ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

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今回は小鳥のQP時代…追憶編前編です。


小鳥は今一度…過去と向き合う

 μ'sの皆が…、と言うより海未と花陽が正気に戻る前に絵里は希に亜里沙からメールが来たと嘘を吐き先に帰る事を伝え、小鳥は彼女を送ると秀虎に言って彼女に付いて行った。秀虎はキョトンとした顔となり、階段を降りて行く二人の背中を見た。

 

「希、もしかして…あの二人…?」

 

 秀虎に聞かれ、希は笑顔で頷いた。

 

「うん、多分ね…。

エリチ…、小鳥さんの話をする時、普段のクールさをあまり感じさせないの。とても可愛いいじらしさを見せるんよ。」

 

 秀虎は小鳥と絵里を見送りながら…、高校時代に彼と出会った時の事を思い出していた。あの不良共が喧嘩乱闘に明け暮れた町で、秀虎と小鳥は互いの意地をぶつけ合って拳を交わした…。あの頃の小鳥は暴力大魔王を自称し、それこそ暴力の象徴とも言える程相応しい暴れっぷりを見せていた。

 そして因果応報とは誰が言ったのか…、まるでその乱暴行為を清算するかの様な出来事が小鳥の身に降りかかり…彼の青春時代は呆気なく幕を閉ざしてしまった。秀虎はずっと彼の事を気にかけていたが、今はまるで生まれ変わったかの様にあの大魔王っぷりはナリを潜め、彼らしさが全面に出た小鳥と再会出来た時は本当に嬉しく思っていた。

 

「少し思ってたんだ、あの野郎は意外とベッピンさんを掴まえるじゃないかってな…。予想が的中した。」

 

 秀虎は自分の事の様に嬉しげに笑い、そんな彼の傍らに希は微笑んで寄り添い…体を預けた。

 

 …秀虎と希は良い雰囲気の中で二人きりの世界を作っていたが、自分の妄想に浸り一人芝居を披露していた海未は我に返りあまりの羞恥心に耐えかねていた。

 

「うっ、うう…、わっ、私…、いやっ、違うの、ほおのかあああっ!!!!」

「うえ、ちょっ、海未ちゃん!?」

 

 海未は泣きじゃくりながら穂乃果の溝内へとダイビングヘッドをかます。

 

「ぐはおうっっ!?」

 

 クリーンヒット、溝内を海未の人間魚雷で抉られた穂乃果は彼女にもたれ込み失神、海未は意識の途切れた穂乃果の胸に抱きつき泣き続けていた。

 

「あれ…っ、穂乃果ちゃん…、大丈夫かニャ~!?」

「ハレル~ヤ・スクドル!!」

「あっ、もしもしお母さん、神田明神に救急車を一…二台手配お願い出来る?」

 

 もう収集着かないまま、負傷者一名に錯乱者一名を出した乙女達の宴は此処で幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空にはもう幾つもの星が灯り、街灯の明かりも灯り始め、小鳥と絵里はいつも出会す横断歩道を過ぎて絢瀬姉妹の住むマンション近くの小さい…しかし管理の行き届いた公園のベンチで飲み物を買って二人で座っていた。以前、秋葉原で座ったベンチは三人座りであったが、この公園のベンチは二人座りと小さく互いに寄り添う形だった。

 話がしたいと言ってきた小鳥は黙りこくったまま大きな手で握ったホット缶コーヒーを深刻な表情で見つめる。絵里は少しだけ不安になり、彼の名前を呼ぶ。

 

「小鳥さん、話って…何ですか?」

 

 すると小鳥は寂しげな笑みを絵里に向けて答えた。絵里はその寂しげな笑みを何処かで見た様な疑似感に捕らわれる。

 

「あぁ、前に…中学高校と“QP”って呼ばれてた時の事…教えるって言ったからよ、その頃の事を絢瀬に話しとこうと思ってな。」

 

 絵里は思い出す。疑似感などではなく、以前…彼の地元から知り合い達が秋葉原に来た時にQPの話をしたがらなかった際に見せた表情であった。絵里は唇を結び、黙って彼の話に耳を傾けた。

 小鳥は産まれた頃に父親が亡くなり、幼い時から凶暴であった。幼稚園では好きな先生の彼氏に石で殴りつけ歯を三本も折ったり、小学生になっては流血沙汰の喧嘩は絶えず、彫刻刀で顔を切りつけられながらも相手を牛乳瓶で殴り倒した。後に我妻涼と親友となり、彼を捨てた父親をぶちのめす目的で車両を盗み暴走事件を起こす。この事件はニュースでやったそうである。

 中学に入って奈良岡常吉と鈴本幸三と親友となり、仲間は三人に増え、片っ端から喧嘩を売っていった。小鳥は髪型が似ている事から“QP”と呼ばれ恐れられ、其れから四人で実行したのは学校を占める事だった。その頃彼等の学校で“番”を張っていた上級生をぶっ倒し、小鳥達は教師達すら黙らせる学校の頂点に立ったのだった。

 …此処まで聞いていた絵里は少々引き気味に冷たい言葉を一言投げかけた。

 

「…幻滅します!」

 

 だが小鳥は意に介さず、ヘラヘラと笑い…絵里の言葉に同意した。

 

「ははは…、本当に幻滅だぜ。話す度にいつも“馬鹿だ俺”って思うしな。

…でもあの頃は涼やツネ…幸三と四人で暴れ回るのが本当に楽しかった、本当に愉快だった。

…そして高校に入ってからも俺達の

暴れっぷりは更に拍車がかかった。」

 

 

 高校生になって小鳥達が目論んだのは自分達の学校のみならず、この町の高校全てを“力”で支配すると云う無茶苦茶な野望であった。

 だがしかし、既に一つの不良集団が町に存在し、各学校の不良学生を束ねていたのである。

 

「その不良組織の名前は秀虎会。その名の通りで上田秀虎さんを頭にした集団だった。」

「えっ、本当に!?」

 

 小鳥は笑顔で頷き、話を続けた。

 小鳥達は自分達の学校を占めた後に秀虎会の幹部だと言う不良達をぶっ倒し続け、そんな時に小鳥は個人的に上田秀虎と邂逅した。彼はとても気さくで話しやすい好青年であった。小鳥も少なからず彼の懐の広さを見て好感を感じはしたが、其れよりも秀虎と“タイマン”を張りたいが為に秀虎会の不良達を狩り続け、上田秀虎を引きずり出す事に成功した。秀虎は出来れば小鳥とはタイマンをしたくなかったそうだが、彼にとってやられた幹部達は皆友達であり、自分をリーダーとして慕ってくれた者達にも示しが着かない所まで来てしまい、小鳥を倒さなくてはならなくなった。…土砂降りの雨の中で二人は鬼の形相で殴り合い、互いに一歩も譲らず、ひたすらにお互いを殴り続けた。どちらも倒れず、しかし秀虎が構えたまま動かなくなると…小鳥は拳を下ろし彼を“ポンッ”と軽く押した。すると秀虎の体はグラついてそのまま雨に濡れた水溜まりの地面倒れ込んだ。…石田小鳥が上田秀虎を下した瞬間であった。

 

「だけど俺は全然勝った気がしなかった。…無性に虚しかった。

そのタイマンで俺は知っちまったんだ、誰もが力に屈服する訳じゃないって、そしてタイマンに勝ったからって別に何が自慢出来る訳でもねえ、只相手を傷つけた…其れだけの話なんだってな…。」

 

 小鳥は何処を見てる訳でもなく前を見据え、絵里はそんな彼の横顔をジッと見つめた。

 小鳥は今少し、話を続けた。上田秀虎とのタイマンから幾日が経ち、小鳥は暫くの間は自分から喧嘩を売るのを止めていた。…が、秀虎会の下っ端達が敵とばかりに徒党を組んで囲って来た時はお互いに容赦なくぶちのめし、ぶちのめされた。そんな折に小鳥は秀虎の舎弟を名乗る木場好晃と出会う。実は彼…小鳥と小学校が同じでお互い悪ガキ同士でかなり激しい喧嘩をしたそうだが、小鳥の圧勝でずっと怨んでいたそうだ。しかし意外にも彼が上田秀虎との橋渡しをしてくれ、小鳥はまた秀虎と話す事が出来た。喧嘩などと物騒な話題ではなくもっと“ダチ”を増やして楽しく学校生活を過ごす事や、将来…自分には何が出来るのか何がしたいのか、見えない先の話をして小鳥は秀虎の舎弟となり、木場もまた、小鳥の親友になった。

 

「気付けば“ツネ”も“幸三”も全学校制覇なんてもんよりも別の事に目を向け始めてた。ツネはバイトしてギター買って暇があれば弾いてた。幸三はナンパが趣味になって俺達の事なんか“そっちのけ”だ。

しかもあの野郎、当時俺が気にかけてた女の子引っ掛けて結婚しちまいやがった、今じゃ子供までいるんだぜ!」

 

 急にヒートして来た小鳥に呆れながら絵里は苦笑いをしながら相槌を打つ。話が反れたので小鳥は表情も変えてもう一人…、小学校からの付き合いである我妻涼の名を出す。

 

「そして涼は…、アイツは“兵隊”を集め始めていた…。」

「…兵隊!?」

 

 絵里はその言葉の意味が全く解らなかった。しかし其処から彼…石田小鳥の挫折と、一番の親友であった我妻涼との決別のカウントダウンが始まるのであった…。

 




次回…、どうしよう、そろそろ決着着けたい!?
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