超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
ミッドカンパニーはもう使われなくなった工場だ。
長年放置されていたそこに、ゴースト型やマシン型のモンスターが住みついてしまったのだ。
そのモンスターたちを蹴散らしつつ、俺たちは工場内を探し回った。
「あ、あそこに誰か倒れてるよ!」
REDが、倒れている少女を発見した。
黒い服は、確かにユニだ。
傍らには、愛用のライフルが転がっている。
「まさか…ユニちゃん!?ユニちゃんなの!?」
俺たちはユニに近づき、身体を起こす。
ところどころに刃物でつけられたような傷がある。
揺すってもユニは目を覚まさないが、息はしている。
「ちょっと、大丈夫なの?しっかりしなさいよ!」
「…負けたの?女神なのに…?」
「傷はそこまでひどくないです。きっと気絶してるだけかと…すぐに手当するです!」
コンパが手当の準備をする。
以前に見たときより、手際が良くなっている。
戦い方を通じて、みんな様々なレベルアップをしているな。
「う…あれ…」
手当している途中、ユニが目を覚ました。
「ユニちゃん?起きたの!?大丈夫なの!?」
「ネプギア…なんでアンタが…痛っ!」
ユニが立ち上がろうとするが、痛みに邪魔されたようだ。
「急に動いたらダメですよ。ゆっくり起き上がってください」
「だ、大丈夫よ。たいしたことないんだから、こんな傷…いだだっ!」
口では強がるが、相当無理しているのは見て分かる。
「強がるんじゃないの。それにしても、誰とやりあったの?アンタが簡単にやられるなんて」
「簡単にやられてなんてないわよ!紙一重というか、一瞬の隙というか…本当よ!」
強がるユニは、前よりもその自信がなくなっているように感じた。
「はいはい。それで、そいつの名前は?」
「…ブレイブ・ザ・ハードとか名乗ってたわ。マジェコンヌのくせに、やけに正々堂々としたやつだった」
名前の後ろの「ハード」という部分に、俺たちは反応する。
「ぶれいぶざはーど?どこかで聞いたような…」
「あの変態のことでしょ。わたし達がルウィーでやっつけた」
「あれはトリック・ザ・ハードだよ…でも、確かに似た名前だね」
ユニがやられたことを考えると、「ハード」と名のついたやつはかなりの強さなのだろう。
もしかしたら、犯罪組織の中でも一番上の存在なのかもしれない。
「…アンタ達は、そいつに勝ったの?」
「勝った、というか勝手に逃げていったな」
トリック・ザ・ハードは俺を見て何かを察したように逃げていった。
あれはいったい何だったのか。
なんとなく察しはついてしまっているが、それを認めたくない俺がいる。
「そう、なんだ…」
よりいっそう、ユニの顔に影がささる。
「あんまり長話しちゃダメです。まだ安静が必要ですから」
「街に戻って休もう。こんなところじゃ、治るもんも治らない」
力の抜けたユニを俺たちは運ぶ。
「……」
その間も、ユニは俯いたままでなにも喋らなかった。
ユニの手当をコンパとREDに任せ、俺たちは街へくりだしていた。
ユニを倒したブレイブ・ザ・ハードなる人物に関しての情報がないか、聞き込みをしているのだ。
言い争いをしていた、というのは多数の人が見ていたようだが、どのように戦ったのかはやはり誰も見ていないようである。
「ユニちゃん、落ち込んでたなあ…」
「プライド高そうだもんね、あの子。負けたのが相当堪えてるんじゃない」
「特に、相手は犯罪組織だったわけだしな」
倒すと誓った相手に、ボロボロにやられたんだ。
ユニからしたら、自尊心もズタボロになってしまっていただろう。
「そっか…そうですよね。私だって、ずっと落ち込んでたし…」
「なっさけないの。一度負けたくらいで落ち込んじゃうなんて」
「…わたしも、落ち込むかも」
「ロムちゃんはいーの。大体、私と一緒にいるのに負けるわけないんだから」
女神候補生は、それぞれに置き換えて考えているようだ。
犯罪組織に負けたら……か。
そうなったら、俺はどう思うだろうか。
「みんなこれくらいポジティブなら、苦労しないんだけどね」
「そうだな。たいしてユニは思いつめそうな性格してるし…」
「アンタ、あの子を気にかけてるのね」
「そりゃそうだろ。危なっかしいやつだからな」
「ふーん、本当にそれだけ?」
「それだけって…?」
「大変!大変だよー!」
「大変!大変ですー!」
俺たちが話しているときに、慌てたREDとコンパがやってきた。
「どうしたんだ?」
「ユニちゃんがいなくなったです!まだちゃんと治ってないのに…」
少し目を離した間に、ユニがどこかに行ってしまったらしいのだ。
「ユニちゃんが?どうして…」
「はあ、手間のかかる子ね…手分けして探しましょう。まだ、そんな遠くに入ってないはずだわ」
俺たちは幾つかのグループに分かれ、ユニを探すことにした。
街中を探すのは他のグループに任せ、俺とネプギアは初めてファルコムと出会ったダンジョン、ゾーンオブエンドレスを探していた。
「…なにやってるんだろ、アタシ。これまで、何やってたんだろ。あんな奴にも勝てないで、本当に…」
「いた、ユニちゃん!」
ぶつぶつと呟くユニを発見したネプギアは、すぐさま彼女のもとへと駆け寄った。
「ネプギア…」
「みんな心配してるよ。早く帰ろう」
「…心配しなくてもいいのに。アタシのことなんて」
明らかに元気がない。
いつものようなツンやトゲもない。
「心配するに決まってるだろう。ほら、早く帰ろう」
手を伸ばすも、ユニは手を取らなかった。
「…アタシなんて、いてもいなくても変わらないじゃない。アタシ一人くらい、いなくたって」
「そんなことないよ!わたし、ユニちゃんにも手を貸して欲しくてそれで…」
「…なんでよ。必要ないでしょ。アタシなんか」
予想以上に参っているみたいだ。
ここまで弱っているなんて…。
「ユニちゃん…本当に、どうしちゃったの?」
「…負けちゃったし、アタシ。いつかお姉ちゃんを負かした敵を、アタシが倒そうと思ってたのに。なのに、負けちゃったし…これまでやってきたことなんて、全部無意味だった」
いつも強がっているユニが弱音を吐く姿を、俺は直視できなかった。
「それは…ユニちゃんが一人だったからだよ。みんなで協力すれば、きっと…」
「そう、アタシは一人ぼっち。アンタにはたくさん仲間がいるのにね」
ユニは自嘲するように笑った。
身体も心も傷つけられたユニは痛々しかった。
「お姉ちゃんがいなくなってから、あたしはずっと一人で…」
「ユニちゃん…」
「まあ、もともと無理があったのよね。お姉ちゃんにできなかったことが、アタシに出来るわけないんだから」
ユニの目から、涙が流れたのが見えた。
本当は悔しくて仕方ないのだろう。
「…最初から、出来もしないことのためにがんばってたんだ…はは、バカみたい」
「そんなこと…そんなことないよ!」
ネプギアがユニの手を取る。
「ネプギア…?」
「私だって、一人じゃお姉ちゃんに全然かなわないよ。それでも、お姉ちゃんができなかったことをやろうとしてる。ううん、絶対にやらなきゃいけないの!絶対に、お姉ちゃんを助けないといけないから!」
「お姉ちゃんを…助ける…」
ネプギアは自分の思いを一生懸命に、素直にユニに伝える。
俺は邪魔をしまいと、口を出さない。
やらなくちゃいけない。
その小さな身体に、彼女は大きな思いと希望を背負っている。
「でも、一人じゃ無理だから。だからいろんな人に助けてもらって…。ユニちゃんやロムちゃん、ラムちゃん。それに、アイエフさんやコンパさんだって…みんなで協力すれば、絶対できるんだよ!できるって信じなきゃ!」
「…アタシも、一緒に?」
「うん、一緒に。同じ女神候補生だもん。それに、ユニちゃんは、私の友達でしょ」
「ネプギア…」
ユニの目に光が灯る。
ネプギア、やっぱりお前は大した奴だよ。
俺も何か気の利いた一言でも…。
「それは所詮、叶わぬ願いよ」
突然目の前に、白く巨大な機械の体と同じく巨大な剣を持った男が現れた。
「え?誰?」
「アンタは…ブレイブ・ザ・ハード!?」
「この人が…ユニちゃんを倒した…」
トリック・ザ・ハードと似たような力を感じる。
この男の強さをそのまま表しているかのように威圧感が放たれている。
「このような場所で、女神候補生二人と見えることになるとはな…無駄な殺生は好まぬ。我々に逆らおうなどという考えは、この場で捨てることだ。さすればこの場は見逃してやろう」
「…できません!私は絶対、あなたたちを倒して…お姉ちゃんを助けるんです!」
「…もうひとりの小娘はどうだ。お前との決着は既に着いている。力量の差は十分に分かってるだろう。一人増えたくらいで勝てる相手かどうかは」
「そ、それは…」
「一人?おい、俺を無視するんじゃないぞ」
俺はブレイブを指さした。
「む?貴様も相手なのか。てっきりこちら側かと思っていたが」
「どこからどうみても違うだろうが」
「いや、どこからどう見てもそうだとしか思えんが…」
その言葉に、またひとつ確証が持てた。
俺はブレイブを見据えたまま、刀を構える。
やっと敵と認識してくれたのか、ブレイブも剣を構える。
「ユニちゃん、しっかりして!私も一緒に戦う。私たちが一緒なら、きっと勝てる!」
「私たちが一緒なら…ふん、まったく。さっきから一人でやかましいんだから」
ユニはネプギアの言葉に、覚悟を決めたようだ。
銃をもち、構えた。
「そうね。アタシは…アタシ達は負けない。もう二度と、アンタなんかには負けないわ!」
「ユニちゃん!」
ネプギアとユニの二人は女神化する。
三対一。こちらが有利なはずだが、ブレイブはそれを感じさせない。
「…そういか。その意気やよし。だが…世の中、思いだけではどうにもならんということを、その身に刻んでくれよう!」