ハードボイルダーの試運転を終えた頃には、篠ノ之の機体の試運転が始まっていた。
見ているとスペックがどれだけ高いかがよく分かる。
と言うかアレ、剣から斬撃が飛んでってません?
どこの方向音痴のマリモ剣士だよ。
「大体確認できたねー。それじゃあ箒ちゃん、そろそろ…」
「お、織斑先生!大変です!」
篠ノ之を降ろそうとした束の言葉を遮り、山田先生が駆け寄ってくる。
だが雰囲気がいつもとまるで違う。
こんなに慌てた山田先生を見るのは初めてだ。
「どうした?」
「そ、それが…」
生徒には絶対に聞こえないよう、細心の注意を払って会話する二人。
しばらくすると手話まで使い出した。
…果てしなく嫌な予感がする。
束が若干笑っているのを隠しきれていないのも気になるというか、まず間違い無くアイツが何かしたんだろう。
そう何回も危険なイベントがあってたまるかってんだ。
「分かった。山田先生は他の先生方に報告を。私は生徒に指示を出す」
「は、はいっ!」
「これよりIS学園教員は特殊任務行動へ移る。各班はISを片付けて旅館へ戻り、連絡があるまで室内待機すること。返事!」
あー、そんな風になるんだー…
「専用機持ちはこの場に残れ。篠ノ之もだ」
「は、はい!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
場所は変わって旅館の一番奥の大座敷、専用機持ち達と教師が集まっていた。
話を聞くところによれば、ハワイ沖にて試験稼働中の軍用ISが突如暴走し、此方に向かっているのだとか。名前は
「それが何で俺達みたいな幼気な高校生に任されるのかそこんとこkwsk。」
「…簡単な話だ。専用機でないと渡り合えないスペックを、あちらは持っている」
ちなみに俺達が戦っている間、教師の方々は訓練機を使って空域を封鎖しておくらしい。
まぁ危険だしな。
「スペックの詳細は?」
敬語が抜けているのはご愛嬌だ。
現に織斑先生も気にしていない。
後で叩かれるかもしれんが。
「二ヵ国の最重要機密だ。決して口外するな。もしも口外した場合は…」
察しろと言わんばかりの目つきで睨まれる。おお、怖い怖い。
スペックを見たが…機動力では勝てるな。ハードボイルダーを得た今の俺はまさに無敵だ。
あれ?これフラグじゃね?
問題は火力だ。広域殲滅型とあるが…まぁ予想は付く。どこぞの野菜人みたいなグミ撃ちでもしてくるんだろうな。
ちなみに俺の変身時の装甲は、メモリにもよるが基本的には紙装甲だ。
ガイアアーマーは確かに硬いのだが、IS相手はどうも痛い。
相性が悪いのだろう。
そして今現在俺の目の前では、織斑を除いた専用機持ち達が意見を交わしていた。
織斑が行くのは確定っぽいな。ご愁傷様です。
とりあえずそっとその場から距離を置き、小さい声で呟く。
「…束、いるんだろ?」
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん、っと。何か用かな?さっくん」
畳が一部剥がれてウサ耳が覗いているが今はどうでも良い。
「単刀直入に聞こうか。コレお前の仕業だろ?」
「まぁぶっちゃけるとそうなんだけどって待って待って、話を聞いて?メモリ使われると流石の束さんも痛いんだよ」
「…妹の晴れ舞台のつもりか?」
「わーお鋭い。まぁその通りだよ」
この野郎いけしゃあしゃあと…
「あぁ、安心して?ちゃんと適度に暴走させてるから操縦者も無事だし、箒ちゃんが一撃食らわせたらすぐに制御可能になるようにしたから」
「そういう問題じゃねえよ阿呆。何かあったらどう責任取るつもりだ」
「…そんなヘマを束さんがすると思ってるのかい?」
駄目だコイツ…人の話を聞いちゃいねえ…
「…とりあえず何かあっても無くてもシバく。とっとと作戦説明して来い」
「あいあいさー、っと」
いきなり飛び出てきた束に織斑先生のアイアンクローが炸裂したがそれは置いておいて、だ。
こいつの作戦では、篠ノ之が織斑を運び、零落白夜で仕留める、という流れになっているらしい。
さっきは篠ノ之が一撃食らわせたら終わると言っていた…という事は、織斑の一撃で仕留められないと分かっているのだろう。
意地の悪い奴だ。
「という訳で箒ちゃんといっくんの二人で出撃を…」
「ふむ…確かにそれならば仕留められそうだが…駄目だな」
まぁ当たり前の判断である。
この場に居る専用機持ちは全部で七人も居るんだから、たった二人だけで行かせるなんて馬鹿のやる事だ。
「茅野、行けるな?」
「……は?」
突然俺の名前が呼ばれる。
え、俺に?行けと?
「そうね、咲なら…」
待て待て待て。
「なして俺?」
「…貴様は自分の実力を把握していないのか?」
いやあの俺じゃなくて俺の相棒が強いのであって俺自身に戦闘スキルなんて高尚な物は無いというか何と言うか。
「勿論三人だけで行かせるような真似はしない。残りの専用機持ち達も同時に向かわせる」
「いや待ってくださいって。幾らなんでもバードとアクセルだけじゃ紅椿の速さには……ああ、そういう事か…」
そういえばさっきハードタービュラーを見せたばかりだ。
見ただけでどこまでスピードを出せるかが大体把握できているこの先生が怖いです。
「あのバイク…ならば問題無くついていけるだろう。勿論無理強いはしない」
「ちーちゃん、あれは間違いなくバイクだよ」
「黙っていろ」
実戦(笑)だから別に行きたくない訳ではないし、ついて行くことも問題無く可能…
行くしかない、よな…何かあってからじゃ遅いし。
「分かりました。茅野咲、精一杯やらせていただきます」
「よし、では作戦の具体的な説明に入る。まず……」
こうして、束による白騎士事件に続いた二度目のマッチポンプ、
…大丈夫かなぁ…
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
三十分後、俺達全員は浜辺に立っていた。
前の列には俺、織斑、篠ノ之。
後ろの列には凰、オルコット、デュノア、ラウラが並んでいる。
「最終確認だ。前列の三人は、篠ノ之が織斑を運び、茅野と現場へ向かう。織斑の一撃で決められなかった場合、三人での足止めに入れ」
「「「了解」」」
「続いて後列四人、同時に出撃するが、お前達は前列が奇襲に失敗した際の保険となる。戦闘になった場合は各自、前列三人のサポートに当たれ」
「「「「了解」」」」
計七人の専用機持ちで倒せない相手なんてそうそう居ないだろうけど…あ、目の前に居たわ。
「そして最後に…」
織斑先生の雰囲気が変わる。
なんだ?物理的に気合でも入れてくるのか?
「…死ぬな。以上だ」
いつもとは違う、本気で俺達を心配していると分かる声色で締める。
…期待に応えないとな。
「ジャーヴィス、いるか?」
『何時でも居ます、ご主人様。【Cyclone!】』
頭の中に、ジャーヴィスの声とガイアウィスパーが響く。
「よし…行くぜ、相棒。【Joker!】」
『「変身」』
【Cyclone! Joker!】
風が巻き起こり、アーマーが形成されてゆく。
同時に左腕を横に突き出し、リボルギャリーを呼び出す。
いつみても良い物だ。
ちなみに原作ではスタッグフォンで制御していたリボルギャリーだが、あくまでこちらのリボルギャリーはISなので、俺の考えた事がそのまま反映される。
手間が省けるのは良い事だがロマンに欠ける為、少し残念だ。
「タービュラーユニットに換装完了。織斑、篠ノ之」
「こちらも問題無い」
「俺もいつでも行ける!」
三人の準備が整ったので、いよいよ出撃だ。
…若干緊張する。
「…咲」
突然後ろから声がかかる。
振り返ると、不安そうな顔のラウラが居た。
相変わらず可愛…じゃなくて。
「どうした、ラウラ?」
「……この戦いが終わったら…」
…ん?
「結婚しよう」
「何でやねん!!!」
思わず関西弁で突っ込みを入れる。
そこはもっとこう……感動的なセリフとかさぁ…
生きて帰って来い的なさぁ…
「日本では戦闘の前にこんなセリフをよく言うと聞いたのだが…」
「…帰ってきたら、死亡フラグって奴を教えたる」
まぁ、これはこれでラウラらしい。
「…よし、行くか!」
宙に浮き、織斑達と並ぶ。
右手を捻りアクセル全開にし、猛スピードで空へ飛び出して行く。
さて、どうなる事やら。
次回久々の戦闘パートです。
ほんとどうなる事やら…
ご指摘ご感想、お待ちしております。