闇を祓う者 〜破壊と革命の代行者〜   作:黒いファラオ

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うっかり彼方くん


同居人 意味《一緒に住んでいる家族以外の人》

「ああ、織斑くん、賀狩くん。まだ教室にいたんですね。よかったです」

 

 暇だったので一夏と駄弁っていたとき、麻耶ちゃんが書類を片手に話しかけてきた。ちっちゃく見えるよなぁ……実際は平均ぐらいなんだろうけど。

 

「えっと、寮の部屋が決まったのでお知らせしようと思って」

「ああ、そうだったんですか」

 

 部屋番号が書かれた紙とカードキーを渡される。

 

「あ、一つ訊きたいんですけど、一人部屋ですか?」

 

 一人だと色々都合が良い。ルナが部屋の中で現界が出来るし、《闇》についてこの世界の人間にはあまりバレたくないしな。

 

『あまりじゃなくて、基本的にはバレちゃダメなの! 襲われた人達ならしょうがないとして、一般人はアウト!』

『分かってるってば。そうなりゃ、俺の正体も話さない訳にはいかなくなるしな』

 

 ルナからお叱りを受けてしまった。

 

「それなんですけど、二人とも相部屋になります。何せ、無理矢理部屋割りを変更したらしいですから」

「あ、そうなんですか。だってよ、一夏」

「ってことは、確実に女子と同じ部屋ってことだよな。色々気を付けないとな」

 

 残念一夏。それは最早フラグだし、お前はこの世界の主人公だから、ラッキースケベは基本ステータスだ。諦めろ!

 

「1ヶ月もすれば個室が用意出来ると思いますから、それまで我慢してくださいね」

「はい、分かりました。荷物持ってこないとなぁ。彼方一回家に戻らないか?」

「あ、それなんですけど……」

「荷物なら、私が用意しておいた」

 

 ここで千冬姉さん。というか、何時の間に現れたんだろうかこの人。

 

「家に一度私が帰って取ってきた。勝手に部屋に入らせて貰ったぞ」

「あ、そうなんですか」

「ある程度の必需品だから、今度合間を見て他に必要な物は取りに行け」

「はい、分かりました」

「賀狩の分は埜々香さんから渡されたものがある。二人とも、寮長室に取りに来い」

「うぃっす」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「母さん……何で俺が持ってこようと思ってた物を全部入ってるんだよ……。怖いよ、何でもお見通しか? あの人」

「ま、まあ埜々香さんだしな」

「答えになってないよ千冬姉さん……」

「家に帰る必要が無くなったって考えようぜ」

「ナイスフォローだ、一夏。そうだ、そう考えよう」

 

 室長室で自分の荷物を受け取り、自分の母親の不気味さに震えた。

 

『なあ、ルナ。同室の人どんな奴だと思う?』

『うーん。箒ちゃんは一夏くんとだから除外だよね』

『そりゃそうだろう。原作より積極的になった(させた)箒と、多少聡くなった一夏。どんな化学反応を起こすのかひじょーに気になるところではあるが、』

『他人の部屋を勝手に覗くのはねぇ?』

 

 それは倫理的にも俺のポリシーにも反するところだ。周りに気づかないでいるのが、面白いのであってそこにこっちから突っ込んでいくのは違う。決定的に。

 俺の新たな同居人についての予想をルナと交わしてると、1047号室に辿り着いた。一夏(と箒)の部屋は、1025号室。結構離れているが、二人いる男子を近くに固めたら大変なことになるのは、想像に難くないのでその為の配慮だろう。麻耶ちゃん達には本当に頭が下がる。さて、

 

「とりあえず。ノックして、もしも~し」

 

 これは鉄板ネタだと思うの。

 

「……キョン? ジョセフ?」

「あ、よかったネタが通じた」

 

 まさか、どっちも当ててくるだなんて思わなかった。どっちも杉田さんだ。

 

「ここに一緒に住むことになったんだが、とりあえず入っても?」

「どうぞ」

 

 扉が開いて、そこに立っていたのは水色の髪を持った眼鏡をかけた見覚えのありまくる少女だった。

 

「あ、えっと賀狩彼方です。これからよろしく」

「知ってる。私は更識簪。これからよろしく」

 

 こちらこそ知ってます。何せ君達を助けたのは俺だから。まあ、分からないだろうけど。でもちょっと待って。ユニゾンした姿は前世の俺。転生して多少変わっているとはいえ、顔の造りは似ている。あれ、もしかして正体バレてる?

 

「はじめまして……だよな更識さん。なんで俺のこと知ってるんだ?」

「それはあなたが……」

 

 あなたが……?

 

「あなたが世界で二人だけしかいない男性操縦者の一人だから。この学園で知らない人はいないと思う」

 

 そりゃそうですよね。よかった、一安心だ。

 

「一応自己紹介とかしとくか? あ、賀狩じゃなくて下の彼方で。名字で呼ばれるのは距離を感じるから嫌いなんだ」

「分かった。なら私も簪でいい。お姉ちゃんがいて、紛らわしくなるから。後、自己紹介はいい。一緒の部屋に住むんだから自然に知れるし、なによりそっちの方が面白い」

 

 ん? 簪ってこんな性格だったっけ? まあ、

 

「大体分かった」

「それは半分ぐらい分かってないときの台詞」

「確かに」

 

 部屋をグルリと見回してみる。うん、大体アニメの通りだな。

 

「簪はどっちのベッドを取った?」

「えっと、奥の」

「了解。じゃあ手前は俺のな。ってそれは!」

 

 自分のベッド側に荷物を置こうとしたとき視界に入ったソレは、

 

「伝説のアイd……もとい、ディケイドの全巻BOXじゃないか!」

「やっぱり彼方もディケイド知ってるの?」

「勿論! 何せ俺はディケイドにな……」

 

 あっぶねぇ! 危うく大変なことをカミングアウトするところだった。当然それを聞き逃してくれているわけもなく、

 

「な……?」

 

 考えろ俺! ライフカードは……!

 

 ①素直に告白する。「ディケイドになれるんだ!」

 ②『な』から違和感が無いように繋げる。「7つの世界を破壊(再生)して欲しい程だからな」

 ③簪を抱えてジャーマンスープレックス。(千冬姉さん降臨)

 ④逃げる。(しかし回り込まれてしまった!)

 

 どうする!? ……やべぇ、まともなカードが1つしかねえ……。特に③! 俺ジャーマンスープレックスなんて使えねぇわ! しかも千冬姉さん降臨って明らかにデッドエンドじゃん……。よし、頑張れ②!

 

「な……何度も睡眠時間を削られたからな!」

 

 なんとか違和感のない感じにフォロー出来たんじゃない!?

 

「……そっか。私も同じ」

 

 セーフ! 気づかれなかった! ナイス俺! よくやった俺! 頑張った②番のライフカード!

 

「彼方くんも仮面ライダーとか好きなの?」

「ああ、555とかも好きだぞ」

「そうなの!?」

「おう。というかすごい食いつきだな。特に好きなのはアクセルフォーム。いやぁ、あれは良かったな、風を感じられて」

「風を感じられて?」

「ん? あぁ~…………あれだよ、演出の話」

「なるほど」

 

 いかんな……。これはうっかり秘密を漏らしてしまいそうだ……。恐るべし、更識簪! ……自爆なんだけどねぇ。

 

「そういうこと。そういう簪も好き……なんだよな」

「うん! 元々そういうヒーロー物が好きだったんだけど、きっかけがあって仮面ライダーが特に好きになったの」

「へぇ~、そうなんだ。何がきっかけになったんだ?」

 

 すると、簪の顔が真面目になった。

 

「……ねえ、彼方。もしこの世界にディケイドとか怪人とかが実際にいるって言ったら信じる?」

「え?」

 

 あれ、なんだろう。この地雷原に足を踏み入れた感じ。

 

「……私ね、昔怪人に襲われたことがあるんだ。センチピードオルフェノク。その時は5歳で響鬼がやってた。でも、私達を助けてくれたのは、まだ放送もされてないディケイドだった」

「へぇ?」

 

 知ってる。だってそれ俺だもん。というか、まだあの時のこと覚えてたんだな。

 

「その人は、今の私達ぐらいの歳で金髪の男の人だった。助けられてから会うことは無かったけど、私達はもう一回お礼を言いたかったから、手掛かりを探してた」

「私達って?」

「私にはお姉ちゃんがいるって言ったでしょ? そのお姉ちゃんと、そういえば彼方くんは一組だったよね」

「ん? そうだけど?」

「じゃあ、布仏本音っていう娘がいたと思うんだけど」

「ああ、あのポヤポヤした娘っ子か」

「そう。その本音とそのお姉ちゃんの虚さんの四人が襲われたの」

「そっか」

 

 知っていることをあたかも知らないように振る舞うっていうのは罪悪感があるな。いっそのこと全部打ち明けられれば楽にはなれるんだろうな。

 

『彼方くん』

『分かってるって。そんなことはしねぇよ』

 

 ルナが意識を飛ばしてくる。そんなことすればどうなるのかは考えたくもない。

 

「でも、二年前お姉ちゃんが手掛かりを見つけた」

「え、マジで」

 

 思わず素で聞き返してしまったその言葉に簪は頷く。え、嘘だろ。何時!? 何処のやつ!?

 

「それの出所はドイツだった」

「ドイツ?」

「そう」

 

 心当たりは一つしかない。

 

「二年前のドイツというと、第二回モンド・グロッソがあったな」

「そう。お姉ちゃん達が見つけたのは、そこでその人とアビスが戦っている映像だった」

「アビスってディケイドに出てきた仮面ライダーアビスか?」

 

 簪はまた頷いた。あの時の映像か、残ってたのか。というか映像があったんだな。

 

「でも、その人、遥さんの行方はそれ以降分からない」

「そっか。大変な目に遭ってたんだな。というか、そんなこと調べられるなんて、簪の実家はどんな所なんだ?」

「それは秘密」

 

 そりゃ、「対暗部用の暗部です♪」なんて言えないわな。というか、簪と楯無さんは姉妹仲が悪かった筈なんだが……なんか仲良さそうだな。とりあえず、楽しくやれそうだな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 Side簪

 

「かんちゃん、かんちゃ~ん」

 

 本音がそのダボダボな制服の袖を揺らしながら、私の方へ向かってくる。本音的にはおそらく走っているつもりなんだろうけど、周りからすれば、完全に歩いているスピードだ。ようやく私のところまでたどり着くと、

 

「お疲れ様。それで、どうしたの? 本音」

「私のクラスに男子が二人ともいるのは知ってる~?」

「うん。織斑一夏、織斑先生の弟。賀狩彼方、その織斑一夏の幼なじみ。この二人でしょ?」

「その賀狩くんがね、面白いことを自己紹介で言ってたんだ~」

「何て言ったの?」

「『この世界には知らなければいけないことと、知ってはいけないことの二つがある』って」

「それって!」

 

 お姉ちゃんが見つけた映像の、遥さんの台詞にそっくりだ。でも、

 

「遥さんは今、二十代後半ぐらいの筈」

「やっぱりそうだよね~」

 

 十年前のあの時で今の私達よりちょっと上という感じだった。

 

「でも、一応気にしておくね。ありがと、本音」

 

 特撮の世界であるディケイドが実在するんだ。何があってもおかしくない。

 

「どういたしまして~。じゃあまたね~」

 

 ダボダボな袖をブンブン振り回す。

 

「暇だなぁ。どうしようかな。あ、そうだ」

 

 部屋に戻った私は本音から遥さんの話を聞いて、またディケイドを見たい気分になった。でも、録画してあるドライブも見ないと……。そんなことを考えながらもディケイドのBOXを取り出す。

 その時だった。ノックの音と共に声が聞こえたのは。

 

「ノックして、もしも~し」

 

 力が抜けてしまった。立ち上がるときに倒れなかった自分を褒めたい。そして、今の言葉に対する素直な感想を扉の向こうの相手に伝えた。

 

「……キョン? ジョセフ?」

「あ、良かった。どっちも通じた」

 

 どっちのニュアンスでもあったらしい。

 扉の向こうにいたのは、写真で見た二人目の男性操縦者、賀狩彼方だった。本音が、遥さんに似た言葉を言ったという人。写真で見たときにも思ったけど、顔が似ている。そして実際に会ってみて思ったのは、遥さんのあの優しい雰囲気にそっくりだ。

 そんなことを私が考えている間にも自己紹介等は進んでいった。深く考え事をしていたときに話しかけられたので、返事がどもってしまったこともあった。

 彼方が荷物を置こうとしたときに、

 

「伝説のアイドルd……もとい、ディケイドの全巻BOXじゃないか!」

 

 さっき出しておいたディケイドに反応した。

 

「やっぱり彼方くんもディケイド知ってるんだ」

「勿論! 何せ俺はディケイドにな……」

 

 そこまで言って止まった。なんかすごく動揺した感じになっている。な? 『な』の続きはなんだろう? な……『なりたい』? それは私も一緒。……『なれる』? ちょっと待って私。それはありえない。あれは特撮の世界の産物だから。でも、1つだけ可能性がある。一人だけ、ディケイドになれる人を私は知っている。もしかして……

 

「な……何度も睡眠時間を削られたからな!」

「……そっか。私も同じ」

 

 違った。でも、この人は確実に何かを隠している。私達も人のことを言えないけれど、彼は私達の秘密よりももっと重大な何かを隠している。そんな気がした。

 話はそれから仮面ライダーについての話になった。彼方はファイズが好き。それを聞いたとき思わず食い付いてしまった。ファイズはあの時私達を救ってくれた遥さんがカメンライドした仮面ライダー。

 彼方はアクセルフォームのときの風を感じられる演出が好きらしい。結構マニアックなところを見てる、この人。

 そして、私は彼方にセンチピードオルフェノクに襲われ、ディケイドである遥さんに助けてもらったときのことを話した。何故か、彼には話してもいいような気がした。彼方は真面目に私の話を聞いてくれた。彼は馬鹿にはしなかった。ただ、彼の瞳が罪悪感で彩られていたのが気になった。

 話は終わり、私はふと思い出していた。そういえば、遥さんに私達はストラップを渡していた。お姉ちゃん達と四人それぞれのイメージでお揃いで買った猫のストラップ。今もあの人は持っていてくれているだろうか……

 

「さて、服だけでもクローゼット入れとくか」

 

 そう言って彼が立ち上がった時だった。

 

「……え?」

 

 彼の荷物が入っているカバンに、見覚えのある猫のストラップがついているのが見えたのは。




もう二つしかない。やばい。

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