超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
ユウが来るかと思っていた。
だが実際に来たのはネプギアだった。
予測はできなかった。いやしたくなかったのだ。
今一番会いたくなかったからこそ四天王に任せたのに。
「なんでお前がここにいるんだ、ネプギア!!!」
叫んでしまうほど、心が揺れている。
確固たる意志を持った女神を前に動揺が隠せない。
「あなたを助けにきました」
そんなオレを知ってか知らずか、ネプギアはそんなことを言う。
「助けなんて……いらない…」
こみ上げる何かを下唇を噛んで抑え、オレはネプギアをにらんだ。
敵であるオレに何を言っているのか。
いまさら理解しようなんて思わない。
だから…
オレは剣を構え、ネプギアに突っ込む。
いまオレは「ユウ」と分かれて力が半分になっている。だがこの剣にはオレの不足を余るほど補ってくれる力がある。
八人もの女神を屠ったその力が。
そうだ。オレは女神の屍を背負っている。背負いながら戦っている。
助けなんていらない。
助けられる資格もない。
ただオレは戦うだけだ。
「うおおおおおおおおおお!!!」
それがオレのやるべきことだ。
△
思った以上に力が出ないというのはもどかしいが、それでも俺の身体は十分に動いてくれた。
身体にはまだ傷が残っているものの、気にはならない。
マジック・ザ・ハードのお次の標的はネプテューヌだ。
マジックが鎌を振り上げるも、ネプテューヌは太刀で受け止める。
少しの鍔迫り合いのあと、双方退いて距離をとる。
見てみれば、ネプテューヌは明らかにマジックの動きについていっている。
三年前のことを実際に目で見たわけではないが、ネプギアの話では素早さ、攻撃力、防御力どれをとっても劣りに劣っていたはずだ。
それほどネプテューヌは強くなったのか、それとも…
いずれにせよ、マジックもネプテューヌとの差がそれほどないことを悟っている。さっきから攻撃の手は乱雑になっていた。
マジックが死んでも犯罪神は復活する。
なのにマジックがここまで抵抗するのは死にたくないからだ。
それは人間が持つ「本能」とは異なる。
かつて、俺の次元のマジックはこう言った。
『できればこの身で犯罪神様に仕えたかった』
つまりマジックの行動理念はあくまでも、犯罪神のためだ。
犯罪神が死ねと言えば、ためらわずに命を絶つだろう。
そこに命を懸けるほどの忠誠心はあれど、命を懸ける覚悟はない。
「はあっ!」
再びマジック・ザ・ハードが攻撃を仕掛けてくる。
俺は左手に力を集中させる。マジックに悟られないように身体で手を隠しながら。
マジックの動きは素早いがなんてことのない直線の動きだ。技でも何でもなくただ鎌を振るうだけのその攻撃は、予測さえしていればいとも簡単に避けられる。
からぶったそれは地面を削る。
その間を逃さずネプテューヌが鎌を持った右腕を斬り裂いた。
血は出ず、マジックの腕が宙を飛んだ。
驚きに目を見開いたマジックと俺の距離は一メートルもない。
何も掴んでいないはずの左手に先ほど貯めた力を解放する。
その刃先が、柄が俺の内に存在する犯罪神の魔力によって構成され、具現化する。
そうして出現させた槍を、手にしたそのままの勢いで、半ば投げるようにしてがらあきとなったマジックの左胸へと突き刺す。
「ぐあっ」
一歩、二歩下がってマジックは膝をつく。
倒れろ、と念じるもそれに反してマジックは立ち上がる。
槍に身を貫かれてなお、倒れることはない。しかしもう戦うことはできないだろう。
「くく…」
マジックは強がりのように笑ってみせる。
「くくくく…」
「何を笑っているのかしら」
その不気味さにネプテューヌは武器を構えるが、俺はそれを手で制する。
足取りはおぼつかず、武器もなく、身体は貫かれ、腕はない。どう見てもマジックに勝ち目はない。
なのにこいつは
「くくくく…」
笑っている。
一歩、また一歩。ゆっくりと俺はマジックに近づく。
どれだけ近づこうともマジックに抵抗の意思は見られない。
それどころかただ笑うのみ。
「やはり悪魔だな、お前は」
マジックは槍を指さした。
「見ろ。この槍を!私の身体を貫く貴様の刃を!」
「戯言を聞くことはないわ、ユウ」
ネプテューヌが動こうとするが、俺は再び制する。
「お前も認めているんだろう。これこそが、他者の命をも軽々しく奪うこの刃こそが貴様の象徴だ!破滅の象徴だ!」
これほど喜ばしいことはないといったふうにマジックが叫ぶ。
「さあ答えてみろ、ユウ!お前は何だ?神か!?悪魔か!?」
ついにマジックの目の前にまで来た。
失った腕からも、貫かれた胸からもやはり血は流れてはいない。
俺は違う。
「……俺は神の力を手に入れて、悪魔のような所業もした。助けを乞う声を無視し、幾多の人を殺して数多のものを壊した」
俺は自分の手を見た。
誰が見ても肌色に見えるだろうが、俺には赤く見える。こびりついて取れないほどにこの手は血に染まっている。
俺は耳を澄ました。
少し遠くでは、ほかのみんなが戦う音が聞こえる。それに混じって悲鳴が聞こえた。
俺は屍の上に立っている。何万、何億という屍の上に。
それでも
「それでも俺は人間だよ、マジック」
俺はマジックの身体に刺さっている槍を掴んだ。
「悩んで苦しんで、悩ませて苦しめて。後悔の念にうなされて夜も眠れない」
ぐっと腕に力を込め
「一人の人間だ」
勢いよく槍を抜いた。
空いた胸からは黒い煙のようなものが絶え間なく出続けている。
それは導かれるように地面へ流れ、染みを作る。
「それは貴様の願望だ」
それを最期に、マジックの身体は砂のようにあっけなく崩れ落ちていった。
俺の姿を見て、神だと崇拝するものもいれば悪魔だと蔑むものもいるだろう。
だけど俺は一人だけ知っている。ずっとずっと、今も「滝空ユウ」を信じてくれるやつを。
それだけで充分じゃないか。