超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
「ユウさん…」
ネプギアの目は困惑と希望が入り混じっていた。
「なんだ、死んだかと思ったか?」
「いえいえ!そんなことは…」
ネプギアはぶんぶんと首を横に振る。
それほど離れてはいなかったはずだが、かなり久しぶりに見たような気がする。
「冗談だよ冗談。あれくらいじゃ死なないって、死にきれないって知ってるだろ?」
「はい」
笑顔で迎えてくれる。
俺が来るっていうことはわかっていたみたいだ。
信じてくれていたというほうが正しいだろうか。
おそらくは予想より早かっただろうが。
「ユウ…」
変身したネプテューヌ、パープルハートが申し訳なさそうに近づいてくる。
「ごめんなさい。あなたのことを何も知らずに…」
「ああ、いいよ。実際、一度何もかも殺した大罪人だ。ネプテューヌの行動は…」
「それでも、ごめんなさい」
いつものような元気はなく、頭を下げる。
「何が悪かったか、誰が悪かったか。それはあとにしよう」
俺が気にしなくていいと言っても、ネプテューヌは謝り続けるだろう。
だけどそれは後だ。
いまやるべきなのは、吹き飛ばされつつもノーダメージで立ち上がったマジック・ザ・ハードを倒すことだ。
「ドゥームはどこにいる?」
「ここにいないところを見ると、プラネテューヌかしら。そこにはオルガが一人で待ち構えてるわ」
女神たちがたった一人を置いてきたところを見ると、きっと意地でも残ると言い出したのだ。
「ドゥームのところへ行ってくれないか、ネプギア」
「え?」
俺はネプギアを見る。
この提案はオルガを心配してのことではない。
「俺が決着をつけるべきなのはわかってる。でも、俺の言葉は奴には届かない」
ドゥームの、「オレ」の心は閉じたままだ。
俺が何を言っても、どれだけ心の扉を叩いたとしても少しも開くことはないだろう。
「ネプギア、お前ならきっと…」
きっと彼女なら、俺のことを信じると言ってくれた彼女なら。
「でも私、ユウさんの知ってる「私」じゃないのに…」
「それでも、きっと届くはずなんだ。もし「オレ」が後悔してるなら」
たとえ悪魔だとしても「滝空ユウ」を信じると言ってくれた彼女なら、固く閉じた扉も開くことができるかもしれない。
「…はい」
「どうか…」
少しだけ次の言葉をためらう。
それは俺が言っていいことではないかもしれない。
「どうか、おれのことを救ってやってほしい」
それは俺が果たせなかった契り。
それは俺が捨ててしまった遺言。
頼む資格のないはずの約束。
「はい!」
でもネプギアはそんなことを気にせずに笑って了承してくれた。
意を決した顔を見せた後、ネプギアはこの場を去った。
ああなったネプギアは強い。
「さあて…」
ぐっ、と全身に力を込める。
胸を中心に黒い紋様が身体に浮かび上がる。
半分になってしまったけど、俺の中にはまだ犯罪神の力が残っている。
この際どんなものでも使わせてもらう。
「その姿、敵と間違えそうだわ」
「それは勘弁願いたい」
ぎょっとしてこちらを見るネプテューヌに並び、俺は向かってくるマジック・ザ・ハードを見据えた。
くるくると刀を回す。
深呼吸して構えると同時、マジックは一気に間合いを詰め鎌を振る。
だが、これで対峙するのは三度目だ。身体がなんとか反応してくれる。
鎌をしっかりと目で追い、スピードが出る前に刀で抑える。
「ピンチの時に現れて、ヒーロー気取りか?」
「まさか。誰かを殺しておいてヒーローを名乗るなんて、考えたこともなかったね」
マジックに押し勝ち、態勢を崩したところでハイキック。
見事顔に命中し、もう一度吹き飛ばすことに成功する。
「「ヒーローは遅れてくる」という点だけでいえば、一流よ」
「褒めてるのか、それは」
「さあどうかしら」
再びマジックが素早く立ち上がり、向かってくる。
マジックは飛び上がり、空中で一回転。そして急降下しながら鎌を振り下ろす。
流石に勢いをつけたこの攻撃に押し勝つのは無理がある。
俺とネプテューヌはそれを間一髪でよける。
からぶった鎌はそのまま地面をえぐり、足元がひび割れる。
マジックの隙にいち早く反応したのはネプテューヌだった。手に持った太刀を横に一閃。
必殺技「デュエルエッジ」だ。
「ぐうっ…」
もろに食らったマジックがのけぞる。
だが追撃を試みた俺の動きを察知し、一瞬で後退する。
今までの戦いで、マジック・ザ・ハードは戦った相手の技をコピーというか解析して自分のものにできるようだというのがわかっている。
だがその能力は女神に限定されるようで、俺やオルガ、エリカの技を使ったことはない。
つまりマジックの動きにさえついていくことができれば、あとはよく見る女神の技に注意すればいい。
初見の技がほとんどないというのが、付け入る隙になる。
先ほどの攻撃もノワールの必殺技だ。
見慣れた技ならいつ隙ができるのかもわかる。
「いけそうかしら」
「油断はせずにな。三年前ぼこぼこにされたんだろ」
ネプテューヌがむっとした顔で見てくる。
変身した姿で頬をふくらますというのは、ネプテューヌにしては珍しい。
余裕がある証拠だ。
「ネプギアは大丈夫かしら」
「大丈夫だよ。ネプテューヌが思ってるより、ずっと強くなってるからな」
誰よりも強い芯が彼女の心の中にはある。
何よりも頼りになるそれをいまは信じるしかない。
△
「どうした、その程度か!」
私の刀とドゥームの剣が交差し、火花が散る。
ドゥームは以前対峙したときとは段違いに力が落ちている。たぶん二人に分かれたことが影響しているのだろう。
「変身」してようやく私と互角といったところだ。
「挑発には乗らん」
ドゥームはあくまで冷静に私の攻撃をさばく。
彼からすれば、たった一撃食らわせればいいのだ。それほどの威力があの剣にはある。
なにせ犯罪神すらも切り裂いた魔剣なのだ。
私は反撃の隙を与えず、次々に攻撃を繰り出す。
「お前を殺しさえすれば、全て元通りなんだ!」
私の攻撃は通常の人間では反応できない速さだが、型を教えてくれたのはユウだ。
もちろんドゥームも私の動きを把握している。
焦った私の一瞬をつき、つばぜり合いに持ち込んできた。
「何も…」
少しずつ追いつめられる。
真っ向からの力勝負は苦手だ。
「何もわかってない!!」
魔剣越しに憎しみに染まったユウの、いやドゥームの顔が見えた。
鋭く尖った目は私を睨んでいる。
「お前も!エリカも!ネプギアも!!」
不意に剣と刀を離し、力任せに魔剣を振るってくる。
「誰も!!誰も!!!」
一度、二度。
鈍い音とともに互いの武器が火花を散らす。
「うあっ…」
三度目、ついに力負けした私が体勢を崩してしまう。
刀こそ手放しはしなかったが、尻餅をついてしまった。
それと同時に、私の身よりもおおきな刃が迫ってきた。
斬られても、倒れずに斬ってやる。
そう決め、目を閉じずに相手を見据える。
ぐっと刀を持ち直す。
痛みを覚悟した次の瞬間
「ぐああああっ!」
ドゥームは目の前から消えた。
何かに吹き飛ばされたようで、十メートルほど離れた地面に倒れている。
ドゥームと逆の方向を見ると、そこにはここにいるはずのない人物がいた。
「なんで…」
むくり、と起きあがったドゥームがその人物を見て驚きの表情を浮かべる。
来るとしても、こいつではなくユウが来ると思っていたのだろう。それに関しては私も同意見だ。
おかげで、私はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「なんでお前がここにいるんだ、ネプギア!!!」
「あなたを助けにきました」
そこにいたのは、女神化し銃剣を構えるネプギアだった。