超次元ゲイムネプテューヌ 衝動へのリベリオン【完結】 作:ジマリス
俺は力を解放し、雷を薙ぎ払った。
自分でもわかる。あふれ出るような力を感じる。
「どうだ?」
俺は自分の身体を示した。
ドゥームが受けた傷も、黒い紋様もある。
おまけに額には角。
おおよそ人間とは呼べない外面だ。
「なかなか似合ってるわ」
「そりゃどうも」
エリカは再び宙へ手を掲げる。
暗くなった空がまた我慢できないかのように鳴る。
「さっそくか」
俺も宙へ手を掲げる。
頭上に身の三倍ほどの大きな魔法陣が五つ出現した。
これに違和感を覚えたエリカは素早く雷を落とした。
耳をつんざく轟音の主は、眩い光とともに俺へと落ちてくる。
だがその雷撃は届かなかった。
魔法陣から現れた巨大なトゲのある槍が、避雷針のごとく雷を防いだのだ。
雷を帯びた槍の先はまっすぐエリカへと向いている。
「
掲げた手をエリカへと勢いよく向ける。
五つの槍は容赦なく、命を奪うために突撃する。
「くっ」
エリカが足で地面を叩くと、どこからともなく氷の壁が出現した。
槍は次々と氷にぶつかっていき、その壁を砕くがそこで消えてしまう。
砕かれた氷がエリカの視界を封じているうちに俺は高く舞い上がる。
エリカへと狙いを定め、急速に落下する。
「
斜めに剣を下ろす。
エリカの身体に線を描くように傷をつけたが、致命傷じゃない。
だがそれだけじゃない。剣を叩きつけたと同時に砕かれた地面から火炎が噴き出し、エリカを火で包む。
「ああっ!」
エリカは苦悶の叫びをあげるだけではなく、魔法で作り出した水を足元から噴出させ、体を覆わせて火を消した。
その水はうねうねと数本の触手のように形を変え、俺の身体のいたるところを貫いた。
焦って出現させたのだろう、細い水の針は身体を貫いたものの、傷は浅い。まだ動ける。
「
俺は剣を握る力を強める。
「テンツェリントロンペ!」
踊るように身体を回転させ、遠心力を加えた力でエリカを叩く。
もろに打撃を受けたエリカは吹き飛んだが、すぐに立ち上がった。
斜めに剣の傷が入り、火傷が痛ましく残っている。
対する俺も、身体のあちこちに穴が開いている。
普通の人間であれば、倒れ伏していることだろう。
犯罪神の力が犯罪組織のシェアに左右されるようなら簡単だっただろうか?
いいや、それだったら俺のほうが弱くなっているだろう。
犯罪組織のシェアに影響されるのはマジック・ザ・ハードのみ。
俺とネプテューヌがマジックを倒せたのも、ドゥームとエリカがそれぞれ自分の目的のために調節したからだ。
女神が起き上がってすぐあれだけ動けたのもそのおかげだ。
「ユウウウウ!」
叫びをあげ、エリカが突進してくる。
力のままに振り下ろされたダブルセイバーを、正面から受ける。
二本のブレードが交錯し、火花が散る。
俺は押し戻そうとするが、エリカもそれに応える。
気を抜けば簡単に真っ二つにされそうだった。
全身の力という力を解放しているが、先ほどの戦いが響いていた。
長くはないドゥームとの戦いだったが、かなり消耗してしまっていた。
いま俺を支えているのは気力だ。
「もう終わりかしら?」
「いいや、まだまだ手は残ってるぞ」
悲鳴を上げる身体を酷使し、エリカを押し出した。
「そうだろネプギア!」
「はいっ!」
「っ!」
エリカが気づいたときにはもう遅かった。
女神化し、武器を構えたネプギアがビームを放った。
反応が遅れたエリカは直撃を受けて転がっていった。
「助かったよ、ネプギア」
脱力し膝をついた俺に、ネプギアが近づく。
「ユウさんだけに任せるわけにはいきませんから」
「そういう割には負けてたみたいだけど?」
ネプギアの身体は傷つき、プロセッサもところどころ破損している。
彼女も満身創痍なのだ。
「うっ、それは…」
「冗談だよ。あんなやつに簡単に勝てるなら、俺はここにいないさ」
俺は倒れてるユニに近づき、手を引っ張ってむりやり立たせた。
「ユニ」
「あ…ユウ…?」
「もう限界か?」
ぐったりとしていたユニだったが、俺の声を聞いてふらつきながらもしっかりと立つ。
「まだまだ大丈夫よ」
倒れていたのが嘘のように毅然と立ち、ユニも女神化する。
「あ、あたしもこんな程度じゃ倒れないんだから!」
「私も…」
続いて、ラムとロムもお互いを支えるようにして立ち上がり、変身する。
「流石だ、最強双子」
「ふふん、わかってるじゃない!二人でさいきょー!ね、ロムちゃん!」
「うん、さいきょー」
「だとよお姉さんたち」
まだ倒れているネプテューヌたちに向かって声をかける。
「妹が頑張ってるのに……」
「私たちが倒れたままじゃ」
「いけねえよな」
「未来の妹に手出しはさせませんわ」
ネプテューヌ、ノワール、ブラン、ベール。
それぞれが立ち上がり、底をついた力を振り絞って変身する。
「聞き捨てならないよ、ベール!ネプギアは私の妹だもん!」
「そうよ!ユニだって私の……頼りになる妹なんだから!」
「あの子たちのいたずらがないと寂しいからな」
それを聞いて安心した俺は倒すべき敵を見た。
「それならここにいる全員、負けるわけにはいかないな」
なんとか立ち上がったが、エリカも限界が近かった。
しかしふらふらとした足取りでも油断するわけにはいかない。
「もう終わりか、エリカ?」
「まだまだ……これからよ」
エリカは剣の先をこちらに向けた。
「全員がかかってきて勝てるとでも思ってるの?」
「ああ、もちろん」
俺は剣をぐるんぐるんと回す。
「俺たちはそうやって戦ってきた。そうだろエリカ」
地面を蹴って向かってくるエリカに、応じるように、俺も走り出す。
エリカは剣を構えながら、もう一方の手で雷を放つ。
その攻撃はラムとロムが作り出した巨大な氷の塊に防がれた。
「いくわよ、ユウ!」
姉女神四人が俺より前へ飛び出した。
「先手必勝おお!!」
ブランが斧を振り回し、エリカが避ける。
エリカは同時に左手に力を集中させ、魔法を放とうとする。
「そうは…」
「させないわ!」
ネプテューヌとノワールが武器を振り下ろす。
腕を斬らんとするそれを、エリカは手を引っ込めてかわす。おかげで魔法は不発。
「合わせろ、べ―ル!」
「承知いたしましたわ!」
エリカがぶん、と剣を振り回す。
近距離にいた三人は食らってしまい飛ばされてしまったが、なんの思慮もない攻撃はたいしてダメージを負わせることはなかった。
「
俺とベールは高速で幾度もエリカを突く。
エリカの身体はいくつもの穴が空き、怯みそうになるも掌を前に向ける。
まずい!と思うよりも前に、俺はベールを押し出した。
エリカの手から現れ伸びた氷の槍はまっすぐ俺を刺そうとする。
後退しようとするが、間に合わなかった。
冷たい槍先は俺の右肩を貫いた。
電撃を放つつもりだ。
相手の動きを封じてから、さらに動きを封じる。
それはオルガが使った手であり、もちろんエリカが教えたものだろう。
さらに後退する?
氷の槍を折る?
ダメだ、間に合わない。
瞬時に頭を働かせるが、案は出ない。
電撃を受ければ身体は麻痺し、隙を見せる見せないの問題じゃない。ただ立ち尽くすだけの俺は一太刀で真っ二つにされてしまうだろう。
ここまでか?
いいや違う。
「魔界粧・轟炎!」
電撃が流れる前に、俺との間に火柱が立ち、氷を瞬時に溶かした。
「あたしを忘れてもらっちゃ困るわよ!」
「遅いぞ、アイエフ」
驚きで隙ができたエリカを回し蹴りを叩きこむ。
エリカは何十メートルも飛んでいった。
ようやくアイエフに向き直ると、コンパもREDも5pb.も立っていた。
「さてさて次の手は何でしょう?」
クイズ番組の司会者のように、もしくはマジシャンのようにわざとおおげさに振る舞ってみせる。
手は尽きるどころか仲間は立ち上がって、エリカは追いつめられつつある。
彼女はそのことに明らかに苛立っていた。
なぜそれほど強いのに、諦めたのか。
怒りは俺たちの次元の女神へと向けられている。
それと同じ姿のこの世界と女神にも。
「さあここからは次世代のお披露目だ。頼むぜ」
「ユニちゃん!」
「わかってるわ!」
ネプギアとユニはビームを放った。
強烈な二人のビームによってエリカの剣は赤く光って、溶け出しつつある。
どちらにも後がない。
「それそれ!」
俺が間合いを詰めると同時に、REDが持っているすべてのおもちゃを放り投げる。
どこにしまってあったのか、大量のフリスビーは飛び立ち、ヨーヨーは舞う。
エリカがそれらに気を取られているうちに、ネプギアとユニがエリカの身体へと照準を向けなおす。
計り知れない熱量がエリカを襲う。
身体が溶けていくにも関わらず、エリカは前へ歩を進める。
「ああああああああああああああああ!!」
断末魔とともにエリカが刀身の溶けた剣を振り回そうとするが、彼女の動きは止まった。
エリカの剣は、氷に覆われ地面に固定された。
振りぬいて氷を砕こうとするが、それはかなわなかった。
「♪~~~」
きづけば歌い声が聞こえる。
悪しき力を弱めて、女神の力を強める。
この状況において、5pb.の能力はなくてはならないものだった。
「
俺も本来の力が弱まっていたが、渾身の力を振り絞って乱雑に剣を振る。
ビームによって熱を帯びたエリカの剣は、それを覆っていた氷ごと粉々に砕け散った。
その勢いのまま、俺は魔剣を再び振る。
同時にネプギアとユニのビームは止んだ。
エリカの身体を斬り裂く。
深い一筋の線がエリカの身体に描かれる。
もう身体が言うことを聞かないに違いない。
エリカは手を伸ばしているが、その足は一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。
何歩下がったか数えていなかったが、ついにエリカは倒れた。
その顔は犯罪神の力をその身に宿しているとは思えない普通の女性の顔だった。
俺は彼女のそばにしゃがんだ。
顔の半分は融けて皮膚がなくなり、その下が露出している。
身体も同様に赤い筋肉までが見えていた。
静けさだけが俺たちを包んでいた。
ネプギア達は離れたところで俺を見守っている。
「ユウ…」
小さな声が俺を呼んだ。
エリカが必死に手を伸ばして、俺の頬に触れる。
その手が一瞬だけ淡く光った。
「私は間違ってた…?」
「俺には…わからない」
何が正しいか、正しくないか。
俺にはとっくの昔にわからなくなっていた。
それでも戦う。
そうすることでしか俺は自分を許せない。
「これからもまだ、戦い続けるの?」
「ああ。俺にはそれしかない」
「なら約束して。死ぬまで戦い続けるって」
「約束する」
死ぬまで。
力尽きるまで。
地獄に堕ちるその時までエリカを忘れない。
エリカが生きていたことを忘れない。
エリカとの約束には、そんな意味が含まれていた。
「ユウ……あなた暖かいわね」
エリカの身体は血が流れ、急速に冷えている。
それが、彼女の手を通じて俺の頬に伝えてくる。
「そりゃそうだろう」
俺は頬を撫でる手を掴んだ。
「人間だからな」
エリカはふふ、と笑ってみせた。
それを最後にエリカの身体は端から光と化して消えていく。
そのすべてが消えるころには、俺は立ち上がっていた。
「ユウさん…」
俺が茫然としてしばらく経ってから、ネプギアが呼ぶ。
「終わったよ」
俺は呟いた。
「終わったんだ」