超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】   作:ジマリス

42 / 59
42 滝空ユウ⑥ ―慟哭―

ユニ、ロム、ラム、ノワール、ブラン、ベール。

 

 

六人の仲間を殺して、俺はプラネテューヌへと戻ってきた。

 

 

 

「…そうですか。他国の女神を全て…本当に、おつかれさまでした」

 

 

心なしか暗くなった教会で、イストワールは俺の報告を聞いた。

 

 

「……ああ。これで、犯罪神を倒す」

 

俺は剣を机の上に置いた。

 

 

「倒さなきゃいけない…」

 

 

六人。

 

六人もの命をこの手で奪ったんだな、俺は。

 

 

あまりにも重く、尊い命をこの手で。

 

 

「大丈夫ですか、ユウさん?」

 

 

「大丈夫じゃない、なんて言ってる場合じゃない」

 

 

少しでも心と身体を休めて、犯罪神との戦いに備える必要がある。

 

ネプギアたちにもそれを伝えないと。

 

「ネプギアたちは?」

 

 

「私たちならもう大丈夫です」

 

 

奥からネプギアとネプテューヌが現れた。

 

ずっと泣いていたのだろうか、二人とも目が腫れぼったくなっている。

とても大丈夫とは思えなかった。

 

「ユウさん、辛いことを任せてしまってごめんなさい…」

 

「ネプギア…ネプテューヌ…」

 

 

真面目なネプギアのことだ。

 

俺が仲間を殺したことも、自分のせいだと思っているだろう。

本来ならば女神がやるべきことだとでも思っているに違いない。

 

「明日、行けるか?二人とも。何としても犯罪神を…」

 

「その前に、もういっこやってもらわないといけないことがあるんだよね」

 

俺の言葉を遮り、ネプテューヌが笑顔で言う。

 

同じように、ネプギアも笑顔になった。

 

「ちょっと、おでかけしませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人に連れ出されたのは、プラネテューヌのすぐ近くの森だった。

 

 

ここに連れてきたのは気分を和らげるためだろうか。

そんな二人には悪いが、剣も刀も置いて戦いから離れたこの状況でも、心は一向に晴れない。

 

 

先導するネプテューヌは身の丈ほどもある高級そうな革製のケースを背負っている。

ランチボックスには見えない。ということはただたんにピクニックに来たわけでもないだろう。

タイミングと彼女たちの態度を考えれば、何かあるのは間違いないが。

 

「あー、懐かしいなー。昔よくここで、ネプギアと遊んだんだー」

 

「私はよく覚えてないかも…」

 

「しょうがないよ。ネプギア、まだ小っちゃかったし」

 

「………」

 

 

先を歩く二人に対して、俺は無言だった。

 

女神たちの最期の言葉が、教祖たちの俺を恨む言葉が頭を離れない。

一刻も早く頭を整理したかった。

 

 

「…用がないんだったら、俺は戻るぞ」

 

「ま、待ってください!ものすごく大事な用があるんです!」

 

 

踵を返そうとした俺を、二人が止める。

 

ネプテューヌがケースを地面に置き、開く。

 

 

「なんでそれがここにある」

 

 

 

ケースの中にあったのは、魔剣ゲハバーンだ。

 

知っている状態と違うのは、それが鞘に収まっていることだ。

いつの間にか、持ってきていたのか。

 

 

「これいーでしょ。オーダーメイドで作ってもらったんだ」

 

 

ネプテューヌが魔剣を手にし、自慢げに鞘を見せる。

 

 

「俺が言ってるのは…」

 

「わかってるよ。言っても、あんまり驚かないでね?」

 

彼女たちは前置きをして、深呼吸する。

 

 

 

 

 

「その…私たちの命を奪ってほしいんです」

 

 

 

「……は?」

 

 

「あ、よかった。あんまり驚かなかった。そんじゃ、さっそくぱぱっと…」

 

 

「いや待てよ。違うだろ」

 

 

魔剣を渡そうとしてくるネプテューヌを手で制する。

 

 

「なんでお前たちの命を…」

 

「私たちも女神です。その剣の力を最大限にするためには、私たちの命も必要になります」

 

「いざ戦うときに、力が足りませんでしたー、じゃギャグにもならないからね。やれることはやっておかなきゃ」

 

 

いやに冷静な彼女たちを見て、気づく。

 

「既に…決めてたのか?」

 

 

「はい。私とお姉ちゃんで話し合ったんです」

 

「私たちもユウに託そうって」

 

 

俺が他の国を渡っている間に、この二人は決めていたのだ。

 

全てを俺に託そうと。

自分たちも他の女神と同じく、世界のために命を捧げようと。

 

 

「国はどうなる。お前たちもいなくなれば、女神も国も無くなるんだぞ」

 

 

いまプラネテューヌがなくなれば、この世界に「国」というのはなくなってしまう。

 

 

「女神に頼らない国を、創るしかありません」

 

 

「この国の…ううん。大陸のシェアをほとんど取り戻したのはユウだもん。ユウが先頭に立てば、きっと大丈夫だよ」

 

 

女神に頼らない国。

前代未聞のことだが、決して不可能なことではないのだろう。

 

そしてきっと、人はそれに慣れる。

女神のいない国を望む人がいるのも事実だから。

 

 

だが俺には、自分がそれをできるなんて思えない。

 

それ以上に、この二人がいないなんて考えられなかった。

 

 

「できない。無理だ…」

 

「やらなきゃ、ダメなんです」

 

 

まっすぐに俺を見るネプギアから目をそらしてしまう。

 

「お前たちの命を奪うなんて…」

 

 

「しっかりしてください、ユウさん!」

 

 

悲痛に叫ぶネプギアに身体が跳ね上がる。

 

 

「酷なことをお願いしていることはわかってます。私たち女神がすることなのに、ユウさんにすべて任せるように頼んでいるのも」

 

 

ネプギアの声が震える。

 

 

「それでも、これしかないんです。ゲイムギョウ界を救うためには。犯罪神を倒すために私たちができることは、これしかないんです」

 

 

震えているのは、無力だと感じているせいだろう。

 

ネプギアのことだ。反論もきっと聞いてくれない。

 

 

彼女が頑固なのは、旅をしている間に十分にわかったつもりだ。

 

 

「やるしか…ないのか…」

 

 

彼女たちが話し合って決めたことなのだ。

 

何度も話し合ったのか、すぐに決めたのかはわからないが、彼女たちが覚悟を決めた結果なのだ。

 

 

「大丈夫だよ。剣の中で、わたしも一緒に戦うから。だから、ね?」

 

 

ネプテューヌが押し付けてくる魔剣を受け取る。

 

「……わかった」

 

 

背中に装備し、鞘から魔剣を抜く。

 

本当は使いたくないという気持ちが、魔剣をいつもより重くした。

 

 

「いくぞ」

 

「うん。思いっきりドーンときて。ちょっと痛くても我慢するから!」

 

 

ネプテューヌが一歩前に出る。

 

ネプギアよりも先に出たのは、姉としてだろうか、女神としてだろうか。

 

 

その答えも出ないまま、聞かないまま俺は剣を構える。

 

 

深呼吸を一度。二度。

 

 

「はあっ!」

 

 

 

意を決し、ネプテューヌの腹を貫く。

 

 

 

「あいだっ!お、思ったより、痛いかも…」

 

 

身体を貫かれて、血を流しながらもなお彼女は笑顔だった。

 

きっと、俺とネプギアのためだ。

 

 

ネプテューヌらしい最期。

 

 

誰からも愛され、誰をも愛し、みんなを明るくしてくれたネプテューヌらしい最期。

 

 

 

「それじゃ、ね。ネプギア、ユウ。一緒に頑張ろうね」

 

 

 

消えるそのときまで、ネプテューヌは笑顔だった。

 

恨み言も一切言わず。

 

 

やはり彼女も女神なのだ、と思った。

 

 

変身していなくても、子どものように見えても、その思いは誰よりも豊かで、尊い。

 

 

 

 

 

 

溺愛していた姉を失っても、ネプギアは泣かなかった。

 

ネプギアも、女神としての責務を全うしようとしているのだろう。

 

 

「ユウさん、私も…お願いします」

 

 

「……わかった」

 

 

そんな彼女の覚悟を見て、もう嫌だとは、もう無理だとは言えなかった。

 

ネプギアたちの力も、思いも、覚悟も、全て俺が背負わなければいけないのだから。

 

 

「ふうっ!」

 

 

 

なにも考えないようにして、剣で突く。

 

 

 

「あうっ…」

 

 

だが、彼女の声と刺した感触が、抑えていたはずの罪悪感と後悔を呼び寄せる。

 

剣から伝わる嫌な感触に、思わず手を離してしまう。

 

 

「ああ…ネプギア……ネプギア…」

 

 

崩れ去ろうとするネプギアの身体を支える。

 

 

他のみんなの時にも思った。

 

何故こんな少女たちが死ななければならないのか。

何故こんなことになってしまったのか。

 

 

何故救うはずだった女神を殺してしまったのか。

 

どこで狂ったのか

どこで間違ったのか

 

 

もう俺にはわからない。

 

 

救う道を諦めて女神を殺した俺にわかるはずもない。

 

 

「ユウさん、どうか」

 

 

もういい。

喋らないでくれ。

もうこれ以上苦しまないでくれ。

 

 

「どうか世界を救ってください」

 

 

ネプギアは息も絶え絶えに言う。

俺を安心させるためか、罪悪感を感じさせないためか、ネプギアは微笑む。

 

 

しかしその微笑みはすぐに消え、ネプギアの身体から力が無くなった。

 

 

ネプギアの体を貫いている剣を恨みながら

 

それでもこの剣を使うしかないことを憎みながら

 

こんなことをしてしまった俺を嫌いながら

 

 

俺は叫んだ。

 

 

 

心の底から叫んでも、力の限り叫んでも

 

 

 

 

その声は誰にも届かなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。