超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】   作:ジマリス

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47 絶望阻む無二の刃

「ここが、マジェコンの製造工場…すごい。見たことない機械でいっぱい!」

 

切羽詰まった状況とはわかっているけども、思わず目が輝いてしまう。

ユウさんの記憶を頼りにたどり着いた工場には、あのラステイションでも見たことのない機械が所せましと並んでいた。

 

「なんでちょっと嬉しそうなのよ!」

 

ユニちゃんの言葉に、ハッと我に返る。

いけないいけない。こんなことをしている場合ではないのだ。

 

「よくもまあ、こんな大設備の工場をバレずにこっそり作ったものね」

 

私たちは工場内を見渡す。

対女神として重要視されているであろうこの工場は奥が見えないほど巨大であった。

森の奥深くに建てられているものの、これだけの設備を私たち側に隠し通してこれたのは、お姉ちゃんたち女神が捕らえられていた事実や犯罪神四天王という大きな存在が邪魔をしてきたからであろう。

 

「ねーねー。この工場、片っ端から壊せばいいの?」

 

「うん、壊しちゃおう!壊しちゃおう!」

 

「あんたたち…」

 

REDさんとお姉ちゃんが意気揚々とするなか、ノワールさんが呆れたようにため息をつく。

壊す、という行為は有効に見えてそれほど効果はない。

ユウさんの記憶によれば、今すでに新型マジェコンの製造が始まっているはずだ。

工場を破壊するなんて目立つことをすれば、新型マジェコンの本体もしくは設計図なりが別の場所に移され、再製造されてしまうだろう。

そうなればイタチごっこになってしまう。

 

「一気にトップを落として、工場全体を停止させる…」

 

ブランさんの案に私たちは賛成した。

組織といえども本当に「犯罪神」というものを崇拝しているのはごくわずか。

どこかにいる幹部さえ倒してしまえば、あとの仕事は大したものではなくなる。

 

「そうはいかないな」

 

意気込んだ私たちの前に、不穏な影が三つ。

ゆっくりとその姿を現した。

 

一人はトリック・ザ・ハード

一人はブレイブ・ザ・ハード

もう一人はマジック・ザ・ハード

この三人が出てくるのは想定内だったが、あとの一人はどこにも見当たらない。

 

「ドゥームなら、ここにはいないぞ」

 

私たちの考えを見透かすように、マジックが言った。

 

「いないってどういうことですの?」

 

ベールさんが問いかける。

マジックはその必死さをふふんと笑ってみせた。

 

「お前たちの裏をかいたのさ。といっても、提言したのはドゥームのやつだったが」

 

それを聞いて、やはりと思う。

私たちの動揺の少なさにマジックは気づいたようだった。

 

「得意げになってるとこ悪いけど、それは予想通りだよっ」

 

お姉ちゃんが胸を張る。

私たちはこの状況とその次を予想して、すでに一手を打ってある。

賭けに近い一手だけど。

 

 

 

 

 

 

机に携帯端末を置く。

何度コールしてもエリカとの通信ができない。

ルウィーで別れてから、訂正、私が逃げてから一目としてエリカに会っていない。

エリカはまだ誤解したままこの世界のどこかにいるのだ。

誤解。

そう、私たちの考えというか予想は半分誤解だった。

ユウは確かに自らの意思で女神たちを殺した。だがそれは決してユウの望んだことではない。

それがわかったいま、いまが絶好のチャンスだ。

「ユウ」と「ドゥーム」が別れたいま、ドゥームを殺せば全ては解決する。

きっと

 

きっと

 

「オルガさん!」

 

慌てた様子のケイが、待機していた私のもとへ駆けつける。

合図だ。

予想通りだった。

工場に四天王全員が集結することも考えたが、それはあくまで私たちの考えだ。

「もしも犯罪組織側だったら」というのを考えておいて正解だった。

イストワールたち教祖を連れていくわけにはいかないし、かといって教会に放置したままでは以前イストワールが誘拐されたときの二の舞になってしまう。

 

ろくに返事せず、私は装備を整え外に出る。

教会の入り口に着いたとき、悲鳴が聞こえた。だが、いまのところ最悪の事態には陥っていない。

あの時のような、街が焦土と化したような地獄絵図はここにはない。

逃げる人々はいるものの、まだ被害は少ないみたいだ。

悲鳴が大きくなる。逃げ惑う人々が多くなる。

一瞬、過去の記憶がフラッシュバックする。目の前で物という物を破壊し、人という人を殺しまわったユウの姿が。

頭を振り、浮かんだ映像を払う。

現実をしっかりと見据える。

逃げる人の波を見て、その元を探す。

幸いなことに、原因をすぐに見つけた。

その瞬間に聞こえていたはずの悲鳴は耳から排除され、大勢の人も見えなくなる。

見たことのない黒と紫を基調にしたバトルスーツを着ているが、間違いない。

あの忌々しい魔剣。なにより顔と、その顔を絶えず動きまわる黒い紋様。

変わらないように見えるが、明らかに「変身」したドゥームだ。

彼は誰を傷つけるでもなく、何を破壊するでもなくこちらに近づいてくる。

 

「お前を殺す」

 

鼓舞するように私はつぶやく。

 

「お前を殺す」

 

意志を確かめるようにもう一度。

腰から刀を抜く。

 

「お前を殺す」

 

 

 

 

 

すでに戦いは始まっていた

トリック・ザ・ハードはベールさんとブランさん、ラムちゃんにロムちゃん、それに5pb.さんが

ブレイブ・ザ・ハードはノワールさんとユニちゃん、REDさん、コンパさんにアイエフさんが

そしてマジック・ザ・ハードはお姉ちゃんと私がそれぞれ相手をしていた。

 

勝てば一気に犯罪組織は壊滅させられることができる。

逆に、負けはそのまま世界の破滅を意味する。

 

鋭い刃をかわしながら、私は隙を探る。

その最中にも、違うことが気にかかった。

相当な傷を負ったらしいユウさんはいまどこにいるのだろうか。

ドゥーム・ザ・ハードと対峙しているであろうオルガさんは果たして無事でいるのだろうか。

そんな私の隙を見透かしたように、マジックの鎌が首をかすめる。

 

「ネプギア!」

 

変身したお姉ちゃんの叫びが耳に届く。

あっけにとられて真っ白になった頭を瞬時に戻され、本能によって身体が退いた。

結果的に距離を開けることに成功したものの、「もし数センチ違っていたら」を考えると冷や汗が止まらなくなる。

 

「だ、大丈夫」

 

もう少しで刈り取られるというところだったという恐怖をなんとか抑え、声をのどから絞り出す。

いまさらになって心臓が早鐘を打つ。

そして、今度は三年前の戦いの記憶が邪魔をした。

お姉ちゃんたちと一緒に、まさにこのマジック・ザ・ハードと戦って負けたのだ。

少しずつ恐れが心を蝕んでいく。

いまにも崩れ落ちそうな身体を必死に引っ張りあげる。

深呼吸し、ビームランチャーを構える。

 

まず動いたのは、お姉ちゃん。

三年間のブランクを感じさせない早業で切りかかる。だがそれも防がれ、かわされてしまう。

続いて私もお姉ちゃんと共に攻撃を加える。

前回の戦いと異なるのは、マジックに反撃させる隙を与えていないということだ。

私とお姉ちゃんのコンビネーションを前に、ついにマジックから焦りの表情が見えた。

しかし

 

「ユウは元気か?」

 

それを言われて一瞬だけ、ほんの一瞬だけ私は動きを止めてしまった。

頭に浮かんだのは、苦しさに歪んだユウさんの顔。

それとは対称的ににやりと笑うマジックがお姉ちゃんを押し返す。

マジックが私の心の隙をつき、刃が迫ってくる。

私が見えた隙は一瞬だったが、それは死にそのまま直結してしまうものだった。

刈り取る一撃が目の前まで来ても、私の身体は反応してくれなかった。

 

こんなところで

 

今度はそんな言葉が頭を駆け巡る。

せっかく強くなって、せっかくみんなと出会って、せっかくお姉ちゃんたちを救ったのに。

それがこんなところで終わりだなんて。

 

マジックの鎌とは別の、輝く何かが間に入ってきたからだ。

マジックの攻撃はそれに阻まれ、甲高い金属音が鳴る。

次に見えたのは、誰かの足がマジックの腹を蹴って吹き飛ばすところだ。

 

「まだだ」

 

目の前の輝くもの、鋭く光る刀は持ち主によって私の視界から消えた。

聞き慣れた声に振り向いてしまう。

 

「まだ立ち止まるにははやい」

 

実際に彼がいなくなってから、一週間ほどしか経っていないはずだ。だが、その姿がなぜか懐かしく思えた。

くるくると刀を回し、そして先を敵に向けるその姿。

それは確かに

 

「ユウさん…」

 

そう。そこにいたのは、迷いを振り切ったようなすっきりした顔で立つユウさんだった。

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