ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

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今回の主役は穂乃果、海未、ことりで12.5話となります。


かしまし三人娘は本っ当にかしましい

 本日は日曜日、音乃木坂学園スクールアイドルグループ“μ's”リーダーと云う肩書きを持つ元気少女…高坂穂乃果は

同じグループメンバーであり幼馴染み園田海未と南ことりを連れ出して秋葉原へとくり出していた。海未は文句を言いながらもゲーセンで穂乃果、ことりとダンスゲーム勝負に熱中し、二人が箱型のゾンビシューティングゲームを始めると一緒に入ったはいいが穂乃果の背中に隠れて戦々恐々しながら狭い中で悲鳴を上げていた。

 そしてお昼までゲーセンで遊び、三人娘はお腹が空いたので何を食べようかとお店を探していた。

 

「もう海未ちゃんてばゲームの間、後ろでずっと悲鳴上げて泣いてるんだもん。

あれホラー映画じゃないんだよ、ゲームだよ、怖くなんかないのにぃ。」

「だっ、だって、あんな大きな画面にあんなゾンビ…ゾンビがわんさか襲って来るんですもの、怖い過ぎですっ!

それに穂乃果もことりも酷いです、私がゾンビとか幽霊とか石田さんとか怖いもの嫌いなの知ってるクセにあんなゲーム始めるんですから!!」

「ごっ、ごめんね海未ちゃん、面白そうだったから遂…。」

「…と言うか、さらりと石田さんがカテゴリーの中に入ってたね。」

 

 あの追いかけっこ騒動以降はμ'sメンバー全員が石田小鳥への誤解を改めて認め、普通に隣人付き合いの様な関係となった。…しかし、園田海未に於いては悪い人ではないと解ってはいてもやはりあの怖い顔は受け入れ難い様で石田小鳥と出会した時は穂乃果達メンバー…或いは電柱等の陰に隠れて様子を窺い、立ち去るのを待つと云った対処法を続けていた。因みに未だ彼の下の名前を南ことりは知らされていない。

 

「あっ、今日はオムライスの日だと私のお腹が叫んでる~!」

 

 突然穂乃果が大声を出して前方を指差し叫んだ。海未とことりは指差した先を見ると其処にデカ盛りで有名なオムライス専門店があった。

 

「穂乃果ちゃん、私大きいのは無理だよ。」

「そうです、大体穂乃果は最近やっと減量に成功したばかりの筈ですよ!」

「だって食べたいんだもん、オムライスだよ海未ちゃんことりちゃん、玉子御飯とは違うんだよ!」

「…確かに、違う…よね。」

 

 ふと、ことりは脳内で玉子御飯とオムライスを並べてみる。どちらかに選択せよ…、と言われたならば…。

 

「…オムライスがいいよね。」

「はいお昼決まったーっ!」

「何でですかああっ!?」

 

 不思議な流れでオムライスと決まり海未は反論しようとするが、穂乃果は海未を遮って決定打を口にした。

 

「海未ちゃん、デカ盛りが食べられないならば頼まなければ良いだけの話じゃん!

それにオムライスがイヤなら海未ちゃんは何が食べたいの?」

 

 “うっ”と言葉を詰まらせ口隠る海未。それもその筈、彼女は只“デカ盛り”に対して反感を持っていただけで普通盛りの事はおろか…他の飲食店など考えてもいなかったのだ。

 

「うう、…オムライス…食べに行きましょう…。」

 

 

 そして三人はお店の中へ入り、“いらっしゃいませ”とウェイトレスの挨拶を聞いたその時、穂乃果は無視出来ない一行を見つけ出した。絵里と亜里沙である。そして二人と向かい合っている大きな背中は紛れもなく“あの人”であろう…そう思った。穂乃果は早速大きな声で彼女達を呼ぼうとした。

 

「おーーーい、えriモガッ!?」

 

 だがその刹那、穂乃果の口は海未により塞がれて彼女はことりも引っ張り席を分けた枠に隠れてひょっこりと顔半分を出す。後ろで“ズダンッ”と音がしたが取り敢えず無視する。

 

「もう、海未ちゃん何なのよ~!?」

 

 穂乃果は突然口を塞がれた上に力ずくで枠の陰に押し込められたので少々気が立っていたが海未はそんな事は気にせず穂乃果に顔を近付けてギロリと睨みつけた。穂乃果はその眼力に思わずたじろぐ。

 

「静かに穂乃果、貴女はあの光景がどういう事か解らないのですか!?

絵里と亜里沙ちゃんの隣にもう一人の見知らぬ少女、女子が三人に石田さんの隣には知らない男性が二人、これは正に世に聴かされた……、“合っコン”っ、ですっ!!」

 

 穂乃果は何時の間にか海未のスイッチが“ON”になってしまっている事に気付いた。海未を其処まで追い詰めた状況が此処に来るまでは全くない筈なのだが…、もしかしたら…。

 

(絵里ちゃんと石田さんが一緒に居る光景が原因かも…?)

 

 海未はμ'sの中で一番石田小鳥を苦手とはしているが、一番絵里との仲を気にしているのがあからさまに見えていた。今もかなり危ない目で絵里達の居る席を凝視しており、彼女に気付いた他の客が怪訝そうに此方をチラチラと覗いていた。

 

「…でも、合コンって…、あの女の子はどう見ても小学生にしか見えないよ海未ちゃん。」

「何を言っているのです、ならばウチの“にこ”はどうなるんですか!?」

「いや…、にこちゃんをどうする気なのよ海未ちゃん…。」

「・・・申し訳ありません、お客様。宜しければお席の方へ案内致します…。」

『ハイッ!?』

 

 ウェイトレスに声をかけられた二人はもう一度絵里達の席を確認し、絵里の後ろが空席と確認すると即座に其処へ移動、ウェイトレスは言葉を失って暫し立ち尽くすが…二人の居た場所に海未に引っ張られた時に躓いて転び、ずっと俯せていたことりに気付いて彼女を起こしてあげた。

 ウェイトレスに宥められながら連れて来られた泣き顔のことりは嗚咽を繰り返しながら、申し訳なさそうに見つめる穂乃果と海未を何時にないジト目で睨みつけ、海未の隣の席に座った。

 

「ふうう~、二人ともヒドい…。

わたし、本当に気絶しててウェイトレスさんが起こしてくれなかったらそのまま起きて来れなかったかも知れないいい!」

 

 珍しく本気で怒っていることりであるが、普通友達に助けてもらえずに放っておかれては無理もないので…二人はテーブルに額をくっつけて謝った。

 

『ゴメンナサイ…。』

 

 三人揃った所で絵里達に気付かれない様に注文を鼻を摘み声を変えて取り、穂乃果達はテーブルに突っ伏して聞き耳を立て絵里達の会話を盗み聞きを始める。

 絵里達はにこやかに会話を弾ませる一方で海未達はテーブルに突っ伏したまま彼女達の一言一言を聞き逃さんと耳を澄ます。彼女達の脇を通る他の客達はあからさまに怪しい三人の奇行にやはりチラ見をしながら我関せずを通す。そして絵里達の席に料理品が2つ運ばれ、それを見たことりはギョッとして一瞬体を強ばらせた。

 

(あれは、花陽ちゃんですら二の足を踏むと云う“3kgオムライススペシャル”、恐らく食べるのは石田さんが注文…やっぱりあの体型は伊達じゃないのね!?)

 

 何故ことりがその事を知っているのかは謎だが、次に聴いた会話は正に彼女が耳を疑うものであった。

 

「“小鳥くん”、野口君…、本当に食べれるの?」

 

 小学生と思しき少女が“彼”を“コトリ”と呼んだのだ。それは海未と穂乃果も聴いていて海未は寝耳に水と云った顔となり、穂乃果は…青醒めた顔で口を半開きにしていた。

 

(あ……、そうだった。…石田さんの名前、“小鳥”だったの忘れてた…!)

 

 

 ことりの表情も強張って青くなっていき、唇がプルプルと震え出す。

 

「こっこと…っ!?」

 

 まるで鶏でもいるかの様な大きな裏返った声が響き渡り、絵里達が後ろを向いて来た。海未は即座にことりの口を塞いでテーブルの下に隠れ、穂乃果も同じくテーブルの下に潜り込むが、“ゴンッ”とテーブルの端に額をぶつけてしまい隠れはしたが額は青くなり僅かにたんこぶが盛り上がった。

 

「あの……、大丈夫…ですか?」

 

 …と、此方に気付いていないであろう絵里の心配そうな声がしたので三人はまた鼻を摘んで返事を返した。

 

「いだ~~い、いや、だいじょーぶ、じょぶだよ~、いだい…。」

「此方は御心配なく、お食事をお楽しみく“だっ!?”…はぃ”……。」

「…良きに、はからえ?」

 

 其れ以降…絵里は一切此方を向かず、穂乃果は額のたんこぶの痛みを我慢しながら持ってこられたオムライスを涙目で食べ、海未は今さっきテーブルの下で唇を噛んで口内を切りオムライスが滲みるのを我慢しながらやはり涙目で食べた。

 そしてことりは…、彼と名前が同じ事実を知った事で大きなショックを受け、ショボショボと涙を落としながらオムライスに流れる涙のしょっぱさにまた涙目となり、只々オムライスを頬張ったのだった。既に絢瀬絵里と石田小鳥にはバレてしまっているのも知らずに…。

 

「おでこ痛いよ~。」

「口の中が滲みます…。」

「オムライスがしょっぱい~~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談ではあるが、翌日、南ことりにはチュンチュンと鳴く雀等の顔が皆“石田小鳥”の顔に見えたそうだ。

 

「あ~~、小鳥さんの顔が小鳥さんに視えてしまい私、南ことりは小鳥さんの様に空を飛び立ちたい気持ちで一杯で御座います。」

 

 ことりはμ'sのメンバーに今の心情を詞にして伝え、この状況が数日間程続いたそうだ…。

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