨まないでよ」
「あ、あわわわ…ごご、ごめんなさいっ!」
攻撃の鋭さに、5pb.が思わず謝る。
その赤髪の女性は剣をこっちに向けた。
「まま、待ってください!私たちはいーすんさんに頼まれて…」
「いーすんさん…?あれ、君たちはたしかラステイションで会った…」
「お前……ファルコムか?」
ラステイションで、ケイに頼まれた素材の居場所を教えてくれた冒険家だ。
まさかこんなところで会うとは…。
「いやあ、ごめんごめん。救援の人たちだったんだね。でも驚いたな。まさか君たちが来てくれるなんて。旅の方は順調?あれから、なにか困ったこととかは…」
「あ、あの、ファルコムさん!早く剣をしまってください!剣を!」
「おっと、これは失礼。毎日戦ってるせいか、少し殺気立っちゃってさ」
ネプギアが剣を指差すと、ファルコムは剣を収めてくれた。
ピリピリした空気が消え、ファルコムを含めた俺たちはやっと落ち着いた。
それを見て、俺も刀を収める。
「悪かったね、ユウさん……だったかな?」
「いや、仕方ないさ」
冗談じゃなく、ネプギアの身体が二つになるところだった。
あぶないあぶない。
「ファルコムさんが、ここを守ってたですね。でも、どうしてファルコムさんが?」
「この島はあたしの生まれ故郷なんだ。たまたま里帰りしてた時に、犯罪組織に襲われちゃってね」
「…すごい、ですね。一人で島を守ってたなんて。もしかして、ものすごくお強い方なんですか?」
「うーん、どうかな。あたしは精々、ちょっかい出してくる敵を防いでただけだし」
それでも相当すごいな。
一人で犯罪組織を数日相手にするなんて…。
「ずいぶんと頑張ってくれたみたいだな、ありがとう」
「といってもかなりギリギリだったよ。君たちが来てくれなかったら、この島が落とされるのも時間の問題だったかもしれない」
「つまり、私たちが来たから、まだ間に合うってこと?」
「うん。この町から離れた所に、犯罪組織が拠点にしている場所があるんだ。そこを叩けば、この島への侵攻を諦めると思う」
「わかりやすい作戦だな」
「うん、難しくなくていいね!」
REDが俺に同意する。
考えるの苦手すぎるだろ、こんなに喜んで…。
「あたしは町を守らないといけないから、ここを離れられないけど…頼めるかい?」
「任せてください。ファルコムさんには前に助けてもらいましたし、今度は私達の番です!」
ネプギアは意気揚々と返事をした。
あの時の恩を返す時だ。
俺たちは町を守るファルコムを残し、犯罪組織の拠点へと向かった。
島に唯一存在するダンジョン、ノーコネディメンションはラステイションのゾーンオブエンドレスのように電子的な場所だった。
犯罪組織の構成員であろうモンスターを倒しながら、すすむ。
「…あー、イライラする!あんな小せえ町潰すのに、何日かかってんだ!クソッ!せっかく現場指揮を任されたってのに、こんな使えねえ部下ばっかりかよ…」
奥にたどり着くと、イラついた声が聞こえた。
またかよ。
また下っ端がいた。
あんだけ任務失敗してるのによく現場指揮を任されるな。犯罪組織のお気に入りなのか?
「…またアンタなの?いい加減飽きてきたんだけど」
「ぬぐっ、この聞き覚えのある声は…やっぱり!またテメエ等かよ!いい加減しつこすぎるんじゃねえか!?」
「こっちのセリフなんですがそれは…」
「うげっ。テ、テメエ…」
下っ端は俺を見るなりあとずさりする。
前の戦いがトラウマになってるみたいだ。
奥の手も使ったのにボコボコにされたんだもんな。俺は覚えてないけど。
「下っ端さん、出世されたんですか?おめでとうございますー」
「えー。下っ端が出世したら、下っ端じゃなくなっちゃうよー?」
「俺たちが下っ端と呼べばあいつは下っ端なんだよ」
「なんか哲学的ね」
「部下からも下っ端って呼ばれちゃうんですよね。下っ端さん、とか下っ端係長、とか」
俺も一緒になって下っ端を馬鹿にする。
いや多分、俺以外は馬鹿にする気はないだろうけど。
ナチュラルにひどいよね君たち。
「ぐぐぐ…相変わらず、口の減らねえ…いつまでも余裕ぶってんじゃねえぞ!出ろ、モンスター!」
下っ端が懐からディスクを取り出し、地面に叩きつけた。
ディスクは割れ、黒い光が飛び出したと思ったら、それはモンスターの形になった。
翼の生えた、二足歩行のドラゴン、リュウオウだ。
それなりに強い敵だが、今の俺達なら楽勝だ。
「そっちこそ、毎度毎度ワンパターンなのよ。まったく、面倒くさいわね」
俺たちは武器を構え、リュウオウと対峙した。
リュウオウは素早い攻撃で先手をかけてきた。
俺たちはリュウオウの爪をよける。
「5pb.!」
「うん!」
俺が5pb.に呼びかけると、5pb.はギターを弾き鳴らし、歌を歌った。
身体が活気付き、リュウオウの動きが鈍る。
5pb.は思ったよりも強力な仲間だったようだ。これで戦闘が楽になる。
まず、俺とアイエフがリュウオウへと走り出す。
リュウオウは口から火の玉を吐き出したが、刀を振り、かき消した。
「クロスエッジ!」
アイエフが舞うように両手のカタールで斬撃を加える。
「せいっ」
続けて、俺も高速の突きを浴びせる。
痛みにのけぞったリュウオウだが、しっかりと地に足をつけると、太い腕で薙ぎ払ってきた。
アイエフをかばうように攻撃を受け止め、その右腕を斬り落とした。
「グオオオアアア!」
「RED!」
「ビリビリヨーヨー!」
もう片方の腕を使おうとしたリュウオウに、REDが電撃をまとったヨーヨーを投げつける。
リュウオウの体を電撃が襲い、麻痺させる。
「よし!」
「トドメです!」
ネプギアは隙ができたリュウオウの首を一閃し、俺は胴体をなぎ払った。
動かなくなったリュウオウは粒子となって消滅した。
「やったー、勝った勝ったー!って、あれ?下っ端は?」
「え、えと。戦ってる間に、逃げちゃったみたい…」
見渡してみると、下っ端の姿はどこにもなかった。
「逃げ足にも磨きがかかってきたわね」
「そんなところでレベルアップしてどうするんだよ…」
「これでこの島も一安心ですね。早くファルコムさんに知らせに行きましょう」
一息つき、俺はもう一度辺りを見渡した。
やはり、俺たち以外には誰もいなかった。
△
「それじゃ、この島はもう大丈夫なんだね」
犯罪組織の拠点を壊したあと、私たちは町にもどり、ファルコムさんに報告をした。
「余程のことがなければ、もう一度来ようとはしないと思うわよ」
「本当にありがとう。君たちが来てくれて助かったよ」
満面の笑みでファルコムさんは返す。
「いえ、当然のことをしただけですから」
もともと頼まれたお仕事だったし、犯罪組織の活動を見逃すわけにはいかなかった。
女神としてやるべきことはしっかりやらないと!
「ファルコムさんは、これからどうされるんですか?」
「そうだね。もう一度旅に…と言いたいところだけど、それはもう少し先かな」
ファルコムさんは町を指した。何度か襲撃を受けたらしく、町はところどころが壊されている。
「この島には、犯罪組織の爪痕が多く残ってるし、まずは復興の手伝いをしないと」
「がんばってくださいね。私たちも、一日も早く犯罪組織をやっつけますから」
協力を得られなかったのは残念だけど、仕方ない。
「うん。今回の恩は絶対忘れないから。あたしにできることがあったら、いつでも手を貸すからね」
「恩返しの恩返しって……ループしちゃうじゃん」
「まあ、それだけ助かったってことだよ」
ははは、と笑ってユウさんは踵を返した。
「ネプギアさん」
去ろうとした私に、ファルコムさんはストップをかける。
「はい?」
ファルコムさんは立ち止まった私の耳へ顔を寄せる。
「彼……ユウさんはどうかしたのかい?かなり余裕がないように見えるけど…」
ファルコムさんの顔が険しいものになる。
それは、私も感じていたことだ。
最近、特にリーンボックスの一件以来ユウさんからはいつもの余裕が見えないように感じる。
「わかりません……私も心配はしているんですけど」
「そうかい……もし彼が悩んでいるんだったら、君たちが解決してあげてくれ。彼のそばにいるのは君たちだけだからね」
「はい……」
私はユウさんを見た。
もしかして彼は、私たちに何かを隠しているのかもしれない。
いいようのない不安が、私の中に生まれた。