超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】   作:ジマリス

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51 彼女が戦う理由

ネプギア達と旅をしている間、私は気になって彼に一度だけ聞いたことがある。

 

「あなたはなんのために戦っているの?」

 

あなたはその問いに困った顔を見せた。

目を閉じ、腕を組んでしばらくして出たのは

 

「わからない」

 

という答えだった。

笑ってはいるが、ふざけてる様子でもなく真剣に答えたのだろう。

それでも私は身震いした。

村にいた時のような安全はもはやなく、下手をすればモンスターに殺される危険があるというのに、彼がそう言い放ったからだ。

 

明確な意図はなく、なにか内側から湧き出る衝動的なものに突き動かされただけなのだろう。

そして私の質問で気づいたのだ。

 

なんのために戦っているのか?

 

世界のため?

女神のため?

個人のため?

あるいは平和というものを取り戻すためだろうか?

それとも正義というものを知らしめるため?

 

どれもあってるように見えて、どれもしっくりこない。

ユウ自身も分かってはいないのだろう。

しかし戦わずにいられない。

なにかのため、誰かのためというのが滝空ユウだもの。

漠然としていようが、それが彼の理由だった。

 

 

私は私でしっかりとした戦う理由がある。

 

『ユウを守るため』

 

そのためにイストワールが隠していた「禁術」なんてものにも手を出したし。デメリットが大きすぎて使えたものじゃなかったけれど。

 

だから私がマジックに負け伏している間に、ユウが犯罪神と戦ったなんて聞いたときは冷静ではいられなかった。

 

そのあと次元を移って知ったのは、魔剣の存在とユウがそれを使用したことだ。

女神はその剣をユウに託して、去っていったのだ。

 

確かにユウは強い。

危険種のモンスター相手にも一人で勝てるほどにレベルはあるし、実力と経験も(シェアが底の底に落ちていたとはいえ)女神に少々劣るほどだった。

 

だがあくまでたった一人の人間であるユウに、女神は「世界」を託した。

本来ならば自分たちがするべきことを放棄し、彼女たちはユウにその役目を渡した。

ユウのことだ。ノーとは言えなかっただろう。

女神たちは知っていたはずだ。それがどれだけユウを追いつめるのかを。

どれだけユウを苦しめるのかを。

 

だけど追いつめたのは女神だけじゃない。

人だ。

あまりにも簡単に堕落への道へと向かう人々を見て、信仰を失い今にも消え入りそうな女神を見て、彼は嘆いた。

人はこんなにもあっけなく破滅への道を進む。

 

自ら女神を殺すという罪を犯して彼は気づいた。

この世界を蝕んでいるのは人間だと。

 

脆くも醜い愚かな人間を殺して、殺して、殺して。

 

それが世界を守ることだと信じて、彼は全てを殺して壊した。

 

一人殺すたびに心が締めつけられただろう。

ひとつ壊すたびに斬り裂かれるようだっただろう。

 

それでも救世という衝動に突き動かされて、ユウは動き続けた。

ぼろぼろになってもなお、彼はやりとげた。

 

残ったのはなんだった?

滝空ユウに残ったものは?

傷だらけになって得たものは?

心を悪魔にして、涙を流し、血にまみれ、億を超えるであろう屍を踏み越え、そして彼が手にしたものは?

 

 

孤独と罪だけ。

 

 

私は歯ぎしりをする。

「世界」が憎い。

こんなにもユウを苦しめた「世界」が。

これ以上ユウを苦しませるわけにはいかない。

 

 

私がやる。

 

私が受け継ぐ。

ユウ。あなたはただ見ているだけでいい。

 

私が世界を変える。

あなたの望み通りに。

 

 

               △

 

 

 

「うおおおお!!」

 

巨体を誇るトリック・ザ・ハードの、さらに頭上から落下しながら刀を振り下ろす。

斬り裂くというより、たたきつけるといったほうが正しいその技でトドメ、とはいかなかったがダメージは与えられたはずだ。

 

「うぐぐ…」

 

うなるトリックからすぐさま離れ、くるんくるんと刀を回す。

 

「トリック……さすがにこれは無理だろ。諦めろ」

 

俺は周りを示す。

いまやこの場にいる犯罪組織はトリック・ザ・ハードただ一人のみ。

対するは女神七人に人間五人。

この圧倒的な差は、いくら四天王といえども覆せはしないだろう。

その証拠に、十二人の攻撃を受け続けたトリックは反撃の隙も与えられておらず、ただただサンドバックとなっていた。

ときおりラムやロム、REDの攻撃を受けるたびに矯正を上げるのは勘弁願いたい。いやほんと。

 

「ぐうっ、確かにこれだけの年増が相手だとオレの力が足りないのも事実。しかし見せ場がないまま消えてしまうのも癪だし…」

 

どこ気にしてんだよ。

 

「いまわたしのこと年増って言ったか!?」

 

「今の言葉聞き捨てなりませんわね!」

 

ブランとベールが同時に反応する。

どっちかっていうと、ここにいる大半が言われてることなんだけどね。いや俺が思ってるわけじゃなく、あくまでトリックから見た話ね。

そんなトリックに怒る周りをまあまあといさめる。

 

「じゃあラムとロムにトドメ刺させるから、それでどう?」

 

「う、む。それならまあ…」

 

「いいの!?」

 

今度反応したのはノワールだった。

正直俺も面食らった。冗談で出した提案だったが、まさかOKくらうとは。

 

「や、やっぱりちょっと待て!せめてその幼女女神をぺろぺろさせてもらってから…」

 

「ダメに決まってるでしょ!」

 

「だめ…」

 

慌てて条件を出してきたトリックに対して、身を守るように互いの身体を庇いあうラムとロム。

 

「残念だったな。見ての通りその条件は飲めな…」

 

言葉をつづけようとした俺はそこで異変に気づいた。

トリックの身体が少し大きくなってないか?

 

「トリック?」

 

「なんだ?」

 

当の本人は気づいてないようだ。

 

「お前…」

 

もともと規格外であるその巨体が、さらに1.1倍ほど大きくなっている。

 

「太ってる?」

 

「何を失礼な!こう見えてもこの身体には愛と希望とチートが…」

 

1.3倍。

 

「うむ…?」

 

1.5倍までになったところでようやく気付いたようだ。

 

「な、なんだこれは!?どうなっているんだ!?」

 

「どうやら本人も何かわかってないようね」

 

ネプテューヌがこちらに向かって呟く。

肥大化したトリックを見て、その場にいる全員が固まった。

このまま戦うべきか、逃げるべきか。

これから何が起きるのかを、トリックを含める全員が不明に思いながらも動けずにいる。

 

「ど、どうなるのよこれ?」

 

「わからん。どんな感じだ、トリック?」

 

敵であるが、降伏当然のトリックに声をかける。

今や2倍ほどに膨らんだ身体は今にも工場の天井にまで届きそうである。

 

「オ、オレにわかるわけないだろう!!」

 

流石に焦るトリック。

俺はその姿に嫌なものを感じた。

当人にもわからないことがその身に起きている。

犯罪組織の幹部、犯罪神から生まれた存在にそんなことができるのは限られている。そして、俺の知りうる限りではそれをできるのは一人だけだ。

 

「逃げろ、ユウ!」

 

突如聞こえた声は、トリックと対峙していたものの声ではなかった。

俺を含む全員は声のするほうを振り向いた。

 

入り口の近くにオルガとネプギアが立っていた。

 

「爆発するぞ!」

 

「ば、ば、ば…爆発ぅ!!??」

 

オルガの言葉に、十二人の叫び声が重なる。

 

「冗談じゃないわよ!」

 

「こんな巨体が爆発したら、被害どれだけかわかんないよ!」

 

「走れ!!」

 

わめくアイエフとREDをなだめる時間はない。

とりあえず今はここを離れることが先決だ。

女神たちは一斉に飛び立ち、それぞれが手を伸ばした。

俺はユニの手を掴み、そのままぶら下がるように運んでもらう。

みんなも同じように飛翔する女神につかまり、入口へと急ぐ。

他のものが到達し、最後の俺たちも入り口にたどり着いた瞬間、視界の端にトリックが見えた。

その頭が天井まであと少しというところで、風船が割れるがごとくその黄色い巨躯が勢いよくはじけ飛んだ。

 

そして次の瞬間、爆風と炎が俺たちを押し出すように襲ってきた。

工場の外、森林へと追いやられた俺は、爆風にあおられ空中でのコントロールを失ったユニとともに、その勢いのまま地面に叩きつけられる。

何十メートル吹き飛ばされただろうか。

俺はさっそく起き上がり、まずは周りを見渡した。

 

「ユニ!」

 

「な、なんとか大丈夫…」

 

体勢を崩しながらも、手をつないだままでいてくれたユニは無事なようだ。

みんな吹き飛ばされたようだが、視認できる範囲に全員いる。けがはしているものの、命に別状はない。

安堵のため息をついた。

俺もそれほど深いけがはない。

 

だが

 

ズズンと大きな音を立てて、数十メートル離れた工場が崩れていく。

犯罪組織最大の工場であるマジェコン工場だったが、いまは見る影もない。

ただのがれきの塊と化していた。

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