よろしくお願いします。
あの戦いの後、変化したことがいくつかあった。
一つは、オルコットの性格である。
あんだけ言ってたのが嘘のように、物腰が柔らかくなった。
曰く、織斑が色々と話してくれたから、だとか。
やったね篠ノ之!ライバルが増えたよ!
『おいやめろ』
『ネタなのは分かってるけど、主人にその対応はどうなのかな?ジャーヴィス君?』
二つ目としては、俺へのクラス内からの視線である。
どうも俺は、なんというか、あまり好ましく思われていなかったらしい。
そりゃそうだ。織斑と違ってイケメンじゃないし、地味だし、眼鏡だし…
だが、クラス代表決定戦からは明らかにクラスメイトからの態度が変わった。
原因は…
「茅野君の専用機って喋るんだー!すごーい!」
「ねえねえ、名前はー?」
『ジャーヴィスと申します。以後御見知り置きを』
こいつである。
普段の脳内会話は聞こえていなかったようだが、
あの時、アリーナで俺達の喋っている声は外に筒抜けだったんだとか。
なんてこった。
というわけで俺は今、喋る専用機を持った眼鏡の男性操縦者、とでも認識されているのだろう。
俺だけ見た時の特徴が眼鏡しか無いのが悲しいところである。
ちなみにクラス代表は織斑に譲った。
勝者権限で。
織斑が泣いていたように見えたが、気のせいだろう。
きっと泣くほど嬉しかったのだ。うん。
「いや違うからな!?」
「地の分読むなよ変態」
「うう…馬鹿だの変態だの…俺が何をしたっていうんだ…」
「馬鹿なのは事実だろう?ちなみに今日はISに関する小テストがあったはずだが」
「教えて下さいお願いします」
ふむ…土下座か…潔いのは良いことだ…
「だが断る」
「なんでだよっ!?」
「この茅野咲の最も好きな事の一つは、土下座すればなんでも上手くいくと思っている奴に、思いっきりNOと断ってやることだ。篠ノ之かオルコットにでも頼め」
「そ、その手があったか!」
篠ノ之の方に向かった織斑はオルコットにキレられていた。これだから女ったらしは…
ちなみに俺の方は、イケボなジャーヴィス目当てで来る奴はいるものの、俺自身に話しかけてくる奴は殆どいない。
俺の事を好いている奴もいないので、平和そのものである。
ああ、空が青いなあ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「「「「「「「「「織斑君、クラス代表就任おめでとーー!!」」」」」」」」」
現在1組では、織斑の代表就任記念パーティーが行われていた。
ちなみに放課後の教室で。
「でもなんで織斑君が?」
「一番強かったのって茅野君じゃあ…」
おや、まだ知らない奴がいたか。
「俺は辞退したんだよ。イケメン君が代表の方が盛り上がるだろ?」
「そうなんだ~」
突っ込んでくれよ死にたくなるだろ。
そういえば織斑は…いたいた。
「やあやあ楽しんでるかいクラス代表君?」
「咲…お前絶対楽しんでるだろ」
なにやら恨めしそうな目でこっちを見ている。
「ああ楽しんでるぞ?お前のお蔭で飯、もとい菓子が美味い」
「ぐっ…悔しいけど言い返せない…」
相変わらず舌戦には弱い織斑。
戦にすらなってない。
「というかお前、今度バトる時までに練習積んどけよ?主にドジを失くす方向で」
「流石にもうあんな事にはならねえよ?!」
「つまり別のドジをやらかすんですね。分かります」
「ぐぬぬ…」
おお、ぐぬぬ顔だ。
言葉がなくても何て言ってるかが伝わってくるようだ。
流石主人公。
織斑を弄って遊んでいると、一人の女子が話しかけてきた。
見た感じ上級生っぽいが、
「どちら様で?」
「ええっと…君が織斑一夏君?」
「いえ違います。織斑はそっちの馬鹿です」
「さらっと馬鹿呼ばわりすんな!」
こんだけ馬鹿って言ってんだからそろそろ聞き慣れてくると思うんだが…
やはり弄りがいがあるな。
「じゃあ君は茅野咲君ね。私は黛 薫子。新聞部に所属しているわ。はいこれ名刺」
「これはどうもご丁寧に。茅野咲です。よろしくお願いします」
「態度が随分違うな…」
当たり前だろう。目上の人には敬意を持って接するものだ。
「それで、何の御用ですか?」
「あぁそうそう、専用機持ちの取材に来たんだよ。えーと確かもう一人…」
「わ、わたくしもですの?」
近くにいたオルコットが反応した。
「あーいたいた。それじゃあ三人とも、そこに並んでー」
「「「は、はい…」」」
なんだかよく分からないが、一気に三人に質問するつもりなのだろうか?
チャレンジャーだな。
「そーし、それじゃあ撮るよー!」
そういうと一瞬でカメラを取り出し、構えた。どっから出したんだ?
それはともかく写真とか…俺あんま好きじゃないんだけどなぁ。
「笑って笑って~!はい、チーズ!」
パシャッ。
「なんで全員入っていますのー!?」
「まぁ良いじゃねえか」
どうやって一瞬でこっちに来たのかはともかく。
こうして、織斑を弄り倒した歓迎会は幕を閉じたのだった。
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その夜、自室にて。
「そういや咲、一体いつになったら名前で呼んでくれるんだ?」
「名前?」
「ほら、いっつも織斑とか、篠ノ之とか呼んでるじゃないか」
何だそんな事か。
「俺は基本的に人は苗字で呼ぶようにしてるんだが…」
「でもお前、自分の事は苗字で呼ばせなかったじゃんか。」
うっ。
「織斑のくせにそこに気付くとは…明日は槍でも降るのか?」
「お前は俺を何だと思ってるんだよ?!」
「あーもううるさい。名前なら気が向いたら呼んでやるから」
「本当か!?絶対だぞ!?」
やたらと名前を呼んでもらいたがる一夏を適当に流しつつ、
(たまにはこんなのもいいかもな)
と感じている咲であった。
主人公はデレません。
当分は。
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