夏は過ぎ去り、未だ暑さが残る10月。神田明神では巫女さんが一人、竹箒を持って境内の掃除を始めていた。背中まで届く黒髪を首の後ろで二束に纏め、音乃木坂学院の三年生…東條希は周りを見渡し、深呼吸をして朝の空気を一杯に吸い込んだ。
「さてと、朝練までにチャッチャと終わらせちゃおっと。」
…とその時、希は誰かが階段を上がってくる気配を感じて其方に視線を移す。まだ時間は五時になってはおらず、少し気を付けながらも掃除を優先する。
(まっ、ワンコを連れた何方かでしょ…。)
もし犬を連れていたら触らせてもらおうと思ったが…、上がって来た人物を見た途端、希は体を強張らせた。
その人物は2mはありそうな程背が高く、体付きは着ている薄手長袖のジャケット…シャツの上からでも筋肉がかなりあるのが見て取れた。
そして何より坊主に近い短髪のゴツい顔は薄く細い眉毛に小さくつり上がった目、分厚い唇をしており、何より眉間の右側から左頬まで一本、左目下から鼻筋を跨いで右頬まで一本、そして左のモミアゲから顎下に向けて計三本の切り傷が大柄な男性を凶悪に見せていた。
(えっ、まさか顔の通り“ソッチ系”!?)
希は摺り足で素早く後方に退き、距離を取って一旦視線を反らしてチラチラと様子を窺った。Gパンのポケットから小銭入れを出して太い指で中を探っている。恐らくは五円玉を探しているのかも知れないが、その背中を丸めた仕草を見ていて第一印象の怖いイメージが少しづつ薄れて来た。
「クソッ、五円玉がねえぞ!?
十円と五十円はあんのによお~!」
とうとうぼやき出したかと思えば、小銭を摘んでジッとそれを見つめ始めた。
「五円玉で願い事叶うならよう…、十円で二倍…五十円で十倍とかにならねえかな~?」
大柄怖面の男性は情けなく肩を落として子供染みた言を呟く始末で希はさすがに放っておけず、声をかけてやった。
「“ゴエン”ならありますよ?」
男性は後ろから声をかけてきた巫女姿の希に振り返り、キョトンとした顔で見つめる。希はそんな男性の顔が可愛く見えて第一印象のイメージは何処かへと飛んで行ってしまった。彼女は財布を出し、五円玉を二枚取り出してニコリと笑った。
「十円玉と交換でどうですか?」
お宮参りに来て五円玉がないと言う人はたまにいたので希はバイトの際は数枚持ち、あげるのではなく、十円玉がある様なら両替と云う形を取っていた。例え五円であろうと、お金である以上は見知らぬ相手より貰うのは気が引けるものである。
怖面の男性は微笑み、小銭入れから十円玉一枚を取り出し希から五円玉二枚を受け取った。
「ありがとう。」
「どうも致しまして。」
怖面の男性は今度は悪戯っ子みたいに無邪気な笑顔を作り、希もまたごく自然に微笑んだ。
「因みによう、十円玉と五十円玉でお参りしたら願い事が二倍十倍になって叶うと思うか?」
「…無理でしょう…。」
「…そうだよな。」
そんな会話をして男性は五円玉を賽銭箱へ投げ込み、大きな掌をパンパンと良い音を立ててお参りをする。希が彼にどんな願い事をしたのかを聞くと怖面の男性はこう答えた。
「ちょっと早いが、この年末年始まで何事もなく普通~に過ごせる様にってとこだ。」
そう言って彼は元来た階段を降りて去って行った。希はあの怖面の人とはまた御縁がある様な気がした。
そう、この一ヶ月後に彼…嘗て“暴力大魔王”と恐れられた“QP”こと石田小鳥は上京し、希だけではなく彼女達μ'sとも“御縁”を結ぶ事となるのであった。
原作QPで主人公の石田小鳥に彼女がいなかったのでこんな小説を書いちゃいました。
そして小鳥は絶対美女を獲得すると思い、ラブライブとのクロスを決めました。
更にはこれはネタになると思い、ことりちゃんは壊れる事になると思います。
…ナムサン…合掌。