超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
(ちょっと?)展開が強引ですが…
ネプテューヌとネプギアを殺し、十数時間かけて心をやっと落ち着かせた俺は、一度休むために教会へと戻った。
「すべて、終わったのですね」
「イストワール…」
もう深夜にさしかかろうとする時間。
教会に戻ってきた俺を迎えたのは、イストワール一人だけだった。
他のみんなはまだ治療中のようだ。
「ネプギアさんたちから事前に話は聞いていました。だから何も言わなくていいですよ」
「………」
自らの命を世界のために犠牲とする。
その作戦はすでに、イストワールは知っていた。
それを聞いて彼女も悩みながらOKを出したのだ。
「教祖として、あなたの行動が間違っているとも正しいとも言えません」
イストワールの言葉には、俺を非難するような感情は込められていなかった。
「ですが、ネプギアさんたちが決めたことである以上、私はあなたを支援します」
「ありがとう、イストワール」
娘のように愛するネプテューヌとネプギアを殺されても、イストワールは俺を許してくれるのだろうか。
女神たちに何も言われてなかったら、イストワールは俺を憎んでいただろうか。
「泣かないのですね」
「泣きたいのは、俺じゃない。そうだろう、イストワール?」
「………」
今までの教祖と同じく、イストワールもネプテューヌとネプギアの死を悲しんでいる。
女神たちを殺してしまった俺を慰めるつもりだったのだろうが、俺には悲しむ資格なんかない。
「うっ…ううううう…」
イストワールは今まで隠してきた涙をついに見せた。
「ネプテューヌさんが……ネプギアさんが…ああ、あああああああ!!」
俺はただそれを見ることしかできない。
その感情をただ受け止めることしかできなかった。
寝れなかった。
俺が殺した女神たちの感触が就寝を妨げた。
ベッドの上で目を閉じると、女神八人の最期が鮮明に映し出される。
気分が悪くなり、また寝ようとする。それを繰り返し、やっとのことで落ち着いたときには、すでに明け方になっていた。
部屋を出ると、そこには誰もいなかった。
いまだに仲間たちは寝込んだままだ。俺はたった一人でギョウカイ墓場に行くしかなかった。
そもそも犯罪神との戦いに彼女たちを連れていくつもりはなかった。
今までの相手とは格が違いすぎて、彼女たちには危険だ。
ひどく静かだ。
みんながいたころはいい意味でも悪い意味でもうるさかったここが、別の場所のように静かだった。
全てが終われば、元通りになるだろうか。
みんなはもとの元気を取り戻すことができるのだろうか。
装備を整えて、俺はギョウカイ墓場への転送装置を起動した。
ギョウカイ墓場の奥には、四天王よりも大きな身体の怪物がいた。
コントローラーのボタンのようなものがついている肩からは四本の腕が生えている。
足も四本。
それよりも気になるのが、前足の間に生えているもう一つの口だ。これまた足と同じくらいでかく、むき出しの歯はとげとげしく光っている。
こんな造形をして、禍々しい気を発しているのは犯罪神マジェコンヌしかいない。
こんなものを崇拝するなんて、犯罪組織の考えることはまったくわからない。
犯罪神はゆっくりと目を開ける。
その大きな身体に気圧されそうになるが、ぐっとこらえる。
「お前はだれだ…」
犯罪神がゆっくりと喋りだした。
だが、あまり興味はないみたいだ。
そりゃそうだろうな。ただの人間が一人来ただけなのだから。
「お前を倒しに来た」
「復活が不完全とはいえ、たった一人の人間が我にかなうと思っているのか」
ふっ、と笑って返した犯罪神に一歩近づく。
「我にあだ名すものは、すべて破壊する」
「違う」
俺は魔剣ゲハバーンを背中から抜き、犯罪神へと向けた。
「破壊するのは俺だ」
俺の魔剣をじっと見た。
「そうか。貴様、女神を犠牲にしたか」
この魔剣の存在は犯罪神も知っていたようだ。
それを人間の俺が持っているということに、半分驚き半分嬉しがっている。
「何人の女神の命を奪った。全員か?」
「そうだ、八人。女神全員の命を奪った」
犯罪神の言葉になるべく揺さぶられないように感情を抑えた。
こいつの笑い声は癇に障る。
「面白い。実に愉快だ。ならばその力を、我にぶつけてみるがいい」
犯罪神は俺の攻撃を待つように腕を広げた。
「そのために女神を殺したんだ」
憎しみを込め、俺は犯罪神へ向かう。
激しい戦いを予感し、あらゆる技を頭の中に思い描く。
何が有効か。どうすれば勝てるか。
こいつを殺す方法は何か。
そんな俺の思考は無駄になった。
素早さを試すために放った軽い突きを、犯罪神は抵抗せずに受け止めた。
魔剣は犯罪神の身体に食い込んでいく。
俺は違和感を感じて魔剣を引いた。
「なるほど。我を倒すには十分な力だ」
「何故だ」
俺は魔剣を構え、もう一度犯罪神へと向かう。
次は横へ薙ぎ払う一閃。
これも犯罪神は抵抗せずに受けた。
大きくのけぞったが、四つの大きな足で耐え抜く。
この様子を見ると、明らかにダメージは与えられているはずだ。
「何故抵抗しない!」
「この世界はもはや我の力を使わずとも、滅びるのを待つのみ」
俺は高く跳躍し、犯罪神の頭の頂点から一気に斬り伏せる。
これも犯罪神は受けた。
「戦え!マジェコンヌ!!」
俺は何度も何度も斬った。
戦わないのなら、俺が女神を殺した意味がないだろう!
「戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え!!!」
犯罪神の腕は斬り落とされ、身体には無数の傷。
最後の最後まで犯罪神は俺の攻撃を受け続けた。
抵抗もせず、戦いもせず。
「そして我の力は、お前の中で生きる」
犯罪神の身体から黒いオーラのようなものがにじみ出る。
「この器はもう要らない」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
おもいきりの力をこめ、犯罪神の身体を貫く。
犯罪神の身体から力がなくなった。
これで終わりか?
これで全部終わったのか?
『ククク…』
犯罪神の声が聞こえたが、口は動いていない。
犯罪神の身体からは、黒いオーラがまだ出ている。
嫌な予感がした俺は魔剣を抜こうとしたが、それよりも早く黒いオーラが俺を包んだ。
何もない真っ黒な空間に呑み込まれてしまった。
何も見えない。何も聞こえない。
なにか罠を仕掛けられたのか?
「ユウ」
不意に後ろから声をかけられた。
そこにいたのは、俺とそっくりの男だ。
「オレはお前さ、滝空ユウ」
俺と違って声は低い。
ざらざらとした、地の底から響くような声。
「俺?」
その男の言う言葉を、俺は理解できなかった。
突然現れたこの男はいったい誰なんだ?
「犯罪神の力を得た、もう一人のお前」
俺の思考を読んだかのように、男が答える。
「おめでとう。見事犯罪神を倒したな」
パチパチと男が拍手する。
「といってもお前が倒したのは犯罪神の器だけだ。本体はお前が見た、黒い炎のようなオーラだ」
俺は先ほどのことを思い出す。
つまり、あの巨躯は力を活かすための殻だったということだ。
「犯罪神はお前を次の器にしようとしたみたいだが、力が不完全だったせいで失敗。力だけはオレのものになったが」
犯罪神は俺を操ろうとして、あの巨躯を捨てた。
しかし、完全状態ではなかったうえに痛めつけられたことでその思惑は失敗したということだ。
その副産物として、犯罪神の力を持ったもう一人の俺を生み出した。
整理するとこんなところだろう。
つまり、ここは俺の心の中ということになる。
いきなりの超展開にもなんとかついていけるのは、今までの経験のおかげだろうか。
「まあそんなことはどうでもいい」
もう一人の俺は大きなあくびをした。
「重要なのは、これからのお前だ」
「これからの…俺?」
「これからどうするつもりだ?」
犯罪神を倒し、操られることもなく戦いが終わったいま、俺がすべきは罪を償うことだ。
女神を殺した罪を。
「ネプギアたちに託されたとおりに、新しい国を創る」
ネプギアとネプテューヌの最期の言葉通り、俺は女神に頼らない国を創る。
そして、人達を導く必要がある。
その責任と義務がある。
「新しい国……ははは、新しい国か」
抑えきれないといった感じでもう一人の俺が笑い、嘲るように俺を見た。
「何が言いたい」
「世界の混沌の原因は何だ?」
「は?」
突然の問いに、素っ頓狂な声をあげてしまった。
「答えてみろ。女神が死んでしまった原因は?」
「犯罪神のせいだろう」
「何故今さらになって犯罪神が復活したんだ?」
「犯罪組織が甦らせたからだ」
「じゃあ何故犯罪組織が活発になったんだ?」
「………」
この男が言いたいことが分かった。
俺が目を背けていたこと。
「なあユウ。もう偽るのはやめにしよう」
男は俺に近づき、やさしく、一方で憎しみを込めた声色で喋り続けた。
「分かってるだろう?世界を破滅に向かわせたのが誰か。女神を殺したのは誰か」
俺は男から目を背けた。
「人間だ」
予想していた答えが男の口から発せられた。
予想が当たって当然。俺が思っていたことなんだから。
「自らの国を守る女神を蔑ろにし、囚われたのを良いことに犯罪へと手を染める」
男が俺の肩をポンポンと叩いたあと、ぐるぐると周りを歩き始めた。
「信じるものをころころと変え、挙句の果てには弱い心を利用され、破滅が待ってるとも知らず犯罪組織へと手を貸す」
否定ができない。
旅を続けて俺が思った本心を、この男は喋り続けている。
「そんな人間のために国を創り、守る価値なんてあるのか?」
「守るのが、女神から託された使命だ」
ようやく発することができたのは、俺の意思ではなく、女神の思いだ。
「その女神でさえも、彼らは忘れる」
やはり俺の返答を分かっていたみたいだ。
男は即座に言って返す。
「世界のために命を散らした女神のことを、自分たちを守護してくれた女神のことを忘れる。やがて彼らはそれが当たり前だと思うのさ……女神のいない世界を」
男は俺の目の前で止まり、じっと俺を見た。
「だれが守ったのかもわからない平和な世界を」
「そんなこと、俺がさせない」
「お前の意思なんざ関係ないんだ。人間ってのは、そういうふうにできてるんだよ。いないものに敬意を払わず、見えないものは信じない。経験したことがすべてだと思い込み、何がどうあっても不満をまき散らす」
「そうじゃない人間もいる」
「ほんの一握りだ。現に、人間の大半が犯罪組織を崇拝しているせいで女神たちは力を失ったんだろう?簡単に囚われたり、洗脳されたりするほどに」
俺の頭の中にネプテューヌとネプギア、ノワール、ブラン、ベールが思い浮かんだ。
彼女たちが囚われたのは、犯罪組織が生まれ、人々がそれを崇拝したからだ。
次に、洗脳されたラムとロムが思い浮かんだ。
彼女たちが洗脳されたのも、マジェコンというつまらないツールによって人々の心が犯罪組織へと傾いたからだ。
自分たちの娯楽のために、守ってくれるはずの存在を蔑ろにしたのだ。
ひと時の快楽を求めて、破滅へと足を突っ込んだ。
ふつふつと、怒りがわいてくる。
「人間」という弱い存在に。
「大多数の声はやがて、暴力的なまでに成長する。そうして全ての人間が、女神の記憶も記録も破壊する。いつかはお前のことも忘れ、怠慢に過ごして世界を食いつぶしていく」
「ならどうすればいいんだよ…」
俺は縋るように「オレ」を見る。
「それもお前はわかっている。全てのものを平等にする方法を」
「オレ」はいかにも真面目な顔で、俺を指さす。
「全てをゼロにする。そうすれば、全部平等だ」
「それじゃ、犯罪神と同じだ」
俺は首を振った。
全てを無くしてしまうなんて、今倒した犯罪神とやることは変わらない。
ネプギアたちが望んでいることでもない。
「違う違う。全てを壊した後で、新しい世界を創るのさ」
「創る?」
「そう。女神も俺たちもみんなが楽しく笑っていられる世界。平和で争いもなく、国民が疑いもなく女神を慕う世界」
俺は耳を疑った。
それは俺が思う理想の世界だ。
そんな世界を創ることができるのか。
そんなことができるのか、俺に?
「お前ならできる。いまや女神の力も犯罪神の力も手に入れたお前なら、この腐った世界を救える」
この男が「俺」なら、もしも「俺の本心」なら、できると言ったことは嘘じゃない。
「俺が救う?」
「そうだ」
「救える?」
「ああ」
俺が救うことができる。
俺が殺してしまった女神を。
堕落しきってしまったこの世界を。
「この世界をオレたちで守ろうじゃないか」
「オレ」は手を差しのばしてきた。
その手を、俺は躊躇なく掴んだ。
「その前にまず、この世界の人間に思い知らしてやろう。女神のありがたさをな」
これが正しいなんて思っちゃいない
だがこれしかないのだ
たとえ地獄の業火に身を焼かれることになろうとも
ネプギアたちを救うためなら堕ちていこう
どこまでも
△
マジック・ザ・ハードに受けた傷は相当なものだった。
癒えるのにかなりの時間がかかってしまった。
ようやく動けるようになったのは、ユウが単身でギョウカイ墓場に赴いたと聞いたすぐ後だ。
比較的治るのが早かった私とエリカは、それを聞いて準備を整えた。
ユウが出ていった時間は不明だが、まだ戻ってきていないことを考えると、いまだ戦っているかそれとも…。
私は首を横に振った。
最悪の事態なんて考えたくなかった。
一刻も早くユウの無事を確認したい。
「まだ完全には治っていません。戦うのは早すぎます」
イストワールは私たちを止めた。
「遅いくらいだ。ユウはすでに犯罪神と戦っているんだろう」
「危険すぎるわ。私たちが行かないと」
「しかし…」
止めようとするイストワールに対し、エリカは人差し指を立てて待ったをかけた。
「待って。一人で行ったと言ったわね、イストワール?」
「……」
「ネプギアたちはどうしたの?」
そういえばそうだ。
目覚めたばかりで気づかなかったが、ユウが一人でギョウカイ墓場へ行ったというのはおかしい。
犯罪神を倒す。そのために私たちは旅をして、女神たちと協力関係を築いたのだ。
もしユウひとりがみんなに黙って犯罪神のもとへ向かったのなら、女神がどこかにいるはずだ。
だが現実は、ネプテューヌもネプギアもその姿を現さない。
「…ネプギアさんたちは……もういません」
「それはどういう…」
イストワールの言葉をさらに追及しようとしたが、突然勢いよく教会の扉があいた。
「大変よ!」
現れたのは、携帯電話を握りしめたアイエフだった。
彼女も私たちと同じく傷だらけのはずだったが、情報収集していたらしい。
「アイエフ、身体は大丈夫なのか?」
「そんなことは後よ!諜報部から連絡があったの!」
私たちは次のアイエフの言葉を疑った。
「リーンボックスが破壊されたわ!!」
リーンボックスの破壊を受けて、私たちは情報収集へあたろうとした。
私とエリカはとりあえずラステイションの教会に向かったが、そこにはノワールもユニもいなかった。
打ちひしがれるように座っているケイがいるだけだった。
リーンボックスのことについてはケイも聞いていたらしいが、特に対策はしていないらしい。
何もしないなんてケイらしくない。
追及しようとしたが何も教えるつもりはないと、追い出されてしまった。
どうしようかと悩んでいるとき、Nギアにイストワールから連絡が入った。
リーンボックスに次いでルウィーが破壊されたとのことだった。
国の全土が焼け野原になり、建物はことごとく壊され、人はみな殺されたらしい。
これだけ大規模な破壊が行われているということは、犯罪神が復活し、ギョウカイ墓場から出てきた可能性が高い。
つまり、ユウは…
「信じないわ」
エリカは虚ろな目でぶつぶつとつぶやいた。
「女神がついていながら、ユウが一人で向かったっていうの?そして死んだの?そんなの信じられるわけないじゃない。それなら女神は何してるのよ。守護するのが女神の役割なんじゃないの?あれだけ言っておきながら、八人もいながら何をしてるの?ユウが一人でギョウカイ墓場へ行ってるのに、街が破壊されていってるのにどこをほっつき歩いてるの?ユウはいまどこにいるの?死んでいるはずないわ。だってユウだもの。きっといまに姿を現すわ。死んだなんて認めない認めない認めない…」
そんなエリカを引っ張り、私はプラネテューヌへと戻った。
何者かはわからないが、このままいけばプラネテューヌが襲われる危険がある。
それに、女神がいないという現状を問い詰める必要がある。
プラネテューヌへ戻った私たちは、さっそくイストワールへ詰め寄った。
「どういうことだ、イストワール!」
「聞きたいことがたくさんあるわ」
私たちの剣幕に、イストワールは何かを話そうとしたが、またしても邪魔が入った。
外からキャーキャーと騒ぐ声が聞こえる。
そして、爆発音。
「まさか…」
「攻めてきたか?」
リーンボックスとルウィーを破壊した張本人がついにプラネテューヌにもやってきたのだろう。
女神もいない状況だが、逃げるわけにはいかない。
それに、破壊者に会えば何かしらが分かるかもしれない。
私たち二人は外へと急いだ。
外はすでに混乱の渦の中だった。
あらゆる建物が破壊され、人々が逃げ惑っている。
「酷いな…」
「だれがこんなことを…」
酷いことに、見える範囲にも死体が転がっている。
話は聞いていたが、こんなことをするなんて悪魔の所業だ。
人々が逃げてきた方向を追っていくと、ますます悲鳴と爆発音が大きくなっていく。
大きな路地に出ると、刀を持っているユウを見つけた。
背中には、見たことのないような大きな剣を背負っている。
ユウのそばには人が倒れていた。
介抱していたのだろうか。
なんにしてもよかった。無事だった。
だが、何か違和感を感じる。
「ユウ」
「待て、エリカ」
ユウのもとへ駆け寄ろうとしたエリカを止める。
「どうしたのよ」
私の知っているユウじゃないような……何とも言えないような違和感。
そう感じた次の瞬間、私は信じられないものを見てしまった。
ユウは刀を振り上げ、倒れている人を斬った。
「あああっ!」
倒れていた人は悲鳴を上げ、そのまま起き上がることはなかった。
「ユウ…」
目を疑った。
あのユウが、人を殺したのだ。
犯罪組織でもない、善良な市民を。
そんなはずがない。
そう信じたかったが、ユウはさらに逃げようと建物から出てきた女性を斬った。
またしても人を殺した。
そして刀をくるくると回す。
あれはユウの癖だ。
ユウがいつもしている、特有の癖。
そんな……いったいなにが起きてるんだ…。
「ユウ!」
私はユウに向かって叫んだ。
「二人とも、身体は大丈夫なのか?」
人を殺したにもかかわらず飄々と言ってみせたユウの声色は、いつもより低く感じた。
ノイズがかかったような、ざらざらとした低い声。
「なんのつもりだ!」
「なんのつもりって…見ての通りさ」
既に死んでいる女性の身体に、刀を突きさした。
「破壊してるんだよ」
当然、といったようにユウは笑う。
そして軽く刀を振った。衝撃波で近くの建物が崩れ落ちた。
様々なものを、人を破壊していくユウを見て、私は戦慄した。
「あなた、本当にユウなの?」
「そうだよ。今目の前で人を殺したのも、リーンボックスとルウィーを消し炭にして、ああさっきラステイションも壊したな。それ全部がオレの仕業だ」
少し前のように、ふざけた様子でニカっと笑ってみせた。
だけど、言っていることはまったく理解できなかった。
「女神を殺したのもオレだ」
ユウの言葉は、また私たちを驚かせた。
伝承で聞いた犯罪神のような破壊行動をするなんて、そんなことをユウがするはずがない。
しかも、女神がいないのもユウ本人がしたことだという。
一緒に旅し、世界を救おうとしたユウが、真逆のことをしている。
しかし目の前にいる男は、言動や仕草からして、確かにユウだ。
「ユウ、お前は…」
ユウを見て、私は何も信じられなくなった。
ラムとロムのように洗脳されているのか?
いや、そんな様子は見えない。
どちらかといえば、やりたいことをやっているような、そんな風に見えた。
これがユウの本性だったのか?
「悪魔だったのか…?」