何か…犯罪に手を染めた気分になっちゃったよ!!」
凛「…何でニャ~!?」
花陽「此から凛ちゃんの服(紙蓋)を破って(開けて)、オプション(かやく)で(を)弄んで(ふりかけて)私の熱い〇〇〇〇(お湯)を満遍なくかけて三分テーブルの上に放置(待機)するの!!」
凛「カヨチンが壊れたニャアアアッ!!!!」
「グス…ッ、みんな絶っ対に面白がってるうぅ!
いいじゃない、“ことりさん”が二人いたってえ!」
部室の戸に体当たりをしたことりは保健室でタンコブの出来た額にガーゼを貼ってもらったのだが、穂乃果や凛ならまだしも、普段からおっとりしている彼女がタンコブを作ったのでかなり心配されてしまった。未だ悔しさが拭えないことりを穂乃果が宥め、他のメンバーも申し訳なさそうにことりを見ていた。
「ゴメンね、でもことりちゃんもあんまり無茶しないでね、私かなり心配したんだから…。」
「むうぅ……、ごっ、ごめんなさい…。」
此処で変に駄々をこねず、素直に謝ってしまう所が彼女…南ことりの限界と良い所なのかも知れない。何時もなら穂乃果が迷惑を掛け、注意をされれば言い訳をしている所なので互いに立場が入れ替わっていたのが皆にはまた新鮮に感じられた。
そして今日…本題に上げられた東條希の彼氏問題は何と、この後の学校帰りに彼氏…通称“秀君”とのアポイトメントが取れてしまったのだ。希は滅多に見せない困り顔でいるが、他のメンバーはもう顔に好奇心の字が浮き出ていた。
「みんな、秀君…神田明神に来てくれるって。」
希がメールで彼氏と連絡を取り合い、待ち合わせの場所が決まるが、穂乃果やにこ達は希が彼氏の名を呼ぶ事に対して妙な興奮を感じ、“秀君”を連呼する。
「秀君か~。」
「ひでくん…。」
「秀…さん?」
「…秀君ねぇ。」
「秀君ニャ~!」
「すっ、スキャンダラス秀君!」
「ひっでっ君、お風呂にする?ご飯にする?
それとも、わ・た・し♪♪」
やはり此処でにこの悪ふざけが始まるのだが、相手はスピリチュアルJK…東條希。その程度のおふざけでは揺らぎなどしない。メンバーの意地悪い笑みはピッとカードを一枚出した希の妖艶な流し目と潤う唇による微笑により優しくかき消された。
「フフフ…、そんな台詞は半年前に済ませちゃったわよ♪」
『なんですとっ!?!?!?』
相変わらずタイミング良く台詞を揃えて驚く面々だが、絵里だけは冷静な顔付きで溜め息を吐き、メンバーを諫めた。
「みんな、まだ校門も出てないわよ。時間どんどん過ぎるぞ!」
“アーッ”と穂乃果達は声を上げて我先にと走り出し神田明神を目指す。大分後になった絵里と希だが、希は無表情で絵里を見つめ…絵里の“魂胆”を見抜いた。
「もしかしてエリチ…、ワザとみんなを焚き付けた?」
「焚き付けたわよ、希ってば無駄に時間稼ぎするんだもん。私も希の彼氏早く見たいわよ!」
「……やっぱりエリチは手強いな~。」
どうやら希も彼氏を紹介するのはかなり恥ずかしい様で無駄な抵抗と分かっていても自分のネタに皆を食いつかせて時間稼ぎをして待ち合わせ場所には行かせずに彼氏を帰らせてしまおうと考えていたのだが、それを絵里が見抜き皆に目的を思い出させて神田明神に向かわせたのである。
「ほら希、私達も行くわよ!」
「ん~、気ぃ進まんよ~!」
珍しく駄々をこねる希の手を引き、絵里は彼女の彼氏に会えるのに心が踊っていた。
神田明神へ続く階段は時折μ'sのメンバーが身体向上の為にランニングに使わせてもらっている。一番に着いたのは星空凛、中学の時は陸上部をやっておりμ's九人の中では一番元気で体力もまた1~2を争う“強者”である。息を切らしてはいるが階段を昇る早さは衰えず、境内に入り深呼吸を繰り返した。
「いや~、さすがに学校から此処まで走って来るのは堪えるニャ~。…さて、秀君は何処かニャ~?」
凛は右手を額にあててキョロキョロを見渡すと、賽銭箱の前に二人の男性が立っていた。辺りは薄暗く二人の男性は影で顔は見えず、凛はふと…今の状況を把握する。
(カヨチンも真姫ちゃんもみんな来ていない。凛は独りで向こうは二人。
……もしかして凛、“大ピンチ”!?)
すると賽銭箱前にいた二人の男性が此方に気付いたのか、凛に向かって近付いて来た。凛は妙な脅迫観念に襲われて体が強張って動けなくなる。二人の男性はどちらも背が高く、もし凛が暴れたとしても苦もなく抑えつけられてしまうかも知れない。
「フミィ…、カヨチン、真姫ちゃん、穂乃果ちゃん…!?」
まだ到着しない仲間の名前を涙目になりながら呟き、二人の男性が眼前に立った瞬間…。
「ニギャアアアアアアアアアッ!!!?」
突然階段の上…神田明神の境内から星空凛のそれこそ喧嘩中の猫の様な悲鳴が轟き、やっと階段下まで辿り着いたμ'sのメンバーは顔色を変える。
『凛っ!?!?』
途端に小泉花陽はキッと普段では考えられない凛々しい表情になってダッと階段を駆け上った。
「リンちゃあああああああん!!」
絵里達は急いで花陽の後を追って階段を駆け上がる。
「花陽ちゃん凛ちゃん!?」
「凛、花陽、無茶しないで!!」
階段を駆け昇った穂乃果と絵里達はしゃがみ込み泣きじゃくる凛に駆け寄り、彼女を泣かせたであろう二つの影を睨む…、のだが…、絵里達はその思っていた光景とは正反対の状況を見せられて呆けてしまう。
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃあああっ、よくも凛ちゃんを泣かせたなあ!
うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ!!」
一生懸命ぐるぐるパンチを繰り出す花陽の頭を右手を軽く突っぱねて押さえている“丸坊主”の“石田小鳥”。そしてその隣には髪型をリーゼントで決め、小鳥程ではないが背は高く、何よりかなり顔形の整った好青年がいた。
「希、遅いぞ。お陰で見知らぬ娘に泣かれて、もう一人見知らぬ娘に襲われて散々だ。」
イケメンの男性に話しかけられた希は泣いていた凛~暗がりに二人の男性~小鳥に襲いかかる花陽?…と順番に見て連想し、状況を理解し苦笑いをした。
「はぁ…、そう言う事か、ゴメンね“秀君”。
…でも、どうして“こと…り”さんも一緒におるのかな!?」
そうである。希の疑問は他のメンバーも感じているもので、彼女達からして見れば本来この場所に居る筈のない人物なのである。
「まあ、絵里は…嬉しい…わよね?」
ニヤニヤしながら真姫が珍しく絵里に絡み、左腕に抱きつく。
「もう、私と“小鳥さん”はそう言う関係じゃないって言ってるでしょ!」
普段ツンデレとからかわれている真姫だが、最近はこの汚名を絵里に擦り付けようと少々意地悪い方向を向いていた。
「よう、全く“妙な縁”があるよな、俺達?」
未だにぐるぐるパンチを止めてくれない花陽を余裕で抑えながら石田小鳥がニカッと笑い絵里に声をかけると、絵里は照れくさそうに苦笑いをし、彼の言葉に同意した。
「本当に…そうですよね、小鳥…さん。」
二人は含み笑いをし出し、希の彼氏である秀君とμ'sメンバーも緊張と好奇心が和らぎ、その表情も落ち着いたものとなっていた。
…そんな中で一人だけ小鳥の足元でペタンと座り込み、ゼーハーゼーハーと荒い呼吸をする花陽は少し戻った冷静さにグッタリとし、自分の猪突猛進ぶりに冷や汗をかいていた。
(わっ、わたし、小鳥さんに向かって行っちゃったのねっ!
何て恐ろしい、恐ろしい!!)
そんな花陽の傍らに凛が膝を付いてしゃがみ、嬉しげな笑顔で花陽を見つめた。
「カヨチン、一番に助けに来てくれて~ありがとう。」
凛は自分の勇み足で落ち込みそうであったが、凛のその言葉で胸が軽くなるのを感じ…凛に笑顔を返すのであった。